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第十章 それぞれの始まりなう

246話 ジェネリックのJなう

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「というか、それって魔族に操られていたからじゃないんですね」

「ヨホホ……たまにいますデスけどね。戦闘時にキャラが変わる方」

 美沙の方を見てそんなことを言う二人。
 何の話だろうか。

「私はいつも通りですよ? 戦う時はちょっとだけ頭がふわーっとなるだけで」

「ややサイコパスみを感じるな」

「冬子ちゃん酷い!」

 ぷんすかと冬子ちゃんのボディにアタックすると、彼女はひらりと躱して美沙の背後を取った。

「残像だ」

「実像でしたけどね」

「ヨホホ。拘束はしているデスが、念のため鎧なんかも剥ぎ取っておきますデスかね」

「――それもそうですね」

 リューさんとピアさんがせっせと鎧や武器をはぎ取っていく。モン〇ンみたいだ。

「結局、なんでミサさんとトーコさんが狙われたんですか?」

「何と言われてもな……私にはさっぱりだ」

 下着姿になってロープでぐるぐる巻きにされたツインテールが出来上がる。

「これ以上のボディチェックは人目につかないところでやるべきでしょうし、いったんマスターのところへ――」

「――お主ら、何をやっとるんぢゃ。……まさかキョースケを諦めて女に手を出したのかの? それにしてはちんちくりんぢゃが」

「わっ、び、ビックリした」

 ふっ、と空中に現れたキアラさん。唐突に出てきて美沙はビックリしたが、他の皆は慣れているのか特にリアクションは無い。

「そんなわけないでしょう。美沙が襲われたんですよ」

「なんか私を殺せばもっといい薬がもらえるとかどうとかで」

 かくかくしかじかとキアラさんに説明すると、彼女はふむと頷いてから倒れているパインの頭を踏みつけた。

「概ね分かった。それはそうと、お主ら怪我は無いかの? もしも怪我何てあったら妾がキョースケに怒られてしまう」

「……もしかして、今怪我したら京助君に心配してもらえる上にキアラさんもお説教されて一石二鳥……?」

「手間が増えるだけだから勘弁してくれ、美沙。……それはそうと、キアラさん。いきなり女性の頭を踏んづけるのはどうかと」

「妾は美人ぢゃからそういうプレイに見えるぢゃろ」

 見えるけどそういうことじゃない。

「ま、そうぢゃな。ここで心を読む必要もあるまい。戻るかの」

 どうも心を読むために踏んづけていたらしい。どういう原理なのだろうか。

「はぁ……何かもうぐっだぐだだが、取り敢えず戻るか」

 冬子ちゃんがかっくんと肩を落とし、キアラさんに踏んづけられているパインをお米様抱っこした。イケメンサムライガールがやると絵になる。

「京助もお主らに癒されるのを待っているぢゃろうしの。早く戻らんとキョースケをマリルに取られるぞ」

「それはマズい! 冬子ちゃん、速く帰るよ!」

「何でお前が一番元気なんだ……」

 げんなりとしている冬子ちゃんを連れて、美沙たちは京助のところへ戻った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「……お疲れ様。怪我は無くて何より」

 俺たちはホテルに戻り、シャワーなりなんなりを済ませたところで――取りあえず晩御飯に相成った。
 今回は買い出しも面倒ということでルームサービスだけど、やっぱ高級ホテルなだけあってそれなりの種類から選べた。俺はシチューにしたが、皆てんでバラバラ好みのものを頼んでいる。

「怪我どころか、苦戦するほどでも無かったぞ。パワーだけならAランククラスだが、技量が一切伴っていなかったからな」

「でもなんか不気味だったんですよね。こう、どんだけやっても倒れる気がしないというか。実際、私一回殺しましたし」

 そう言って首をひねる美沙。殺した、とは言うが――そんな外傷があったように見えなかった。再生でもしたのだろうか。

「ああ、凍らせたんだよー。血とか肉とか、全部。だから外傷無しだし、殺した後も鮮度はバッチリだよ!」

「殺した後の鮮度を気にするのは殺人鬼だけだと思うけど」

「ややサイコパスみを感じるな」

「だから感じないってば!」

 なかなか末恐ろしい魔法だ。それを俺に使われていたらと思うとゾッとする。

「というわけで本題ぢゃな」

 キアラがこと、と錠剤を一つテーブルの上に置く。

「あ奴が持っていた錠剤ぢゃ。そのAランククラスのパワーを得るために服用していたものぢゃな。端的に言おう、『魔王の血』ぢゃ」

「……やっぱりか。となると、『魔王の血・Ⅳバージョン・フォー』ってところなのかな?」

 俺が問うと、キアラは首を振った。

「否、発展版というよりは汎用版とでも言うべきぢゃろうな」

「汎用版……『魔王の血・Jバージョン・ジェネライズ』……かな」

 ジェネリック医薬品とはちょっと違う気がするから汎用版ジェネライズ。うん、我ながらいいネーミングじゃなかろうか。

「京助……ジェネリックは『G』だ……」

「……『魔王の血・G』だとグレードアップした感があるからJでいいの」

「ちょっと馬鹿な京助君……可愛い」

 待って可愛いとか言われるとガチで凹むんだけど……。

「何を言っておるのか知らんが、話を戻すぞ。通常の『魔王の血』は確かある程度以上の能力が無いと使えぬと言っておったんぢゃろう?」

 ヒルディがそんなこと言ってたっけな。身体能力が高く、魔力があり……そして適性のあるものに、ということだった。

「こちらは誰でも使える代わりに永続持続にならなかったというわけぢゃな。しかし、身体能力の上昇という意味に関してはかなりのものぢゃろうな」

 DランクAGがAランクAG並みのパワーになっていたんだ。上昇値としては十分だろう。

「これ以上、詳しい効能は妾ではどうにもならぬ。ヨハネスならば分かるぢゃろうが……それよりも専門の機関に渡した方が良いぢゃろうな」

 そう言ってキアラはギシッと背もたれに体重を預けると、大きく口を開けてステーキを頬張った。外だとこう見えて綺麗に食べるキアラなのだが、身内しかいないとあまりにもだらしない……って感じになる。
 ちなみに彼女の晩御飯はルームサービスで一番高かったメニュー、ステーキセットだ。

「今回の件、厄介なのは――恐らく、洗脳を使ったのは最初だけぢゃ。それも洗脳というよりも暗示に近いぢゃろうな。人族の技術でも出来る、ある種の催眠状態になるようなものと思えばいい」

「……洗脳じゃない? あれで、ですか?」

 冬子が驚いた顔になるが、コクリと頷くキアラ。

「うむ。実際のところは本人に聞くべきぢゃろうが、さっき妾が奴の頭を踏んだ時、そういう情報を読み取ることが出来た。あ奴は今、操られてはおらぬ。ただ薬にその身を支配されているのみぢゃ。分かりやすく言うなら、麻薬の虜、それのためならどんなことでもやる。そんな状態ぢゃな」

「……あぁ。そういう」

 バキッ、という音が俺の手から。見てみると、スプーンが真っ二つになっていた。

「洗脳魔法ってだけでも大概なのに――ハッ、次は薬漬けと来たか。ヤクザ顔負けだね」

「古来よりある手法ぢゃな。薬漬けで思考を奪い、一つの方向に誘導していくのは。今でも娼館などではよく行われて――これ以上具体例を出すのはやめておくかの。キョースケが突っ込む」

「俺を何だと思ってるんだ」

 やっぱり皆俺の扱いが雑な気がするんだけど。積極的に抗議していきたい。

「っていうか、鉄製のスプーンが何で真ん中から真っ二つになるんですかー?」

 マリルが苦笑いしながら新しいスプーンを渡してくれる。言われてみれば、何で曲がらず折れたんだろう。

「それだけ勢いがあったんぢゃろ。……そもそも、今回のこれを魔族製ぢゃと断言したのは――こやつがこれを喋る魔物に貰ったから、と記憶しておったからぢゃ」

 喋る魔物。

「……なるほど、そういう関係性か」

「妾とて感情などを読み取れるわけでは無いからの。詳細はパインを起こして直接聞かねばならぬぢゃろうが――喋る魔物、魔力を増大させる薬、そして狙ったのが異世界人であるミサとトーコ。ここまで揃ってまさか違うということもあるまい」

 そう言ってキアラはステーキの最後の一口を食べ終えた。俺もシチューを食べ終え、立ち上がる。

「じゃ、そろそろ起こそうか」

 最初はリャンがぶん殴って気絶させたようだけど、今はキアラの魔法で眠っている。任意のタイミングで起こすことが可能だ。
 冬子たちもご飯を食べ終えたので――さぁ、尋問開始だ。


~~~~~~~~~~~~~


 俺たちが借りた部屋は明日にはチェックアウトする。これだけいいホテルに泊まることは滅多に無いので、少しだけ名残惜しいかな。

「私はそろそろ我が家が恋しいぞ。本に囲まれて一日を過ごしたい」

「あ、分かる分かる。何も考えず本を読むだけで一日を終えたいよねー」

 読書好きガールズが意気投合している。でも気持ちは分かる。

「獣人族が泊まれるホテルも少ないですからね」

「そうだねー」

 しかしティアールには感謝しないといけない。こんないい部屋を借りてくれたのだから。なんせリビングと寝室の二部屋にシャワー付きのスイートルーム。そこをチェックアウトするまで好きなだけ、なんてね。

「……オルランドと関わった辺りから金銭感覚バグって来たけど、このホテルがその最たるものな気がする。たぶん日本だと何十万ってかかるよ」

「こっちだといくらなんだ」

 冬子からの追求をスルーし、俺は寝室の扉を開ける。大金貨百枚はギリギリいってないから大丈夫。これでもティアールのお友達料金なんだから恐れ入る。

「さて、と。キアラ、起こしてあげて」

「うむ」

 パインはベッドに大の字になって寝ている。これはリラックスして寝ているわけでは無く、キアラの魔法の鎖によってベッドに拘束されているからだ。
 キアラが眠りの魔法を解除すると、パインがゆっくりと目を覚ます。目が開ききると同時に起き上がろうとするが――首をピーンと伸ばしただけで終わる。

「こ、ここは……な、なんだこれは、動けない! 離せ、離せ! あたしを誰だと思ってる!」

 パインは叫ぶと、俺たちの方に顔を向ける。そしてリャンをその視界に捉え――

「亜人族……亜人族! 貴様、貴様! 亜人族が、汚らわしい亜人族が何故人族のホテルに泊まってる!」

 ――と、あまりにも戯けたことを叫び出した。
 仕方が無いので、俺は槍を取り出し――彼女の股の間に投げつけた。ガツン! とベッドを貫通して恐らく床に突き刺さる槍。ビイイイイン……と小刻みに震える槍を見て、パインがプルプルと震え出した。

「ひぃ……く、薬……あ、あれ?」

 口をパクパクさせながら薬を求めるパインだが……すぐに、異変に気付く。

「……き、聞こえない? し、枝神様のお声が聞こえない……」

 イキナリなんのこっちゃ。
 パインはうんうんと身動きしようとしているので、俺は彼女の額にピシッと風の礫を当てる。

「痛っ!」

「……おとなしくする、こちらの質問に答える。その二つの約束を守れるなら、上半身の拘束だけ解いてあげてもいいよ。上半身だけね」

 拘束を解く理由も必要も無いが――へそを曲げられて答えられないのも厄介だ。
 そのための譲歩だったのだが、彼女は自分の股の間に刺さっている槍を見て、こくこくと頷いた。

「まず自分の身体はどう? 何か変じゃない?」

 俺がそう言うと、彼女はさかさか自分の身体を確認する。口には出せない一部を丹念にまさぐってから……ポツリと呟いた。

「……何も、されてない?」

 何をされたと思ったのか。
 俺はため息をつき、キアラの方を見る。

「薬を除去した。……ここにいるキアラがね」

 キアラ曰く、浸食が凄いことになっていたらしい。殆ど末期の麻薬中毒者みたいなレベルで……恐らく味覚と嗅覚はもう無かっただろうとのことだ。
 パインはさらに自分の身体をまさぐり続け……ハッと何かに気づいたように服をめくった。

「……お腹の斑点が消えてる。薬を飲まないと消えなかったのに……」

「斑点? そんなものありましたか?」

 そう問うリャン。パインのボディチェックを担当した冬子も首を振る。

「まじまじと見たわけでは無いが、そんなものは無かったと断言できる」

「わたしもです。……ということはつまり?」

「恐らく幻覚ぢゃろうな。ふむ、本格的に麻薬じみてきたのぅ」

 そう言って嘆息するキアラ。俺はパインから押収した『魔王の血・J』を手に持ち、眺める。これより純度が高く、効果が強いであろう『魔王の血』――それを俺は流し込まれたが、幻覚などは別に見ていない。
 美沙の場合は完全におかしくなっていたが、それは魔族の魔術によるところが大きかったようだし……。

「その辺が汎用版、なのかな」

「うむ。適合せぬものに無理に力を与えようとしておるからぢゃろうな」

「適合しない……そ、そんなこと無い! 現にあたしは力を使いこなしていた! 使いこなして、使いこなして……」

 言いながら、徐々に勢いを失っていくパイン。そしてわなわなと手を震わせながら、ベッドの裏から出て来た。

「……使い、こなして。でも、あれ……? あたし、でも、あれ……?」

 何を混乱しているのだろうか、俺には分からない。そんなパインを見てスッと美沙が隣から出て来た。

「私は、あれがまともな状態だったとは思えないんですよね。目的のためなら相手を殺すことも辞さない、ってのはよく分かるんですけど、私たちを殺すことで強くしてもらえる――ってことになんの違和感も抱かないのはおかしいと思うんですよね」

 美沙はそう言うと、パインの手を掴んだ。

「ひっ」

 パインは美沙に殺されたことを思い出したか、悲鳴を上げる。

「あ、あの……その」

「それとも、まともな状態で――力のためなら人を殺してもいいって思ってるんですか?」

 ブンブンと首を振るパイン。首がねじ切れんばかりだ。

「じゃあ、何があったか――ちゃんと『何故』かを話してくださいね」

「……う、はい。分かりましたから、その、あの……その、手を……」

 流石に一回自分のことを殺した人間は怖いのか、こくこくと頷くパイン。それどころか体がガクガクと震えている。

「つ、つめた……」

「あ、魔力漏れてました」

「ちょっ……あ、だいぶパインが冷たくなってる」

 氷枕くらい冷たくなったパインを俺とシュリーで温め、仕切り直し。ただ美沙にビビってくれるとやりやすいので、彼女には体から冷えたオーラを出しておいてもらおう。

「あたしは……二か月くらい前に、護衛依頼を受けてポルックスの街に行く馬車に乗ったんだ」

 毛布にくるまりながら、パインは少し遠い目をしながら語り出した。

「詳細は省くが、護衛していたAGはあたし以外全滅。護衛対象は全て殺された。そしてあたしは一人、街に戻らざるをえなくなったんだ」

 何かとんでもないところを省いた気がするけど、実際今は関係ないから仕方ない。

「夜、たった一人で魔物がいる森の中を歩いたんだ。ハッキリ言って、あたしは死んだと思ったよ。そんな時……現れたんだ。ジマンスケ様が」

 なんか間抜けな名前だね。

「ジマンスケ様はアックスウルフの姿をしていた。Aランク魔物に出会って腰を抜かしていたあたしに……『神の雫』を渡してこう言ったんだ。『君はここで死ぬ運命に無い。枝神として約束しよう。君はきっと強くなる』って」

「アックスウルフって魔物だよね? 魔物が喋って、自らを枝神だと名乗ったの?」

「あ、ああ。その通りだ」

 俺の問いに頷くパイン。よくそんな怪しい誘いに乗れるな……。

「催眠系の魔術を使ったんぢゃろ。もしもそれを本当に信じていたとしたら阿呆とかそういう次元ではないわ」

「……でも、枝神様と名乗られたら……そう、信じてしまうだろう。しかも、強くしてくれると言うんだぞ。魔物にボコボコにやられ、クエストを達成出来ないばかりか守るべき民を殺され……そんなあたしを。人族を導くべき枝神様が……そう……仰って……」

 パインはそう言って、さっきよりも幾分か力を失った目でこちらを見るが……やはり項垂れた。

「……そう、だよな……枝神様が、人を殺せなんて言うはずが無いよな……」

「枝神は、基本的には人族の味方ぢゃからな。万が一――人族に仇を為す故殺せと言われたのであれば、尚のことあり得ぬよ」

「どうして?」

 俺の問いに、キアラは少しだけ……ほんの少しだけ、悲し気な笑みを浮かべた。

「そういうのは、枝神が手ずから粛清する。どんな場合でものぅ」

「そっか。……ん、状況は分かった。それじゃあパイン、これを見て」

 俺は今回の王都動乱――その報告書の一部を抜粋したものをアイテムボックスから取り出す。今後、各ギルドに配布されるであろう注意書きなどが書かれたものだ。
 パインは少し怪訝な表情でそれを見るが……とある部分を読んだところで、バッと顔を上げた。

「喋る、魔物……?」

「その通り。んで、キアラ曰く君の飲んでいた薬の成分は人族由来の物じゃないらしい」

 ここまでくれば流石に分かったのか、パインはわなわなと震えてぐしゃっと俺の渡した報告書を握りつぶした。

「……あたしは、魔族に騙されていた……? あ、あたし、が……? ロベリー家の一員である、あたしが……!?」

 絶望顔で崩れ落ちるパイン。取り合えずその報告書をぐしゃぐしゃにしないで欲しい。
 ブツブツと「あり得ない」なんて呟くパインだが、取り敢えずこれで大まかな流れは予想通りということが分かった。

「後は何故俺じゃなくて冬子と美沙だったか、何だけど……何か言ってた?」

「いや……『まずは、ミサ・アライだ。そして次がトーコ・サノ。ここにその絵写しがある』と言われてこれを渡され――って、ジマンスケ様から貰った絵写しが無い!」

「こちらデス。しかしギルドで支給される奴より画質がいいデスね」

 シュリーから写真を受け取ると、確かに画質がいい。そしてこの姿は……

「これ、王都動乱の時だね。ってことは、ジマンスケとやらから指令を受けたのはここ二、三日ってことかな」

「あ、ああ。確か一昨日だ。幸い、シリウスの近くにいたのでな」

 フットワークの軽い子だ。俺より年上って話だけど。
 ちなみに写真の冬子と美沙は非常にいいアングルっていうか、何で冬子は足まで全部入るローアングル、美沙は顔のアップだけど上から撮影なんですかね。

「この写真は京助君にあずかってもらうね」

「……いや本人が持ってればいいんじゃ」

「そうだな。京助、お前が持っていればいい」

 なんでさ。

「……まあいいか」

 その後、気になっていたことをいくつか確認し……取りあえず情報収集は終わった。後は彼女の処遇だけ、というところになって……

「頼む! このことはギルドには言わないでくれ!」

 思いっきり土下座するパイン。何だろう、更に面倒ごとを抱えさせられる予感。
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