139 / 157
第二十六話「私も人だから」1
しおりを挟む
自分のことを魔法使いと呼ぶ私は人からどう見えるのだろう?
尊敬? 嫉妬? 畏怖? 好奇? 同情?
力のことを隠して、誤魔化して生きていけるのはいつまでだろう。
自分の力が影響力を持つと明らかになった時、人は何を考え、どう行動するのか、今はまだ想像すらできない。
いつか、その力を危険なものと判断され、魔女と恐れられてしまう日が来るなら……。
せめて、祖母のように立派なことを成し遂げられる魔法使いでありたい。
でも、その前に私は、立派になれなくてもいいから人でありたいと思う。
みんなと同じように生きて、悩んで、思い出を共有しながら、支え合って生きていきたい。
儚くも愛おしい、輝かしき青春。
それが改めてみんなと過ごしながら辿り着いた、私の切なる願いでした。
*
私は退院の日を迎え、これからしばらくは式見先生の家にお邪魔することになった。
式見先生は遠慮しなくていいと言ってくれたけど、近い将来、ちゃんと先生の好意に報いる形で、自分自身と向き合わなければならないだろう。
余震も減っていき、徐々に心の平穏を保てるようになってきた私だが、今もまだ片耳は聞こえない上に声も出せない。後遺症と向き合う日々が続いている。
これ以上、入院を続けて原因を追及したところで身体が良くなるかは分からないから、当面は式見先生の家で暮らしながら様子を見るのが最善ということになった。
器官自体の損傷は見られないそうで、きっかけ次第で回復することはあるそうだが、無理に声を出そうしても自分を傷つけるだけだと分かった。今は過度な期待をしないのが賢明だろう。
こんな状態でピアノに触るのは怖い。
一度触らなくなるとその傾向は顕著に感じるようになった。
今まで当たり前のように演奏出来ていた曲が演奏できないかもしれない怖さ。
それは不自由な暮らしを強いられることと一緒に、私を深い闇へと堕とし込んでいく。
きっとピアノと真剣に向き合っても思うように演奏出来なければ出来ないほど、ピアノを嫌いになってしまう。そんな事を望んではいないから私はピアノに触れることが余計に出来なかった。
こんなにピアノが私を苦しめるのは今まで生きてきた中で初めての経験だった。
ピアノはいつも私の傍に寄り添ってくれた友達のようであり、心の支えだったはずなのに。
尊敬? 嫉妬? 畏怖? 好奇? 同情?
力のことを隠して、誤魔化して生きていけるのはいつまでだろう。
自分の力が影響力を持つと明らかになった時、人は何を考え、どう行動するのか、今はまだ想像すらできない。
いつか、その力を危険なものと判断され、魔女と恐れられてしまう日が来るなら……。
せめて、祖母のように立派なことを成し遂げられる魔法使いでありたい。
でも、その前に私は、立派になれなくてもいいから人でありたいと思う。
みんなと同じように生きて、悩んで、思い出を共有しながら、支え合って生きていきたい。
儚くも愛おしい、輝かしき青春。
それが改めてみんなと過ごしながら辿り着いた、私の切なる願いでした。
*
私は退院の日を迎え、これからしばらくは式見先生の家にお邪魔することになった。
式見先生は遠慮しなくていいと言ってくれたけど、近い将来、ちゃんと先生の好意に報いる形で、自分自身と向き合わなければならないだろう。
余震も減っていき、徐々に心の平穏を保てるようになってきた私だが、今もまだ片耳は聞こえない上に声も出せない。後遺症と向き合う日々が続いている。
これ以上、入院を続けて原因を追及したところで身体が良くなるかは分からないから、当面は式見先生の家で暮らしながら様子を見るのが最善ということになった。
器官自体の損傷は見られないそうで、きっかけ次第で回復することはあるそうだが、無理に声を出そうしても自分を傷つけるだけだと分かった。今は過度な期待をしないのが賢明だろう。
こんな状態でピアノに触るのは怖い。
一度触らなくなるとその傾向は顕著に感じるようになった。
今まで当たり前のように演奏出来ていた曲が演奏できないかもしれない怖さ。
それは不自由な暮らしを強いられることと一緒に、私を深い闇へと堕とし込んでいく。
きっとピアノと真剣に向き合っても思うように演奏出来なければ出来ないほど、ピアノを嫌いになってしまう。そんな事を望んではいないから私はピアノに触れることが余計に出来なかった。
こんなにピアノが私を苦しめるのは今まで生きてきた中で初めての経験だった。
ピアノはいつも私の傍に寄り添ってくれた友達のようであり、心の支えだったはずなのに。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる