333 / 352
第十二章 混迷なう
291話 混浴なう
しおりを挟む
胸が張り裂けそうだ。たぶん、扉のところにいる皆にまで聞こえてるんじゃなかろうか。
夜、異様なまでに静かな露天風呂に俺の心音が響き渡る。
死んでいた脳が再覚醒し、そして混乱によりショートする。
「あ、い、あ」
喉から声のような何かが出る。六人の、一糸まとわぬ美女たち。これを見せられて、まともでいられる男なんているんだろうか。
俺はとっさにお湯の中に入り、視界を切る。
(な―――――――――――なん、なんで、なんでなんでなんでなんでなんで!?)
今までも、お風呂に乱入しようとしてきたことはあった。でも、その度に邪魔が入って有耶無耶になっていたんだ。
なのに、なのに。
「ぷはっ」
いくら俺でも、無限に息は続かない。……いや、肺の中で風魔術を使えば呼吸しなくてもどうにかなるのでは。
そんなくだらないことを考えつつ、お湯から飛び出たところで――ばちっ、と冬子と目があってしまう。
「あっ……あ、あんまり、ジロジロ見るな、京助」
「えうっ、い、いああ、ごめ、ごめん!」
もう一回、お湯の中へダイブ。一瞬しか見えなかったが――冬子の体、綺麗だった。白磁のような肌。戦士として鍛え上げられた肉体が、健康的なエロスを醸し出している。
何より、綺麗な脚。脚線美とはこのことで――
「ほれ」
――ざぶぅ! と無理やりお湯の中から吊り上げられる。慌てて目をつぶり、前を隠す。
「キアラ、何するのさ!」
「何をする、ではない。よく見んか」
「見れるか! お、俺はもう上がる!」
肉体に風を纏い、そのまま姿を消す。しかしその魔術を解除され、お湯の中へ再ダイブすることになってしまった。
「ぷいはっ!」
「魔術の作りが甘い。動揺しすぎぢゃ」
鼻と目に水が入った。ごしごしと手で拭い、目を開けると――そこには、やっぱりすっぽんぽんの皆が。しかし、俺の想像していた光景とは違う。
「……あ、あれ?」
「どうぢゃ、妾の新魔法――局部隠しライト!」
バーン! と背後に書き文字が出そうなほどどや顔になるキアラ。改めて彼女らの姿を見ると、なんと……体の一部が、その、光ってる。いや体の一部がというか……謎の光がどこからともなく下りてきて、肉体をピンポイントに隠しているというべきか。
「……………………え?」
「京助君、パンツじゃないから恥ずかしくないもん、だよ!」
「いや全裸である事実は間違いないよねぇ!」
耳まで真っ赤にした美沙が、堂々と腰に手を当てて胸を張る。彼女のスイカよりも大きい胸がぶるんと揺れるが、決して大事なところが見えることなく絶妙な位置で光っている。
「………………えっと」
「まぁ待て、この格好には深い理由があるんだ」
俺が全力で混乱していると――冬子が恥ずかしそうに、しかし胸の前で腕を組んで説明を開始してくれる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
――話は京助が部屋に戻ってくる前に遡る。
「というわけでお主ら、正念場ぢゃぞ!」
冬子たちがのんびりと団欒していると、シュパン! とキアラさんがいきなり転移してやってきた。
……全裸で。
何故か乳首と股間を光らせて!
「いや服を着てください!?」
「なんぢゃ、妾の玉体を見るチャンスぢゃぞ」
何を言っているんだこの神様。
冬子は頭痛が痛くなるような感覚に襲われつつ、キアラさんの方を見る。乳首を光らせ、どや顔をしているキアラさんの。
「……あの、キアラさん。何か悪い物でも食べられましたか? マスターも心配すると思うので、とりあえず服を着てください」
「ヨホホ……えっと、どうぞデス」
リューがキアラさんに服を着せようとするが、キアラさんはやれやれと首を振る。
「全く。お主らに大チャンスを持ってきてやったというのに。妾の身体を見て何か気づかぬのか?」
「春が来たなぁって思いますよ」
美沙がのんびりとそんなことを言う。何故一番入って日の浅い美沙が、このアホみたいな光景に慣れ切っているのだろうか。
冬子はそんなことを思いつつ、首をかしげる。
「それで、チャンスとは?」
「あ、トーコちゃん。もう進めるんですねー」
「キアラさんに何を言ったって無駄だ」
であれば、話をさっさと進めるに限る。
キアラさんは指をパチンと鳴らすと、今度はどこからか現れた謎の光がキアラさんの身体を上手い具合に隠した。
彼女の美しい肉体――の肝心な部分だけ見えなくなる。まるで深夜アニメの、地上波版のような光景だ。
「いや冬子ちゃん、その例えで分かるの私と京助君だけだよ」
「その二人が分かれば十分だ。……で、これがどうかしたんですかキアラさん」
「ふっふっふ……お主ら、せっかくのお風呂。水着無しで入りたいとは思わぬか?」
ニヤッと悪い笑みを浮かべるキアラさん。そりゃ、入れるなら入りたいが――
「っていうか、ここの温泉って普通に水着無しでは?」
「そうぢゃな。しかし同時に、大浴場は男女別れておる。しかし、ここには家族風呂もあったぢゃろう? 妾たち貸し切りの」
当然の配慮だと思う。
そこまで聞いて、美沙がピンと来たのかガバッとキアラさんの方に身を乗り出した。
「つ、つまりそれがあれば!」
「そう! キョースケとも混浴し放題!」
「しかも京助君の光の帯だけ消せば!」
「見放題触り放題ぢゃ!」
どどーん! と背後に爆発音が聞こえそうなほどテンションをぶち上げるキアラさんと美沙。もう既についていけない。
冬子はテンションマックスになっている美沙の腕を掴む。
「美沙。冷静になれ、全裸になるんだぞ?」
「最近、だいぶ鍛えてるからね。見られて恥ずかしい体はしてないよ! きゅっきゅっボンな冬子ちゃんと違って――あるていしあっ!」
美沙を一本背負いし、ピア、リュー、マリルを見る。
「……私は反対だぞ」
「ではトーコだけ、部屋で待っていてください」
「凄いですねー。こんなに綺麗に見えなくなるなんて。これ、水着と露出度変わらない気がしますよー」
「ヨホホ……いや、恥ずかしいデス。恥ずかしいデスけど……でも、ちょっとドキドキするデス」
なんかリューが危ない方向に目覚めているような……。
「まぁまぁ、トーコちゃん。恥ずかしがるのも無理はないですけど……流石にキョウ君も、私たち全員が全裸で迫ってくれば、少しは自分が好かれてるって気づくかもしれないじゃないですかー」
「マスターには普通のアピールでは足りませんからね」
それは確かにピアの言う通り。だからと言って、全裸で混浴はステップを飛ばし過ぎているとしか思えないが……
(……いや)
自分以外乗り気なのを見て、冬子は考えを改める。皆で家族になると誓ったのだ、そのためには京助を自分たちに振り向かせる必要がある。
そのために出来ることは、やるべき……かも、しれない。
(……恥ずかしい、恥ずかしいが……見せる相手は京助だ)
最愛の人だ。彼の前で服を脱ぐことなど、これから先の人生で何度だってある。
「でもキョースケさん、ワタシたちのことを痴女って思ったりしないデスかね……」
「うーん……京助君が突飛な方に思考を飛ばしたらそうなっちゃうかもだけど……」
「そのためにほれ」
ドン! とキアラさんが出してきたのは、お酒。それも――所謂日本酒っぽい瓶だ。
「さっき女将から聞いたんぢゃがの、温泉に浸かりながら酒を飲むというのが、粋なんぢゃと」
「ああ……」
露天風呂といえば、お盆に乗せた日本酒。そんなイメージは、お酒をあまり飲まない冬子でも持っている。
キアラさんはどこからともなくお盆を取り出し、ニコニコ笑いながらくるくる回す。
「ちょっと理性が緩むくらい飲ませれば十分ぢゃろう。そのうちお主らのことを視姦しだす――そこがねらい目ぢゃぞ」
視姦て。
「………………よし」
たっぷり一分ほど思考し――冬子は頷き、キアラさんからお酒を貰うことにした。
「私も、理性を軽く飛ばす。……そもそも、今回の温泉旅行はチームの慰労だ。だったら、だったら……ご褒美! 京助の裸が見たい!」
「冬子ちゃんの理性が先に飛んだ!?」
「あ、ちょこっとだけでお願いしますキアラさん」
「お猪口だけに? あうっ」
余計なことを言った美沙の鼻にデコピンをかまし、お猪口をくいっと呷る。これで冬子の心の準備は出来た。
「でも京助が混浴を是とするだろうか」
「そこは……まぁ、強引にいけばいいでしょう」
「キョースケさんはあんまり押しに強くないデスからね」
「そうと決まれば善は急げ!」
美沙もついでとばかりにお酒を飲み、それを合図にしたか皆もお猪口を呷る。
(よし――進むぞ、私は!)
他の皆と一緒にゴールするために。冬子が後れを取るわけにはいかない。
覚悟を決めて――京助を待つのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「とまぁ、そういうわけだ」
どや顔で説明終了する冬子。いや、キアラが裸で乱入してきた結果、混浴しようと勝手に決めたってことしか分からなかったんだけど。
脳内にハテナマークを大量に浮かべながら、俺はとりあえず顔の水を魔術で飛ばす。
「つまり、どういうことだってばよ」
「え? 一緒にお風呂入ろうってことだよー。まさか水着はアリで、謎の光は無しってことも無いでしょ?」
美沙はそう言うけど、水着と謎の光はだいぶ違いがあると思う。
ジロジロ見るわけにもいかないので、チラチラ見ると……とりあえず、前面からは見えないみたいだ。
……いや、うん。
(思ったよりも刺激が強い……)
俺の二本目の槍が戦闘態勢に入っても困るので(?)、俺はくるっと振り返ってから、浴槽の端っこへ。
「……これ、俺出られない感じかな」
「そうぢゃな。というか、寒いから浸かるぞ妾は」
「どーぞ……」
もうキアラが暴れるターンなんだな、と諦める。こうなった彼女を力ずくで排除するには、とりあえず神器は使わないと無理。
こんなところで怪獣大決戦をやるつもりは無い。
「私たちは体を洗いましょうかー」
「「「「はーい」」」」
浴槽の端っこで、肘をついて空を眺める。アイテムボックスから活力煙を取り出し、火をつけた。
「ふぅ~……」
じんわりと煙が肺から全身へめぐる。体は暖かく、脳には冷気。これが露天風呂の醍醐味だけど、今はもう少し冷たい風が欲しい。
冷静に考えれば、何も見なければいい話。目の前に風の結界でも張って、声だけ聞こえるようにしていれば大丈夫だろう。
(いや、でも)
軽く考えるなら、せっかくだし皆で入ろう! ってノリなのかもしれない。でもそれなら、最初から水着でいいじゃないか。用意してるんだし。
だから、うん。そうしなかったってことは。
水着じゃ、ダメだったんだろう。
「………………………………俺も、男なんだよ………………?」
こんな美人に囲まれて、しかも皆裸で。
俺が、本当に我慢できるって皆思ってるんだろうか。
「理性が飛んでも、知らないからね……」
「やれるものならやってみぬか」
「うわっ、キアラ」
お盆と徳利、そしてお猪口を持ったキアラがすいーっと泳いできた。温泉で泳ぐんじゃない。
「いいのぅ、温いお湯に、燗をつけた酒。こんなに楽しめるのであれば、もっと早く知りたかったのぅ」
「ああ……キアラは確かに好きそうだね」
熱燗かぁ、俺も飲みたい。
俺はお盆の上から徳利をとり、アイテムボックスからコップを取り出す。
「キョースケよ、そんな無粋な飲み方するでない。ほれ、お主らの分もちゃんと貰ってきておる」
そう言ってキアラがお猪口を渡してくれる。女将さんあたりが用意してくれたんだろうか。
「って、あれ?」
俺が温泉に目を落とすと、いつの間にか乳白色の液体になっていた。すくってみると、普通に透明。
「……これもキアラの魔法?」
「そうぢゃ。これならお主も恥ずかしくないぢゃろう」
確かに、これなら肩から上しか見えない。俺も胡坐になって座り直し、彼女から受け取ったお猪口にお酒を注ぐ。
「……あー、美味しい」
「五臓六腑に染みわたるのぅ。……で、理性が飛んであ奴らを犯すんぢゃったな。最初はピアかマリルにリードしてもらえ。あの二人は絶対に誘いMぢゃ」
「いや知らんけど……あと、犯したりなんかしない」
もう飲んで脳内を溶かしてしまおう。そして何も考えないんだ。
俺はキアラのお猪口に徳利から注ぎ、自分の分にも入れる。
「ぷはぁ。……さて、そろそろあがるか」
「なんであがれると思ったんぢゃ。ほれ、妾の谷間でも見て落ち着かんか」
ぐいっとキアラに肩をつかまれた。なんでこんな美女と一緒にお風呂に入ってるのに、俺の心はこんなにフラットなんだろうね。
ちなみにキアラの谷間は、なんかフニフニしてそうだった。
(温泉かぁ)
ボーっと脳を溶かす。酒と湯気が、良い具合にふわふわとした気分にさせてくれる。
のんびりと夜空を眺めていると……キラッ、と一筋の流れ星が。ついついそれを目で追うと……視線が下がり、いつの間にか俺は露天風呂の風景を視界にとらえてしまった。
「…………あー」
ちらっとキアラを見ると、彼女は楽しそうに鼻歌なんか歌いながらお酒を飲んでいる。俺の方なんて気にせず、酒が恋人ですとでも言わんばかりだ。
(…………やれるものならやってみろ、か)
何となくさっきのキアラの言葉を思い出す。そう、俺だって男なのだ。理性が飛んで何をするか分からない。
理性が飛んで――
「しかしあれだな、美沙の胸は相変わらず重たいな……」
「肩こりが凄いんだよー。正直、一番ちょうどいいサイズってピアちゃんだよね」
「……なんというか、とってつけたようなガールズトークですね。まあいいですが、その理屈でいくなら『武器』に出来て、下品さも無いマリルがもっともちょうどいいでしょう」
「あれ? 今しれっと私のこと下品って言った?」
「言葉の綾ですよ」
「まぁまぁ、お二人ともー。スタイルで喧嘩すると、トーコちゃんが怒りますよ」
「マリルは私を何だと思ってるんだ! ……ふん、別に女の価値は胸じゃない」「尻」「だ……って美沙! 台詞にかぶせるな!」
「ヨホホ……あの、お外ですからもう少し声を押さえないデスか……?」
「それもそうか」
冬子の背中は綺麗だ。特にうなじ、そして腰からお尻、足にかけてのライン。別に触ったことは無いけど、すべすべしていそう。普段はポニーテールにしている髪を下ろしているせいで、令嬢のような気品も感じる。侍ガールなのに。
「女将さんの話では、この温泉に入るとお肌の艶が良くなるようですよ」
綺麗と言えば、リャンも。思わず見とれてしまうほどしなやかな筋肉。細いのに、艶っぽい指先。ジッと見てるだけで、無限に時間が潰れそう。
「ヨホホ……それはいいデスね。なんか最近ちょっと乾燥するんデスよ」
シュリーって、よく見るとお尻の形が綺麗なんだな……。っていうか、お尻って光の帯の対象じゃないんだ。
「温かいのになんででしょうねー。もしかすると、家の換気が良すぎるんですかねー」
マリルはもう、なんか色っぽいっていうかエロい。彼女が背中を洗ったりするときにちらっと見える腋に視線を吸い寄せられる。
「加湿器みたいな魔道具って無いの? 私もちょっと乾燥してる気がするんだよねー」
美沙は……後ろからでも、おっぱいが見える……凄い、大きいんだな……。服の上からでも分かる巨乳は伊達じゃない……。
「……ダメダメ。我慢しないと」
「いや、混浴しておいて『視るな』とは言わんぢゃろう」
思わず彼女らに見惚れていたことに気づき、慌てて視線を逸らすと……その視線の先にはキアラが。彼女は俺の顎を掴むと、くらくらと揺らす。
「お主、まさかまだ――『男として意識されていないから、彼女らは混浴するんだ』なんて思っておらんぢゃろうな」
「…………いくらなんでも、そこまで俺もアホじゃない」
うん、それは分かってる。だからってガン見していいってことにはならないだけで。
俺はキアラからお酒を貰い……また、つい皆を見てしまう。
(綺麗……っていうか、可愛い……違う)
ぎゅむっ。
心臓が握りつぶされた音がした。ジョエルと対峙した時だって、こんな変な感覚を覚えたためしはない。
脳が、次の言葉を拒んでいるようで――
「あー、さっぱりした!」
「思ったよりも汗をかいてましたね」
「でも露天風呂っていいですねー。うちにも欲しいですねー」
「ヨホホ……キョースケさんなら一瞬で作れちゃいそうデスね。あう、やっぱり恥ずかしいデス……」
「さっさと湯の中に入ってしまおう。そうすれば……恥ずかしくない……」
さっと空を見上げる。こっちの世界にも星座とかあるのかな。
「ねぇ京助君!」
ざばっ! と俺の目の前に巨大な二つのスイカが表れる。ぶるん! と暴力的な肉塊が、俺の頬をひっ叩いた。
「あうっ」
「あ、ごめん当たった」
ざぶんと温泉に倒れこむ。柔らかくても、質量の高い物質が当たると人は吹っ飛ばされるんだね。
「………………俺はどうすればいいんだ」
「え? お話しよ」
にぱっ、と朗らかな笑みを浮かべる美沙。俺はドキッと跳ねる心臓を無理やり押さえつけ、彼女から若干距離をとってゆっくりとお酒を飲む。
「ぷはっ。……お話?」
「いやそこに疑問符はいらないでしょう、マスター」
「……えっと、本日はお日柄もよく」
「駄目ですねー、これ。キョウ君たぶんバグってますー」
「おーい、京助。戻ってこーい」
ゆさゆさと冬子に揺すられ、俺は視線を前に戻す。そこにいるのは……冬子と、リャンと、シュリーと、マリルと美沙。
全員、肩から上しか見えていないが……ぐっと、どことは言わないが抑え込んで俺は座り方を変える。
「露天風呂って久しぶりだなぁ」
「日本にいた頃って、あんまり温泉とかいかなかったもんねぇ」
「私は年に二度、家族旅行で温泉に行っていたな」
「いいね、家族旅行。私、行ったこと無いんだー」
そう言った美沙は、俺のほっぺたをつまんで引っ張る。
「……どうしたの?」
「京助君って、綺麗だよね、目……っていうか、瞳? カラコン入れてるみたいに、茶色」
ああ、そういえば俺って目茶色かったっけ。自分ではいつも見てるからあんまり気にしたこと無かったけど。
「そういえばそうだったな。夜だとわかりづらいが――日の光の下だと、凄い綺麗なんだ。な、京助」
そう言って冬子が俺と目を合わす。その吸い込まれるような眼を見て、俺は、俺は、俺は……俺、は……
「きょ、京助?」
夜、異様なまでに静かな露天風呂に俺の心音が響き渡る。
死んでいた脳が再覚醒し、そして混乱によりショートする。
「あ、い、あ」
喉から声のような何かが出る。六人の、一糸まとわぬ美女たち。これを見せられて、まともでいられる男なんているんだろうか。
俺はとっさにお湯の中に入り、視界を切る。
(な―――――――――――なん、なんで、なんでなんでなんでなんでなんで!?)
今までも、お風呂に乱入しようとしてきたことはあった。でも、その度に邪魔が入って有耶無耶になっていたんだ。
なのに、なのに。
「ぷはっ」
いくら俺でも、無限に息は続かない。……いや、肺の中で風魔術を使えば呼吸しなくてもどうにかなるのでは。
そんなくだらないことを考えつつ、お湯から飛び出たところで――ばちっ、と冬子と目があってしまう。
「あっ……あ、あんまり、ジロジロ見るな、京助」
「えうっ、い、いああ、ごめ、ごめん!」
もう一回、お湯の中へダイブ。一瞬しか見えなかったが――冬子の体、綺麗だった。白磁のような肌。戦士として鍛え上げられた肉体が、健康的なエロスを醸し出している。
何より、綺麗な脚。脚線美とはこのことで――
「ほれ」
――ざぶぅ! と無理やりお湯の中から吊り上げられる。慌てて目をつぶり、前を隠す。
「キアラ、何するのさ!」
「何をする、ではない。よく見んか」
「見れるか! お、俺はもう上がる!」
肉体に風を纏い、そのまま姿を消す。しかしその魔術を解除され、お湯の中へ再ダイブすることになってしまった。
「ぷいはっ!」
「魔術の作りが甘い。動揺しすぎぢゃ」
鼻と目に水が入った。ごしごしと手で拭い、目を開けると――そこには、やっぱりすっぽんぽんの皆が。しかし、俺の想像していた光景とは違う。
「……あ、あれ?」
「どうぢゃ、妾の新魔法――局部隠しライト!」
バーン! と背後に書き文字が出そうなほどどや顔になるキアラ。改めて彼女らの姿を見ると、なんと……体の一部が、その、光ってる。いや体の一部がというか……謎の光がどこからともなく下りてきて、肉体をピンポイントに隠しているというべきか。
「……………………え?」
「京助君、パンツじゃないから恥ずかしくないもん、だよ!」
「いや全裸である事実は間違いないよねぇ!」
耳まで真っ赤にした美沙が、堂々と腰に手を当てて胸を張る。彼女のスイカよりも大きい胸がぶるんと揺れるが、決して大事なところが見えることなく絶妙な位置で光っている。
「………………えっと」
「まぁ待て、この格好には深い理由があるんだ」
俺が全力で混乱していると――冬子が恥ずかしそうに、しかし胸の前で腕を組んで説明を開始してくれる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
――話は京助が部屋に戻ってくる前に遡る。
「というわけでお主ら、正念場ぢゃぞ!」
冬子たちがのんびりと団欒していると、シュパン! とキアラさんがいきなり転移してやってきた。
……全裸で。
何故か乳首と股間を光らせて!
「いや服を着てください!?」
「なんぢゃ、妾の玉体を見るチャンスぢゃぞ」
何を言っているんだこの神様。
冬子は頭痛が痛くなるような感覚に襲われつつ、キアラさんの方を見る。乳首を光らせ、どや顔をしているキアラさんの。
「……あの、キアラさん。何か悪い物でも食べられましたか? マスターも心配すると思うので、とりあえず服を着てください」
「ヨホホ……えっと、どうぞデス」
リューがキアラさんに服を着せようとするが、キアラさんはやれやれと首を振る。
「全く。お主らに大チャンスを持ってきてやったというのに。妾の身体を見て何か気づかぬのか?」
「春が来たなぁって思いますよ」
美沙がのんびりとそんなことを言う。何故一番入って日の浅い美沙が、このアホみたいな光景に慣れ切っているのだろうか。
冬子はそんなことを思いつつ、首をかしげる。
「それで、チャンスとは?」
「あ、トーコちゃん。もう進めるんですねー」
「キアラさんに何を言ったって無駄だ」
であれば、話をさっさと進めるに限る。
キアラさんは指をパチンと鳴らすと、今度はどこからか現れた謎の光がキアラさんの身体を上手い具合に隠した。
彼女の美しい肉体――の肝心な部分だけ見えなくなる。まるで深夜アニメの、地上波版のような光景だ。
「いや冬子ちゃん、その例えで分かるの私と京助君だけだよ」
「その二人が分かれば十分だ。……で、これがどうかしたんですかキアラさん」
「ふっふっふ……お主ら、せっかくのお風呂。水着無しで入りたいとは思わぬか?」
ニヤッと悪い笑みを浮かべるキアラさん。そりゃ、入れるなら入りたいが――
「っていうか、ここの温泉って普通に水着無しでは?」
「そうぢゃな。しかし同時に、大浴場は男女別れておる。しかし、ここには家族風呂もあったぢゃろう? 妾たち貸し切りの」
当然の配慮だと思う。
そこまで聞いて、美沙がピンと来たのかガバッとキアラさんの方に身を乗り出した。
「つ、つまりそれがあれば!」
「そう! キョースケとも混浴し放題!」
「しかも京助君の光の帯だけ消せば!」
「見放題触り放題ぢゃ!」
どどーん! と背後に爆発音が聞こえそうなほどテンションをぶち上げるキアラさんと美沙。もう既についていけない。
冬子はテンションマックスになっている美沙の腕を掴む。
「美沙。冷静になれ、全裸になるんだぞ?」
「最近、だいぶ鍛えてるからね。見られて恥ずかしい体はしてないよ! きゅっきゅっボンな冬子ちゃんと違って――あるていしあっ!」
美沙を一本背負いし、ピア、リュー、マリルを見る。
「……私は反対だぞ」
「ではトーコだけ、部屋で待っていてください」
「凄いですねー。こんなに綺麗に見えなくなるなんて。これ、水着と露出度変わらない気がしますよー」
「ヨホホ……いや、恥ずかしいデス。恥ずかしいデスけど……でも、ちょっとドキドキするデス」
なんかリューが危ない方向に目覚めているような……。
「まぁまぁ、トーコちゃん。恥ずかしがるのも無理はないですけど……流石にキョウ君も、私たち全員が全裸で迫ってくれば、少しは自分が好かれてるって気づくかもしれないじゃないですかー」
「マスターには普通のアピールでは足りませんからね」
それは確かにピアの言う通り。だからと言って、全裸で混浴はステップを飛ばし過ぎているとしか思えないが……
(……いや)
自分以外乗り気なのを見て、冬子は考えを改める。皆で家族になると誓ったのだ、そのためには京助を自分たちに振り向かせる必要がある。
そのために出来ることは、やるべき……かも、しれない。
(……恥ずかしい、恥ずかしいが……見せる相手は京助だ)
最愛の人だ。彼の前で服を脱ぐことなど、これから先の人生で何度だってある。
「でもキョースケさん、ワタシたちのことを痴女って思ったりしないデスかね……」
「うーん……京助君が突飛な方に思考を飛ばしたらそうなっちゃうかもだけど……」
「そのためにほれ」
ドン! とキアラさんが出してきたのは、お酒。それも――所謂日本酒っぽい瓶だ。
「さっき女将から聞いたんぢゃがの、温泉に浸かりながら酒を飲むというのが、粋なんぢゃと」
「ああ……」
露天風呂といえば、お盆に乗せた日本酒。そんなイメージは、お酒をあまり飲まない冬子でも持っている。
キアラさんはどこからともなくお盆を取り出し、ニコニコ笑いながらくるくる回す。
「ちょっと理性が緩むくらい飲ませれば十分ぢゃろう。そのうちお主らのことを視姦しだす――そこがねらい目ぢゃぞ」
視姦て。
「………………よし」
たっぷり一分ほど思考し――冬子は頷き、キアラさんからお酒を貰うことにした。
「私も、理性を軽く飛ばす。……そもそも、今回の温泉旅行はチームの慰労だ。だったら、だったら……ご褒美! 京助の裸が見たい!」
「冬子ちゃんの理性が先に飛んだ!?」
「あ、ちょこっとだけでお願いしますキアラさん」
「お猪口だけに? あうっ」
余計なことを言った美沙の鼻にデコピンをかまし、お猪口をくいっと呷る。これで冬子の心の準備は出来た。
「でも京助が混浴を是とするだろうか」
「そこは……まぁ、強引にいけばいいでしょう」
「キョースケさんはあんまり押しに強くないデスからね」
「そうと決まれば善は急げ!」
美沙もついでとばかりにお酒を飲み、それを合図にしたか皆もお猪口を呷る。
(よし――進むぞ、私は!)
他の皆と一緒にゴールするために。冬子が後れを取るわけにはいかない。
覚悟を決めて――京助を待つのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「とまぁ、そういうわけだ」
どや顔で説明終了する冬子。いや、キアラが裸で乱入してきた結果、混浴しようと勝手に決めたってことしか分からなかったんだけど。
脳内にハテナマークを大量に浮かべながら、俺はとりあえず顔の水を魔術で飛ばす。
「つまり、どういうことだってばよ」
「え? 一緒にお風呂入ろうってことだよー。まさか水着はアリで、謎の光は無しってことも無いでしょ?」
美沙はそう言うけど、水着と謎の光はだいぶ違いがあると思う。
ジロジロ見るわけにもいかないので、チラチラ見ると……とりあえず、前面からは見えないみたいだ。
……いや、うん。
(思ったよりも刺激が強い……)
俺の二本目の槍が戦闘態勢に入っても困るので(?)、俺はくるっと振り返ってから、浴槽の端っこへ。
「……これ、俺出られない感じかな」
「そうぢゃな。というか、寒いから浸かるぞ妾は」
「どーぞ……」
もうキアラが暴れるターンなんだな、と諦める。こうなった彼女を力ずくで排除するには、とりあえず神器は使わないと無理。
こんなところで怪獣大決戦をやるつもりは無い。
「私たちは体を洗いましょうかー」
「「「「はーい」」」」
浴槽の端っこで、肘をついて空を眺める。アイテムボックスから活力煙を取り出し、火をつけた。
「ふぅ~……」
じんわりと煙が肺から全身へめぐる。体は暖かく、脳には冷気。これが露天風呂の醍醐味だけど、今はもう少し冷たい風が欲しい。
冷静に考えれば、何も見なければいい話。目の前に風の結界でも張って、声だけ聞こえるようにしていれば大丈夫だろう。
(いや、でも)
軽く考えるなら、せっかくだし皆で入ろう! ってノリなのかもしれない。でもそれなら、最初から水着でいいじゃないか。用意してるんだし。
だから、うん。そうしなかったってことは。
水着じゃ、ダメだったんだろう。
「………………………………俺も、男なんだよ………………?」
こんな美人に囲まれて、しかも皆裸で。
俺が、本当に我慢できるって皆思ってるんだろうか。
「理性が飛んでも、知らないからね……」
「やれるものならやってみぬか」
「うわっ、キアラ」
お盆と徳利、そしてお猪口を持ったキアラがすいーっと泳いできた。温泉で泳ぐんじゃない。
「いいのぅ、温いお湯に、燗をつけた酒。こんなに楽しめるのであれば、もっと早く知りたかったのぅ」
「ああ……キアラは確かに好きそうだね」
熱燗かぁ、俺も飲みたい。
俺はお盆の上から徳利をとり、アイテムボックスからコップを取り出す。
「キョースケよ、そんな無粋な飲み方するでない。ほれ、お主らの分もちゃんと貰ってきておる」
そう言ってキアラがお猪口を渡してくれる。女将さんあたりが用意してくれたんだろうか。
「って、あれ?」
俺が温泉に目を落とすと、いつの間にか乳白色の液体になっていた。すくってみると、普通に透明。
「……これもキアラの魔法?」
「そうぢゃ。これならお主も恥ずかしくないぢゃろう」
確かに、これなら肩から上しか見えない。俺も胡坐になって座り直し、彼女から受け取ったお猪口にお酒を注ぐ。
「……あー、美味しい」
「五臓六腑に染みわたるのぅ。……で、理性が飛んであ奴らを犯すんぢゃったな。最初はピアかマリルにリードしてもらえ。あの二人は絶対に誘いMぢゃ」
「いや知らんけど……あと、犯したりなんかしない」
もう飲んで脳内を溶かしてしまおう。そして何も考えないんだ。
俺はキアラのお猪口に徳利から注ぎ、自分の分にも入れる。
「ぷはぁ。……さて、そろそろあがるか」
「なんであがれると思ったんぢゃ。ほれ、妾の谷間でも見て落ち着かんか」
ぐいっとキアラに肩をつかまれた。なんでこんな美女と一緒にお風呂に入ってるのに、俺の心はこんなにフラットなんだろうね。
ちなみにキアラの谷間は、なんかフニフニしてそうだった。
(温泉かぁ)
ボーっと脳を溶かす。酒と湯気が、良い具合にふわふわとした気分にさせてくれる。
のんびりと夜空を眺めていると……キラッ、と一筋の流れ星が。ついついそれを目で追うと……視線が下がり、いつの間にか俺は露天風呂の風景を視界にとらえてしまった。
「…………あー」
ちらっとキアラを見ると、彼女は楽しそうに鼻歌なんか歌いながらお酒を飲んでいる。俺の方なんて気にせず、酒が恋人ですとでも言わんばかりだ。
(…………やれるものならやってみろ、か)
何となくさっきのキアラの言葉を思い出す。そう、俺だって男なのだ。理性が飛んで何をするか分からない。
理性が飛んで――
「しかしあれだな、美沙の胸は相変わらず重たいな……」
「肩こりが凄いんだよー。正直、一番ちょうどいいサイズってピアちゃんだよね」
「……なんというか、とってつけたようなガールズトークですね。まあいいですが、その理屈でいくなら『武器』に出来て、下品さも無いマリルがもっともちょうどいいでしょう」
「あれ? 今しれっと私のこと下品って言った?」
「言葉の綾ですよ」
「まぁまぁ、お二人ともー。スタイルで喧嘩すると、トーコちゃんが怒りますよ」
「マリルは私を何だと思ってるんだ! ……ふん、別に女の価値は胸じゃない」「尻」「だ……って美沙! 台詞にかぶせるな!」
「ヨホホ……あの、お外ですからもう少し声を押さえないデスか……?」
「それもそうか」
冬子の背中は綺麗だ。特にうなじ、そして腰からお尻、足にかけてのライン。別に触ったことは無いけど、すべすべしていそう。普段はポニーテールにしている髪を下ろしているせいで、令嬢のような気品も感じる。侍ガールなのに。
「女将さんの話では、この温泉に入るとお肌の艶が良くなるようですよ」
綺麗と言えば、リャンも。思わず見とれてしまうほどしなやかな筋肉。細いのに、艶っぽい指先。ジッと見てるだけで、無限に時間が潰れそう。
「ヨホホ……それはいいデスね。なんか最近ちょっと乾燥するんデスよ」
シュリーって、よく見るとお尻の形が綺麗なんだな……。っていうか、お尻って光の帯の対象じゃないんだ。
「温かいのになんででしょうねー。もしかすると、家の換気が良すぎるんですかねー」
マリルはもう、なんか色っぽいっていうかエロい。彼女が背中を洗ったりするときにちらっと見える腋に視線を吸い寄せられる。
「加湿器みたいな魔道具って無いの? 私もちょっと乾燥してる気がするんだよねー」
美沙は……後ろからでも、おっぱいが見える……凄い、大きいんだな……。服の上からでも分かる巨乳は伊達じゃない……。
「……ダメダメ。我慢しないと」
「いや、混浴しておいて『視るな』とは言わんぢゃろう」
思わず彼女らに見惚れていたことに気づき、慌てて視線を逸らすと……その視線の先にはキアラが。彼女は俺の顎を掴むと、くらくらと揺らす。
「お主、まさかまだ――『男として意識されていないから、彼女らは混浴するんだ』なんて思っておらんぢゃろうな」
「…………いくらなんでも、そこまで俺もアホじゃない」
うん、それは分かってる。だからってガン見していいってことにはならないだけで。
俺はキアラからお酒を貰い……また、つい皆を見てしまう。
(綺麗……っていうか、可愛い……違う)
ぎゅむっ。
心臓が握りつぶされた音がした。ジョエルと対峙した時だって、こんな変な感覚を覚えたためしはない。
脳が、次の言葉を拒んでいるようで――
「あー、さっぱりした!」
「思ったよりも汗をかいてましたね」
「でも露天風呂っていいですねー。うちにも欲しいですねー」
「ヨホホ……キョースケさんなら一瞬で作れちゃいそうデスね。あう、やっぱり恥ずかしいデス……」
「さっさと湯の中に入ってしまおう。そうすれば……恥ずかしくない……」
さっと空を見上げる。こっちの世界にも星座とかあるのかな。
「ねぇ京助君!」
ざばっ! と俺の目の前に巨大な二つのスイカが表れる。ぶるん! と暴力的な肉塊が、俺の頬をひっ叩いた。
「あうっ」
「あ、ごめん当たった」
ざぶんと温泉に倒れこむ。柔らかくても、質量の高い物質が当たると人は吹っ飛ばされるんだね。
「………………俺はどうすればいいんだ」
「え? お話しよ」
にぱっ、と朗らかな笑みを浮かべる美沙。俺はドキッと跳ねる心臓を無理やり押さえつけ、彼女から若干距離をとってゆっくりとお酒を飲む。
「ぷはっ。……お話?」
「いやそこに疑問符はいらないでしょう、マスター」
「……えっと、本日はお日柄もよく」
「駄目ですねー、これ。キョウ君たぶんバグってますー」
「おーい、京助。戻ってこーい」
ゆさゆさと冬子に揺すられ、俺は視線を前に戻す。そこにいるのは……冬子と、リャンと、シュリーと、マリルと美沙。
全員、肩から上しか見えていないが……ぐっと、どことは言わないが抑え込んで俺は座り方を変える。
「露天風呂って久しぶりだなぁ」
「日本にいた頃って、あんまり温泉とかいかなかったもんねぇ」
「私は年に二度、家族旅行で温泉に行っていたな」
「いいね、家族旅行。私、行ったこと無いんだー」
そう言った美沙は、俺のほっぺたをつまんで引っ張る。
「……どうしたの?」
「京助君って、綺麗だよね、目……っていうか、瞳? カラコン入れてるみたいに、茶色」
ああ、そういえば俺って目茶色かったっけ。自分ではいつも見てるからあんまり気にしたこと無かったけど。
「そういえばそうだったな。夜だとわかりづらいが――日の光の下だと、凄い綺麗なんだ。な、京助」
そう言って冬子が俺と目を合わす。その吸い込まれるような眼を見て、俺は、俺は、俺は……俺、は……
「きょ、京助?」
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる