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第1話 寝よう

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「ふぁ~。眠い~。もっと寝てたいけど大学行かなきゃな~」

 僕の名前は遠藤 学(エンドウ マナブ)大学一年。
 最近ゲームにはまって寝る時間を割いてしまっている馬鹿な学生だ。いつもと変わらない朝を迎えて朝食を取りながらスマホのニュースを開く。

「ん? 暴動? 駅前が映ってる……」

 いつも通りだと思っていたら駅前は大混乱になっているみたいだ。電車も止まっていて煙が上がっている。

「ここから見えるんじゃないか?」

 僕はマンションの7階に住んでいるからベランダに出て駅前を見ることにした。するとニュースで言っていた通り、煙が上がっているのが見える。

「ん~、今日は大学休むか。眠いしそうしよう」

 眠いのも手伝ってサボってしまう僕。面倒なことを避けてきた僕は日々、こんな感じだ。

「はい、そうです。なので休むことにしました。はい、はい。お願いします。……よし! 寝よう!」
 
 大学に休みの電話をすると大学側も慣れたものでサクサクと会話が進む。どうやら、別の学生も休みの電話をかけていたみたいで『あなたも』と言われた。簡単な会話で済んでよかった。
 ベッドに飛び込んではぁ~とため息をついて目を瞑る。すると、ドンドンドンッ!

「わっ!? な、なんだなんだ!?」

 玄関の扉が叩かれる。僕は一人暮らしだから誰かが来る予定もない。残念ながら友達なんて呼べる相手もいない……自分で言って悲しいが事実だ。
 僕は恐る恐る玄関の扉に近づいてのぞき穴から外を覗く。

「……あれ? 誰もいない?」

 確かに扉が叩かれたはずなのに誰もそこにいない。チェーンロックをして恐る恐る扉を開ける。それでも誰もいなかった。僕はホッとしながら扉を閉め始める。
 その時! 扉を閉める僕の手に痛みが走った。

「痛っ! な、なんだ?」

 痛みに驚いて扉から手を離す。痛みを発している手を見ると赤く切れ目がついているのが分かった。

「ええ!? なんで切れてるの……かまいたちってやつか?」

 傷に驚きながら切れた指先を摩る。すぐに処置しておかないとな。

「グルルルル」

「え!?」

 玄関から離れようと思ったら獣のような声が聞こえてくる。チェーンロックでかろうじて開いていた玄関の扉からだ。驚いて見るとそこにはおじさんが立っていた。目を赤く光らせてこちらを睨みつけてきている。

「あ、あの。何かご用ですか?」

「!? ガァ! ガガガァ!」

「ちょ、そんな事したら歯が!?」

 声をかけるとより一層凶暴になって扉に噛みつき始めた。言っている傍からおじさんの歯が地面にこぼれおちてく。すぐに歯のないおじさんになっていった。だから言ったのに……。

「おじさん! この傷もあんた? も~、ハロウィンはまだまださきだぞ! まったく、閉めるから触るなよ」

「グルルルル」

 玄関の扉を閉めながら声をかけると恨めしそうに目を赤く輝かせてみてきていた。お酒でも飲んでたのかな? 何事も程々にしないとダメだよな~。

「よし、絆創膏もはったし、寝よ寝よ。あ~、体がポカポカしてきた。ゆっくり眠れそうだ~」

 まるで湯船に入ったかのように体が熱い。布団に入ったら気持ちいいだろうな~。そんな呑気なことを考えながら布団に入ると本当に気持ちよく眠りにつけた。
 この時の僕は、まさか次に目覚めた時に世界が変わっているなんて思いもよらなかったよ。

「ふぁ~。眠った眠った~。ありゃ? 一日寝てたかな?」

 気持ちよく眠って起きるとさっき目覚めた時と同じ朝日を浴びて目覚めた。24時間くらい寝ていたってことか。流石に寝すぎだ。

「まあ、いいや。とりあえず今日は平和かな?」

 いつも通り、スマホを開く。ニュース欄は昨日と同じ。更新されていないのかな?

「……。更新されてないことって今まであったか?」

 この情報世界でニュースが更新されないなんて新しいな。そんなことを思いながらベランダに出て外を見下ろす。
 僕の部屋は7階、そこそこの風景が見下ろせる。

「……。人が寝てる?」

 いくつもある道路すべてに人が寝ているのが見える。道路を埋め尽くすほどの人ではないけど、一つの道路に一人はいる。立っている人もいるけど、フラフラしていて今にも倒れそうになってる。

「だ、大丈夫ですか~?」

 何が起こってるのかわからなかったから大きな声をかけて見た。するとフラフラしていた人が僕に気が付いて凄いスピードで僕のマンションに走りこんでくる。驚いている間もなく、僕の部屋の扉に大きな衝撃音が鳴った。
 ドン! ドンドンドン! 

「え!? ちょ!? どういうこと?」

 声に気が付いて走ってきたってこと? な、なんかこういうの映画で見たことがある。
 ふとその時、昨日のおじさんのことを思い出した。虚ろな赤い瞳、異常な行動。今まさに同じようなことをされてる。

「と、とりあえずのぞき穴から見て見るか」

 僕は恐る恐るのぞき穴から外を覗いた。
 
「あ、あれ? 真っ暗?」
 
 窓の外を再度見ると確かに日がさしているのが見える。おかしいと思って再度のぞき穴から外を見ると人の目がドアップで映し出された。

「わっ!?」

「!?」

 ドン! ドンドンドン!
 人の目に驚いて声をあげると再度ドアが叩かれる。さっきまでの暗闇は近くにいすぎて暗かったのか。もしかしたら口を開いてのぞき穴を食べようとしていた? ひ、人のすることじゃない。

「!? そうだ! ゾンビ映画だ。昨日のおじさんもゾンビ映画と同じだ!」

 異常な行動を目の当たりにして頭がフル回転し始める。映画のゾンビが人を捕食しようと必死になる行動に似てる。障害物を壊して入ろうとしてくるおじさんとこのおばさん。まったく同じだ。

「え? ってことは」

 再度、ベランダから外を見下ろす。

「終末になっちゃったってこと?」

 フラフラで歩く人の列、道路で眠ってる人。通常ではお目にかかれない異常な光景。さっきは気づかなかったけど、これは異常だ。

「は、ははは。終わった……」

 異常な光景を見下ろして、昨日怪我をした指を見る。すると宝石のように真っ赤になっていて血の気が引いた。その宝石のような指を最後に僕は意識を手放した。
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