55 / 73
第15章「愛の形」3
しおりを挟む
汚れた身体を拭いて、しばらく脱力した時を過ごし、身体が落ち着いてからシャワーを浴びて再び晶子はベッドに戻った。
「ちょっとは落ち着いた? まだ痛む?」
心配そうな視線を隆之介は向けた。
シャワーに向かうときに、ベッドシーツに付着していた赤いシミを見てしまったのだから尚更だった。
晶子は軽く頷きながら、もうその表情はいつもの笑顔だった。
その言葉に安心したのか。Tシャツに下着だけを着た二人はベッドの中で手を握った。
「ねぇ、エッチの最中、少しだけど、声がちゃんと出てなかった?」
晶子は聞かれていたことに恥ずかしさを覚えながら、言われたことに驚いている様子を浮かべた。
晶子自身、自分でもあまり実感がなかったのだ、それが声なのか何なのか。
「―――僕、びっくりしたよ、何だか嬉しくて、余計に舞い上がって激しくしちゃってたと思う。―――ごめんね、晶ちゃんから零れる声が、少しでも聴けて、たまらなく嬉しかったから」
隆之介の心からの言葉に、晶子は思わず涙ぐんだ。
隆之介にとっては4年ぶりで、晶子にとっては震災後、初めてのことで、そのことに感傷を覚えないはずがなかったのだ。
切なさが込み上げて握る手により力が籠って、段々と実感を持って嬉しい気持ちが伝染して心に沁み行くような熱い感覚を覚えた。
「今日のことは、幻なんかじゃないって思いたいな……、晶ちゃんの身体のことは自分の事のように大切に想ってるから」
隆之介が愛おしそうに晶子の黒髪を撫でる。
こそばゆい感触を晶子は感じながら、自分のしたことは間違っていなかったと思えたのだった。
「ちょっとは落ち着いた? まだ痛む?」
心配そうな視線を隆之介は向けた。
シャワーに向かうときに、ベッドシーツに付着していた赤いシミを見てしまったのだから尚更だった。
晶子は軽く頷きながら、もうその表情はいつもの笑顔だった。
その言葉に安心したのか。Tシャツに下着だけを着た二人はベッドの中で手を握った。
「ねぇ、エッチの最中、少しだけど、声がちゃんと出てなかった?」
晶子は聞かれていたことに恥ずかしさを覚えながら、言われたことに驚いている様子を浮かべた。
晶子自身、自分でもあまり実感がなかったのだ、それが声なのか何なのか。
「―――僕、びっくりしたよ、何だか嬉しくて、余計に舞い上がって激しくしちゃってたと思う。―――ごめんね、晶ちゃんから零れる声が、少しでも聴けて、たまらなく嬉しかったから」
隆之介の心からの言葉に、晶子は思わず涙ぐんだ。
隆之介にとっては4年ぶりで、晶子にとっては震災後、初めてのことで、そのことに感傷を覚えないはずがなかったのだ。
切なさが込み上げて握る手により力が籠って、段々と実感を持って嬉しい気持ちが伝染して心に沁み行くような熱い感覚を覚えた。
「今日のことは、幻なんかじゃないって思いたいな……、晶ちゃんの身体のことは自分の事のように大切に想ってるから」
隆之介が愛おしそうに晶子の黒髪を撫でる。
こそばゆい感触を晶子は感じながら、自分のしたことは間違っていなかったと思えたのだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。
時戻りのカノン
臣桜
恋愛
将来有望なピアニストだった花音は、世界的なコンクールを前にして事故に遭い、ピアニストとしての人生を諦めてしまった。地元で平凡な会社員として働いていた彼女は、事故からすれ違ってしまった祖母をも喪ってしまう。後悔にさいなまれる花音のもとに、祖母からの手紙が届く。手紙には、自宅にある練習室室Cのピアノを弾けば、女の子の霊が力を貸してくれるかもしれないとあった。やり直したいと思った花音は、トラウマを克服してピアノを弾き過去に戻る。やり直しの人生で秀真という男性に会い、恋をするが――。
※ 表紙はニジジャーニーで生成しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる