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第三話「緑色の巨塔」3
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「おかえり、お姉ちゃん」
身体測定と新年度のワクチン接種が終わり、先に教室に戻っていた光は、今し方教室に戻ってきた知枝を出迎えた。
「ただいま、光」
身体測定のためにランニング姿に着替えている知枝の姿を見て、光は身体のラインが普段よりもはっきりと見えて思わずドキっとさせられた。知枝の着ているランニングの生地は薄いためか極端に近づくとうっすらと下に着ている下着が見えそうで余計に目のやり場に困ってしまう。
「どうしたの? 光?」
目がキョロキョロと泳ぐ光を見て、不思議そうに知枝は光の顔を覗き込んだ。
「近いよ! お姉ちゃん! なんでもないからっ!」
動揺する光の姿を見て、知枝はさらに疑い深い視線で見つめた。
「光も年頃の男の子なのかな? なのかな? なのかな?」
「あんまりそういうことは言わないで……」
その時、知枝はこちらを見つめる視線に気づいた。こちらに熱視線を送るのはクラスメイトの神楽であった。
(そっか……、そういうこと)
知枝は視線の意味に気づいた。
(神楽さんがこっち見てるよ、光ってば彼女さんの前でお姉ちゃんを見て興奮してたらダメだぞっ!)
知枝はあえて意地悪な言い方で光に吐息まで感じる距離で耳打ちした。
光の彼女であり男装をして学園に通う手塚神楽こと、本名は夕陽千歳。クラスメイトには未だに正体がバレてはいないが正真正銘の女の子である。
光は神楽の正体がバレないように、ずっと身体測定の間、そばでサポートしていただけに、知枝に対してだけ不審な態度を取っているのを神楽が訝しげに見つめるのは当然の事態だった。
(―――誤解だからっっ!!)
光はこちらに視線を向ける神楽さんの方を向いて、声を出さずに仕草だけで一生懸命弁解した。
その姿を見て神楽は一度険しい視線を送った後、光の姿が面白くなったのかクスクスと微笑んで見せた。
「そういえば、ねぇ、光、もしかして身長伸びた……?」
知枝はあまり口に出したくないが、気になってたまらないといった心情で光に聞いた。
「うん、この一年で2センチくらいは伸びたかな」
「ちょっと、やだやだやだ!! 光ってば、お姉ちゃんをどんどん追い越してくんだからっ! ホントに許せないよ!!!」
「そんなこと言われても……、そういうお姉ちゃんは、やっぱり今年も……」
「“今年も”とか言わないでぇぇぇっ!!! 本当に困ってるんだから!! いっつも小学生とか中学生に間違われるし、車運転しづらくって、向こうでは笑われっぱなしだったんだからね!!」
教室の中にも関わらずついつい大きな声で愚痴を言ってしまう知枝。
光は知枝のこの容姿で自動車を運転する姿は確かに似合わないと思った。
U140の知枝にとって、身長の話しはNGワードとなるくらい、深刻な悩みであった。
「4、5年前の画像と外見変わらないもんね……、どれも最近撮ったものなのかと思うくらい」
「それ以上は、お姉ちゃんの逆鱗に触れるよ? 男の子じゃなくなっちゃうよ?」
「それは困るから、許して……」
「じゃあ、この件はお口チェックでねっ!!」
人差し指を立てて、そう光に言い渡す知枝の姿は、お姉ちゃんでもあり、まだあどけなさの残る少女のようだった。
身体測定と新年度のワクチン接種が終わり、先に教室に戻っていた光は、今し方教室に戻ってきた知枝を出迎えた。
「ただいま、光」
身体測定のためにランニング姿に着替えている知枝の姿を見て、光は身体のラインが普段よりもはっきりと見えて思わずドキっとさせられた。知枝の着ているランニングの生地は薄いためか極端に近づくとうっすらと下に着ている下着が見えそうで余計に目のやり場に困ってしまう。
「どうしたの? 光?」
目がキョロキョロと泳ぐ光を見て、不思議そうに知枝は光の顔を覗き込んだ。
「近いよ! お姉ちゃん! なんでもないからっ!」
動揺する光の姿を見て、知枝はさらに疑い深い視線で見つめた。
「光も年頃の男の子なのかな? なのかな? なのかな?」
「あんまりそういうことは言わないで……」
その時、知枝はこちらを見つめる視線に気づいた。こちらに熱視線を送るのはクラスメイトの神楽であった。
(そっか……、そういうこと)
知枝は視線の意味に気づいた。
(神楽さんがこっち見てるよ、光ってば彼女さんの前でお姉ちゃんを見て興奮してたらダメだぞっ!)
知枝はあえて意地悪な言い方で光に吐息まで感じる距離で耳打ちした。
光の彼女であり男装をして学園に通う手塚神楽こと、本名は夕陽千歳。クラスメイトには未だに正体がバレてはいないが正真正銘の女の子である。
光は神楽の正体がバレないように、ずっと身体測定の間、そばでサポートしていただけに、知枝に対してだけ不審な態度を取っているのを神楽が訝しげに見つめるのは当然の事態だった。
(―――誤解だからっっ!!)
光はこちらに視線を向ける神楽さんの方を向いて、声を出さずに仕草だけで一生懸命弁解した。
その姿を見て神楽は一度険しい視線を送った後、光の姿が面白くなったのかクスクスと微笑んで見せた。
「そういえば、ねぇ、光、もしかして身長伸びた……?」
知枝はあまり口に出したくないが、気になってたまらないといった心情で光に聞いた。
「うん、この一年で2センチくらいは伸びたかな」
「ちょっと、やだやだやだ!! 光ってば、お姉ちゃんをどんどん追い越してくんだからっ! ホントに許せないよ!!!」
「そんなこと言われても……、そういうお姉ちゃんは、やっぱり今年も……」
「“今年も”とか言わないでぇぇぇっ!!! 本当に困ってるんだから!! いっつも小学生とか中学生に間違われるし、車運転しづらくって、向こうでは笑われっぱなしだったんだからね!!」
教室の中にも関わらずついつい大きな声で愚痴を言ってしまう知枝。
光は知枝のこの容姿で自動車を運転する姿は確かに似合わないと思った。
U140の知枝にとって、身長の話しはNGワードとなるくらい、深刻な悩みであった。
「4、5年前の画像と外見変わらないもんね……、どれも最近撮ったものなのかと思うくらい」
「それ以上は、お姉ちゃんの逆鱗に触れるよ? 男の子じゃなくなっちゃうよ?」
「それは困るから、許して……」
「じゃあ、この件はお口チェックでねっ!!」
人差し指を立てて、そう光に言い渡す知枝の姿は、お姉ちゃんでもあり、まだあどけなさの残る少女のようだった。
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