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第二章

第39話 日々の成長

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 リルムちゃんの家に向かう前にギルドの仕事を済ませる。
 いつも通り、そんな言葉が頭を過る。

「スーム、水で洗い流して」

「ぴ~」

 解体で汚れた包丁をスームの出す水で綺麗にする。この子の水は浄化されている水みたいでとっても綺麗なんだよな。グレンさんが言うには僕の出した水で出来た湖が聖水みたいな効果を出してたみたいで、それを飲んだからなったんじゃないかって言ってた。ってことはあの湖に住んでるスライムたちはみんな聖水のスライムってことになるな。

「お兄ちゃん! こっちも終わったよ~」

「おいおい。二人して早すぎだろ。一時間使ったか?」

 リルムちゃんが血のついた頬のまま終わったのを知らせてくる。頬をスームの出した水で濡らした布で吹いてあげると喜んでくれる。
 グレンさんは呆れながら早すぎる解体に舌を巻く。まあ、早いのも納得のステータスになってしまってるから、致し方ない。ちなみにステータスはこんな感じ。

 名前 ティル 
 職業 勇者
 
 レベル 1/5

 HP 603500
 MP 603250
 
 STR 449500
 DEF 435000
 DEX 431000
 AGI 428000
 INT 418900
 MND 418900

スキル

【解体極級】【戦士上級】【剣士上級】【武闘家上級】【魔法使い上級】【僧侶上級】【重戦士上級】【魔闘家上級】【魔剣士上級】【賢者上級】【農夫上級】【勇者中級】

 ヴァルバレスに四日行った後も溜まっていた解体を半日もかからずに終わらしたもんな。勇者に何度も転生して勇者のスキルも中級になった。勇者はやっぱりすごい、普通の職業の時のレベルアップと違ってステータスの上がりがいいんだ。安定してすべてのステータスが上がるから重宝してる。

「解体も終わったし、グレンさん今日はどうしますか?」

「そうだな。いつも通り、リルムの家か?」

「うん! 畑も耕すのうまくなったから嬉しい!」

 今日もいつも通り、リルムちゃんの家に行くことになった。リルムちゃんは解体もそうだけど、農夫スキルを手に入ったみたいで僕の少し劣化版の効果を畑に付与してる。
 しかし、この農夫というスキルも凄い。試しに孤児院の畑もやってみたら、次の日に実がなっててすぐに食べられる。食費がかからなくなって大助かりだ。
 孤児院の借金もグレンさんに返したしね。問題はすべてクリア出来て、エレステナの心配事をすべてなくすことが出来た。これで、気兼ねなく……。

「魔物はっと……。いないな」

 リルムちゃんの家に着くと、魔物はいなかった。毎回、畑を狙って森の中からこちらを伺ってきてたけど、今日はいないみたいだ。流石に僕らの強さが分かって魔物も警戒するようになったのかもな。

「はったけ~はったけ~」

「はは、今日は上機嫌だねリルムちゃん」

「うん~! だって、畑さんが無事だったんだもん」

 毎回現れるから実を見ることはできなかったんだよね。今日はちゃんと見れて、種が何だったのかもわかった。
 ジャガイモとナスが実ってて早速収穫しておいた。当分は野菜を買わなくても大丈夫ってくらい取れてリルムちゃんじゃなくても最高な気分だ。

「ん? 誰だ?」

「え?」

 ふとグレンさんが声をもらす。森の中に誰かいるみたいだ。
 声に反応して森の中から誰かが出てくる。

「ビシャスさん?」

 森の中から出てきたのは白いウェディングドレスみたいな服を着たビシャスさんだった。

「ティル様……。こ、こんにちは」

「こんにちは……。?」

 ぎこちない挨拶をするビシャスさん。緊張してるみたい?

「どうしたんだビシャス。後の二人はどうした? それにその服はどうしたんだ?」

 グレンさんが疑問に思っていたことを連続して質問。ビシャスさんは俯いた。

「あの、その……。姉と妹はヴァルバレスに居ます。今日は一人です。この服は慕う人を迎えに行く服でして……」

「そうか……。婚約者を迎える服ってことか? ティルはエレステナがいるってわかってるだろ? しつこいと嫌われるぞ」

 答えるビシャスさんにグレンさんが呆れて話す。エレステナ以外に妻をもらうつもりはない。その気持ちは今も変わらない。

「それは知っています。そのエレステナさんと会わせていただけませんか?」

「え? エレステナに?」

「はい!」

 エレステナに会いたい? もしかして亡き者にするんじゃないだろうね?

「おいおい。そんなドレスで殺人はやめてくれよ」

「そ、そんなことするはずないじゃないですか! 会ってその人のいいところ、ティル様の好いたところがどこなのかを知りたいのです!」

 グレンさんが僕の思っていたことを告げると怒って答える。
 僕に好かれようと一生懸命ってことか。なんか申し訳ないな。
 正直、こんなストレートに思いを告げられると無下にはできない気持ちが大きくなっちゃう。

「エレステナお母さんは凄いんだよ~。ティルお兄ちゃんの好きなものいっぱい持ってるの~。食べ物は全部エレステナお母さんの作ったものが好きだし、お耳も好きだし~」

「ちょ、ちょっとリルムちゃん? ちょっとお口チャックしようね~」

「抱きしめられちゃった~。ぎゅ~」

 指を咥えて考え込んでたリルムちゃんが急に口を開くと恥ずかしいことを口走っていく。僕は思わず彼女を抱き上げると抱き返される。
 まったく、リルムちゃんは……。

「耳? 人ではないのですか?」

「ああ、エレステナはエルフだよ。長命でティルは先に寿命を迎えるだろうな」

「では、次はないということですね」

「ああ、そうだな」

 エルフは長い人生、人は短命だ。どうしてもエルフとは一緒に人生を終れない。人ならば吸血鬼のビシャスさん達も寿命を待つことで次の妻をと考えていたんだろう。それでも、僕はエレステナ以外を妻になんて思わないけどね。

「まっ、とりあえずエイクテッドに帰るか」

「そうですね。エレステナと会ってもらって諦めてもらいます」

「ティルが嫌に厳しいな。珍しい」

 グレンさんが頭で両手を組んで歩き出す。無下にできない、そう思っていたけど僕はエレステナ以外を妻にする気はない。ここはエレステナの魅力で恐れおののいてもらおう。
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