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第二章

第43話 王都で

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「なんで王都の騎士がここに?」

 騎兵を介抱してテントに寝かせた。
 ビシャスさんの言葉に僕らは考え込む。

「水をかけられて気絶するほど疲弊してる。もしかしたら僕がエイクテッドにいるから何かを知らせに来たのかも?」

 馬の手綱を木に縛り付けながら告げるクランロード様。彼に知らせにってことは国の一大事なんじゃ?

「ん、ん~」

「お兄ちゃん! 起きたよ~」

「ピ~!」

 みんなで考え込んでいるとテントの中から声が聞こえてくる。見ていてくれたリルムちゃんとスームが声をあげてる。

「大丈夫か? 何があった?」

「ク、クランロード様。ここは?」

「ここはエイクテッドへの街道の森の中だ」

「そ、そうでしたか……はっ! そんなことよりクランロード様! 早く王都へ帰還ください。王様が! アレクロード様が!」

「お父様がどうした!」

 現状を聞いて血相を変えて報告する騎士。驚いて聞き返すと驚愕の報告がされた。

「王様が……死去なされました……」

「死去!? お父様が死んだというのか!」

「はい……」

 クランロード様は報告を聞いて肩を落とす。

「そ、そんなバカな……確かに最近せき込んでいたように思えた。だけど、急すぎる……。!? 大司祭はどうした! 大司祭の回復魔法なら助かったんじゃないのか!」

「そ、それが……大司祭様は少し前に行方不明になり。その間に王は少しずつ体調を崩されて」

「そ、そんなことが……あってたまるか!」

 真実を受け入れられないクランロード様。聞くとすぐに外へと飛び出した。

「ティル君。すまない! 私は急ぎ王都へと走るよ」

 馬に跨って告げるクランロード様。すぐに街道に消えていった。

「父が死んだのです致し方ありませんよ」

「そうですね」

 自分の親が死んだなんて言われたら居ても立っても居られない。僕でも飛び出していたと思う。心配だな。エイクテッドに戻ってグレンさんに相談するか。

「この人を放っておくのも心配だし、一度エイクテッドに戻りましょうか」

「そうですね……」

 騎士の人を一人でエイクテッドに向かわせるのも危ない。倒れた人でもあるしね。

 夜に動くのも危ないということだったけど、それは普通の人の話。僕やリルムちゃん、ビシャスさんには関係ない。まあ、リルムちゃんは眠そうにしていたけど、僕とビシャスさんは眠らなくても大丈夫なステータスと種族だからね。吸血鬼が夜眠いなんておかしな話だしね。眠ることは出来るけど、眠らなくても大丈夫って話してるね。
 今回は急いでいるから走ってエイクテッドへ向かう。途中、リルムちゃんが眠そうにしていたのでおんぶして、騎士はビシャスさんがお姫様抱っこしてる。騎士の人の名はエリンっていうらしい。鎧を脱ぐと女性だったことに驚いたよ。
 一晩のうちにエイクテッドに帰ってきてグレンさんの家に向かう。家の扉を叩くとシーラさんが家から出てきて僕らを迎えてくれた。
 ん? なんでシーラさんがグレンさんの家に?

「え! なんでティル君が!?」

「おいおい。帰ってきたら驚かそうと思ったのに……」

 グレンさんも玄関に出てきて声をあげ、なぜか二人はニヤニヤと笑ってる。

「実はよ~」

「ふふふ、私達結婚したの! ほら」

「「わ~」」

 二人は左手薬指に光るリングを見せてきた。リルムちゃんとビシャスさんが感嘆の声をあげる。
 僕らが旅立ってすぐに結婚したのか。

「しかし、どうしたんだよこんな時間に。って後ろの騎士か? その鎧は王都のか」

「はい。話は中で」

 王都の鎧ってわかって驚くグレンさん。家の中に入れてもらってソファーに座ると話し始める。

「はぁ!? 王様が死去!? まじか……」

「王位継承はクランロード様だけよね」

「ああ、ってことはこんどから王様ってからかうしかないのか……」

 グレンさんは明後日の感想を言ってため息をつく。いやいや、そうじゃなくて。

「グレン様。王様がいなくなるってことはそんな簡単な話じゃないんですよ。王位継承だってクランロード様だけだからと言ってそのまま行くとは限らないんですから」

「あ、ああそうか。大臣やら貴族やらが声をあげるかもしれないのか。だけど、それはないと思うがな」

 ビシャスさんの指摘にグレンさんは頷くと否定した。

「王子様はあの性格だからな。国民からの支持も高い。それに騎士たちも慕っていたしな。反乱を起こすやつは速攻で捕まるだろう」

「だからこそじゃないかしら? クランロード様だけ始末してしまえばだれでも名乗りをあげられるってことでしょ? 毒でも仕込んでしまえば人は簡単に死んでしまうんですから」

 楽観的なグレンさんの言葉にビシャスさんが指摘する。まあ確かにそうだけど、怖い考え方だな~。野心を持っている人はそんな恐ろしいことも簡単に起こしてしまうってことか。

「エリンさんはとりあえず僕らの泊まる宿に連れて行きます。グレンさんはこの後どうするかを」

「どうするってクランロード様を追いかけるしかないだろ」

「まあ、そうなんですけどね」

 夜も深くなってくる。エリンさんは動けないこともないけど、あんまり無理をさせられない。宿屋で休んでもらわないと。

「すみません……私はなんて役立たずなんだ……」

 悔しそうに声をもらすエリンさん。彼女を見ていると昔一緒に孤児院で暮らした子を思い出す。エリンさんと一緒で緑の髪で……ん? まさか。

「こんな情けない姿じゃ。エレステナお母さんに会えない。ましてやお兄ちゃんにも」

 涙して呟かれる。エリンさんは僕の名前も聞いているはずだよな。他人の空似というやつかな?

「なんだ? エレステナさんのところで育った子なのか?」

「はい……。いつしか恩を返そうと王都へと向かって騎士になりました。幸い、剣と魔法には才能が有ったので……。ですが、この有様です」

「じゃあ、ティルの後輩ってことか?」

 グレンさんの言葉に頷いて涙するエリンさん。再度グレンさんに言われて僕をまっすぐと見つめる。
 何かに気づいて更に涙の流れる速さが変わっていった。

「お兄ちゃん! お兄ちゃんだ! 会いたかった!」

「え!? ええ~!?」

 落ち着いて僕を見つめたエリンさんが抱き着いてくる。どうやら、昔一緒に孤児院で生活していた子だったみたい。泣きじゃくる彼女の背中をさすってあげると少し落ち着いてくれた。
 とりあえず、宿屋へ……。
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