上 下
1 / 15

第1話 寝よう

しおりを挟む
「ふぁ~。眠い~。もっと寝てたいけど大学行かなきゃな~」

 僕の名前は遠藤 学(エンドウ マナブ)大学一年。
 最近ゲームにはまって寝る時間を割いてしまっている馬鹿な学生だ。いつもと変わらない朝を迎えて朝食を取りながらスマホのニュースを開く。

「ん? 暴動? 駅前が映ってる……」

 いつも通りだと思っていたら駅前は大混乱になっているみたいだ。電車も止まっていて煙が上がっている。

「ここから見えるんじゃないか?」

 僕はマンションの7階に住んでいるからベランダに出て駅前を見ることにした。するとニュースで言っていた通り、煙が上がっているのが見える。

「ん~、今日は大学休むか。眠いしそうしよう」

 眠いのも手伝ってサボってしまう僕。面倒なことを避けてきた僕は日々、こんな感じだ。

「はい、そうです。なので休むことにしました。はい、はい。お願いします。……よし! 寝よう!」
 
 大学に休みの電話をすると大学側も慣れたものでサクサクと会話が進む。どうやら、別の学生も休みの電話をかけていたみたいで『あなたも』と言われた。簡単な会話で済んでよかった。
 ベッドに飛び込んではぁ~とため息をついて目を瞑る。すると、ドンドンドンッ!

「わっ!? な、なんだなんだ!?」

 玄関の扉が叩かれる。僕は一人暮らしだから誰かが来る予定もない。残念ながら友達なんて呼べる相手もいない……自分で言って悲しいが事実だ。
 僕は恐る恐る玄関の扉に近づいてのぞき穴から外を覗く。

「……あれ? 誰もいない?」

 確かに扉が叩かれたはずなのに誰もそこにいない。チェーンロックをして恐る恐る扉を開ける。それでも誰もいなかった。僕はホッとしながら扉を閉め始める。
 その時! 扉を閉める僕の手に痛みが走った。

「痛っ! な、なんだ?」

 痛みに驚いて扉から手を離す。痛みを発している手を見ると赤く切れ目がついているのが分かった。

「ええ!? なんで切れてるの……かまいたちってやつか?」

 傷に驚きながら切れた指先を摩る。すぐに処置しておかないとな。

「グルルルル」

「え!?」

 玄関から離れようと思ったら獣のような声が聞こえてくる。チェーンロックでかろうじて開いていた玄関の扉からだ。驚いて見るとそこにはおじさんが立っていた。目を赤く光らせてこちらを睨みつけてきている。

「あ、あの。何かご用ですか?」

「!? ガァ! ガガガァ!」

「ちょ、そんな事したら歯が!?」

 声をかけるとより一層凶暴になって扉に噛みつき始めた。言っている傍からおじさんの歯が地面にこぼれおちてく。すぐに歯のないおじさんになっていった。だから言ったのに……。

「おじさん! この傷もあんた? も~、ハロウィンはまだまださきだぞ! まったく、閉めるから触るなよ」

「グルルルル」

 玄関の扉を閉めながら声をかけると恨めしそうに目を赤く輝かせてみてきていた。お酒でも飲んでたのかな? 何事も程々にしないとダメだよな~。

「よし、絆創膏もはったし、寝よ寝よ。あ~、体がポカポカしてきた。ゆっくり眠れそうだ~」

 まるで湯船に入ったかのように体が熱い。布団に入ったら気持ちいいだろうな~。そんな呑気なことを考えながら布団に入ると本当に気持ちよく眠りにつけた。
 この時の僕は、まさか次に目覚めた時に世界が変わっているなんて思いもよらなかったよ。

「ふぁ~。眠った眠った~。ありゃ? 一日寝てたかな?」

 気持ちよく眠って起きるとさっき目覚めた時と同じ朝日を浴びて目覚めた。24時間くらい寝ていたってことか。流石に寝すぎだ。

「まあ、いいや。とりあえず今日は平和かな?」

 いつも通り、スマホを開く。ニュース欄は昨日と同じ。更新されていないのかな?

「……。更新されてないことって今まであったか?」

 この情報世界でニュースが更新されないなんて新しいな。そんなことを思いながらベランダに出て外を見下ろす。
 僕の部屋は7階、そこそこの風景が見下ろせる。

「……。人が寝てる?」

 いくつもある道路すべてに人が寝ているのが見える。道路を埋め尽くすほどの人ではないけど、一つの道路に一人はいる。立っている人もいるけど、フラフラしていて今にも倒れそうになってる。

「だ、大丈夫ですか~?」

 何が起こってるのかわからなかったから大きな声をかけて見た。するとフラフラしていた人が僕に気が付いて凄いスピードで僕のマンションに走りこんでくる。驚いている間もなく、僕の部屋の扉に大きな衝撃音が鳴った。
 ドン! ドンドンドン! 

「え!? ちょ!? どういうこと?」

 声に気が付いて走ってきたってこと? な、なんかこういうの映画で見たことがある。
 ふとその時、昨日のおじさんのことを思い出した。虚ろな赤い瞳、異常な行動。今まさに同じようなことをされてる。

「と、とりあえずのぞき穴から見て見るか」

 僕は恐る恐るのぞき穴から外を覗いた。
 
「あ、あれ? 真っ暗?」
 
 窓の外を再度見ると確かに日がさしているのが見える。おかしいと思って再度のぞき穴から外を見ると人の目がドアップで映し出された。

「わっ!?」

「!?」

 ドン! ドンドンドン!
 人の目に驚いて声をあげると再度ドアが叩かれる。さっきまでの暗闇は近くにいすぎて暗かったのか。もしかしたら口を開いてのぞき穴を食べようとしていた? ひ、人のすることじゃない。

「!? そうだ! ゾンビ映画だ。昨日のおじさんもゾンビ映画と同じだ!」

 異常な行動を目の当たりにして頭がフル回転し始める。映画のゾンビが人を捕食しようと必死になる行動に似てる。障害物を壊して入ろうとしてくるおじさんとこのおばさん。まったく同じだ。

「え? ってことは」

 再度、ベランダから外を見下ろす。

「終末になっちゃったってこと?」

 フラフラで歩く人の列、道路で眠ってる人。通常ではお目にかかれない異常な光景。さっきは気づかなかったけど、これは異常だ。

「は、ははは。終わった……」

 異常な光景を見下ろして、昨日怪我をした指を見る。すると宝石のように真っ赤になっていて血の気が引いた。その宝石のような指を最後に僕は意識を手放した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~

次元謄一
ファンタジー
タイトル変更しました→旧タイトル 「デッドエンドキングダム ~十五歳の魔剣使いは辺境から異世界統一を目指します~」 前世の記憶を持って生まれたオスカーは国王の落とし子だった。父の死によって十五歳で北の辺境王国の統治者になったオスカーは、炎を操る魔剣、現代日本の記憶、そしてなぜか生まれながらに持っていた【千里眼】の能力を駆使し、魔物の森や有翼人の国などを攻略していく。国内では水車を利用した温泉システム、再現可能な前世の料理、温室による農業、畜産業の発展、透視能力で地下鉱脈を探したりして文明改革を進めていく。 軍を使って周辺国を併合して、大臣たちと国内を豊かにし、夜はメイド達とムフフな毎日。 しかし、大陸中央では至る所で戦争が起こり、戦火は北までゆっくりと、確実に伸びてきていた。加えて感染するとグールになってしまう魔物も至る所で発生し……!? 雷を操るツンデレ娘魔人、氷を操るクール系女魔人、古代文明の殺戮機械人(女)など、可愛いけど危険な仲間と共に、戦乱の世を駆け抜ける! 登場人物が多いので結構サクサク進みます。気軽に読んで頂ければ幸いです。

婚約破棄されても頑張るポーション製造生活 ~聖女は聖水ポーションで人々をゾンビから救います~

夜桜
恋愛
 妹に婚約者を奪われ、婚約破棄を言い渡されてしまった聖女ルシアは悲しみに暮れる。しかし、そんな暇はなかった。帝国には大量のゾンビが押し寄せていた。襲われない為には聖水ポーションが必要だった。ルシアは聖女の力『聖水ポーション』製造で人々を救っていく。そうして懸命に活動していると、帝国の民や辺境伯から認められていくようになる。 ※ざまぁ要素ありです ※ちょっと手直しする場合がございます

おっす、わしロマ爺。ぴっちぴちの新米教皇~もう辞めさせとくれっ!?~

月白ヤトヒコ
ファンタジー
 教皇ロマンシス。歴代教皇の中でも八十九歳という最高齢で就任。  前任の教皇が急逝後、教皇選定の儀にて有力候補二名が不慮の死を遂げ、混乱に陥った教会で年功序列の精神に従い、選出された教皇。  元からの候補ではなく、支持者もおらず、穏健派であることと健康であることから選ばれた。故に、就任直後はぽっと出教皇や漁夫の利教皇と揶揄されることもあった。  しかし、教皇就任後に教会内でも声を上げることなく、密やかにその資格を有していた聖者や聖女を見抜き、要職へと抜擢。  教皇ロマンシスの時代は歴代の教皇のどの時代よりも数多くの聖者、聖女の聖人が在籍し、世の安寧に尽力したと言われ、豊作の時代とされている。  また、教皇ロマンシスの口癖は「わしよりも教皇の座に相応しいものがおる」と、非常に謙虚な人柄であった。口の悪い子供に「徘徊老人」などと言われても、「よいよい、元気な子じゃのぅ」と笑って済ませるなど、穏やかな好々爺であったとも言われている。 その実態は……「わしゃ、さっさと隠居して子供達と戯れたいんじゃ~っ!?」という、ロマ爺の日常。 短編『わし、八十九歳。ぴっちぴちの新米教皇。もう辞めたい……』を連載してみました。不定期更新。

限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら

フオツグ
恋愛
「私、異世界で推し活します!」 大好きな女性向けスマホゲーム【夜空を彩るミルキーウェイ】の世界に、聖女として召喚された日本の女子高生・イオリ。 イオリの推しは敵のゾンビ男子・ノヴァ。不良そうな見た目でありながら、真面目な努力家で優しい彼にイオリは惚れ込んでいた。 しかし、ノヴァはチュートリアルで主人公達に倒され、以後ストーリーに一切出て来ないのであった……。 「どうして」 推しキャラ・ノヴァを幸せにすべく、限界オタク・イオリは異世界で奮闘する! 限界オタク聖女×拗らせゾンビ男子のピュアラブコメディ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界から帰ってきたら終末を迎えていた ~終末は異世界アイテムでのんびり過ごす~

十本スイ
ファンタジー
高校生の時に異世界に召喚された主人公――四河日門。文化レベルが低過ぎる異世界に我慢ならず、元の世界へと戻ってきたのはいいのだが、地球は自分が知っている世界とはかけ離れた環境へと変貌していた。文明は崩壊し、人々はゾンビとなり世界は終末を迎えてしまっていたのだ。大きなショックを受ける日門だが、それでも持ち前のポジティブさを発揮し、せっかくだからと終末世界を異世界アイテムなどを使ってのんびり暮らすことにしたのである。

異世界八険伝

AW
ファンタジー
これは単なる異世界転移小説ではない!感涙を求める人へ贈るファンタジーだ! 突然、異世界召喚された僕は、12歳銀髪碧眼の美少女勇者に。13歳のお姫様、14歳の美少女メイド、11歳のエルフっ娘……可愛い仲間たち【挿絵あり】と一緒に世界を救う旅に出る!笑いあり、感動ありの王道冒険物語をどうぞお楽しみあれ!

慟哭の時

レクフル
ファンタジー
物心ついた時から、母と二人で旅をしていた。 各地を周り、何処に行くでもなく旅をする。 気づいたらそうだったし、何の疑問も持たなくて、ただ私は母と旅を続けていた。 しかし、母には旅をする理由があった。 そんな日々が続いたある日、母がいなくなった。 私は一人になったのだ。 誰にも触れられず、人と関わる事を避けて生きていた私が急に一人になって、どう生きていけばいいのか…… それから母を探す旅を始める。 誰にも求められず、触れられず、忘れ去られていき、それでも生きていく理由等あるのだろうか……? 私にあるのは異常な力だけ。 普通でいられるのなら、こんな力等無くていいのだ。 だから旅をする。 私を必要としてくれる存在であった母を探すために。 私を愛してくれる人を探すために……

処理中です...