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第二章 デネブの塔なう
40話 VSゴーレムドラゴンなう②
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「新井と加藤は大技の準備。佐野と難波は俺と一緒に、ゴーレムドラゴンの気を引くよ。一番前を難波が走って、攻撃を逸らすことに集中して。佐野は逆に、攻撃に専念して。俺は二人のサポートをするから。さあ……行くよ!」
「……わかった」
「了解」
「わかりました」
加藤と新井が詠唱を初めて、俺と難波と佐野がゴーレムドラゴンへ向かって駆けだす。
「うおおおおおお『剣魂逸的』!」
相当な威力の火球がいくつも放たれるが、難波のスキルでそれらを回避していく。
俺は空中を駆けながら、こちらへ意識を向けさせるためにお返しの火球を撃つ。生半可な攻撃は魔力の無駄遣いかもしれないけど……やるだけやっておく。
佐野も、何発も飛斬撃を撃って牽制している。
――やっぱり、異世界チートどもは強いね。
ゴーレムドラゴンも、中々足を止めない俺たちに少し苛立っているように見える。
「ギャアアアアアアアアアゴアアアアァァァッァァァァァァァァ!!!!!」
空間が震えるこの咆哮にももう慣れた。
俺たちは剣の届く範囲にたどり着き、全員で攻撃を繰り出す。
「おおお! 『飛竜一閃』!」
「『音速突き』!」
俺と佐野の、最大級の攻撃が突き刺さる。難波は大技系の攻撃スキルは持っていないから、普通に斬りつけている。
ゴーレムドラゴンから何度も爪を振り下ろされるが、ゴーレムドラゴンの腕が二本なのに対してこちらは三人。どれだけ頑張っても、俺たちが全員同時に吹っ飛ばされることはない。
鬱陶しい水晶攻撃だが、どうやら一度に何本も隆起させられるわけではないようで、爪の攻撃に注意しながらでも十分避けられる。
一撃の威力も防御力も生半可なものじゃないし、速さも一級品だ。そこは流石Sランク魔物と言うところだろう。
「でも……攻撃が、単調だね!」
おかげで、慣れれば十分余裕をもって躱せる。
白鷺たちを葬ったヤバい光球は、俺たちが体勢を崩すまで撃ってこない。キメ技のつもりなのかもしれないけど、あれを連発されるのが一番困るのでありがたい。
「ふっ!」
爪をかいくぐり、槍で突き、斬り、魔法を当てる。
一切効いていないわけじゃないみたいで、ゴーレムドラゴンには傷がついている。ただ、それが大事にはなっていないみたいだ。
しかも……案の定というべきか、徐々に傷がふさがっていく。ホントに、魔物ってのは厄介だね……ッ!
(それにしても……天川達は何してるんだよ……)
ここに天川が神器で攻撃してくれていたら、もっと楽にゴーレムドラゴンにダメージを与えられていたはずなのに……。
無いものねだりをしていてもしょうがない。天川は主人公属性だから、死んだりはしていないだろう。
水晶の攻撃が一瞬止んだかと思うと、突如ゴーレムドラゴンが上を向いた。
「ッ! たぶんブレスが来るよ! みんな離れて!」
俺が叫んだ直後、ゴーレムドラゴンのブレスがゴーレムドラゴンの足元――つまり、俺たちのいた場所に直撃した。
「くそっ!」
間一髪、俺は上空へ駆けあがってこれを回避する。
佐野は素早く背後に回り込み、難波はスキルを使ってこれを躱していた。
「清田! 大丈夫か!?」
「俺はなんとかね!」
「グオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「あー、もう!」
ゴーレムドラゴンが、空中にいる俺に向けていくつも火球を放ってくる。素早く飛んで回避するものの、面倒なことに変わりはない。
ゴーレムドラゴンにとって、俺たちは小蠅みたいなもんかね。
「……精神系の攻撃を使ってきていないからまだマシだけど」
それと、ウィングラビットのように魔術を使ってこないし。まあ、このブレスが魔術みたいなものなのかもしれないけど。
俺がそんなこと考えていると、新井と加藤のいるところで魔力が膨れ上がる感覚がした。
「新井と加藤の魔法が来る! 佐野、難波、一時離脱!」
「わかった!」
「おお!」
いったん距離をとる俺たち。その直後、ゴーレムドラゴンの真上から超大量の水が降り注ぎ――次の瞬間それが凍り付いた。
ゴーレムドラゴンの動きが止まると同時に、間髪入れずに風で押し出された氷が大量に飛んでくる。
……あの二人、案外コンビネーションあるな。
「よし、俺たちもやろう。さらに気合入れて攻撃するよ!」
せっかく身動きが止まっているので、俺も至近距離から何発も炎の槍でゴーレムドラゴンの体に攻撃する。
それらが功をそうしたのか、ゴーレムドラゴンの一部に大きな穴が穿たれた。
「効いてる! 畳みかけるよ!」
さらに、上空から炎の矢や氷の矢が雨あられのように降り注ぐ。
それに当たらないように気を付けながら、前衛である俺たちも攻撃を加えていく。
だが、何発か攻撃していると、さすがに氷の拘束ももろくなっていたみたいで――
「グゴオォォォォォォォォガァァァァァァァァッァァァ!!!」
――と、翼を大きく広げて烈風を生み出しながら、全ての魔法や攻撃を弾き飛ばした。
……そこまでは予想通りだったけど、突然予想外のことが起きた。
水晶が地面から伸びてきて……せっかく穿った傷を塞ぎ、修復してしまったのだ。まるで、地面もドラゴンの一部だとでもいうように。
「なっ!?」
……そういや、俺がさんざんゴーレムって言ってたのに、その可能性を考慮してなかったね。周囲の鉱物で自分の傷を補填するとかいう、ゴーレムにありがちな設定を。
何体も何体も現れたりはしていないから、核はあのゴーレムのどこかにあるんだろうけど……にしても、体のパーツはいくらでもあるってことかな。
ってことは、このままチマチマ攻撃していても拉致があかないってことで……なおのこと状況は悪化したとみていいだろう。
少なくとも、新井と加藤の攻撃じゃ火力不足だ。普通の魔物相手ならオーバーキルなんだろうけど、さすがはドラゴンと言ったところか。このままじゃ効いていない。
「みんな! いったんなんとか天川達と合流しよう! そうじゃなきゃ、火力が……」
「清田! 上を見ろ!」
「!?」
佐野が叫ぶので、俺は上を見ると……なんと、ゴーレムドラゴンがさっきよりも速いスピードで上空へ飛び上がっていた。
しかも、ゴーレムドラゴンが……新井と加藤の方を見ている。
(って、あいつらがやられたらマジでヤバい!)
魔法職が全員やられたら、洒落にならない。俺はなんとかゴーレムドラゴンの気を引こうと、真下から超圧縮のウォーターカッターを放つ。さっき砕いた水晶の破片を、風で巻き上げてそのウォーターカッターに混ぜることで、威力も上昇させる。
「行け……ッ!?」
ゴーレムドラゴンは俺の魔法を一瞥したかと思うと、鬱陶しそうに――光球を俺に向かってぶっ放してきた。
そう、当たったら一撃でアウトの、あの光球を。それも、今までのものとは段違いにでかいやつだ。
「くそっ!」
俺は咄嗟にさっき使おうとしていた|爆発反応装甲(リアクティブアーマー)もどきを発動する。敵の攻撃が着弾する寸前に爆発させて背後に自ら吹っ飛んだ。
――しかし、それだけでは光球の攻撃範囲からは抜け出せなかった。
死ぬよりはマシかと思い、さらにエクスプロードファイヤを連続して発動させて吹っ飛ぶ速度を加速させる。
ドドドドドドドドドドド!!!
「ぐあぁぁぁああぁぁあぁぁぁ!!!」
今まで俺と戦っていたやつは、こんな痛みを受けていたのか。
手加減していたら光球の攻撃範囲から抜けられるか分からなかったので、殆ど無我夢中で爆発を起こしていたが……これはキツイ。
しかし、その甲斐あってどうにか光球は躱せた。体中痛くて、しばらく動けそうにないけどね。
(……くそっ、ほ、ホントに、死ぬ。体が痛い……キツイ、無理)
頭がグラグラして、思考がまとまらない。呼吸も上手くできない。と、とにかく……回復薬を……。
「清田! 清田!」
佐野の声が聞こえると思ったら、唐突に持ち上げられた。たぶん抱き起されたんだろうけど、息ができないから声が出せない。
そして、口の中に何かが流し込まれる……ああ、これたぶん、回復薬だね。
情けない、けど、助かった……
「カハッ!」
なんとか息ができるようになった。痛むけど、体もなんとか動かせる。
しかし、異世界に来て一番ダメージを受けたのが自分の魔法とはね……正直、バカらしい。
「清田! 大丈夫か!」
「……佐野、ごめん、けど、ゴーレムドラゴンはどうなった……?」
無理やり体を動かす。
ズキズキと痛むけど、ここでぶっ倒れているわけにはいかない。
俺がゴーレムドラゴンを見ようと目を開くと、ゴッ! と魔力がどこかで膨れ上がった。尋常じゃない大きさまで。
これはゴーレムドラゴンの魔力じゃない。空美と、井川がやっていた……捨て身の魔力だ!
「あ、新井、今それを撃っても……!」
当たらない。そう叫びたかったけれど、もう遅かった。そもそも、俺と新井じゃ距離が遠すぎる。
新井と加藤がいたはずの場所に、特大の――ゴーレムドラゴンと同じくらいの大きさの氷の虎が現れて、ゴーレムドラゴンへと襲いかかっていく。
どうやら、その氷の虎はただ形状がそうというだけではなく、しっかり虎であるらしい。凄く自然な動きで、遠吠えをあげる。
『グルルルルルゴゴゴゴゴオオォォォォォ!!!!』
ゴーレムドラゴンにも負けない大音量。これは、たぶんだけど……まっすぐ飛ぶだけじゃないだろう。召喚獣とは違うかもしれないけれど、似たなにかかもしれない。
これなら、いけるか!?
「ギャアアアアアアアアアゴアアアアァァァッァァァァァァァァ!!!!」
ゴーレムドラゴンと氷の虎がお互いをめがけて真っ直ぐ飛んでいく。
そして衝突――虎と竜が、空中でぶつかる――するかと思いきや、なんとゴーレムドラゴンが氷の虎の噛みつきを躱して逆に噛みついた。
『ルォォォォォゴゴォォォオォォォォ!』
氷の虎も負けてはいない、大きく口を開けてゴーレムドラゴンへ噛みつき返す。
さしものゴーレムドラゴンといえど躱すことは出来ず、半身を食いちぎられた。
(よしっ!)
「ゴァァァァァァギガァァァッァァアアアア」
断末魔の声を上げるゴーレムドラゴン。……どうやらただでは死ぬ気はないらしい。バランスを崩し、地面へ落下しながらも――俺に撃った時よりもさらにデカい光球を口から放ち、氷の虎ごと加藤と新井がいた所を消し飛ばしてしまう。
そして、ズズン、とゴーレムドラゴンが地面へと完全に落下した。
物凄い土煙が上がって、視界が悪くなる。こんなに広いのにこうも視界が悪いと、ゴーレムドラゴンがどうなったかすらわからないね。
「新井っ! 加藤っ! くっ、清田! 急いで二人が無事か確認しないと!」
佐野が叫ぶけど……俺には、分かる。というか、『視』える。
新井と加藤の魔力が無くなった……
「……ここまで嫌な予感が的中しなくてもいいのに、ね」
これで、五人か……。
さっきまでかいていた嫌な汗が、スーッと引いていく。無論、気氷の虎のせいで温が下がったわけじゃない。全部冷や汗に変わったんだ。
白鷺がやられて、木原がやられて、井川がやられて……そして、加藤と、新井までやられた。
ヒーラーがやられていないのが不幸中の幸いってところかな。
だけど、さすがに半身が吹っ飛ばされたんだ。もう、ゴーレムドラゴンも倒せただろう。
そう思ってアイテムボックスから活力煙を取り出したところで、ゾッと全身の毛が逆立つ。
(こ、この魔力は……ッ!)
「き、清田……」
「……うん、分かってる。けど、これは最悪じゃないかな……っ!」
バキバキ、と、音が聞こえる。さっきゴーレムドラゴンが修復していた時の音だ。
「ギィィィゴオオォォォォォガァァァァアアアア!!!」
咆哮を上げるゴーレムドラゴン。そして、翼が起こす烈風で視界が晴れる。
そこには……心なしかさっきまでよりも小さくなっているように見えるゴーレムドラゴンがいた。30メートルくらいあった全長が、約半分の18メートルくらいになったようだ。
しかし、傷は完全に修復してある。
「……これは、本格的に、核を攻撃しないとダメなんだろうね」
けれど、小さくなったおかげか、さっきまでよりもしっかりとゴーレムドラゴンの魔魂石がある場所が確認できた。
核である、魔魂石は……心臓だ。
「佐野、天川たちと合流するよ。死ぬ気で」
というか、いくらなんでもこの状態で戦えるわけもない。なんとか全員で合流して、作戦を立てて挑まないと無理だ。
というか、今ある手立てで勝つのは難しい……こりゃあ、本気で天川の覚醒にたよらなきゃいけない気がしてきたね。
「難波! どこにいる!?」
水晶が隆起したせいで地面がかなり起伏のある凸凹になっていて、遠くまで見渡せなかったためやむを得ず、大きな声で難波を呼ぶ。
「こっちだ!」
難波の声。
ふう、難波は無事だ。
ひとまず三人で合流して、俺は魔力を『視』て天川達を探す。
ぐるりと見渡すと……かなり大きい魔力、大きい魔力、そして普通くらいの魔力が見えた。三人ってことは、天川と空美とティアー王女様かな。
「よし、あっちの方向に三人がいるみたいだ。飛ぶから、しっかり捕まってて」
と、二人を抱えようとした瞬間、俺たちが立っている場所に影ができた。
「――ッ!」
佐野と難波を風で吹き飛ばし、俺は水でドーム状の壁を作る。
その壁が完成した瞬間、ゴーレムドラゴンの爪が容赦なく振り下ろされた。
「清田!?」
「平気!」
自分でも気付いていなかったけど――かなり残り少なくなっている魔力をかき集めて、全力で水のドームを維持する。
(小さくなった分、パワーは少し下がってるね……ただ、その代わり速度がさっきよりもさらに速くなってる。目でギリギリ終えるかどうかってレベルだ)
同時に、自分の動体視力も異世界に来て上がっていたのか、と少し感心する。こんな頑丈な体じゃなかったら、異世界なんて生きていけないよ。
なんとか体勢を立て直した俺は、水のドームを解除して槍で爪を受け流し、その場から脱出する。
「清田、大丈夫か!?」
「なんとかね……」
「ギオオオオオオオオオオオガアアアアアアアアロオオオオオオオ!!!!!」
ゴーレムドラゴンの、容赦のない攻撃が俺たちに突き刺さる。
さっきまでは余裕を持って躱せていたはずの攻撃も、ギリギリだ。こんなに速くなってるとはね……。
上から振り下ろされる爪を『円捌き』や風魔術で捌いたり、火球を水魔術で相殺したりしつつ、なんとか炎魔術で反撃するけど、物凄いスピードでそれも避けられる。
(そう、避けられる。さっきまではゴーレムドラゴンは自身の耐久性に任せた、強引な戦い方だったのに!)
……回避も織り込み、さらに上から振り下ろすくらいだった爪も、フェイントを入れたりなど、とてもさっきまでと同一の魔物とは思えない。
「なんだこれは!」
佐野も驚きをあらわにしている。攻撃がまるっきり当たらないわけじゃないけど、本当に動きが洗練されている。
さっきまでコンピューター対戦していたのに、唐突に敵キャラが人間に操作されだしたような感じだ。
正直、今の俺たちの手に負える気がしないね。魔力も本当にヤバいし。
「確かに速いけど、避けられないほどじゃない! なんとか隙を作って体勢を立て直すために、いったん引くよ!」
「おう!」
「わかった!」
こんな窮地に至ってはなりふり構っていられないのか、難波すら俺の指示を聞いて戦っている。団結に最も必要なのは、優秀な指導者ではない。共通の敵である、ってのは誰の言葉だったかな。
(逃げるだけなら何とか――)
と、その瞬間。ほんの一瞬ではあるけど――俺たちは確かに油断してしまっていた。
水晶攻撃という、普段なら決して避けられないはずではない攻撃に当たってしまうくらいには。
「しまっ……!」
「がっ!」
「ああっ!」
三人そろって空中へ投げ出される。くっ、ゴーレムドラゴンに気を取られすぎた……!
躱すだけならなんとかなる、なんて思うんじゃなかった。
すぐに風を足に纏わせて、空中でバランスを取り戻し、ゴーレムドラゴンをにらみつける。
――が、刹那、恐れていたことが起きた。
なんと、佐野と難波両方に向けて、同時に光球を放ったのだ。
「くそっ!!!」
俺は一瞬の躊躇もなく、佐野に向かって全力で駆けだす。風も炎も水も総動員。俺が速度を出すための推進力に使えるものはすべて使う。
「間に合え!」
音速突きの時の要領で、全身を連動させて空中で踏み込み、そのタイミングで、足元で水蒸気爆発を起こして――音が、消えた。
その勢いのまま、佐野を抱きしめ、全力で離脱する。
難波の安否なんて確認していられない、このまま魔力が切れる前に天川と空美と王女様を連れて戦線を離脱する!
「ゴァァァァアァァァァァギアァァァッァァ」
ゴーレムドラゴンを一瞥すると、大口を上げているがこちらへ攻撃しようとしてきているようには見えない。
音が遅れてやってくるような速度を出して、俺は空を駆ける。
(――いた)
天川達の魔力を辿っていくと、天川が王女様と空美を守りつつ、水晶と戦っていた。というか、王女様が足手まといになっているせいで、天川がこっちに応援にこれなかったんだろうね。
やれやれ、誰に参加されたら困るか、ゴーレムドラゴンも分かってるよ、ホント。
それに……俺たちへの水晶攻撃が少なかったのは、天川達を足止めしていたからか。
戦っている天川達に高速で近づき――全員を風魔術ですくい上げ、一緒に飛ぶ。
「!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
「天川、空美、王女様、暴れないで。そのまま逃げるよ」
「なっ、きよ、このっ、速さはっ」
「そういうのいいから!」
音速は出していないけど、それでも普通に天駆するときとは比べ物にならない速度で、空を駆ける。
「というか、天川! あのくらいの水晶、神器さえ使えばすぐに倒して、こっちの応援に来れていたんじゃないの!?」
少し非難をこめた声で天川に問うと、天川は悲壮な声で俺に叫び返してきた。
「神器が使えないんだ!」
なんだって!?
「……わかった」
「了解」
「わかりました」
加藤と新井が詠唱を初めて、俺と難波と佐野がゴーレムドラゴンへ向かって駆けだす。
「うおおおおおお『剣魂逸的』!」
相当な威力の火球がいくつも放たれるが、難波のスキルでそれらを回避していく。
俺は空中を駆けながら、こちらへ意識を向けさせるためにお返しの火球を撃つ。生半可な攻撃は魔力の無駄遣いかもしれないけど……やるだけやっておく。
佐野も、何発も飛斬撃を撃って牽制している。
――やっぱり、異世界チートどもは強いね。
ゴーレムドラゴンも、中々足を止めない俺たちに少し苛立っているように見える。
「ギャアアアアアアアアアゴアアアアァァァッァァァァァァァァ!!!!!」
空間が震えるこの咆哮にももう慣れた。
俺たちは剣の届く範囲にたどり着き、全員で攻撃を繰り出す。
「おおお! 『飛竜一閃』!」
「『音速突き』!」
俺と佐野の、最大級の攻撃が突き刺さる。難波は大技系の攻撃スキルは持っていないから、普通に斬りつけている。
ゴーレムドラゴンから何度も爪を振り下ろされるが、ゴーレムドラゴンの腕が二本なのに対してこちらは三人。どれだけ頑張っても、俺たちが全員同時に吹っ飛ばされることはない。
鬱陶しい水晶攻撃だが、どうやら一度に何本も隆起させられるわけではないようで、爪の攻撃に注意しながらでも十分避けられる。
一撃の威力も防御力も生半可なものじゃないし、速さも一級品だ。そこは流石Sランク魔物と言うところだろう。
「でも……攻撃が、単調だね!」
おかげで、慣れれば十分余裕をもって躱せる。
白鷺たちを葬ったヤバい光球は、俺たちが体勢を崩すまで撃ってこない。キメ技のつもりなのかもしれないけど、あれを連発されるのが一番困るのでありがたい。
「ふっ!」
爪をかいくぐり、槍で突き、斬り、魔法を当てる。
一切効いていないわけじゃないみたいで、ゴーレムドラゴンには傷がついている。ただ、それが大事にはなっていないみたいだ。
しかも……案の定というべきか、徐々に傷がふさがっていく。ホントに、魔物ってのは厄介だね……ッ!
(それにしても……天川達は何してるんだよ……)
ここに天川が神器で攻撃してくれていたら、もっと楽にゴーレムドラゴンにダメージを与えられていたはずなのに……。
無いものねだりをしていてもしょうがない。天川は主人公属性だから、死んだりはしていないだろう。
水晶の攻撃が一瞬止んだかと思うと、突如ゴーレムドラゴンが上を向いた。
「ッ! たぶんブレスが来るよ! みんな離れて!」
俺が叫んだ直後、ゴーレムドラゴンのブレスがゴーレムドラゴンの足元――つまり、俺たちのいた場所に直撃した。
「くそっ!」
間一髪、俺は上空へ駆けあがってこれを回避する。
佐野は素早く背後に回り込み、難波はスキルを使ってこれを躱していた。
「清田! 大丈夫か!?」
「俺はなんとかね!」
「グオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「あー、もう!」
ゴーレムドラゴンが、空中にいる俺に向けていくつも火球を放ってくる。素早く飛んで回避するものの、面倒なことに変わりはない。
ゴーレムドラゴンにとって、俺たちは小蠅みたいなもんかね。
「……精神系の攻撃を使ってきていないからまだマシだけど」
それと、ウィングラビットのように魔術を使ってこないし。まあ、このブレスが魔術みたいなものなのかもしれないけど。
俺がそんなこと考えていると、新井と加藤のいるところで魔力が膨れ上がる感覚がした。
「新井と加藤の魔法が来る! 佐野、難波、一時離脱!」
「わかった!」
「おお!」
いったん距離をとる俺たち。その直後、ゴーレムドラゴンの真上から超大量の水が降り注ぎ――次の瞬間それが凍り付いた。
ゴーレムドラゴンの動きが止まると同時に、間髪入れずに風で押し出された氷が大量に飛んでくる。
……あの二人、案外コンビネーションあるな。
「よし、俺たちもやろう。さらに気合入れて攻撃するよ!」
せっかく身動きが止まっているので、俺も至近距離から何発も炎の槍でゴーレムドラゴンの体に攻撃する。
それらが功をそうしたのか、ゴーレムドラゴンの一部に大きな穴が穿たれた。
「効いてる! 畳みかけるよ!」
さらに、上空から炎の矢や氷の矢が雨あられのように降り注ぐ。
それに当たらないように気を付けながら、前衛である俺たちも攻撃を加えていく。
だが、何発か攻撃していると、さすがに氷の拘束ももろくなっていたみたいで――
「グゴオォォォォォォォォガァァァァァァァァッァァァ!!!」
――と、翼を大きく広げて烈風を生み出しながら、全ての魔法や攻撃を弾き飛ばした。
……そこまでは予想通りだったけど、突然予想外のことが起きた。
水晶が地面から伸びてきて……せっかく穿った傷を塞ぎ、修復してしまったのだ。まるで、地面もドラゴンの一部だとでもいうように。
「なっ!?」
……そういや、俺がさんざんゴーレムって言ってたのに、その可能性を考慮してなかったね。周囲の鉱物で自分の傷を補填するとかいう、ゴーレムにありがちな設定を。
何体も何体も現れたりはしていないから、核はあのゴーレムのどこかにあるんだろうけど……にしても、体のパーツはいくらでもあるってことかな。
ってことは、このままチマチマ攻撃していても拉致があかないってことで……なおのこと状況は悪化したとみていいだろう。
少なくとも、新井と加藤の攻撃じゃ火力不足だ。普通の魔物相手ならオーバーキルなんだろうけど、さすがはドラゴンと言ったところか。このままじゃ効いていない。
「みんな! いったんなんとか天川達と合流しよう! そうじゃなきゃ、火力が……」
「清田! 上を見ろ!」
「!?」
佐野が叫ぶので、俺は上を見ると……なんと、ゴーレムドラゴンがさっきよりも速いスピードで上空へ飛び上がっていた。
しかも、ゴーレムドラゴンが……新井と加藤の方を見ている。
(って、あいつらがやられたらマジでヤバい!)
魔法職が全員やられたら、洒落にならない。俺はなんとかゴーレムドラゴンの気を引こうと、真下から超圧縮のウォーターカッターを放つ。さっき砕いた水晶の破片を、風で巻き上げてそのウォーターカッターに混ぜることで、威力も上昇させる。
「行け……ッ!?」
ゴーレムドラゴンは俺の魔法を一瞥したかと思うと、鬱陶しそうに――光球を俺に向かってぶっ放してきた。
そう、当たったら一撃でアウトの、あの光球を。それも、今までのものとは段違いにでかいやつだ。
「くそっ!」
俺は咄嗟にさっき使おうとしていた|爆発反応装甲(リアクティブアーマー)もどきを発動する。敵の攻撃が着弾する寸前に爆発させて背後に自ら吹っ飛んだ。
――しかし、それだけでは光球の攻撃範囲からは抜け出せなかった。
死ぬよりはマシかと思い、さらにエクスプロードファイヤを連続して発動させて吹っ飛ぶ速度を加速させる。
ドドドドドドドドドドド!!!
「ぐあぁぁぁああぁぁあぁぁぁ!!!」
今まで俺と戦っていたやつは、こんな痛みを受けていたのか。
手加減していたら光球の攻撃範囲から抜けられるか分からなかったので、殆ど無我夢中で爆発を起こしていたが……これはキツイ。
しかし、その甲斐あってどうにか光球は躱せた。体中痛くて、しばらく動けそうにないけどね。
(……くそっ、ほ、ホントに、死ぬ。体が痛い……キツイ、無理)
頭がグラグラして、思考がまとまらない。呼吸も上手くできない。と、とにかく……回復薬を……。
「清田! 清田!」
佐野の声が聞こえると思ったら、唐突に持ち上げられた。たぶん抱き起されたんだろうけど、息ができないから声が出せない。
そして、口の中に何かが流し込まれる……ああ、これたぶん、回復薬だね。
情けない、けど、助かった……
「カハッ!」
なんとか息ができるようになった。痛むけど、体もなんとか動かせる。
しかし、異世界に来て一番ダメージを受けたのが自分の魔法とはね……正直、バカらしい。
「清田! 大丈夫か!」
「……佐野、ごめん、けど、ゴーレムドラゴンはどうなった……?」
無理やり体を動かす。
ズキズキと痛むけど、ここでぶっ倒れているわけにはいかない。
俺がゴーレムドラゴンを見ようと目を開くと、ゴッ! と魔力がどこかで膨れ上がった。尋常じゃない大きさまで。
これはゴーレムドラゴンの魔力じゃない。空美と、井川がやっていた……捨て身の魔力だ!
「あ、新井、今それを撃っても……!」
当たらない。そう叫びたかったけれど、もう遅かった。そもそも、俺と新井じゃ距離が遠すぎる。
新井と加藤がいたはずの場所に、特大の――ゴーレムドラゴンと同じくらいの大きさの氷の虎が現れて、ゴーレムドラゴンへと襲いかかっていく。
どうやら、その氷の虎はただ形状がそうというだけではなく、しっかり虎であるらしい。凄く自然な動きで、遠吠えをあげる。
『グルルルルルゴゴゴゴゴオオォォォォォ!!!!』
ゴーレムドラゴンにも負けない大音量。これは、たぶんだけど……まっすぐ飛ぶだけじゃないだろう。召喚獣とは違うかもしれないけれど、似たなにかかもしれない。
これなら、いけるか!?
「ギャアアアアアアアアアゴアアアアァァァッァァァァァァァァ!!!!」
ゴーレムドラゴンと氷の虎がお互いをめがけて真っ直ぐ飛んでいく。
そして衝突――虎と竜が、空中でぶつかる――するかと思いきや、なんとゴーレムドラゴンが氷の虎の噛みつきを躱して逆に噛みついた。
『ルォォォォォゴゴォォォオォォォォ!』
氷の虎も負けてはいない、大きく口を開けてゴーレムドラゴンへ噛みつき返す。
さしものゴーレムドラゴンといえど躱すことは出来ず、半身を食いちぎられた。
(よしっ!)
「ゴァァァァァァギガァァァッァァアアアア」
断末魔の声を上げるゴーレムドラゴン。……どうやらただでは死ぬ気はないらしい。バランスを崩し、地面へ落下しながらも――俺に撃った時よりもさらにデカい光球を口から放ち、氷の虎ごと加藤と新井がいた所を消し飛ばしてしまう。
そして、ズズン、とゴーレムドラゴンが地面へと完全に落下した。
物凄い土煙が上がって、視界が悪くなる。こんなに広いのにこうも視界が悪いと、ゴーレムドラゴンがどうなったかすらわからないね。
「新井っ! 加藤っ! くっ、清田! 急いで二人が無事か確認しないと!」
佐野が叫ぶけど……俺には、分かる。というか、『視』える。
新井と加藤の魔力が無くなった……
「……ここまで嫌な予感が的中しなくてもいいのに、ね」
これで、五人か……。
さっきまでかいていた嫌な汗が、スーッと引いていく。無論、気氷の虎のせいで温が下がったわけじゃない。全部冷や汗に変わったんだ。
白鷺がやられて、木原がやられて、井川がやられて……そして、加藤と、新井までやられた。
ヒーラーがやられていないのが不幸中の幸いってところかな。
だけど、さすがに半身が吹っ飛ばされたんだ。もう、ゴーレムドラゴンも倒せただろう。
そう思ってアイテムボックスから活力煙を取り出したところで、ゾッと全身の毛が逆立つ。
(こ、この魔力は……ッ!)
「き、清田……」
「……うん、分かってる。けど、これは最悪じゃないかな……っ!」
バキバキ、と、音が聞こえる。さっきゴーレムドラゴンが修復していた時の音だ。
「ギィィィゴオオォォォォォガァァァァアアアア!!!」
咆哮を上げるゴーレムドラゴン。そして、翼が起こす烈風で視界が晴れる。
そこには……心なしかさっきまでよりも小さくなっているように見えるゴーレムドラゴンがいた。30メートルくらいあった全長が、約半分の18メートルくらいになったようだ。
しかし、傷は完全に修復してある。
「……これは、本格的に、核を攻撃しないとダメなんだろうね」
けれど、小さくなったおかげか、さっきまでよりもしっかりとゴーレムドラゴンの魔魂石がある場所が確認できた。
核である、魔魂石は……心臓だ。
「佐野、天川たちと合流するよ。死ぬ気で」
というか、いくらなんでもこの状態で戦えるわけもない。なんとか全員で合流して、作戦を立てて挑まないと無理だ。
というか、今ある手立てで勝つのは難しい……こりゃあ、本気で天川の覚醒にたよらなきゃいけない気がしてきたね。
「難波! どこにいる!?」
水晶が隆起したせいで地面がかなり起伏のある凸凹になっていて、遠くまで見渡せなかったためやむを得ず、大きな声で難波を呼ぶ。
「こっちだ!」
難波の声。
ふう、難波は無事だ。
ひとまず三人で合流して、俺は魔力を『視』て天川達を探す。
ぐるりと見渡すと……かなり大きい魔力、大きい魔力、そして普通くらいの魔力が見えた。三人ってことは、天川と空美とティアー王女様かな。
「よし、あっちの方向に三人がいるみたいだ。飛ぶから、しっかり捕まってて」
と、二人を抱えようとした瞬間、俺たちが立っている場所に影ができた。
「――ッ!」
佐野と難波を風で吹き飛ばし、俺は水でドーム状の壁を作る。
その壁が完成した瞬間、ゴーレムドラゴンの爪が容赦なく振り下ろされた。
「清田!?」
「平気!」
自分でも気付いていなかったけど――かなり残り少なくなっている魔力をかき集めて、全力で水のドームを維持する。
(小さくなった分、パワーは少し下がってるね……ただ、その代わり速度がさっきよりもさらに速くなってる。目でギリギリ終えるかどうかってレベルだ)
同時に、自分の動体視力も異世界に来て上がっていたのか、と少し感心する。こんな頑丈な体じゃなかったら、異世界なんて生きていけないよ。
なんとか体勢を立て直した俺は、水のドームを解除して槍で爪を受け流し、その場から脱出する。
「清田、大丈夫か!?」
「なんとかね……」
「ギオオオオオオオオオオオガアアアアアアアアロオオオオオオオ!!!!!」
ゴーレムドラゴンの、容赦のない攻撃が俺たちに突き刺さる。
さっきまでは余裕を持って躱せていたはずの攻撃も、ギリギリだ。こんなに速くなってるとはね……。
上から振り下ろされる爪を『円捌き』や風魔術で捌いたり、火球を水魔術で相殺したりしつつ、なんとか炎魔術で反撃するけど、物凄いスピードでそれも避けられる。
(そう、避けられる。さっきまではゴーレムドラゴンは自身の耐久性に任せた、強引な戦い方だったのに!)
……回避も織り込み、さらに上から振り下ろすくらいだった爪も、フェイントを入れたりなど、とてもさっきまでと同一の魔物とは思えない。
「なんだこれは!」
佐野も驚きをあらわにしている。攻撃がまるっきり当たらないわけじゃないけど、本当に動きが洗練されている。
さっきまでコンピューター対戦していたのに、唐突に敵キャラが人間に操作されだしたような感じだ。
正直、今の俺たちの手に負える気がしないね。魔力も本当にヤバいし。
「確かに速いけど、避けられないほどじゃない! なんとか隙を作って体勢を立て直すために、いったん引くよ!」
「おう!」
「わかった!」
こんな窮地に至ってはなりふり構っていられないのか、難波すら俺の指示を聞いて戦っている。団結に最も必要なのは、優秀な指導者ではない。共通の敵である、ってのは誰の言葉だったかな。
(逃げるだけなら何とか――)
と、その瞬間。ほんの一瞬ではあるけど――俺たちは確かに油断してしまっていた。
水晶攻撃という、普段なら決して避けられないはずではない攻撃に当たってしまうくらいには。
「しまっ……!」
「がっ!」
「ああっ!」
三人そろって空中へ投げ出される。くっ、ゴーレムドラゴンに気を取られすぎた……!
躱すだけならなんとかなる、なんて思うんじゃなかった。
すぐに風を足に纏わせて、空中でバランスを取り戻し、ゴーレムドラゴンをにらみつける。
――が、刹那、恐れていたことが起きた。
なんと、佐野と難波両方に向けて、同時に光球を放ったのだ。
「くそっ!!!」
俺は一瞬の躊躇もなく、佐野に向かって全力で駆けだす。風も炎も水も総動員。俺が速度を出すための推進力に使えるものはすべて使う。
「間に合え!」
音速突きの時の要領で、全身を連動させて空中で踏み込み、そのタイミングで、足元で水蒸気爆発を起こして――音が、消えた。
その勢いのまま、佐野を抱きしめ、全力で離脱する。
難波の安否なんて確認していられない、このまま魔力が切れる前に天川と空美と王女様を連れて戦線を離脱する!
「ゴァァァァアァァァァァギアァァァッァァ」
ゴーレムドラゴンを一瞥すると、大口を上げているがこちらへ攻撃しようとしてきているようには見えない。
音が遅れてやってくるような速度を出して、俺は空を駆ける。
(――いた)
天川達の魔力を辿っていくと、天川が王女様と空美を守りつつ、水晶と戦っていた。というか、王女様が足手まといになっているせいで、天川がこっちに応援にこれなかったんだろうね。
やれやれ、誰に参加されたら困るか、ゴーレムドラゴンも分かってるよ、ホント。
それに……俺たちへの水晶攻撃が少なかったのは、天川達を足止めしていたからか。
戦っている天川達に高速で近づき――全員を風魔術ですくい上げ、一緒に飛ぶ。
「!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
「天川、空美、王女様、暴れないで。そのまま逃げるよ」
「なっ、きよ、このっ、速さはっ」
「そういうのいいから!」
音速は出していないけど、それでも普通に天駆するときとは比べ物にならない速度で、空を駆ける。
「というか、天川! あのくらいの水晶、神器さえ使えばすぐに倒して、こっちの応援に来れていたんじゃないの!?」
少し非難をこめた声で天川に問うと、天川は悲壮な声で俺に叫び返してきた。
「神器が使えないんだ!」
なんだって!?
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