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第十二章 混迷なう

291話 混浴なう

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 胸が張り裂けそうだ。たぶん、扉のところにいる皆にまで聞こえてるんじゃなかろうか。
 夜、異様なまでに静かな露天風呂に俺の心音が響き渡る。
 死んでいた脳が再覚醒し、そして混乱によりショートする。

「あ、い、あ」

 喉から声のような何かが出る。六人の、一糸まとわぬ美女たち。これを見せられて、まともでいられる男なんているんだろうか。
 俺はとっさにお湯の中に入り、視界を切る。

(な―――――――――――なん、なんで、なんでなんでなんでなんでなんで!?)

 今までも、お風呂に乱入しようとしてきたことはあった。でも、その度に邪魔が入って有耶無耶になっていたんだ。
 なのに、なのに。

「ぷはっ」

 いくら俺でも、無限に息は続かない。……いや、肺の中で風魔術を使えば呼吸しなくてもどうにかなるのでは。
 そんなくだらないことを考えつつ、お湯から飛び出たところで――ばちっ、と冬子と目があってしまう。

「あっ……あ、あんまり、ジロジロ見るな、京助」

「えうっ、い、いああ、ごめ、ごめん!」

 もう一回、お湯の中へダイブ。一瞬しか見えなかったが――冬子の体、綺麗だった。白磁のような肌。戦士として鍛え上げられた肉体が、健康的なエロスを醸し出している。
 何より、綺麗な脚。脚線美とはこのことで――

「ほれ」

 ――ざぶぅ! と無理やりお湯の中から吊り上げられる。慌てて目をつぶり、前を隠す。

「キアラ、何するのさ!」

「何をする、ではない。よく見んか」

「見れるか! お、俺はもう上がる!」

 肉体に風を纏い、そのまま姿を消す。しかしその魔術を解除され、お湯の中へ再ダイブすることになってしまった。

「ぷいはっ!」

「魔術の作りが甘い。動揺しすぎぢゃ」

 鼻と目に水が入った。ごしごしと手で拭い、目を開けると――そこには、やっぱりすっぽんぽんの皆が。しかし、俺の想像していた光景とは違う。

「……あ、あれ?」

「どうぢゃ、妾の新魔法――局部隠しライト!」

 バーン! と背後に書き文字が出そうなほどどや顔になるキアラ。改めて彼女らの姿を見ると、なんと……体の一部が、その、光ってる。いや体の一部がというか……謎の光がどこからともなく下りてきて、肉体をピンポイントに隠しているというべきか。

「……………………え?」

「京助君、パンツじゃないから恥ずかしくないもん、だよ!」

「いや全裸である事実は間違いないよねぇ!」

 耳まで真っ赤にした美沙が、堂々と腰に手を当てて胸を張る。彼女のスイカよりも大きい胸がぶるんと揺れるが、決して大事なところが見えることなく絶妙な位置で光っている。

「………………えっと」

「まぁ待て、この格好には深い理由があるんだ」

 俺が全力で混乱していると――冬子が恥ずかしそうに、しかし胸の前で腕を組んで説明を開始してくれる。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ――話は京助が部屋に戻ってくる前に遡る。 

「というわけでお主ら、正念場ぢゃぞ!」

 冬子たちがのんびりと団欒していると、シュパン! とキアラさんがいきなり転移してやってきた。
 ……全裸で。
 何故か乳首と股間を光らせて!

「いや服を着てください!?」

「なんぢゃ、妾の玉体を見るチャンスぢゃぞ」

 何を言っているんだこの神様。
 冬子は頭痛が痛くなるような感覚に襲われつつ、キアラさんの方を見る。乳首を光らせ、どや顔をしているキアラさんの。

「……あの、キアラさん。何か悪い物でも食べられましたか? マスターも心配すると思うので、とりあえず服を着てください」

「ヨホホ……えっと、どうぞデス」

 リューがキアラさんに服を着せようとするが、キアラさんはやれやれと首を振る。

「全く。お主らに大チャンスを持ってきてやったというのに。妾の身体を見て何か気づかぬのか?」

「春が来たなぁって思いますよ」

 美沙がのんびりとそんなことを言う。何故一番入って日の浅い美沙が、このアホみたいな光景に慣れ切っているのだろうか。
 冬子はそんなことを思いつつ、首をかしげる。

「それで、チャンスとは?」

「あ、トーコちゃん。もう進めるんですねー」

「キアラさんに何を言ったって無駄だ」

 であれば、話をさっさと進めるに限る。
 キアラさんは指をパチンと鳴らすと、今度はどこからか現れた謎の光がキアラさんの身体を上手い具合に隠した。
 彼女の美しい肉体――の肝心な部分だけ見えなくなる。まるで深夜アニメの、地上波版のような光景だ。 

「いや冬子ちゃん、その例えで分かるの私と京助君だけだよ」

「その二人が分かれば十分だ。……で、これがどうかしたんですかキアラさん」

「ふっふっふ……お主ら、せっかくのお風呂。水着無しで入りたいとは思わぬか?」

 ニヤッと悪い笑みを浮かべるキアラさん。そりゃ、入れるなら入りたいが――

「っていうか、ここの温泉って普通に水着無しでは?」

「そうぢゃな。しかし同時に、大浴場は男女別れておる。しかし、ここには家族風呂もあったぢゃろう? 妾たち貸し切りの」 

 当然の配慮だと思う。
 そこまで聞いて、美沙がピンと来たのかガバッとキアラさんの方に身を乗り出した。

「つ、つまりそれがあれば!」

「そう! キョースケとも混浴し放題!」

「しかも京助君の光の帯だけ消せば!」

「見放題触り放題ぢゃ!」

 どどーん! と背後に爆発音が聞こえそうなほどテンションをぶち上げるキアラさんと美沙。もう既についていけない。
 冬子はテンションマックスになっている美沙の腕を掴む。

「美沙。冷静になれ、全裸になるんだぞ?」

「最近、だいぶ鍛えてるからね。見られて恥ずかしい体はしてないよ! きゅっきゅっボンな冬子ちゃんと違って――あるていしあっ!」

 美沙を一本背負いし、ピア、リュー、マリルを見る。

「……私は反対だぞ」

「ではトーコだけ、部屋で待っていてください」

「凄いですねー。こんなに綺麗に見えなくなるなんて。これ、水着と露出度変わらない気がしますよー」

「ヨホホ……いや、恥ずかしいデス。恥ずかしいデスけど……でも、ちょっとドキドキするデス」

 なんかリューが危ない方向に目覚めているような……。

「まぁまぁ、トーコちゃん。恥ずかしがるのも無理はないですけど……流石にキョウ君も、私たち全員が全裸で迫ってくれば、少しは自分が好かれてるって気づくかもしれないじゃないですかー」 

「マスターには普通のアピールでは足りませんからね」

 それは確かにピアの言う通り。だからと言って、全裸で混浴はステップを飛ばし過ぎているとしか思えないが……

(……いや)

 自分以外乗り気なのを見て、冬子は考えを改める。皆で家族になると誓ったのだ、そのためには京助を自分たちに振り向かせる必要がある。
 そのために出来ることは、やるべき……かも、しれない。

(……恥ずかしい、恥ずかしいが……見せる相手は京助だ)

 最愛の人だ。彼の前で服を脱ぐことなど、これから先の人生で何度だってある。

「でもキョースケさん、ワタシたちのことを痴女って思ったりしないデスかね……」

「うーん……京助君が突飛な方に思考を飛ばしたらそうなっちゃうかもだけど……」

「そのためにほれ」

 ドン! とキアラさんが出してきたのは、お酒。それも――所謂日本酒っぽい瓶だ。

「さっき女将から聞いたんぢゃがの、温泉に浸かりながら酒を飲むというのが、粋なんぢゃと」

「ああ……」

 露天風呂といえば、お盆に乗せた日本酒。そんなイメージは、お酒をあまり飲まない冬子でも持っている。
 キアラさんはどこからともなくお盆を取り出し、ニコニコ笑いながらくるくる回す。

「ちょっと理性が緩むくらい飲ませれば十分ぢゃろう。そのうちお主らのことを視姦しだす――そこがねらい目ぢゃぞ」

 視姦て。

「………………よし」

 たっぷり一分ほど思考し――冬子は頷き、キアラさんからお酒を貰うことにした。

「私も、理性を軽く飛ばす。……そもそも、今回の温泉旅行はチームの慰労だ。だったら、だったら……ご褒美! 京助の裸が見たい!」

「冬子ちゃんの理性が先に飛んだ!?」

「あ、ちょこっとだけでお願いしますキアラさん」

「お猪口だけに? あうっ」

 余計なことを言った美沙の鼻にデコピンをかまし、お猪口をくいっと呷る。これで冬子の心の準備は出来た。

「でも京助が混浴を是とするだろうか」

「そこは……まぁ、強引にいけばいいでしょう」

「キョースケさんはあんまり押しに強くないデスからね」

「そうと決まれば善は急げ!」

 美沙もついでとばかりにお酒を飲み、それを合図にしたか皆もお猪口を呷る。

(よし――進むぞ、私は!)

 他の皆と一緒にゴールするために。冬子が後れを取るわけにはいかない。
 覚悟を決めて――京助を待つのであった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「とまぁ、そういうわけだ」

 どや顔で説明終了する冬子。いや、キアラが裸で乱入してきた結果、混浴しようと勝手に決めたってことしか分からなかったんだけど。
 脳内にハテナマークを大量に浮かべながら、俺はとりあえず顔の水を魔術で飛ばす。

「つまり、どういうことだってばよ」

「え? 一緒にお風呂入ろうってことだよー。まさか水着はアリで、謎の光は無しってことも無いでしょ?」

 美沙はそう言うけど、水着と謎の光はだいぶ違いがあると思う。
 ジロジロ見るわけにもいかないので、チラチラ見ると……とりあえず、前面からは見えないみたいだ。
 ……いや、うん。

(思ったよりも刺激が強い……)

 俺の二本目の槍が戦闘態勢に入っても困るので(?)、俺はくるっと振り返ってから、浴槽の端っこへ。

「……これ、俺出られない感じかな」

「そうぢゃな。というか、寒いから浸かるぞ妾は」

「どーぞ……」

 もうキアラが暴れるターンなんだな、と諦める。こうなった彼女を力ずくで排除するには、とりあえず神器は使わないと無理。
 こんなところで怪獣大決戦をやるつもりは無い。

「私たちは体を洗いましょうかー」

「「「「はーい」」」」 

 浴槽の端っこで、肘をついて空を眺める。アイテムボックスから活力煙を取り出し、火をつけた。

「ふぅ~……」

 じんわりと煙が肺から全身へめぐる。体は暖かく、脳には冷気。これが露天風呂の醍醐味だけど、今はもう少し冷たい風が欲しい。
 冷静に考えれば、何も見なければいい話。目の前に風の結界でも張って、声だけ聞こえるようにしていれば大丈夫だろう。

(いや、でも)

 軽く考えるなら、せっかくだし皆で入ろう! ってノリなのかもしれない。でもそれなら、最初から水着でいいじゃないか。用意してるんだし。
 だから、うん。そうしなかったってことは。
 水着じゃ、ダメだったんだろう。

「………………………………俺も、男なんだよ………………?」

 こんな美人に囲まれて、しかも皆裸で。
 俺が、本当に我慢できるって皆思ってるんだろうか。

「理性が飛んでも、知らないからね……」

「やれるものならやってみぬか」

「うわっ、キアラ」

 お盆と徳利、そしてお猪口を持ったキアラがすいーっと泳いできた。温泉で泳ぐんじゃない。

「いいのぅ、温いお湯に、燗をつけた酒。こんなに楽しめるのであれば、もっと早く知りたかったのぅ」

「ああ……キアラは確かに好きそうだね」

 熱燗かぁ、俺も飲みたい。
 俺はお盆の上から徳利をとり、アイテムボックスからコップを取り出す。

「キョースケよ、そんな無粋な飲み方するでない。ほれ、お主らの分もちゃんと貰ってきておる」

 そう言ってキアラがお猪口を渡してくれる。女将さんあたりが用意してくれたんだろうか。

「って、あれ?」

 俺が温泉に目を落とすと、いつの間にか乳白色の液体になっていた。すくってみると、普通に透明。

「……これもキアラの魔法?」

「そうぢゃ。これならお主も恥ずかしくないぢゃろう」

 確かに、これなら肩から上しか見えない。俺も胡坐になって座り直し、彼女から受け取ったお猪口にお酒を注ぐ。

「……あー、美味しい」

「五臓六腑に染みわたるのぅ。……で、理性が飛んであ奴らを犯すんぢゃったな。最初はピアかマリルにリードしてもらえ。あの二人は絶対に誘いMぢゃ」

「いや知らんけど……あと、犯したりなんかしない」

 もう飲んで脳内を溶かしてしまおう。そして何も考えないんだ。
 俺はキアラのお猪口に徳利から注ぎ、自分の分にも入れる。

「ぷはぁ。……さて、そろそろあがるか」

「なんであがれると思ったんぢゃ。ほれ、妾の谷間でも見て落ち着かんか」

 ぐいっとキアラに肩をつかまれた。なんでこんな美女と一緒にお風呂に入ってるのに、俺の心はこんなにフラットなんだろうね。
 ちなみにキアラの谷間は、なんかフニフニしてそうだった。

(温泉かぁ)

 ボーっと脳を溶かす。酒と湯気が、良い具合にふわふわとした気分にさせてくれる。
 のんびりと夜空を眺めていると……キラッ、と一筋の流れ星が。ついついそれを目で追うと……視線が下がり、いつの間にか俺は露天風呂の風景を視界にとらえてしまった。

「…………あー」

 ちらっとキアラを見ると、彼女は楽しそうに鼻歌なんか歌いながらお酒を飲んでいる。俺の方なんて気にせず、酒が恋人ですとでも言わんばかりだ。

(…………やれるものならやってみろ、か)

 何となくさっきのキアラの言葉を思い出す。そう、俺だって男なのだ。理性が飛んで何をするか分からない。
 理性が飛んで――

「しかしあれだな、美沙の胸は相変わらず重たいな……」

「肩こりが凄いんだよー。正直、一番ちょうどいいサイズってピアちゃんだよね」

「……なんというか、とってつけたようなガールズトークですね。まあいいですが、その理屈でいくなら『武器』に出来て、下品さも無いマリルがもっともちょうどいいでしょう」

「あれ? 今しれっと私のこと下品って言った?」

「言葉の綾ですよ」

「まぁまぁ、お二人ともー。スタイルで喧嘩すると、トーコちゃんが怒りますよ」

「マリルは私を何だと思ってるんだ! ……ふん、別に女の価値は胸じゃない」「尻」「だ……って美沙! 台詞にかぶせるな!」

「ヨホホ……あの、お外ですからもう少し声を押さえないデスか……?」

「それもそうか」

 冬子の背中は綺麗だ。特にうなじ、そして腰からお尻、足にかけてのライン。別に触ったことは無いけど、すべすべしていそう。普段はポニーテールにしている髪を下ろしているせいで、令嬢のような気品も感じる。侍ガールなのに。

「女将さんの話では、この温泉に入るとお肌の艶が良くなるようですよ」

 綺麗と言えば、リャンも。思わず見とれてしまうほどしなやかな筋肉。細いのに、艶っぽい指先。ジッと見てるだけで、無限に時間が潰れそう。

「ヨホホ……それはいいデスね。なんか最近ちょっと乾燥するんデスよ」

 シュリーって、よく見るとお尻の形が綺麗なんだな……。っていうか、お尻って光の帯の対象じゃないんだ。

「温かいのになんででしょうねー。もしかすると、家の換気が良すぎるんですかねー」

 マリルはもう、なんか色っぽいっていうかエロい。彼女が背中を洗ったりするときにちらっと見える腋に視線を吸い寄せられる。

「加湿器みたいな魔道具って無いの? 私もちょっと乾燥してる気がするんだよねー」

 美沙は……後ろからでも、おっぱいが見える……凄い、大きいんだな……。服の上からでも分かる巨乳は伊達じゃない……。

「……ダメダメ。我慢しないと」

「いや、混浴しておいて『視るな』とは言わんぢゃろう」

 思わず彼女らに見惚れていたことに気づき、慌てて視線を逸らすと……その視線の先にはキアラが。彼女は俺の顎を掴むと、くらくらと揺らす。

「お主、まさかまだ――『男として意識されていないから、彼女らは混浴するんだ』なんて思っておらんぢゃろうな」

「…………いくらなんでも、そこまで俺もアホじゃない」

 うん、それは分かってる。だからってガン見していいってことにはならないだけで。
 俺はキアラからお酒を貰い……また、つい皆を見てしまう。

(綺麗……っていうか、可愛い……違う)

 ぎゅむっ。
 心臓が握りつぶされた音がした。ジョエルと対峙した時だって、こんな変な感覚を覚えたためしはない。
 脳が、次の言葉を拒んでいるようで――

「あー、さっぱりした!」

「思ったよりも汗をかいてましたね」

「でも露天風呂っていいですねー。うちにも欲しいですねー」

「ヨホホ……キョースケさんなら一瞬で作れちゃいそうデスね。あう、やっぱり恥ずかしいデス……」

「さっさと湯の中に入ってしまおう。そうすれば……恥ずかしくない……」

 さっと空を見上げる。こっちの世界にも星座とかあるのかな。

「ねぇ京助君!」

 ざばっ! と俺の目の前に巨大な二つのスイカが表れる。ぶるん! と暴力的な肉塊が、俺の頬をひっ叩いた。

「あうっ」

「あ、ごめん当たった」

 ざぶんと温泉に倒れこむ。柔らかくても、質量の高い物質が当たると人は吹っ飛ばされるんだね。

「………………俺はどうすればいいんだ」

「え? お話しよ」

 にぱっ、と朗らかな笑みを浮かべる美沙。俺はドキッと跳ねる心臓を無理やり押さえつけ、彼女から若干距離をとってゆっくりとお酒を飲む。

「ぷはっ。……お話?」

「いやそこに疑問符はいらないでしょう、マスター」

「……えっと、本日はお日柄もよく」

「駄目ですねー、これ。キョウ君たぶんバグってますー」

「おーい、京助。戻ってこーい」

 ゆさゆさと冬子に揺すられ、俺は視線を前に戻す。そこにいるのは……冬子と、リャンと、シュリーと、マリルと美沙。
 全員、肩から上しか見えていないが……ぐっと、どことは言わないが抑え込んで俺は座り方を変える。

「露天風呂って久しぶりだなぁ」

「日本にいた頃って、あんまり温泉とかいかなかったもんねぇ」

「私は年に二度、家族旅行で温泉に行っていたな」

「いいね、家族旅行。私、行ったこと無いんだー」

 そう言った美沙は、俺のほっぺたをつまんで引っ張る。

「……どうしたの?」

「京助君って、綺麗だよね、目……っていうか、瞳? カラコン入れてるみたいに、茶色」

 ああ、そういえば俺って目茶色かったっけ。自分ではいつも見てるからあんまり気にしたこと無かったけど。

「そういえばそうだったな。夜だとわかりづらいが――日の光の下だと、凄い綺麗なんだ。な、京助」

 そう言って冬子が俺と目を合わす。その吸い込まれるような眼を見て、俺は、俺は、俺は……俺、は……

「きょ、京助?」

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