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第二章 デネブの塔なう

43話 VSゴーレムドラゴンなう⑤

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 四本の腕から振るわれる爪を、斬り、弾き、躱し、俺はゴーレムドラゴンに一撃を入れる隙を待つ。
 こんなに回復力が高いと……やっぱり、デカい攻撃を一発いれなくちゃ攻撃が止まらない。一応何度か、魔魂石のある新造部分を狙ったけど、それは四本の腕を使ってまでガードされてしまい通らない。ずっとそこを狙うには、狙いづらい位置だから困っている。
 だけど……と思って魔法を放つが、魔法は全然効かない。こうなってくると、もはや大規模攻撃ができなくなる。

(……待てよ)

 そういえば以前、体表が固くて攻撃が効かない敵と戦ったな。
 その時、俺はどこを攻撃した?
 俺は――

「グギャオオオオオオオオオオオ!」

「うるさいよ、ゴーレムドラゴン」

 水晶攻撃が来ていない以上、天川達の方へ水晶攻撃が降り注いでいるのはまちがいない。
 俺は水晶攻撃のことを頭から外して、口内を目指して突撃する。アックスオークに昔やったように、口内を狙って体内から攻撃する。
 爪を躱し、ゴーレムドラゴンの口元へ迫ったところで――無論、ゴーレムドラゴンがこれ幸いと光球を放ってきた。
 光球だけはマズいので、なんとか回避する。

「さすがに、口元まで近づくのは難しいね」

 だけど、こっちの終扉開放状態も長くもつものではない。強引にでも勝負を決めに行こう。
 凄まじい勢いで振るわれる爪に、夜の槍の穂先を突き立て――『砲弾刺突』で腕ごと肩の方まで貫き、ゴーレムドラゴンの腕を粉砕する!

「ゴロゴロオオォォォォォォォォォォォ!」

 その隙を見逃さず、俺はゴーレムドラゴンの肩の上に乗り――間髪入れずにゴーレムドラゴンの頬をめがけて『音速突き』を放つ。
 ズガン! とゴーレムドラゴンの頬が壊れて、中が露出する。

(よし、これなら――)

 ――いける、と追撃を加えようとしていたため気づくのが遅れてしまった。
 ゴーレムドラゴンの尻尾が迫っていることに――

(ま、ずっ!)

 マズい、マズい、マズい!
 無論、ここで尻尾を迎撃するのは容易い。振り向いて槍を振るえばいいのだから。
 しかしそれは同時に、ゴーレムドラゴンにあの光球を撃つ隙を与えることになる。撃たれたら回避のために距離を取らなくちゃいけない。せっかくここまで詰めたのに。
 しかも行動パターンが一つ増えたというのも問題だ。どうしてもこの攻撃がちらついて、同じようには潜り込めない。
 制限時間は少ないっていうのに……ッ!

(って言っても、背に腹は代えられないね。一度離脱して――)

 ガキィ!

「佐野!?」

「清田、速く!」

 なんと、どこからともなく現れた佐野が、尻尾を一瞬受け止めてくれた。
 何故――という思考を強引に振り払い、俺はゴーレムドラゴンの口内にエクスプロードファイヤをぶち込む!

「ゴオオオルルルルオオオオォォォォォォォォォォォ!!!!!」

 さすがに効いたのか、大口を開けるゴーレムドラゴン。
 この時を待っていた、とばかりに俺は口の中に飛び込み、槍をほんの一瞬のつっかえ棒として――全力で魔力を振り絞る。

「風水炎三属性混合魔術――」

 今までとは桁違いの魔力を、この一撃に込める――

「――超魔導爆砕撃、ってね」

 ドドドドドドドッドオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!

 ――直後、ゴーレムドラゴンの体内で大爆発が起きた。
 俺はその爆風を風の防壁で防ぎ、佐野を抱えて天駆で空に駆けあがる。
 そしてゴーレムドラゴンをチラリと見ると……

「こ、これでゴーレムドラゴンの原型を保ってるの……?」

 半身が吹き飛び、顔も半分が無くなり、今にも倒れそうだが……核である魔魂石だけは、今の攻撃で潰しきることができなかったらしい。タフだね。
 だけど、動きは止まった!

「ウォーターバインド!」

 残りの魔力のほとんどを使って、俺はゴーレムドラゴンの動きを水で封じる。
 これなら、避けられないだろ――ッ!

「天川、今だああああああああああああああ!!!」

 佐野が天川に向かって叫び、俺はまだギリギリ残っていた魔力を振り絞り天駆で佐野と共に天川の攻撃範囲から逃げ出す。
 そして俺たちの合図が聞こえたのか、ゴーレムドラゴンに勝るとも劣らない魔力が天川のいる方向から膨れ上がる。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!! 『終焉』!!!!!!!!」

 刹那――天川の真上に、光の柱が伸びた。
 それは、とてもじゃないけど言葉で表せられるようなものではなくて、一瞬見とれる。
 そして、その光の柱からいくつもの光線がゴーレムドラゴンに奔り……全身を串刺しにして動きを止める。
 さらにそのまま、光の柱がゴーレムドラゴンに向かって振り下ろされ、圧倒的な光の奔流が、いっさいの抵抗も許さずゴーレムドラゴンを食い尽くしていく。
 視界がすべて光で埋まり――気づけば、そこには何もなかった。

「…………」

「…………」

「…………」

 静寂が辺りを包む。そこではもう、ゴーレムドラゴンの咆哮も、水晶が隆起する音も、何も聞こえない。
 耳が痛くなるほどの静けさの後、ドックン、ドックンと何かの音が耳を打つ。

(なんだ? ……あ、心臓の音か)

 腕の中の佐野の息遣いが聞こえる。

「……やった、のか?」

 抱きかかえられている佐野が俺の方を向き、半信半疑といった風に訊いてきた。
 辺りを『視』てみるけど……魔力らしい魔力は六つだけ。つまり、俺たちの魔力だけだ。
 ゴーレムドラゴンが潜伏しているのか分からないので、ずっとあたりを見渡すけれど、物音ひとつしない。
 ――と、そんなことをしていると、ゴ、ゴ、ゴ、とどこからか大きな音が聞こえてきた。
 俺と佐野は、敵かと思い、即座に戦闘態勢をとる。
 しかし、それは杞憂だったようだ。

「と、扉が……」

「開いた、ね。ということは、俺たちの勝利ってこと、なのかな?」

 とてつもなく大きなドアが、大きな音を立てて開いていってる。
 そう、それは間違いなく、この試練の間の番人を倒した証。
 それはつまり――

「勝った、勝った、勝ったのか!?」

 佐野が武器を落として、飛び上がらんばかりに俺の方を向いてくる。
 その姿に苦笑しつつも、俺は目の前の状況を見て思ったことをそのまま伝える。

「間違いなく、勝ったんだろうね。そう、俺たちの勝ちだ」

 そう言葉にした瞬間、どっと疲れが押し寄せてくる。
 当然、魔昇華も切れた。終扉開放状態なんて、とっくのとうに切れている。

「やった、やったぞ清田!!!」

 佐野が、ガバッと俺に抱き着いてくる。やれやれ、女の子に抱き着かれるのは嬉しくないことは無いけど、今は疲れてるから勘弁してほしいかな。
 だけど嬉しいのは俺も一緒なので、佐野の方に顔を向けて活力煙に火をつけながら答える。

「うん、ほら、これで約束は守ったでしょ?」

「約束?」

「そう、佐野はやらせない、ってやつ」

 言って、少し照れくさくなる。
 その照れくささをごまかすために、上を向いて煙を吐き出したところで――

(あ、これダメなやつだ)

 佐野が何かを言っているようだけど、もう俺には聞こえず……
 そのまま、意識を手放した。


~~~~~~~~~~~~~~~~


「そう、佐野はやらせない、ってやつ」

 清田が、少し照れくさそうにそう言って、ふっと上を向いた。
 冬子は少し気恥ずかしかったが――それでも素直な気持ちを言おうと、勝利の高揚感からか、そう思えていた。
 だから、ちゃんと礼を言おうとして……

「そ、そのセリフ、嬉しかったぞ、清田。それに、守ってくれてありがとう。……な、なあ、清田。なんでそんなことを私に言ったんだ? も、もしかして、わ、私のことが――って、清田!?」

 その途中で、清田がぶっ倒れた。
 それも立ちながら意識を失っていたらしく、顔面から地面に突っ込んでいった。

「き、清田! 大丈夫か!」

 冬子がガバッと助け起こすと……すぅ、すぅ、と寝息が聞こえた。どうやら、眠っているらしい。

「……ああ、空美がなっていたあの状態に似ているな」

 ということは、魔力回復薬さえ飲ませておけばそのうち目が覚めるはずだ。
 そう思って、アイテムボックスから魔力回復薬を取り出す。清田が戦闘前に、全員が持つようにと言って渡されたものだ。
 もしかしたら、この展開を見越して渡していたのかもしれない。

「さて、じゃあこれを……」

 と、瓶の口を開けたところでふと思った。
 ……意識を失っている人に、飲ませるのって大変じゃないか?

「こ、こぼしてしまってもよくないしな……」

 なにせ、この瓶一つしか持っていないのだ。
 できれば早く飲ませてやりたい。じゃなくては取り返しのつかないことになるかもしれないから。
 だけど、こぼしてしまうと空美たちのところまで運ばなくてはならなくなる。
 そうなると、確実にこぼさないで飲ませる方法が必要だ。

「……じ、人命のためだから、仕方がないよな、うん」

 そう、これは人命のため、だから仕方のないことだ。
 人命がかかっている状況だからこういうことをするだけで……決してやましい気持ちがあるわけではなく……だからこれは、そう! 医療行為ともいえる! だから問題ない!

「よ、よし」

 冬子は意を決して、瓶のふたを開けて、口に含んだ。

(人命のため、人命のため、人命のため、人命のため……)

 ぶつぶつと心の中で唱えながら、そっと……清田の唇に唇をつけた。
 そして、口の中の魔力回復薬を流し込む。
 全部流し込んだところで、清田の様子を見ると……どうやら、ちゃんと飲み込んでいるらしい。よかった。

「えーと……と、トーコさん?」

「てぃ、ティアー王女!?」

 冬子は後ろからいきなり声をかけられて、飛び上がってしまった。

「い、いつから、そこに……?」

「『こぼしてしまっても、よくないしな』からですわ」

 つまり一部始終を見られていたわけか。死にたい。

「寝ている男性に口づけをするのは、どうかと思いますが……」

「ち、違うんです! あ、あれは、その、人命のために仕方なく!」

「あ、そ……そう、ですわね。仕方ないですわよね、人命のためですし」

 物凄く生暖かい目で見られた。ああ……穴があったら入りたい……。
 とはいえ、そんな絶望ばかりしている暇もない。向こうは向こうで天川が倒れているはずだから、何か手伝いをしてほしくて冬子を呼びに来たのかもしれない。
 冬子は気を取り直して(顔はまだ赤いが)、ティアー王女に向き直り話を聞く体制に入る。

「それで、どうかしたんですか?」

「いえ、安否の確認をしに来ただけですわ。それと……」

 ティアー王女が疲労回復の魔法をかけてくれて、体が軽くなる。
 清田にもかけてくれたので、清田も回復が早くなるかもしれない。

「ありがとうございます、ティアー王女」

「仲間のために魔法を使ったんですわ。お礼なんていりません」

 少しうれしそうに笑うティアー王女。なんだかんだ言って、この塔の中で一番成長したのはこの人かもしれない。
 前まであった刺々しさが無くなっている。

(これも、清田……お前のおかげかもな)

 こうして寝ているとただの少年なのに……その実、あのゴーレムドラゴンを圧倒するような実力を秘めている。
 元の世界でも、こいつはいわゆる天才肌というやつで……物事の本質の部分というか、いわゆるコツみたいなものをすぐに会得していたイメージがある。
 だが、特に部活動をやっていたわけでもなく、勉強にもそう一生懸命だったわけでもないから……こんなにも活躍している姿を見るのは初めてかもしれない。

「それにしても……キヨタさんは凄かったですね。あのゴーレムドラゴンを、終始一人で圧倒していましたから」

 あんなにアキラさん、アキラさん、だったティアー王女ですら、清田を認めるような発言をしている。
 それを聞いて、冬子はふっと笑みを浮かべて清田の頭をなでる。

「ええ、こいつはやればできる奴なんです」

 それを知っていたのは自分だけだったはずだが、この一件のせいでみんなが知ることになる。
 それが、嬉しいような、寂しいような。

(なんにせよ、おめでとう、清田)

「ただ、何故最初からアレをやらなかったのかは気になりますが」

「おそらく、敵の手の内を探っていたんでしょう。使った後にすぐ倒れてしまうわけですから。できれば使いたくなかったに違いない」

 そもそも、最後に見せたアレはどういう魔法なんだろう。空美や、新井や、井川の使っていた魔法と同じ系統なんだろうが。

「リスキーな技はとっておくものですよ」

「だとしても……いえ、言うのはやめておきます。つらく、なってしまいますから……」

「……そう、ですね」

 そう言われて、辺りを見渡す。
 ……死んだ人間は生き返らない。
 万が一、蘇生魔法みたいなものがあったとしても……こうも跡形もなく吹き飛んでいては不可能だろう。

「白鷺、木原、井川、新井、加藤、難波……終わったぞ。お前らの仇は、清田と天川がとってくれた」

「あら、トーコさんだってずっとアキラさんと私とココロさんを守ってくれていたじゃないですか。……まあ、最後は好きな人を守りに行きたかったようですけど」

「し、仕方ないだろう! 清田が……って、べ、別に好きじゃない!」

「……隠し通せているとでも?」

「隠すも何も、私は清田のことはなんとも思っていないです」

「……そうですか。まあ、そういうことにしておきます。それよりも、キヨタさんを背負ってください。何かあっても困りますから、扉の前まで運びましょう。ココロさんたちも連れてきますわ」

「そ、そうですね! わ、分かかりました。私が責任をもって連れて行きましょう!」

「……お願いしますね」

 ティアー王女の生暖かい目を向けられながら、冬子は慎重に清田を背負うのだった。

「ちなみに、キスの味はどうでした?」

「し、知りません!」

 もう知るか! 扉まで走る!


~~~~~~~~~~~~~~~


「ん……」

「気づいたか、清田!」

「ッ!」

 目が覚めた瞬間、俺はガバッと起き上がる。

「佐野、か……」

 目の前にいたのは、目尻に涙を浮かべた佐野だった。
 そこで改めて周りを見渡すと、阿辺、ティアー王女、空美がいた。天川は寝ているようだ。たぶん、魔力の使い過ぎで俺と同様倒れたんだろうね。
 もっとも俺は彼と違って魔力を限界まで振り絞りはしたものの強大な魔法を撃ったわけじゃない。だから俺が先に目覚めたんだろう。

「ああ……そうか、そういえば、勝ったんだっけ」

「ああ、私たちは勝ったぞ。お前のおかげでな」

 改めて、なんとか生き残れたことにホッとする。
 ……正直、今回は本当に危なかったからね。
 半魔族の力が無かったらと思うとぞっとする。まあ、そうだったとしたらそうだったとしたで何か方法は考えていただろうけど。
 それにしても……

「夜の槍、無くなっちゃったなあ」

 はぁ、とため息をつく。
 とてもいい槍だったのに……と、かなりの後悔に襲われる。
 そもそも、ゴーレムドラゴンを斬り飛ばせるほどの槍っていうだけでも相当性能的に無くなったことが悲しいのに、この世界にたどり着いてからずっと一緒に戦い続けてきた槍だ。まさに相棒とも言うべき武器。それが壊れてしまって悲しくないわけがない。
 正直、クラスメイト達が殺されたことよりこっちの方が悲しいかもかもしれない。さすがに言わないけど。

「一応、探してはみたんだがな……どうにも、見当たらなかった。たぶん、天川の『終焉』で一緒にやられてしまったんだろう」

「んー……まあ、しょうがないよ。それよりも、生きていることを喜ばないと」

 とはいえ、実際あのレベルの武器を失うのは痛い。
 今までヘルミナの店で武器を見ることはあったけど、どれも高価で……しかも夜の槍でいいやと思える程度の性能しかなかった。
 夜の槍は凄い武器だったんだね、と失ってから改めて思う。

(ヘルミナに頼んで、いい武器を作ってもらおう)

 幸い、金はある。この塔で手に入れた魔魂石を売れば、さらなる金になることは目に見えているしね。

「さて……」

 俺は目の前の扉を見る。
 この先に、枝神がいるんだな……

「天川が目覚めたら、行くとしようか」

「そうだな」

「あの……清田君」

 空美が、俺に何か差し出してきた。

「ずっと寝てたでしょ? お腹すいてるんじゃない?」

 よく見るとそれはご飯……というか、おにぎりだ。いくつか皿に乗っている。
 言われて気づく、確かに俺はお腹がすいてるね。ありがたくいただくとしようか。

「ありがとう、空美」

「ううん、気にしないで」

「佐野も食べる?」

 俺は一つおにぎりを皿から持ち上げて、佐野に渡そうとする。
 けれど、佐野は首を横に振った。

「実は、清田達が目覚める前にもう私たちは食べたんだ。だから、遠慮せず食べてくれ」

「ん、そう。わかった」

 俺は改めて空美に礼を言った後、一気にそれをたいらげた。どうやら、自分でも思っていた以上にお腹がすいていたらしい。
 そうやってパクパクと食べているうちに……天川も目覚めた。

「おはよ、天川。覚えてる?」

「ああ……」

「そう、なら結構。目覚めたばかりで悪いけど、もう少し落ち着いたらすぐに扉の向こうの、枝神に会いに行くよ」

 少々天川に酷かもしれないとは思ったけど、俺は扉の向こうに行くのを急かした。
 阿辺がさっさと行くぞ的にせっついていることもあるけど、単純に俺が会いたい。枝神とやらに。
 けれど、せめてご飯くらい食べさせようと思ってそう言ったんだが――

「――いや、待つ必要はない。すぐに行こう」

 なんと、天川がむくりと立ち上がってそう言った。
 その眼には、強い光が宿っている。

「すぐに行って――そして、一つやりたいことがある」

「ふうん? 何がしたいの?」

「お門違いだとは思うが……どうしても、一発殴らなくては気が済まない」

「……いいんじゃない?」

 正論は、言わないでおこう。
 その気持ちもわからないわけじゃないしね。
 俺は活力煙を咥えて、火をつける。

「ふぅ~……じゃあ、いこうか」

 その言葉に全員が頷いて、扉の方を向く。
 さて、カマキリ、ウサギ、竜ときた。枝神と言えど……果たして、どんな化け物がくることやら。
 少なくとも、底意地の悪い人であることは間違いなさそうだけどね。
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