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第八章 王都動乱なう

191話 信じるで御座る

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「外は魔物でいっぱいですのね」

「……マール姫、お願いですから着替えましょう」

 窓から王都を眺めるマールを窘める。
 シャンはため息をついてから……自分も着替えを終えた。ミリオの作ってくれた特注のメイド服だ。有事の際には着るように言われている。白と黒のシックなタイプで、フリルと布の量が多くて少々重い。

「魔物が入ってきたらどうするおつもりですか?」

「ミリオがすぐに助けてくれるですの」

「ですが……」

 窓から目を離さず、そんな呑気なことを言うマール。
 確かに、彼女のピンチなら――いや、シャンとマールのピンチならばすぐさまミリオは飛んでくるだろう。文字通り。
 しかし、現在がそう言っていられない状態であることも重々承知している。

(先ほどの、ナイトさんは……)

 ミリオはこの部屋を出て行くとき、かなり顔つきが険しかった。あの顔は……見たことがある。
 Sランク魔物を倒すために、村一丸とならねばならなかった時の……両親の眼だ。
『殺す』覚悟と『殺される』覚悟を決めた、あの眼。
 記憶に残っている唯一の両親の記憶。その眼と、ミリオの眼は酷似していた。

「それにしてもミリオは遅いですの」

「……はい。いつもならこんなに私たちの傍を離れませんからね」

 ミリオは基本的にはすぐにマールの元に駆け付けられる位置にいる。それも、必ずどこに行くか言ってから離れる。
 であるのに今は、どこに行くか言わずただ、

『マールを暫く頼む』

 と一言残して部屋を出て行ってしまった。この部屋の前に防御用の障壁のようなものを張ってはいたが、あんな魔物たちに攻められれば気休め程度にしかならないだろう。
 そうやってシャンが不安を募らせていると……パッ、とマールがシャンの手から着替えを奪い取った。

「シャンは心配性ですの。ミリオもですけど」

 彼女はシャンのメイド服をピンと指で弾き、ため息をつく。

「……それだけ姫のことを大事に想っているんです」

「それとシャン! ちゃんと部屋ではマールと呼ぶようにと言ったですの! 姫なんて嫌ですの!」

 ズイッと顔を近づけるマール。美女……の卵である彼女にこうも顔を近づけられると、恥ずかしくてテレてしまう。

「う……わ、分かりましたマール」

「それでいいですの」

 にっこり笑うと、やっと着替えてくれるマール。彼女は基本的に何でも一人で出来るが、一応侍女としてその着替えを手伝う。やや特殊な服であることだし。
 マールに着せる服は黒を基調としたワンピース。こちらはフリルなどがついていない代わりに、リボンが大きく胸に一つ。さらに左右のボディラインに沿うようにリボンがついているものだ。
 やはりミリオの特注品で、有事の際着るようにと渡されている。
 背中のジッパーを上げ切ったところで、マールが振り返った。

「シャン、お茶が飲みたいですの」

「承知しました」

 備え付けの台所にあるケトルに水を入れ、火をおこす魔道具を起動してからテーブルのセッティングに移る。
 いつもの丸テーブルの上にクロスを敷き、ティーセットを置いて準備完了。後は湯が沸くのを待つだけだ。
 マールの部屋は流石王族と言えるほど広く、台所だけではなくシャワールームや五、六人で座れるテーブルまである。
 普段マールとシャンが寝る天蓋付きのベッドは二人が寝てもまだ余るほど大きく、ウォークインクローゼットの中には衣服がびっしりだ。

「……マール、不安ではないのですか?」

 外を見る作業に戻ったマールに、後ろからそう問いかける。

「いくらナイトさんがいるとはいえ……その、外は魔物だらけですし……勇者を捕らえてしまおうという動きもあったようですし……この混乱に乗じてマールを亡き者にしようとする者もあらわれるかもしれません」

 言いながら、自分の中の不安が膨れ上がっていくのを感じる。
 姉は強かった。自分の中ではヒーローのようだった。
 しかし……そんな彼女は自分のせいで負けてしまい、今はどうなっているのか分からない。
 ミリオは強い。強いが……彼とて万能ではない。

「ナイトさんも……今、強敵と戦っているかもしれませんし……」

 ぴーっとケトルが鳴る。火の出る魔道具を止め、しゅんしゅんと言っている中、茶葉の入っているティーポットに注ぐ。
 後はこれで三分蒸らせば完成だ。

「ええ、そうですわね。ミリオだって万能じゃありませんですの」

 マールは外を見たまま、そう呟く。

「ミリオは……戦闘向きの『職』じゃないですの。それを知恵と工夫、後は度胸だけでなんとかしていると本人も言っていたですの。自分は装備以上の敵には勝てないとも」

 彼女の言う『本人も言っていた』というのは心の声のことだろう。
 だって――ナイトメアバレットは、一度も泣き言なんて漏らしたことが無いから。

「そもそもが対人特化の装備だから魔物に勝てるとも限らない。自分の想像以上の敵が出てきたら『覚醒する素養も無い』とも。この魔物だらけの戦場は……ミリオにとっては不安材料でしかないですの」

「だったら!」

「でも」

 振り向いて、シャンの唇に指を当てるマール。
 その笑顔は――聖母のように慈愛に満ちていた。

「口に出して約束してくれたですの。『俺に何が合っても、マールを一生護り続ける』と。心の、底から」

 心の底から。
 本当に同い年なのかと怪しくなるような表情のマールは、どこまでも澄んだ目をシャンに向けた。

「わたくしは、ミリオを信じていますの。何があっても、絶対に。わたくしが死ぬその瞬間まで――いえ、仮に死んだとしても。わたくしがミリオを疑う日は来ませんですの」

 信じる。
 それがマールにとってどれほど重い言葉なのかは、彼女と過ごしてきて少しは理解出来ているつもりだ。

「それにミリオが言っていたですの。『世界で一番信じてる』っていうセリフは、メインヒロインだけが言ってもいいセリフだって!」

「……確かにナイトさんなら言いそうですね」

 きゃぴっ、と楽しそうに笑うマールは……可愛らしく、愛らしく、非常に「年相応」に見えた。

「さて、マール。お茶が入りましたよ」

「わーいですの。シャンはお茶を淹れるのが上手になったですの」

「ありがとうございます」

 マールに褒められ、自分の口角が上がっていることを実感する。こそばゆい感情だが、悪くはない。
 二人分のカップを用意し、そこにお茶を注ぐ。ふわりと優雅な香りが室内を満たし、外が戦場であるということを一瞬忘れさせてくれた。
 マールがカップを持ち上げ、香りを楽しむ。

「いい香りですの」

「ええ」

 シャンも頷き、お茶を一口。我ながらいい出来だ。

(……いつから、ですかね)

 自分が、人族である彼女の隣にいることを……心地よいと思うようになったのは。
 姉と自分を離れ離れにした憎き人族。
 口に出すどころか、考えたくも無いような仕打ちを与えてきた人族。
 一生分かりあえる日は来ないと思っていた人族。
 なのに今や、恐らく姉の隣にいた時とほぼ同等の心地よさと安心感を得ているだろう。
 それも、自分の心を読むかもしれない女性の隣にいて。

「マールの人柄、でしょうか」

「何がですの?」

「いえ、何も。美味しいですか?」

「ええ、とっても!」

 嬉しそうなマールを見ると、こちらも嬉しくなってしまう。
 お茶をふーふーと冷ましている彼女は、本当に愛らしくて……ミリオではないが、守りたいと思う。
 何があっても、絶対に。
 だから――

「……マール」

「ええ。二人ですの」

 ――扉の向こうで息を殺している二人から、必ずマールを守ってみせる。
 決意を固め、マールの前に出た。いつでも……彼女の盾になれるように。

「あと……五秒で入ってくるようですの」

「承知しました」

 マールの魔法であれば、たとえ壁が何枚あろうが心は丸裸だ。
 彼女の言う通りきっかり五秒後、扉がぶち破られる。中に入ってきたのは耳の尖った二人の男性。

「魔族、ですの」

「へぇ、嬢ちゃん。落ち着いてるじゃねえか」

「まあ暴れられるよりはいいわ。大人しく俺らについてきな」

 そして二人はスッとシャンに目を向ける。値踏みするような……蛇のような目を。
 ゾッとした気持ちの悪さを感じたが、それは無視。シャンはメイド服の襟を、マールはワンピースの横腹部分についているリボンに手をやる。

「大人しくついていくとどうなるんですの?」

「お菓子があるぜ」

「後はジュースもな」

「玩具だって買ってやるよ」

「おう、大人の玩具かもしれねぇけどな!」

「がはは! ちげぇねえぜ」

 下品な連中だ。
 笑い合う二人を睨みつけながら……ニヤリと笑う。

『いいか、まず逃げろ。話はそれからだ』

 ミリオの教えを思い出す。

『下手に戦おうとするな、とにかく逃げに徹しろ。オレの助けがすぐに得られないと思ったら特にだ』

 あの日、このメイド服を渡しながら彼は真剣なまなざしで『護衛の心得』をシャンに伝えてくれた。

『相手を観察しろ。こちらを殺しに来ているのか誘拐しに来ているのかだ。それによって対応が変わる。相手がマールを誘拐しようとしてるのならば……今から教えるプランAだ』

 今、相手はついてこいと言った。
 それは即ち……誘拐しようとしているとみて間違いないだろう。

『下手に抵抗してしまえば、相手もこちらに攻撃せざるをえなくなる。そうすると流れ弾で死んでしまうかもしれない。だから抵抗せずに逃げの一択だ』

 逃げの一択。
 そのための……第一歩。

『相手は女二人だって油断している。まずはその隙をつくんだ』

 二人は明らかに油断している。それはそうだろう。シャンとマールに戦闘能力は無いのだから。
 だが、その油断が命取り。

「もしも、黙ってついて行けば……シャンは見逃してくれますの?」

「おう、いいぜ。命はとらねえよ」

「命はな」

 構える素振りすらない。
 ならば――

「そうですの。まあ、わたくしは頭の先からつま先まで、余すところなくミリオの物ですのであなた方にあげられる部分は無いんですのよ。申し訳ないですの」

「そうですね」

 お断りのセリフを言うと同時に、魔族二人は不機嫌になる。

「あ?」

「面倒なこと言ってんじゃねえぞ」

 そう言って
 マールとシャンは目と目を見合わせ――二人同時に叫ぶ。

「「着衣解放クロス・バースト!」」

 マールは腰のボタンを、シャンは襟のボタンを押すことで二人の衣服が輝きだす。それは前方にいる人間の網膜を焼く光の爆弾。 
 それと同時に、シャンのメイド服が変形し迷彩柄のボディスーツに。
 マールのワンピースも輝きと同時に変形して真っ黒なボディスーツに。

「ぐあぁっ!」

「な、なんだこれは!」

「マール!」

「ええ、行きますの!」

 バッと横に向かって駆けだす。目指すはウォークインクローゼット。
 シャンが扉を開けてマールが中に入り、そして服をかき分けるとミリオの部屋に直通になっている扉に行き当たる。

「に、逃げたぞあいつら!」

「ちくしょう、隠し扉でもあるのか!」

 当たり。

『逃走経路は確保しておけ。初めて行く場所だとしても絶対にそれだけは頭に叩き込んでおくんだ』

 普段暮らしている王城だから逃走経路はバッチリだ。
 ミリオの部屋からそのまま廊下に出て走り出す。本来であればベランダを伝って外に出るのだが……外は魔物でいっぱいだからそのルートはとれない。

「……追い付かれますね」

「むぅ、ミリオのスーツのおかげで普段よりも速く走れていますのに」

 シャンは鼻と耳で、マールは魔法で敵の位置は完璧に把握できる。しかし把握出来たとて逃げ切れるとは限らない。
 だが、ミリオが来るまでの時間さえ稼げれば――

「あっ、いたぞ! 待ちやがれ!」

「てめぇら、待たねえと殺すぞ!」

 怒号。
 拘束の魔法を使われると厄介だが――

「……シャン、二秒後に右ですの」

「承知」

 ――マールの魔法で心が読めるのに、魔法が当たるはずもない。
 真っ直ぐな廊下を走り……何とか階段までたどり着く。これを通って下の階に行ければ、本館に繋がる連絡通路だ。
 いくら政敵がいたとしても『魔族の討伐』という手柄を他に譲りはしないだろう。つまり本館にさえ行けば安全だ。

『どこまで逃げるか。これも事前に決めておけ。ゴールの無い逃走は精神にくる』

 シャンはポケットの爆弾を取り出す。音と光で敵を攪乱する……ミリオはスタングレネードと言っていたか。
 ピンを抜き、後方に向かって投げる。

「あっ……んああああ!」

「ぬがあ!」

 悲鳴が聞こえるのを無視し、階段にたどり着く。ほとんど落ちるみたいなスピードで階下に降りると、連絡通路はすぐそこだ。

「間に合――っ!?」

 ガチャン! 連絡通路の扉が開かない。
 鍵がかかっている様子も無いのにビクともせず、シャンは混乱する。

「えっ……な、なんで、ですかっ!?」

「……やられました、ですの」

 マールが苦い顔になる。

「このフロアにだけ結界を張ったようですの。わたくしたちが逃げられないように」

「そんな……!」

 マズい。
 シャンは真っ白になりそうな頭をフル回転させ……とにかく時間を稼ぐために階段とは逆方向に逃げ出した。

「マール、こっちへ――っ!」

「行かせねえよ。ルーツィア様の言う通り、子供だからって舐めなくてよかったぜ」

「は、挟み撃ち……ですか」

 挟み撃ち。
 シャンはギリッと歯を食いしばる。流石に向こうは戦い慣れしているだけあって、出し抜くことは出来なかった。

「……危なかったぜ」

 ――こつ、こつ。
 冷たい足音が後ろの階段から聞こえてくる。

「――ッ!」

 逃げ場を失ったシャンは、せめてもとマールを背に庇い連絡通路のドアの方へ。

「さっきの目くらまし、いくらでもしてくれていいぜ」

「どうせ逃げ場なんてねえからな。ただし、一回使うごとに一本テメーらの骨を折る。今は二回だから……二本だ」

 苛立ちを隠そうともせずこちらへ近づいてくる魔族二人。ここで捕まってしまえばマールはともかく、シャンの命は危うい。

(どう、する……)

 もう手は無い。いや、シャンはこっそりとミリオから……銃を渡されている。人を一人殺せる、最後の手段だ。
 しかし仮にそれで一人殺せたとしても、相手は二人。間に合わない。

(どうすれば、どうすれば……!)

 混乱と恐怖で涙がジワリと浮かんできた。
 それを見た魔族二人が、にんまりと笑みを浮かべる。それはそれは、楽しそうに。

「おいおい、ここでちびるなよ?」

「ああ。ちびるなら便所に連れて行ってやろうか。がははは!」

 カチカチと歯が噛み合わない。噛み合わないが……心までは折るまいと相手を睨みつける。
 しかしそれは魔族の嗜虐心を煽っただけなのか……連中はさらに大声をあげて笑うだけだ。

「シャン」

 口惜しさと恐怖と混乱。
 そんなぐちゃぐちゃな感情でどうすれば良いのか分からなくなっていたシャンに……マールが声をかける。
 優しく、微笑んで。

「ミリオはなんて言っていたですの?」

「え?」

「『最後に――オレを信じろ。マールが信じるオレを、俺が信じる……オレを』、ですのよ。忘れちゃいけないですの」

 そうだった。
 ミリオは信じろと言っていた。ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張って。そうやって最後まで足掻いたら……後は、信じろと。
 誰よりも強く、誰よりもカッコいい自分が絶対に間に合うから、と。

「そう、でしたね。ナイトさんを……信じます」

「はっ、なーに言ってやがんだ!」

「テメーらを守る騎士ナイトなんて一人もいやしねぇんだよ!」

 嘲るように嗤った魔族の一人がマールに向かって手を伸ばす。シャンはその腕に噛みついてやろうかと歯を剥き出した瞬間――

「いいや? いるさ、ここに一人な!」

 ――ガシャーン! と。
 結界と一緒に連絡通路をぶち破って……黒い影が降り立った。
 それは、マールが世界で最も信じている男で。
 それは、シャンが世界で最も頼りにしている男で。
 それは――二人が思う、最高で最強で最愛の男で。

「ミリオっ!」

「ナイトさん!」

「ああ。……よく頑張ったな。後は、任せろ」

 最強のヒーロー、ナイトメアバレットの登場だった。

「ハロー、悪夢ナイトメアのおでましだ。坊やマンモーニどもはねんねのお時間だぜ」

 ミリオはそう言ってニヒルにほほ笑むと、ホルスターの銃を抜いてくるくると回す。
 そしてチャキッ、と音を立てて両腕をクロスさせて敵に向けた。そのあまりにカッコいいモーションに……シャンのハートがどきんと跳ねる。

「きゃーっ! カッコいいですの、ミリオ!」

「ナイトさん……!」

 マールが黄色い声援を、シャンが安堵の声を漏らすとミリオは少しだけ肩を上げて答える。やはりカッコいい。

「な、なんだ貴様……!」

「バカな、バカなバカな! ルーツィア様が貴様を殺しに行ったはず……!」

「そんな、ルーツィア様が取り逃がすなんてことが……!?」

 魔族は動揺しつつも構えるが、ミリオはやれやれと言うように首を振ると「ハンッ」と鼻で嗤った。

「熱烈なラブコールを送ってきた奴がいてな。オレのマグナムをぶち込んでやったら真っ赤な涙を流して喜んでたぜ」

 そう言って、いつの間にか二振りの剣を取り出すミリオ。
 シャンにはそれが何なのかは分からないが――二人の魔族は驚愕に目を見開いた。

「う、嘘……だ、嘘だ!」

「ちなみにこいつは最近手に入れた武器だ。カッコいいだろう?」

「貴様ぁぁぁっぁぁっぁあ!!! ルーツィア様をどうし――」

 パァン!
 魔族の一人が腕に炎を纏わせて殴り掛かろうとしたが、ミリオの銃から放たれたたった一発の弾丸で黙り込んでしまった。
 あまりの早撃ちにもう一人の魔族は一瞬固まる。だがミリオからすればその一瞬があれば十発は弾丸を放てるのだ。
 何か魔法を行使しようとしたのだろう。だがそれよりも速くミリオの弾丸は彼の脳に滑り込み……破壊してしまった。

「冥土に土産話としてオレの名を持っていけ。オレの名前は魔弾の射手ナイトメアバレット。狙った獲物はハチの巣だ」

 銃口にフッと息を吹き、くるくると回転させて腰のホルスターに仕舞う。
 そのあまりのかっこよさにマールは目をハートにして……ミリオの胸に飛びついた。
 もちろん、シャンは目をハートにしていないが……ミリオの胸に飛びついた。

(ああ――)

 やっぱり、信じて良かった。
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