”小説”震災のピアニスト

shiori

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第3章「灰色の世界、震災の爪痕」3

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 宮城県内の大きな病院で入院する私。
 未だに余震がやって来ることがあり、私はその度に呼吸が乱れ恐ろしいくらいの寒気と恐怖感に襲われる。
 いつ終わるとも分からない不安と孤独の日々、こうして安全な病室の中にいても到底心休こころやすまることがなかった。

 震災を経て両親が行方不明で親戚や兄弟もいない、生涯孤独となってしまった私の面倒をここしばらく真摯に見てくれているのは、ピアノレッスンの講師をいつもしてくれていた桂式見かつらしきみ先生だった。
 私が小学生の頃は非常勤の音楽教諭でもあった式見先生は私の母と同様にピアニストとしての実力も確かで、多くのオーケストラとセッションもしている。

 今はピアノレッスンの講師として、私の面倒や他の生徒達の指導に専念しているようで、この宮城県内に家を構え、そこでピアノ教室を開いている。

 そんな、私の面倒をわざわざ見てくれている式見先生が今日もお昼にやってくる。
 親切な人だと心の底から思う、優しくて思いやりがあって、聞き上手でもあり話し上手でもある。そして、ピアノが大好きで、歳を重ねても年齢を意識させないくらいしっかりしていて行動力のある人、そういう印象を私は持っている。

 私はその式見先生が訪れるまでの間を、また余震が来るかもしれない恐怖に怯えながら、ただ無気力に過ごした。
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