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第二章 デネブの塔なう

47話 塔わず

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 さて、神器の使い方も分かったし、帰ろうかな。
 俺がゴーレムを全部倒しきったところで、扉が再び開いた。
 ……うん、やっぱ監視……というか、見られていたんだろうね。

「防御面では厄介だったけど、攻撃は単調だったね。あのゴーレム」

『ソリャアナァ。アイツはアクマデ、キアラが作ッタ練習用のゴーレム。相手を殺サネエ様に作ラレテイルカラ、防御面はサテオキ、攻撃面は雑魚中の雑魚ダゼェ』

 ただ殴るしかしてこなかったもんね。あのゴーレム群。
 とはいえ、硬さ自体は文句なしだったわけだし、神器の試運転にはちょうどよかっただろうね。

「じゃあ帰るかな」

『ソウイヤヨォ、キョースケ』

「ん? どうしたの、ヨハネス」

『テメェは、魔法と魔術の両方を使エルヨウダガヨォ。チャント違イは分カッテンノカァ?』

 そう言われて考えてみると……うん、確かによく違いが分かっていない。

「うーん……感覚的だけど、魔法は、生み出された炎や風が、最初から決められた動きしかしないもの。魔術は、生み出された炎や風そのものを操ること。なんて思って使っていたよ」

『アァ、ソレデ概ね間違イジャナイゼ。ダカラ、テメェの使ウソレは魔法効果を持タセタ魔術ミテェにナッテル。もう少し使い方とかは教エテヤルケドヨォ、大変ナコトニナリタクナキャ、外デハ三属性混合魔術とか使ワナイ方が身のタメダゼェ。魔法は属性の混合が基本的には出来ナイノニ、魔術と併用スルコトデソレヲ使ッチマッテルカラナァ』

 どうやら、俺が炎と風と水を同時に使うのは珍しいらしい。
 もっとも、頼まれたってよほどのことが無い限り使わないけどね。

「けどまあ、やり方やもっと効率のいい方法はちゃんと教えてくれるんでしょ?」

『マァ、ソウダナァ。ソレガ主神サマとの約束デモアルカラナァ』

「主神サマ、か……」

 確か……ゼウティヌス、だったかな? 主神の名前は。
 俺たちは、そのゼウティヌスとかいう奴のせいでこっちの世界に来たらしいけど……

「神、なんてものがいるんなら……俺たちを呼びつけなくても、人族くらい救えそうなものだけど」

『アァ、ソリャア無理ダナァ。まあ、今はマダ教エラレナイケドヨォ。ソノウチ教エテヤルヨ。ット、ソレハソウト』

 俺が少しアンニュイな気分になっていると、ヨハネスが少し嬉しそうな声をあげて、俺に訊いてきた。

『俺サマは知リタガリノ悪魔! 何カヲ教エル代償に、テメェにも俺サマに何か教エテモラウゼェ!』

「なるほど、知りたがり、ね……」

 その通り名は、こういう部分なのかな。

「別に構わないけど……そうだ。元の世界の話をしようか」

 教えても当たり障りのない内容で。
 そういうわけで、俺はヨハネスが納得するように光の屈折とかみたいな理科系のことや、向こうの世界の文化とかの話をしてあげた。
 こういうことを教えておくと後で俺が魔法とかで助かりそうだし、文化は知っていてもらえると、それに似た魔道具とかを教ええてもらえるかもしれない。

『ソノ光ノ屈折トカイウノハ知ッテイタガ、ソンナ文化ダッタノカ。ヘェ……ナカナカ興味深イネェ』

「でしょ?」

 そもそも知識っていうのは、他の知識と合わさると新たな発見があるものだしね。俺がヨハネスに教えることで、さらなる強化があるかもしれない。
 貰ってしまった以上は、使いこなさないと意味が無いからね。

「じゃあ、今度こそ戻ろうか。さすがに扉が開いてから待たせ過ぎだもんね」

 そうヨハネスに言った後、俺は扉を潜って、キアラや異世界人たちがいる間に戻る。
 そこでは、ちょうどキアラたちが出迎えてくれた。
 正確に言うと、キアラと佐野が出迎えてくれた。異世界人たちはどうしたんだろうか。
 佐野が特に慌てていないところを見ると、特に何か問題があったわけじゃないだろうけど。

「どうぢゃった?」

 どうせ見ていただろうに。
 そんなことを訊いてくるキアラに、俺は肩をすくめつつ苦笑いする。

「ん、凄い使い勝手の悪い神器だね。正直、無い方がよかったかも」

「ほぅ、そうか。しかし、返されても困るぞ?」

「返しはしないよ。モンスターマシンほど、性能はいいものだからね」

 俺の返答に満足したのか、ニヤリと笑うキアラ。
 それに俺はため息をついて神器を前に突き出す。

「で?」

「で? とは?」

「いや、いつになったら出してくれるの? 塔から」

「ん? もう出るのか? ここなら誰にも邪魔されずに、神器の練習ができるんぢゃぞ?」

「いや、さすがにこれ以上いると日程間隔を失いそうでね。久しぶりに太陽が見たいよ」

 というか、さすがにそろそろ外が恋しい。
 そもそも……ここはあくまでキアラの空間。
 人に支配された空間っていうのは好きじゃない。

「というか、異世界人たちはどこにいるの?」

「向こうの部屋ぢゃ。そちらで、妾がゴーレムを出したからのぅ。訓練しておるよ」

「みんな復活したばっかりなのに、元気だね」

 俺が神器を出して戦っている間に、どうしてそんなことになったのか。

「いや、私も何がなんだか……」

 佐野は知っておかなきゃダメでしょ。

「単純な話で、妾の分身が稽古をつけてやると言っただけぢゃ。トーコと積もる話もあったからのぅ」

 というか、分身なんてできるんだ……うん、正直、キアラの底が知れない。
 天川にぶつけた覇気からして、戦闘能力が凄く高いというのは分かっていたけど……もしかして、加藤みたいにいろんな魔法が使えるタイプなのかもしれない。
 ヘリアラスさんの感じからして、キアラもたぶん俺についてくるんだろう。
 ……万能型の人はいたら便利だから、特に追い返すつもりはないけどね。
 キアラが信頼できるなら、だけど。

「まあ、なんでもいいや。天川達が残るんなら、俺だけ先に出してよ」

「それは無理ぢゃ。というか、神器の持ち主を塔から出すと、塔がそのまま無くなってしまうのでな。出るなら、お主ら全員同時に、ぢゃよ」

 どうやら、俺だけ出るのは出来ないらしい。
 俺だけ出られるなら、異世界人たちと一緒に行動しなくていいと思ったんだけどね……

「それならしょうがない。彼らの訓練が終わるまで俺は休ませてもらうよ。……というか、佐野はキアラと何の話をしてたの?」

「え!? そ、それは、その……」

 何故か顔を真っ赤にして俯いてしまう佐野。なんだろう、そんな変な話をしてたのかな。もしくは、男には聞かせられないような話……
 もしも後者だったら、これ以上訊くとセクハラになりかねないので、俺はそこには追求しないことにする。

「そういえば訊きたいんだけど……キアラは、塔から出たら俺についてくるの?」

 俺は取りあえず炬燵のなかに入りながら、キアラに向かって尋ねる。
 もう佐野もさすがに慣れたのか、自然に炬燵の中へ入っていった。

「うむ、そうなるのぅ。妾たち枝神の役割は、神器を渡すに足るかの見極め。そして、それにふさわしくないと感じた時に没収すること。この二つぢゃからな。まあ、お主が没収せねばならないような状態になるとは考えづらいがのぅ……」

 ふうん、やっぱりそういう目的で付いてくるんだね。
 というか、神器を没収されるような状況ってなんだろう。

『ソンナニビビル必要はナイゼキョースケ! 没収と言ッテモ、出来ることは主神サマにチクルコトダケダ!』

 そういえば、まだ神器を元に戻してなかった。

「ヨハネス、少し黙っていてよ。……神器を没収される状況ってどんな状況?」

「ふむ。神器の力を使って、不必要な殺戮や、犯罪を犯さない限りは大丈夫ぢゃ。普通に暮らしておればなんの問題もないぢゃろう」

「まあ、そうだろうね」

 本当にそれだけなら、だけど。
 ……油断させておいて、後ろからブスリ、なんてことは、向こうから呼びつけて置いてそれはしないと思うけど、それでも、絶対にないとは言い切れない。
 俺のそんな思考を読み取ったのか、ヨハネスがまたも勝手に喋りだした。

『ソレハ大丈夫ダゼェ! 枝神は神器保有者に害を与エラレナイ! 攻撃はモチロン、毒を盛ルコトモ、他人を使ッテお前を殺スコトモ出来ナインダゼェ!』

「……ヨハネス、おしゃべりはそこまでぢゃ」

『オット! 口が滑ッタカナァ!』

 キアラの反応からして、今のセリフは本当と考えてもいいだろう。
 でも、攻撃されないっていうのなら、少しは安心できるかもしれない。

「……キョースケよ、その神器をしまえ」

「ん、どうやればいいの?」

「元に戻すと念じればそれでよい」

「わかった」

 俺は元に戻るように念じて、神器をそのままアイテムボックスにしまう。
 ……ヨハネスが封印されたのは、こういうところなのかもね。
 枝神というものが何かは分からないけど、喋っていいことと、悪いことがあるのはさっきまでの会話で察してる。
 けれど、ヨハネスは自分の知識のためにいろんなことを話すみたいだから……その辺かもね。

「さて、どうにもこうにも……本当に、この神器はおかしいね」

「そうぢゃろう。というか、もっと使いやすくて強い神器はいくらでもある。ぢゃがしかし……逆に言うならば、お主以外の誰もアレを使いこなせまい」

 異世界人の中だったら俺だけだろうね。

「最高の神器は、アマカワの『ロックバスター』であることは間違いない。ぢゃが、『パンドラ・ディヴァー』――あれは使い手によって最強にも最弱にもなる神器。そして、お主はアレを使って最強まで至れるほどの実力者になれるぢゃろう」

 今はまだ無理ぢゃろうが、という言葉を言外に含ませながら、キアラは言う。

「買いかぶってくれるね」

 その期待なのかなんなのかよくわからない言葉に俺は肩をすくめて、口の橋を吊り上げる。

「そもそも、強さなんて相対的なものでしょ。俺は俺の守りたい人だけ守れればいい」

 そう言いながら、佐野を見る。

「もっとも、守り切るためには、今までの力だけじゃ無理そうだから、もう少し実力をつけるつもりだけどね」

「な、何故私を見る? 京助」

 佐野が弱いとは言わない。けど、甘いからね。
 それに……ゴーレムドラゴンより強い敵が出てこないとも限らない。

「さあね。取りあえず、俺が守りたいのはこの世界では佐野一人だからね」

「ふぇっ?」

 シュボッ、と赤くなる佐野。
 というか、さっきの京助ってのはなんだったんだろう。今までは普通に清田って言ってたのに……まあ、いいか。

「おや、妾は守ってくれぬのか?」

 キアラがいつの間にか俺の腕に縋りついて、うりうりと指でつついてくる。

「……キアラは俺が守る必要ないくらい強いでしょ」

 というか、正直俺も勝てるとは思えないんだけど。

「トーコが強かったら守らんのか?」

「普通に守るけど?」

 何を言っているんだろう。

「まあ、目の前で死なれるのは寝覚めが悪いから、俺の目の前にいる限り死なせないけどさ」

「ツンデレぢゃのぅ」

「さて、佐野。この枝神ぶっ飛ばしてここから出ようか」

「そうだな」

 まさかの同意をされて、キアラの顔が少しひきつっている。

「と、トーコまで……こ、コホン。これこれ、帰るんならアマカワたちも連れて行くんぢゃぞ。あ奴らを連れてこんか」

 ……面倒な。

「しょうがないね」

 俺は天川達がいるという部屋に行くと、そこでは異世界人どもが全力でゴーレムと戦っていた。

「こっちだ! そこに追い込め!」

「うおおおお!」

「はぁ……もう帰りたいからね。悪いけど全滅させてもらうよ。喰らい尽くせ――『パンドラ・ディヴァー』」

 俺は神器を解放すると、封印帯と魔力回復のコンボ、そして水弾の連続放射でその場にいた10体のゴーレムを全滅させた。

「「「え」」」

「さ、そろそろ帰る時間だよ」

 今の一瞬なら俺の神器の能力は分からないはずだから、特に問題ない。というか、むしろ間違えて認識してくれていた方がいい。
 どうせ神器を持ってることはバレているんだから、見当違いの能力と勘違いしてくれると嬉しいんだけど。
 今ので言うなら……斬撃を飛ばす神器とか?

「というか、アマカワたちが苦戦するほどの強さだとは思えないんだけど……」

 そう思って周りを見ると、俺が封印して魔力に還元したゴーレムじゃない、水弾で倒したゴーレムが再生して回復しだしているのを見た。
 なるほど、自己再生付きだから決め手にかけていたんだね。

『マァ、サッキテメェがブッ殺シタゴーレムのダウングレード版ミテェなモンダカラナァ!』

 あ、そうだったんだ。

「き、清田……今のは?」

「さあ?」

 天川からの問いを適当にはぐらかして、みんながポカンとしている間に、他のゴーレムを片付けて、向こうの部屋に来るように促す。

「そろそろ外に出ないと気が滅入るし、俺は俺でやることがあるんだ。だけど、お前らが出ないと俺も帰れないらしいからね。だから、帰ってくれるとありがたい」

「そ、そうか……」

 なんか釈然としない様子の天川を放っておいて、俺はキアラのいる部屋に戻る。

「みんなに声をかけてきたから、もうすぐ来るんじゃないかな」

「ほう、そうか」

 キアラがそう言っていると、みんなが戻ってきた。

「……あの、清田君」

「ん? どうしたの、新井」

「その……わ、私、心強いです! 清田君がこれからは一緒に戦ってくれますから!」

 ぎゅっと拳を胸の前で握って、俺にそう告げてくる新井。

(……誰も、一緒に行くなんて言ってないんだけど、ね)

 それを半分冷めた気持ちで、半分困った気持ちで俺は苦笑いを返す。
 その反応に何か感じる部分があったのか、新井がとても不安そうな顔を向けてきた。

「一緒に、戦ってくれます、よね……?」

 そんな顔をされても困る。
 だって、俺は異世界人どもと戦う気は全く無いからね。いつまでもこんな危なっかしい人たちとはいられない。
 だけど、ここで否定したらまた面倒くさい展開になるのは目に見えている。具体的に天川という名前の勇者(笑)によって。
 だから――俺は面倒くさいことを回避するために、この場をごまかすことにした。

「俺だってソロプレイはそろそろ飽きてきたからね。大丈夫だよ」

「ほ、本当ですか!?」

「うん。本当だよ」

 だって、どうせキアラはついてくるんだし……佐野だって誘うつもりだ。
 どうしたってソロプレイにはならない。
 嘘だってついてないし、特に良心の呵責も感じない。

「そ、そうなのか! 京助!」

 佐野も食いついてきた。……なんでこう、みんなこうも俺と一緒に行きたがるんだろう。って、ああ。今や神器を持っているからか。
 神器を持っている仲間は、そりゃあいてくれた方がいいよね。

「そもそも、俺は能力の都合上魔力を使うことが多いからね。残念だけど、やっぱり仲間がいないとつらいことになる」

 もっとも……神器があるから、その魔力不足に関しては全く心配はいらなくなったんだけどね。
 ともあれ、なんとか新井の追及を躱した俺は、キアラの方を向く。

「じゃあ、キアラ。そろそろお願い」

「ふむ、ではそろそろ地上へ行こうかのぅ。みな、近くにいるものと手をつないで輪になれ」

 そう言われたので、俺は無難に男子と左手をつなごうとしたところで……左手を佐野に掴まれた。
 そしてワンテンポ遅れて新井が俺の右腕を掴もうとしてきたので、反射的に避けてしまった。

「な、なんで躱すんですかっ!」

「……利き手を渡すわけないでしょ」

「そうだぞ。戦士として、利き手を渡すようなことはしてはいけないんだ」

 なぜか得意げな佐野。いやまあ、佐野に右手を掴まれそうになってたら別に避けなかったけど。

「はいはい、分かったから。じゃあ、佐野は右手で……新井は左手にして」

 どうにも、信用できない人に利き手を渡すのは好きじゃない、というか嫌だ。
 だからしょうがないので、佐野と右手を掴む。

「というか、なんで二人とも積極的に俺のところにくるのさ。女子は他にもいるだろうに……」

 そう思って他の女子の方を見ると、すでに天川の両手は王女様と空美で埋まっており、井川と木原はもはや二人の世界を作りすぎていて、間に入りづらい。

 ……なるほど。

「なら、これでいいか。ほら、佐野と新井も他の人と手をつないで。輪にならなきゃいけないみたいだし」

 そうして、キアラを中心にして俺たちは輪になった。

「では、行くぞ。みな、手を放さぬようにの」

「ん、了解」

 俺が言うと、ぼんやりと俺を含めてみんなの体が淡く輝きだす。
 ……井川のテレポートもこんな風だったかな。
 こうして、中々にあっさりと、何度も死ぬような目にあった塔の中から俺たちは出たのであった。

(……じゃ、ヨハネス。お願い)

 心の中でヨハネスに念じると、ヨハネスも答えを返してきた。

(アア。ッタク、難儀な奴ダナァ、テメェも)

 難儀、か。そうかもね。


~~~~~~~~~~~~~~~~


「っしゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!! 生きてるぅぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!!」

 白鷺が物凄い声量で叫んだ。
 それを見つつ、明綺羅は苦笑いする。

(まあ、死にかけたんだ。さもありなん、か)

 明綺羅はその光景を見ながら、自分もホッと一息ついていることを実感する。
 何度も死ぬかと思ったが……どうにか生きている。
 辺りは夜で周りに人はいない。そして、どうやら明綺羅たちは、元々塔のあった場所にいるらしい。
 ……あれほど自分たちを苦しめた塔とはいえ、なくなってしまうと少し寂しさを感じる。前の塔では特に厳しさを感じなかった故、なおさらともいえるだろうか。
 失ったものは少ない。何せ命があるんだから。しかし、得たものがあるかと言われると……少し、首をかしげる程度でしかない。
 そんなことではいけないと思い、首を振って前向きに考えようとして口を開く。

「……これからは、清田がこれからは俺たちと戦ってくれるんだ。無駄ではなかった」

 そのことが自分に安心感を与えていることに、無性に恥ずかしさを覚える。
 自分が守るつもりで、この塔に臨んでいた。しかし、結果は清田に守られ、最終的に清田がすべてに決着をつけてしまった。自分は、とどめをさしただけ。

(滑稽だな、俺は)

 滑稽にもほどがある。
 そう自嘲したときに、不意に後ろから声が聞こえてきた。

「そうねぇ、確かに、滑稽ねぇ」

「へ、ヘリアラスさん!?」

 バッ、とティアーと呼心が明綺羅の前に出る。
 ……そんなに彼女に敵愾心を燃やさなくてもいいんだがな。

「滑稽ねぇ。その清田とやらは、どこにいるのかしらぁ?」

「「「え」」」

 明綺羅、呼心、ティアーの声が重なる。
 ……どうやら、明綺羅たちの塔はまだ終わることができないようだ。
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