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章間なう⑨
シュリーと里帰りなう②
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あの会話から更に数分。以降は特に喧嘩も無く彼女らが出て来た。聞いていた限り、今夜泊まる場所の話だけだったね。
「お待たせしましたデス、キョースケさん」
「お疲れ」
「……やはりあまり納得は出来ませんね、あの態度には」
少し――というかかなり怒っているリャン。まあまあ、と宥めつつシュリーと彼女の弟の家の中へ。
「ツリーハウスは初めて入ったね」
「ヨホホ、狭いところデスが」
中に入ると案外普通の家で、狭いけどしっかりした作りだった。台所やお風呂のようなものは無く、寝台と衣類ケースがあるだけって感じ。寮みたいだ。
「ご飯はだいたい皆で作って食べるんだ。お風呂も」
「なるほどね」
靴を脱いで床に座る。前の世界にいた頃は普通だけど、こっちじゃ床に座ることは減ってたから何となく新鮮だ。
「俺とリャンは近くの街まで行って、明日迎えに来ようか? 姉弟水入らずで話したいだろうし」
「ううん、俺、姉ちゃんのそっちの様子聞きたい」
「ヨホホ……一応、村長の許可も出ましたデスので。今夜はこの村に泊まっていってくださいデス」
「いいの?」
「マスター、無駄遣いしてはマリルさんに怒られますよ。お言葉に甘えましょう。空いた小屋を貸していただけるようですから……今夜は、二人きりですね」
リャンはそう言いながら、いそいそと布団を取り出す。室内用の、しかも一人で寝るには妙に広いそれを。
「今のうちに干しておきますかね。リューさん、ベランダをお借りしても良いですか?」
「いやリャン、それはいくら何でも厚かましいよ……っていうか、それ一人用じゃないよね」
「流石に冗談です。後これは二人用です」
なんで二人用の布団持ってるんだ。俺は一つため息をついて、彼女に布団を仕舞わせる。
「あれ? 姉ちゃんの彼氏じゃねえの?」
いきなりそんなことを言いだす、シュリーの弟ことレーン。なんでそんなことに……?
「マスターはまだ誰のものでもありませんね。まだ」
何故か強調するリャン。俺は誰とも付き合ったことの無い童貞です。
「……? 姉ちゃん、チューしてたじゃん」
シュリーの顔が真っ赤に染まり、レーンの背後に回って彼女の口をふさぐ。そういえばそんなこともあったっけ……。
何となく気まずくなってシュリーから視線を逸らすと、何故かリャンが俺の顔をジッと見つめていた。
「リャン、どうしたの?」
「……マスターの唇、結構薄いんですね」
唐突にそんなことを言いだすリャン。何を言っているんだ。そのまま俺の顔……厳密には唇? をジッと眺めるリャン。
彼女は自身の唇に舌を這わせると、前足を俺の方へ出して一歩近づいてきた。いや腕なんだが、何故か彼女の雰囲気を見ていると前足とつい言ってしまった。
「……リャン?」
「マスターは……不意打ちに、弱いですよね」
……彼女は何がしたいんだ?
俺が混乱していると、シュリーの拘束から脱したかレーンが転がり、リャンの方を向いた。
「なあ姉ちゃん、ピアさんが姉ちゃんの彼氏にキスしようとしてるぞ」
「あ、あの……ピアさん、子どもも見ていますから……」
「怒れよ姉ちゃん」
ちょっと困り顔になるシュリー。指摘されたリャンは軽く舌打ちをすると、ため息をついて普段の雰囲気に戻った。
……なんだろう、揶揄われたのかな。
「やれやれ……なんだったのさ」
「マスターは相変わらず唐変木ですね。枯れ木です」
誰が枯れ木か。俺はこれでも二十歳にもなっていない若者だというのに。
「ま、まあまあ。ヨホホ……取り合えず、どうしますデスか?」
シュリーが空気を変えようとしているのか、手を一つ打ってそんなことを言う。どうすると言われても、俺にやることは特に無いし……。
リャンの方も何かするつもりは無いのか、俺の方を見るだけだ。そりゃ、メインはシュリーの送迎だったしね俺ら。
「あ、じゃあ俺が案内するよこの村!」
レーンがそんなことを言って立ち上がる。案内するほどの広さがあっただろうか、この村は。
「ヨホホ、案外広いデスよ。自給自足なのでいくらか畑もありますデスし、家畜もいるデス」
「それやってる方がバレそうなんだけど……」
「まあこの辺は人族の国からは認知されていない区域デスから。他の場所と関りを持たないためにもある程度……以上に自給自足出来ないといけないデスからね」
それもそうか。
「やっぱ義兄ちゃんは恩人だしな。おもてなしするぜ」
楽しそうにニコニコしているレーン。そんな顔をされると断りづらい。俺も笑顔になって、彼の頭に手を置く。
「ん、それなら案内されようかな。リャンもそれでいい?」
頷くだろうと思って彼女の方を見るが、リャンは少し顎に手を当ててから……フルフルと首を振った。
「いえ、少し話したい人がいるので」
「そう? じゃ、行こうかレーン、シュリー」
彼女が誰と話したいのか分からないが……今のところこの村で出会ったのは村長とリッキーだけだ。そしてどっちと会話しに行っても碌なことにならない気がする。
でもリャンの方が強いから大丈夫だろう。同じ村の中なら何かあっても助けに行けるし。
「じゃあまずは畑からなー」
「よく考えたら畑を見るなんていつ以来かな」
前の世界では畑なんてどこにも見当たらない都会に住んでいたし、こっちに来てもアンタレスは割と都会だ。前領主の時は分からないけど、オルランドが来てからは衣類とかが領地としてはメイン産業になっているみたいだし。
リャンが先に行くと言って出て行ったので、戸締りをしてから村へ。戸締りが今どき南京錠スタイルっていうのもどうなのか。
部屋、というか小屋から出て梯子を降りる。なんか梯子を昇る、降りるっていうのも久々だね。
なんてことを思いつつ、改めて村を見る……と言っても、樹上に迷彩柄の小屋があることを除けば普通の森にしか見えない。
「ヨホホ、この村は四方にある魔道具によって発動する結界によって区切られているんデス。見た目は完全にただの森に見えるよう偽装していますデスから、結界が無いと住んでる人でも村の区切りは分からないデスね」
「獣人族の村なのに結界?」
俺の記憶が正しければ、獣人族は身体能力が高い代わりに魔法は使えない種族だったはずだが。
「ヨホホ、この村は前も少し言いましたが獣人族と人族のハーフなどのどちらの国にも属せない人や、純粋な獣人族デスが奴隷狩りにあって獣人族の国にも帰れなくなった人などが住んでいますデスからね」
「皆、割と人族の技術とかパクッてきてるから、結界を張る魔道具くらいは扱えるんだぜ」
ああ、そういうことか。
獣人族と人族のハーフ、っていう点に関しては……獣人族の国では「男の獣人が女の人族を孕ませる」ことはあっても逆は無いってシュリーが言っていたから。人族の国としても「男の人族が女の獣人族を孕ませる」ことはあるんだろう。
「魔力とかは魔魂石で補う感じか」
「ヨホホ! 弱い結界なのでそんなに魔魂石も必要無いデスしね」
「それにリッキーさんとかBランク魔物すらちょちょいのちょいだからな! 魔魂石に困ったりすることは無いぜ」
ああ、やっぱり実力はBくらいか。そして周囲の人たちもD~Cの間くらいには戦えそうだし。このくらいの村……というか集落の防備としては些か過剰ともいえる。
まあ、こういう類の集まりなら強い人間はどれだけいても問題ないか。
「それに、強い人が圧制を敷いているわけでもないみたいだし」
「そうデスねぇ」
チラリと視線をどこかにやるシュリー。たぶん村長の方だ。彼にも何かあるんだろうか。
「さて! それじゃあまずは畑だな!」
森の中に畑、っていうのは普通に考えればありえないと思うけど……。なんて思いながらシュリーとレーンについていく。
「木の実とかかな」
畑で木の実はおかしいけど、思いつくものがそれくらいしか無い。
「ヨホホ、そういう方向性では無いデスよ」
シュリーがちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべて唇に人差し指を当てるので、俺は何となくデコピンをしておく。
「ヨホッ!? な、なにするんデスか!」
「いや何か含みのある感じにイラっと来たから……」
俺がちょっと笑いをこらえてそう言うと、シュリーは無言で俺の脇腹をつついてきた。男からそれをやるとセクハラになるので、俺は逆に額をつついて反撃する。
「姉ちゃん、義兄ちゃん、何イチャついてるんだよ。ほら、着いたぜ」
「ん。……ん?」
呆れた声を出すレーンに促されて前を向くと、そこには何も無い。普通に木々が広がるだけ……。
いや、俺はやっぱり木々の上を見る。
「小屋、じゃないね。なるほど、地面じゃ栄養が木に取られるからプランターみたいなのを木々の上に……」
日光とか当たるのかな、って思うけど上手いことやってるんだろう。
「そうだぜー、あとは食べれる野草とかで賄う感じだな」
「結構な量あるとはいえ……家庭菜園レベルのような」
「ヨホホ、元より獣人族は肉食の人が多いデスからね。狩りで食事が得られない時用デスよ」
そんなもんなのか。
「ってことは食料の大部分は狩りに頼ってるってことか」
「一応、家畜もいるデスよ」
「至れり尽くせりかよ」
「ま、義兄ちゃんとピアさんには後で食べさせてやるよ。そんじゃ次は畜舎を――」
「あー! レーン、こんなところにいた!」
レーンが意気揚々と次の目的地に案内してくれようとしたところで、甲高い声が響く。そちらの方を見ると、レーンと同い年くらいの少女が腰に手を当てて立っていた。
耳は獣人族のそれだが、尻尾が無い。レーンと同じ、獣人族と人族のハーフだろう。
「ゲッ……」
「ゲッ……とは何よ、ゲッ……とは! というかレーン、その女誰よ!」
レーンの隣にいるシュリーを指してそう叫ぶ少女。レーンは曖昧な笑みを浮かべながらやんわりと彼女の指を握る。
「いや、お前忘れたのかよ。姉ちゃんだよ姉ちゃん」
「ヨホホ、お久ぶりデス、セーヌさん」
「へっ? ……あ、あああああ! ご、ごめんなさいリューさん!」
ガバッと地面につきそうなほどの勢いで謝罪するセーヌ。っていうかシュリーのさん付けは年下にも有効なのか。
セーヌはそのままやはり凄い勢いで顔をあげると、俺の方を見てギョッとした表情を浮かべる。
「ハーフ……? 違う、人族!!!」
「あー、あれだ。この人がキョースケさん。俺らを救ってくれた最強の人族だよ」
「え? あ、ああ! とんでもなくいい人!!」
テンションの上下がとんでもない子だね。っていうかレーンは俺のことをどう思ってるのか。
暴走列車のような勢いのセーヌは、そのままぐわしっとレーンの腕を掴んだ。
「って、そんなこと言ってる場合じゃない! レーン、また雑草抜きサボったでしょ!」
クラスの委員長的なポジションなのか、それとも別の理由か。レーンもたじたじ、という感じだが嫌そうな雰囲気ではない。
「もう、レーン。早く行くよ! リューさん、キョースケさん! レーンは借りていきます! デートのお邪魔をしてすみませんでした!!」
「別にデートじゃないけど」
「ヨホホ、存分にこき使ってくださいデス」
俺とシュリーがそう言うと、レーンは少しだけ恨めしい顔をしてから……観念したように肩をすくめた。
「わ、分かったよナリア」
「っ! ひ、人前でそっちの名前で呼ばないでって言ってるでしょ!」
「あっ……」
やっちまった、という風に手で口を抑えるレーン。顔を真っ赤にしてダッシュで逃げるセーヌ。無論、レーンの手を握ったまま。
「姉ちゃん、晩御飯までには戻るよぉ~……」
ドップラー効果で声が低くなっていくレーンをぼんやりと眺め、俺とシュリーは暫し無言でその場に佇む。
一分くらい経ったころだろうか。シュリーが口に手を当ててコロコロと笑い出した。
「ヨホホ! アレで隠しているつもりだから、可愛いデス」
「ああ、アレ隠してるつもりなんだ。……凄いね」
俺も苦笑い。アレじゃあ何も隠れていないだろう。
「ええ。本人しか真意は分からないと思いますデスが……彼女の存在は彼がこの村に残ろうと思った一因だと思っているデス」
「なかなかやるね」
「ええ、愛称で呼び合っているようデスから」
愉快そう……というよりも、微笑ましそうに笑うシュリー。下の子の成長を見た兄姉っていうのはこんな雰囲気になるものなんだね。
シュリーはそうやって笑ったまま、くるりと踵を返す。
「ヨホホ、レーンたちは種まきをすると言っていましたデスから、先に畜舎の方に行きますデスか?」
「そうだね、邪魔しちゃ悪い」
俺も含み笑いしつつそう言うと、シュリーが俺の手をジッと見つめてきていた。
「どうしたの、シュリー」
「いえ。……いえ、案外気づかないものなんデスねぇと思っているところデス」
「? いやレーンとセーヌの関係は俺もちゃんと分かってるつもりだけど……」
「そういう意味では無くてデスね。うーん、まあトーコさんに少し遠慮していたデスが……せっかくデスし」
シュリーはブツブツと何か呟いてからそっと俺の腕に寄り添ってきた。彼女は俺の指に自分のそれを絡め、更に肩と肩を触れ合わせる。
そしてこてんと肩に首を乗せてから……スッと逆の手で道を示す。
「さ、あっちデスよ」
「シュリー、帽子で前が見えない」
「ヨホッ!?」
そもそも俺と彼女じゃ身長が違い過ぎるせいでこんなに近くにいると帽子が常に俺の視界を塞ぐことになる。
シュリーはちょっとオロオロしてから……もじもじと、恥ずかしそうに帽子を外した。頭の上の耳まで赤く染め、ちょっとだけ上目遣いになっている。
何というか初めて見る彼女の姿に、こう……
「あー……えっと」
「よ、ヨホホ。ちょっと恥ずかしいデスが……冷静に考えたら、この村では帽子をつけている意味は無いデスからね」
そりゃ確かにそうだけど……。
家の中以外で帽子を外すシュリー、というのも非常に珍しいのだが……なんで家の中だと普通なのに今日はこんなに恥ずかしがっているのだろう。
そこが不思議だが、それ以上になんで俺にくっついているのか……?
「ヨホホ、そうデスね……こうしてくっついていれば、他の人も少しは安心してくれるかと思いまして」
「ああ、さっきのセーヌみたいなことがあったらいちいち説明するのも面倒だからね」
いやでもくっついてたところで疑いの目は晴れるのだろうか。
「……ま、いいか。そんで向こうだね」
「はいデス」
シュリーの指さす方向に歩くと、やはりそこには森しかない。また樹上に小屋でもあるのだろうか。
「ふふふ、やはり上ばかりを探しているデスね」
「となると地下か何か?」
ドヤ顔でシュリーがそう言うので、俺がちょっと驚いてそう聞くと……
「いえ、樹上デス」
「何にも捻り無いじゃん!」
流石に乳牛はスペース的に無理なのか、そこにいたのはヤギ。美味しいのかな、ヤギの乳って。
それと向こうからは鶏の声も聞こえる。
「っていうか、何で同じ名前なんだ……? もう翻訳のチートは消えているはずなんだけどな……」
前の世界と全く同じ動物というわけじゃないが、味も近いし見た目も近い。何なら熊もいるし。
「まあ同じ人間がいるんだから生態系が似てもそんなにおかしくは無いか」
「どうしたんデスか、キョースケさん」
こてんと首を倒すシュリー。俺は何でも無い、と答えて彼女の手を引く。
「ツリーハウスでもここまでやれるんだね。俺の元居た世界じゃ考えられない」
「ヨホホ。実はいくらか魔道具の力も借りているデスよ」
シュリーはそう言って少しはにかむ。
「魔道具も……」
あの村長さんの剣幕からして人族全てを嫌っているんじゃないのだろうか。それともそれはそれ、これはこれで使えるもんは使う派なのか。
少し考えるが、情報が足りないという結論しか出ない。それなら考えるだけ無駄だろう。俺はシュリーの手を引いたまま歩き出す。
「この村、他に見るものとかあるの?」
「ヨホホ……正直、あんまり無いデスが……レーンの言った通り広いは広いので、ちょっとしたピクニック気分は味わえるデスよ」
「それはいい。……リャンもレーンもいないし、ご飯って時間でも無いから……ちょっと開けたところがあったら、そこでシートでも引いてお茶にしようか」
「いいデスね! あ、そうだ。いい茶葉を手に入れたんデスよ。マリルさんほどじゃありませんデスが、ワタシがお茶を淹れますデス」
「ん、それは嬉しい」
そういえば、シュリーと二人きりになるのなんていつぶりだろうか。それこそ、塔から戻ってきてからはずっとチームとしてしか一緒にいなかった気がする。
別にどうしても二人きりにならなきゃいけないわけじゃないが、それでもこっちの世界に来てすぐは二人でクエストに行くことも多かったから……。
「ヨホホ、久しぶりデスね。二人だけになるのは」
同じことを考えていたらしい。俺は笑みと共に頷き、顔をあげる。太陽は木々で隠れているが、木洩れ日のおかげで暗い感じはしない。
何となく木々に囲まれると神秘的な印象を受けるのは俺が日本人だからだろうか。それとも別の理由があるのか。
ともあれ、その雰囲気に流されたところはあるだろう。俺の口が勝手に動く。
「……シュリーが、あの時俺を弟子にしたいと言ってくれてなかったら」
俺の戦闘スタイルを支えるのは、彼女に教わった魔法。独力でも磨いたし、キアラから使い方も習った。
でも、それでも――俺の危機を幾度となく救ってくれた魔法。それを最初に教えてくれたのは、シュリーだ。
「俺は今頃生きてない」
「ヨホホ、そんなこと無いデスよ。キョースケさんはきっと別の方法で生き延びると思うデス」
そうかもしれない。
でも、それでも――
「ありがとう、シュリー。俺と出会ってくれて」
――俺は下を向かない、向けない。彼女とは身長差があるから、下から覗き込まれるとマズいから。
シュリーも察しているのか、それ以上何も言わず、ただ一緒に歩いてくれる。この火照った頬が収まるまでは、たぶんこの散歩も終わらない。
「お待たせしましたデス、キョースケさん」
「お疲れ」
「……やはりあまり納得は出来ませんね、あの態度には」
少し――というかかなり怒っているリャン。まあまあ、と宥めつつシュリーと彼女の弟の家の中へ。
「ツリーハウスは初めて入ったね」
「ヨホホ、狭いところデスが」
中に入ると案外普通の家で、狭いけどしっかりした作りだった。台所やお風呂のようなものは無く、寝台と衣類ケースがあるだけって感じ。寮みたいだ。
「ご飯はだいたい皆で作って食べるんだ。お風呂も」
「なるほどね」
靴を脱いで床に座る。前の世界にいた頃は普通だけど、こっちじゃ床に座ることは減ってたから何となく新鮮だ。
「俺とリャンは近くの街まで行って、明日迎えに来ようか? 姉弟水入らずで話したいだろうし」
「ううん、俺、姉ちゃんのそっちの様子聞きたい」
「ヨホホ……一応、村長の許可も出ましたデスので。今夜はこの村に泊まっていってくださいデス」
「いいの?」
「マスター、無駄遣いしてはマリルさんに怒られますよ。お言葉に甘えましょう。空いた小屋を貸していただけるようですから……今夜は、二人きりですね」
リャンはそう言いながら、いそいそと布団を取り出す。室内用の、しかも一人で寝るには妙に広いそれを。
「今のうちに干しておきますかね。リューさん、ベランダをお借りしても良いですか?」
「いやリャン、それはいくら何でも厚かましいよ……っていうか、それ一人用じゃないよね」
「流石に冗談です。後これは二人用です」
なんで二人用の布団持ってるんだ。俺は一つため息をついて、彼女に布団を仕舞わせる。
「あれ? 姉ちゃんの彼氏じゃねえの?」
いきなりそんなことを言いだす、シュリーの弟ことレーン。なんでそんなことに……?
「マスターはまだ誰のものでもありませんね。まだ」
何故か強調するリャン。俺は誰とも付き合ったことの無い童貞です。
「……? 姉ちゃん、チューしてたじゃん」
シュリーの顔が真っ赤に染まり、レーンの背後に回って彼女の口をふさぐ。そういえばそんなこともあったっけ……。
何となく気まずくなってシュリーから視線を逸らすと、何故かリャンが俺の顔をジッと見つめていた。
「リャン、どうしたの?」
「……マスターの唇、結構薄いんですね」
唐突にそんなことを言いだすリャン。何を言っているんだ。そのまま俺の顔……厳密には唇? をジッと眺めるリャン。
彼女は自身の唇に舌を這わせると、前足を俺の方へ出して一歩近づいてきた。いや腕なんだが、何故か彼女の雰囲気を見ていると前足とつい言ってしまった。
「……リャン?」
「マスターは……不意打ちに、弱いですよね」
……彼女は何がしたいんだ?
俺が混乱していると、シュリーの拘束から脱したかレーンが転がり、リャンの方を向いた。
「なあ姉ちゃん、ピアさんが姉ちゃんの彼氏にキスしようとしてるぞ」
「あ、あの……ピアさん、子どもも見ていますから……」
「怒れよ姉ちゃん」
ちょっと困り顔になるシュリー。指摘されたリャンは軽く舌打ちをすると、ため息をついて普段の雰囲気に戻った。
……なんだろう、揶揄われたのかな。
「やれやれ……なんだったのさ」
「マスターは相変わらず唐変木ですね。枯れ木です」
誰が枯れ木か。俺はこれでも二十歳にもなっていない若者だというのに。
「ま、まあまあ。ヨホホ……取り合えず、どうしますデスか?」
シュリーが空気を変えようとしているのか、手を一つ打ってそんなことを言う。どうすると言われても、俺にやることは特に無いし……。
リャンの方も何かするつもりは無いのか、俺の方を見るだけだ。そりゃ、メインはシュリーの送迎だったしね俺ら。
「あ、じゃあ俺が案内するよこの村!」
レーンがそんなことを言って立ち上がる。案内するほどの広さがあっただろうか、この村は。
「ヨホホ、案外広いデスよ。自給自足なのでいくらか畑もありますデスし、家畜もいるデス」
「それやってる方がバレそうなんだけど……」
「まあこの辺は人族の国からは認知されていない区域デスから。他の場所と関りを持たないためにもある程度……以上に自給自足出来ないといけないデスからね」
それもそうか。
「やっぱ義兄ちゃんは恩人だしな。おもてなしするぜ」
楽しそうにニコニコしているレーン。そんな顔をされると断りづらい。俺も笑顔になって、彼の頭に手を置く。
「ん、それなら案内されようかな。リャンもそれでいい?」
頷くだろうと思って彼女の方を見るが、リャンは少し顎に手を当ててから……フルフルと首を振った。
「いえ、少し話したい人がいるので」
「そう? じゃ、行こうかレーン、シュリー」
彼女が誰と話したいのか分からないが……今のところこの村で出会ったのは村長とリッキーだけだ。そしてどっちと会話しに行っても碌なことにならない気がする。
でもリャンの方が強いから大丈夫だろう。同じ村の中なら何かあっても助けに行けるし。
「じゃあまずは畑からなー」
「よく考えたら畑を見るなんていつ以来かな」
前の世界では畑なんてどこにも見当たらない都会に住んでいたし、こっちに来てもアンタレスは割と都会だ。前領主の時は分からないけど、オルランドが来てからは衣類とかが領地としてはメイン産業になっているみたいだし。
リャンが先に行くと言って出て行ったので、戸締りをしてから村へ。戸締りが今どき南京錠スタイルっていうのもどうなのか。
部屋、というか小屋から出て梯子を降りる。なんか梯子を昇る、降りるっていうのも久々だね。
なんてことを思いつつ、改めて村を見る……と言っても、樹上に迷彩柄の小屋があることを除けば普通の森にしか見えない。
「ヨホホ、この村は四方にある魔道具によって発動する結界によって区切られているんデス。見た目は完全にただの森に見えるよう偽装していますデスから、結界が無いと住んでる人でも村の区切りは分からないデスね」
「獣人族の村なのに結界?」
俺の記憶が正しければ、獣人族は身体能力が高い代わりに魔法は使えない種族だったはずだが。
「ヨホホ、この村は前も少し言いましたが獣人族と人族のハーフなどのどちらの国にも属せない人や、純粋な獣人族デスが奴隷狩りにあって獣人族の国にも帰れなくなった人などが住んでいますデスからね」
「皆、割と人族の技術とかパクッてきてるから、結界を張る魔道具くらいは扱えるんだぜ」
ああ、そういうことか。
獣人族と人族のハーフ、っていう点に関しては……獣人族の国では「男の獣人が女の人族を孕ませる」ことはあっても逆は無いってシュリーが言っていたから。人族の国としても「男の人族が女の獣人族を孕ませる」ことはあるんだろう。
「魔力とかは魔魂石で補う感じか」
「ヨホホ! 弱い結界なのでそんなに魔魂石も必要無いデスしね」
「それにリッキーさんとかBランク魔物すらちょちょいのちょいだからな! 魔魂石に困ったりすることは無いぜ」
ああ、やっぱり実力はBくらいか。そして周囲の人たちもD~Cの間くらいには戦えそうだし。このくらいの村……というか集落の防備としては些か過剰ともいえる。
まあ、こういう類の集まりなら強い人間はどれだけいても問題ないか。
「それに、強い人が圧制を敷いているわけでもないみたいだし」
「そうデスねぇ」
チラリと視線をどこかにやるシュリー。たぶん村長の方だ。彼にも何かあるんだろうか。
「さて! それじゃあまずは畑だな!」
森の中に畑、っていうのは普通に考えればありえないと思うけど……。なんて思いながらシュリーとレーンについていく。
「木の実とかかな」
畑で木の実はおかしいけど、思いつくものがそれくらいしか無い。
「ヨホホ、そういう方向性では無いデスよ」
シュリーがちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべて唇に人差し指を当てるので、俺は何となくデコピンをしておく。
「ヨホッ!? な、なにするんデスか!」
「いや何か含みのある感じにイラっと来たから……」
俺がちょっと笑いをこらえてそう言うと、シュリーは無言で俺の脇腹をつついてきた。男からそれをやるとセクハラになるので、俺は逆に額をつついて反撃する。
「姉ちゃん、義兄ちゃん、何イチャついてるんだよ。ほら、着いたぜ」
「ん。……ん?」
呆れた声を出すレーンに促されて前を向くと、そこには何も無い。普通に木々が広がるだけ……。
いや、俺はやっぱり木々の上を見る。
「小屋、じゃないね。なるほど、地面じゃ栄養が木に取られるからプランターみたいなのを木々の上に……」
日光とか当たるのかな、って思うけど上手いことやってるんだろう。
「そうだぜー、あとは食べれる野草とかで賄う感じだな」
「結構な量あるとはいえ……家庭菜園レベルのような」
「ヨホホ、元より獣人族は肉食の人が多いデスからね。狩りで食事が得られない時用デスよ」
そんなもんなのか。
「ってことは食料の大部分は狩りに頼ってるってことか」
「一応、家畜もいるデスよ」
「至れり尽くせりかよ」
「ま、義兄ちゃんとピアさんには後で食べさせてやるよ。そんじゃ次は畜舎を――」
「あー! レーン、こんなところにいた!」
レーンが意気揚々と次の目的地に案内してくれようとしたところで、甲高い声が響く。そちらの方を見ると、レーンと同い年くらいの少女が腰に手を当てて立っていた。
耳は獣人族のそれだが、尻尾が無い。レーンと同じ、獣人族と人族のハーフだろう。
「ゲッ……」
「ゲッ……とは何よ、ゲッ……とは! というかレーン、その女誰よ!」
レーンの隣にいるシュリーを指してそう叫ぶ少女。レーンは曖昧な笑みを浮かべながらやんわりと彼女の指を握る。
「いや、お前忘れたのかよ。姉ちゃんだよ姉ちゃん」
「ヨホホ、お久ぶりデス、セーヌさん」
「へっ? ……あ、あああああ! ご、ごめんなさいリューさん!」
ガバッと地面につきそうなほどの勢いで謝罪するセーヌ。っていうかシュリーのさん付けは年下にも有効なのか。
セーヌはそのままやはり凄い勢いで顔をあげると、俺の方を見てギョッとした表情を浮かべる。
「ハーフ……? 違う、人族!!!」
「あー、あれだ。この人がキョースケさん。俺らを救ってくれた最強の人族だよ」
「え? あ、ああ! とんでもなくいい人!!」
テンションの上下がとんでもない子だね。っていうかレーンは俺のことをどう思ってるのか。
暴走列車のような勢いのセーヌは、そのままぐわしっとレーンの腕を掴んだ。
「って、そんなこと言ってる場合じゃない! レーン、また雑草抜きサボったでしょ!」
クラスの委員長的なポジションなのか、それとも別の理由か。レーンもたじたじ、という感じだが嫌そうな雰囲気ではない。
「もう、レーン。早く行くよ! リューさん、キョースケさん! レーンは借りていきます! デートのお邪魔をしてすみませんでした!!」
「別にデートじゃないけど」
「ヨホホ、存分にこき使ってくださいデス」
俺とシュリーがそう言うと、レーンは少しだけ恨めしい顔をしてから……観念したように肩をすくめた。
「わ、分かったよナリア」
「っ! ひ、人前でそっちの名前で呼ばないでって言ってるでしょ!」
「あっ……」
やっちまった、という風に手で口を抑えるレーン。顔を真っ赤にしてダッシュで逃げるセーヌ。無論、レーンの手を握ったまま。
「姉ちゃん、晩御飯までには戻るよぉ~……」
ドップラー効果で声が低くなっていくレーンをぼんやりと眺め、俺とシュリーは暫し無言でその場に佇む。
一分くらい経ったころだろうか。シュリーが口に手を当ててコロコロと笑い出した。
「ヨホホ! アレで隠しているつもりだから、可愛いデス」
「ああ、アレ隠してるつもりなんだ。……凄いね」
俺も苦笑い。アレじゃあ何も隠れていないだろう。
「ええ。本人しか真意は分からないと思いますデスが……彼女の存在は彼がこの村に残ろうと思った一因だと思っているデス」
「なかなかやるね」
「ええ、愛称で呼び合っているようデスから」
愉快そう……というよりも、微笑ましそうに笑うシュリー。下の子の成長を見た兄姉っていうのはこんな雰囲気になるものなんだね。
シュリーはそうやって笑ったまま、くるりと踵を返す。
「ヨホホ、レーンたちは種まきをすると言っていましたデスから、先に畜舎の方に行きますデスか?」
「そうだね、邪魔しちゃ悪い」
俺も含み笑いしつつそう言うと、シュリーが俺の手をジッと見つめてきていた。
「どうしたの、シュリー」
「いえ。……いえ、案外気づかないものなんデスねぇと思っているところデス」
「? いやレーンとセーヌの関係は俺もちゃんと分かってるつもりだけど……」
「そういう意味では無くてデスね。うーん、まあトーコさんに少し遠慮していたデスが……せっかくデスし」
シュリーはブツブツと何か呟いてからそっと俺の腕に寄り添ってきた。彼女は俺の指に自分のそれを絡め、更に肩と肩を触れ合わせる。
そしてこてんと肩に首を乗せてから……スッと逆の手で道を示す。
「さ、あっちデスよ」
「シュリー、帽子で前が見えない」
「ヨホッ!?」
そもそも俺と彼女じゃ身長が違い過ぎるせいでこんなに近くにいると帽子が常に俺の視界を塞ぐことになる。
シュリーはちょっとオロオロしてから……もじもじと、恥ずかしそうに帽子を外した。頭の上の耳まで赤く染め、ちょっとだけ上目遣いになっている。
何というか初めて見る彼女の姿に、こう……
「あー……えっと」
「よ、ヨホホ。ちょっと恥ずかしいデスが……冷静に考えたら、この村では帽子をつけている意味は無いデスからね」
そりゃ確かにそうだけど……。
家の中以外で帽子を外すシュリー、というのも非常に珍しいのだが……なんで家の中だと普通なのに今日はこんなに恥ずかしがっているのだろう。
そこが不思議だが、それ以上になんで俺にくっついているのか……?
「ヨホホ、そうデスね……こうしてくっついていれば、他の人も少しは安心してくれるかと思いまして」
「ああ、さっきのセーヌみたいなことがあったらいちいち説明するのも面倒だからね」
いやでもくっついてたところで疑いの目は晴れるのだろうか。
「……ま、いいか。そんで向こうだね」
「はいデス」
シュリーの指さす方向に歩くと、やはりそこには森しかない。また樹上に小屋でもあるのだろうか。
「ふふふ、やはり上ばかりを探しているデスね」
「となると地下か何か?」
ドヤ顔でシュリーがそう言うので、俺がちょっと驚いてそう聞くと……
「いえ、樹上デス」
「何にも捻り無いじゃん!」
流石に乳牛はスペース的に無理なのか、そこにいたのはヤギ。美味しいのかな、ヤギの乳って。
それと向こうからは鶏の声も聞こえる。
「っていうか、何で同じ名前なんだ……? もう翻訳のチートは消えているはずなんだけどな……」
前の世界と全く同じ動物というわけじゃないが、味も近いし見た目も近い。何なら熊もいるし。
「まあ同じ人間がいるんだから生態系が似てもそんなにおかしくは無いか」
「どうしたんデスか、キョースケさん」
こてんと首を倒すシュリー。俺は何でも無い、と答えて彼女の手を引く。
「ツリーハウスでもここまでやれるんだね。俺の元居た世界じゃ考えられない」
「ヨホホ。実はいくらか魔道具の力も借りているデスよ」
シュリーはそう言って少しはにかむ。
「魔道具も……」
あの村長さんの剣幕からして人族全てを嫌っているんじゃないのだろうか。それともそれはそれ、これはこれで使えるもんは使う派なのか。
少し考えるが、情報が足りないという結論しか出ない。それなら考えるだけ無駄だろう。俺はシュリーの手を引いたまま歩き出す。
「この村、他に見るものとかあるの?」
「ヨホホ……正直、あんまり無いデスが……レーンの言った通り広いは広いので、ちょっとしたピクニック気分は味わえるデスよ」
「それはいい。……リャンもレーンもいないし、ご飯って時間でも無いから……ちょっと開けたところがあったら、そこでシートでも引いてお茶にしようか」
「いいデスね! あ、そうだ。いい茶葉を手に入れたんデスよ。マリルさんほどじゃありませんデスが、ワタシがお茶を淹れますデス」
「ん、それは嬉しい」
そういえば、シュリーと二人きりになるのなんていつぶりだろうか。それこそ、塔から戻ってきてからはずっとチームとしてしか一緒にいなかった気がする。
別にどうしても二人きりにならなきゃいけないわけじゃないが、それでもこっちの世界に来てすぐは二人でクエストに行くことも多かったから……。
「ヨホホ、久しぶりデスね。二人だけになるのは」
同じことを考えていたらしい。俺は笑みと共に頷き、顔をあげる。太陽は木々で隠れているが、木洩れ日のおかげで暗い感じはしない。
何となく木々に囲まれると神秘的な印象を受けるのは俺が日本人だからだろうか。それとも別の理由があるのか。
ともあれ、その雰囲気に流されたところはあるだろう。俺の口が勝手に動く。
「……シュリーが、あの時俺を弟子にしたいと言ってくれてなかったら」
俺の戦闘スタイルを支えるのは、彼女に教わった魔法。独力でも磨いたし、キアラから使い方も習った。
でも、それでも――俺の危機を幾度となく救ってくれた魔法。それを最初に教えてくれたのは、シュリーだ。
「俺は今頃生きてない」
「ヨホホ、そんなこと無いデスよ。キョースケさんはきっと別の方法で生き延びると思うデス」
そうかもしれない。
でも、それでも――
「ありがとう、シュリー。俺と出会ってくれて」
――俺は下を向かない、向けない。彼女とは身長差があるから、下から覗き込まれるとマズいから。
シュリーも察しているのか、それ以上何も言わず、ただ一緒に歩いてくれる。この火照った頬が収まるまでは、たぶんこの散歩も終わらない。
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