9 / 15
第9話 安全
しおりを挟む
「スゥスゥ」
「行ってきます」
ミサトちゃんも疲れていたみたいだ。食事を終えるとすぐに眠りについてくれた。僕はしっかりと鍵を閉めてマンション探索に戻る。
「4階からスタートだな」
再度暗くなる中、独り言をつぶやいて4階に降りる。通路にいるゾンビは全員倒してある。部屋を調べるだけでいいんだ。ついでにゾンビの死骸をマンションから放り投げる。あとで埋葬するから落としておいた方が都合がいい。
エレベーターでわざわざ運ぶのは避ける。肉片が落ちて腐敗臭をまき散らせる可能性もあるからね。
「4階も異常なし。ゾンビもいなかったな」
これだけ生存者がいないのを考えるとみんな仕事人間なのがうかがえるな。僕みたいな怠惰な人間が生き残ってしまってる。なんだか感慨深い。
食べ物は豊富に手に入った。とりあえず、手つかずで残しておくけど、メモだけ取っておく。
「あ、ハムスターのこと忘れてたな。7階に上げておくか」
ふとハムスターの事を思い出して3階に降りる。ハムスターの入ったカゴと餌をもって7階にあがる。
「マナブさん!」
「え? ど、どうしたのミサトちゃん」
7階にあがるとなぜかミサトちゃんが抱き着いてくる。思わずハムスターのカゴを落としてしまい、ガチャンと大きな音が鳴る。彼女は肩を震わせて泣いてる。何かあったのか?
「マナブさんがいなくなったから、いやになってどこかへ行ってしまったと」
なるほど……不安がらせてしまったな。
「ごめんごめん。とにかく、安全を確保したくてね。他にもあんな生存者がいたら危険だろ?」
「……」
頭をなでて声をかける。彼女はそれでも俯いて心配そうにしてる。
「大丈夫、朝には安全になるよ。約束する」
「……違うんです。その離れないでほしくて」
僕の声に首を振ってこたえるミサトちゃん。あんな怖い思いをしたからか、彼女は暗闇が怖くなってしまったか。仕方ない、探索はあきらめるか。
「わかったよ。でも、夜の間だけだ。朝になったら探索に戻るよ」
「はい……」
抱き着くミサトちゃんを諭しては部屋に戻る。ハムスターも忘れずに持ち帰る。落としちゃったけど、ハムスターは元気だ。夜行性だっけかな。
「あ、あの、同じ布団に入っていいですか?」
「え?」
さっきはソファーに寝るふりをしていたけど、今回はミサトちゃんのためにもしっかりと布団を用意してきた。自分の部屋にあった敷布団を持ってきた。彼女の声に唖然として声を上げる。
「僕は男だよ? ダメに決まってるだろ?」
「で、ですよね」
断ると涙目になるミサトちゃん。はぁ~、僕の理性が持つかどうか……。
「わかったよ。背中合わせで寝よう」
断るのをやめて声をかける。すると彼女は迷いなく背中を向けて布団に入ってくる。よく見ると彼女はずっと震えてる。無理してたんだな。
「おはようございますマナブさん」
「ん、おはようミサトちゃん」
朝になり目覚めるといい匂いがして体を起こす。ミサトちゃんが気が付いてあいさつを交わす。料理をするときはエプロンをするんだな。しっかりしてる子だ。
「カズキ君とミカンちゃんは?」
「二人とも大丈夫そうです。ミカンはお風呂にいれてあげたいけど無理そうなので」
ミカンちゃんは血だらけだからな。服を着替えることもさせられない。不衛生で危険だよな。何とかならないだろうか?
「トマ子、カキ子、リン子は喜んで実を作りました」
「おっと、毎日作ってくれるのか」
指輪から声が聞こえてくる。トマ子は隣の部屋だよな。取りに行くか。
ミサトちゃんに声をかけてから隣の部屋に向かう。トマ子を植木鉢ごと回収して帰ってくるとプチトマトをもぐ。
「そういえば、トマ子のトマトは元気が出るんだよな……」
スキルによって手に入ってる野菜だ。何か効果があるかもしれない。二人に食べさせてみたいな。
ミサトちゃんに調理してもらうか。と言ってもプチトマトは一粒だからな~。
「「おはようございます」」
「お、二人とも起きたね」
色々考えているとミカンちゃんとカズキ君が目を覚まして挨拶をしてくれる。ミカンちゃんはさすがにまだ体を起こすこともできないみたいだな。
「ミカンちゃん、痛くない範囲で体を動かしてみてくれる?」
「うん」
体を動かせるなら無理してでも服を変えた方がいい。傷口を縫合することは無理だから、綺麗にしとかないと危険だ。病気になったら薬がないと対処できないからな。
「痛い……」
「ん~、無理してでも服を着替えてもらいたいんだけど」
体で動かないところはないみたいだ。切りつけられた方の腕や手もちゃんと動いてる。だけど、痛いのは痛いみたいだな。
「お兄ちゃんがやった方がいいっていうなら着替える。お姉ちゃ~ん」
ミカンちゃんは痛そうにしながらも声を上げてミサトちゃんを呼ぶ。彼女に説明すると着替えを持ってきてくれる。
ミカンちゃんの事はミサトちゃんに任せてカズキ君と別の部屋に行く。彼の体も見ておかないとな。
「あざが凄いな」
「はは……。でも動けます。痛っ」
「無理しない。痛くなくなったら働いてもらうよ。無理して動けなくなったら困るだろ?」
「はい……」
カズキ君はお父さんがなくなったことを悲しむ暇もない。それなのに頑張ろうとしてくれてる。ミカンちゃんもそうだけど、いい子ばかりだな。
「まずはご飯。ミサトちゃんが作っておいてくれてるから」
ミサトちゃんはちゃんと料理を作ってくれてる。お母さんを見て育ったんだろうな。僕も見ていたんだけどな~。目玉焼きしかできなかったな~。
「服は着替えました……」
血だらけのタオルと服を持って出てくるミサトちゃん。傷口を見てしまったんだろう。彼女は俯いてしまってる。
「病院に誰かいてくれれば」
「……病院か」
ミサトちゃんの言葉に考え込む。この手の状況で病院に行くと碌なことがない。出来れば行きたくないが……。
看護師のミサトちゃん達のお母さんがいるかもしれないところでもあるんだよな。
「車は運転できない。自転車か徒歩だな」
どちらにしても僕がここを離れないといけない。その間、みんなは無防備になってしまう。どうしたものか……。
「行ってきます」
ミサトちゃんも疲れていたみたいだ。食事を終えるとすぐに眠りについてくれた。僕はしっかりと鍵を閉めてマンション探索に戻る。
「4階からスタートだな」
再度暗くなる中、独り言をつぶやいて4階に降りる。通路にいるゾンビは全員倒してある。部屋を調べるだけでいいんだ。ついでにゾンビの死骸をマンションから放り投げる。あとで埋葬するから落としておいた方が都合がいい。
エレベーターでわざわざ運ぶのは避ける。肉片が落ちて腐敗臭をまき散らせる可能性もあるからね。
「4階も異常なし。ゾンビもいなかったな」
これだけ生存者がいないのを考えるとみんな仕事人間なのがうかがえるな。僕みたいな怠惰な人間が生き残ってしまってる。なんだか感慨深い。
食べ物は豊富に手に入った。とりあえず、手つかずで残しておくけど、メモだけ取っておく。
「あ、ハムスターのこと忘れてたな。7階に上げておくか」
ふとハムスターの事を思い出して3階に降りる。ハムスターの入ったカゴと餌をもって7階にあがる。
「マナブさん!」
「え? ど、どうしたのミサトちゃん」
7階にあがるとなぜかミサトちゃんが抱き着いてくる。思わずハムスターのカゴを落としてしまい、ガチャンと大きな音が鳴る。彼女は肩を震わせて泣いてる。何かあったのか?
「マナブさんがいなくなったから、いやになってどこかへ行ってしまったと」
なるほど……不安がらせてしまったな。
「ごめんごめん。とにかく、安全を確保したくてね。他にもあんな生存者がいたら危険だろ?」
「……」
頭をなでて声をかける。彼女はそれでも俯いて心配そうにしてる。
「大丈夫、朝には安全になるよ。約束する」
「……違うんです。その離れないでほしくて」
僕の声に首を振ってこたえるミサトちゃん。あんな怖い思いをしたからか、彼女は暗闇が怖くなってしまったか。仕方ない、探索はあきらめるか。
「わかったよ。でも、夜の間だけだ。朝になったら探索に戻るよ」
「はい……」
抱き着くミサトちゃんを諭しては部屋に戻る。ハムスターも忘れずに持ち帰る。落としちゃったけど、ハムスターは元気だ。夜行性だっけかな。
「あ、あの、同じ布団に入っていいですか?」
「え?」
さっきはソファーに寝るふりをしていたけど、今回はミサトちゃんのためにもしっかりと布団を用意してきた。自分の部屋にあった敷布団を持ってきた。彼女の声に唖然として声を上げる。
「僕は男だよ? ダメに決まってるだろ?」
「で、ですよね」
断ると涙目になるミサトちゃん。はぁ~、僕の理性が持つかどうか……。
「わかったよ。背中合わせで寝よう」
断るのをやめて声をかける。すると彼女は迷いなく背中を向けて布団に入ってくる。よく見ると彼女はずっと震えてる。無理してたんだな。
「おはようございますマナブさん」
「ん、おはようミサトちゃん」
朝になり目覚めるといい匂いがして体を起こす。ミサトちゃんが気が付いてあいさつを交わす。料理をするときはエプロンをするんだな。しっかりしてる子だ。
「カズキ君とミカンちゃんは?」
「二人とも大丈夫そうです。ミカンはお風呂にいれてあげたいけど無理そうなので」
ミカンちゃんは血だらけだからな。服を着替えることもさせられない。不衛生で危険だよな。何とかならないだろうか?
「トマ子、カキ子、リン子は喜んで実を作りました」
「おっと、毎日作ってくれるのか」
指輪から声が聞こえてくる。トマ子は隣の部屋だよな。取りに行くか。
ミサトちゃんに声をかけてから隣の部屋に向かう。トマ子を植木鉢ごと回収して帰ってくるとプチトマトをもぐ。
「そういえば、トマ子のトマトは元気が出るんだよな……」
スキルによって手に入ってる野菜だ。何か効果があるかもしれない。二人に食べさせてみたいな。
ミサトちゃんに調理してもらうか。と言ってもプチトマトは一粒だからな~。
「「おはようございます」」
「お、二人とも起きたね」
色々考えているとミカンちゃんとカズキ君が目を覚まして挨拶をしてくれる。ミカンちゃんはさすがにまだ体を起こすこともできないみたいだな。
「ミカンちゃん、痛くない範囲で体を動かしてみてくれる?」
「うん」
体を動かせるなら無理してでも服を変えた方がいい。傷口を縫合することは無理だから、綺麗にしとかないと危険だ。病気になったら薬がないと対処できないからな。
「痛い……」
「ん~、無理してでも服を着替えてもらいたいんだけど」
体で動かないところはないみたいだ。切りつけられた方の腕や手もちゃんと動いてる。だけど、痛いのは痛いみたいだな。
「お兄ちゃんがやった方がいいっていうなら着替える。お姉ちゃ~ん」
ミカンちゃんは痛そうにしながらも声を上げてミサトちゃんを呼ぶ。彼女に説明すると着替えを持ってきてくれる。
ミカンちゃんの事はミサトちゃんに任せてカズキ君と別の部屋に行く。彼の体も見ておかないとな。
「あざが凄いな」
「はは……。でも動けます。痛っ」
「無理しない。痛くなくなったら働いてもらうよ。無理して動けなくなったら困るだろ?」
「はい……」
カズキ君はお父さんがなくなったことを悲しむ暇もない。それなのに頑張ろうとしてくれてる。ミカンちゃんもそうだけど、いい子ばかりだな。
「まずはご飯。ミサトちゃんが作っておいてくれてるから」
ミサトちゃんはちゃんと料理を作ってくれてる。お母さんを見て育ったんだろうな。僕も見ていたんだけどな~。目玉焼きしかできなかったな~。
「服は着替えました……」
血だらけのタオルと服を持って出てくるミサトちゃん。傷口を見てしまったんだろう。彼女は俯いてしまってる。
「病院に誰かいてくれれば」
「……病院か」
ミサトちゃんの言葉に考え込む。この手の状況で病院に行くと碌なことがない。出来れば行きたくないが……。
看護師のミサトちゃん達のお母さんがいるかもしれないところでもあるんだよな。
「車は運転できない。自転車か徒歩だな」
どちらにしても僕がここを離れないといけない。その間、みんなは無防備になってしまう。どうしたものか……。
44
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~
次元謄一
ファンタジー
タイトル変更しました→旧タイトル 「デッドエンドキングダム ~十五歳の魔剣使いは辺境から異世界統一を目指します~」
前世の記憶を持って生まれたオスカーは国王の落とし子だった。父の死によって十五歳で北の辺境王国の統治者になったオスカーは、炎を操る魔剣、現代日本の記憶、そしてなぜか生まれながらに持っていた【千里眼】の能力を駆使し、魔物の森や有翼人の国などを攻略していく。国内では水車を利用した温泉システム、再現可能な前世の料理、温室による農業、畜産業の発展、透視能力で地下鉱脈を探したりして文明改革を進めていく。
軍を使って周辺国を併合して、大臣たちと国内を豊かにし、夜はメイド達とムフフな毎日。
しかし、大陸中央では至る所で戦争が起こり、戦火は北までゆっくりと、確実に伸びてきていた。加えて感染するとグールになってしまう魔物も至る所で発生し……!?
雷を操るツンデレ娘魔人、氷を操るクール系女魔人、古代文明の殺戮機械人(女)など、可愛いけど危険な仲間と共に、戦乱の世を駆け抜ける!
登場人物が多いので結構サクサク進みます。気軽に読んで頂ければ幸いです。
婚約破棄されても頑張るポーション製造生活 ~聖女は聖水ポーションで人々をゾンビから救います~
夜桜
恋愛
妹に婚約者を奪われ、婚約破棄を言い渡されてしまった聖女ルシアは悲しみに暮れる。しかし、そんな暇はなかった。帝国には大量のゾンビが押し寄せていた。襲われない為には聖水ポーションが必要だった。ルシアは聖女の力『聖水ポーション』製造で人々を救っていく。そうして懸命に活動していると、帝国の民や辺境伯から認められていくようになる。
※ざまぁ要素ありです
※ちょっと手直しする場合がございます
限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら
フオツグ
恋愛
「私、異世界で推し活します!」
大好きな女性向けスマホゲーム【夜空を彩るミルキーウェイ】の世界に、聖女として召喚された日本の女子高生・イオリ。
イオリの推しは敵のゾンビ男子・ノヴァ。不良そうな見た目でありながら、真面目な努力家で優しい彼にイオリは惚れ込んでいた。
しかし、ノヴァはチュートリアルで主人公達に倒され、以後ストーリーに一切出て来ないのであった……。
「どうして」
推しキャラ・ノヴァを幸せにすべく、限界オタク・イオリは異世界で奮闘する!
限界オタク聖女×拗らせゾンビ男子のピュアラブコメディ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生先は水神様の眷属様!?
お花見茶
ファンタジー
高校二年生の夏、私――弥生は子供をかばってトラックにはねられる。気がつくと、目の前には超絶イケメンが!!面食いの私にはたまりません!!その超絶イケメンは私がこれから行く世界の水の神様らしい。
……眷属?貴方の?そんなのYESに決まってるでしょう!!え?この子達育てるの?私が?私にしか頼めない?もう、そんなに褒めたって何も出てきませんよぉ〜♪もちろんです、きちんと育ててみせましょう!!チョロいとか言うなや。
……ところでこの子達誰ですか?え、子供!?私の!?
°·✽·°·✽·°·✽·°·✽·°·✽·°
◈不定期投稿です
◈感想送ってくれると嬉しいです
◈誤字脱字あったら教えてください
異世界から帰ってきたら終末を迎えていた ~終末は異世界アイテムでのんびり過ごす~
十本スイ
ファンタジー
高校生の時に異世界に召喚された主人公――四河日門。文化レベルが低過ぎる異世界に我慢ならず、元の世界へと戻ってきたのはいいのだが、地球は自分が知っている世界とはかけ離れた環境へと変貌していた。文明は崩壊し、人々はゾンビとなり世界は終末を迎えてしまっていたのだ。大きなショックを受ける日門だが、それでも持ち前のポジティブさを発揮し、せっかくだからと終末世界を異世界アイテムなどを使ってのんびり暮らすことにしたのである。
異世界八険伝
AW
ファンタジー
これは単なる異世界転移小説ではない!感涙を求める人へ贈るファンタジーだ!
突然、異世界召喚された僕は、12歳銀髪碧眼の美少女勇者に。13歳のお姫様、14歳の美少女メイド、11歳のエルフっ娘……可愛い仲間たち【挿絵あり】と一緒に世界を救う旅に出る!笑いあり、感動ありの王道冒険物語をどうぞお楽しみあれ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる