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その後

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 孤児院の地下で僕はゲートに使っている魔石を増設している。地下には下水が流れているんだけどその下水はとても綺麗でなぜかマナを帯びているんだ。魔石のマナにも活用しているんだけど、それでもマナは足りない。水は少しだけマナを魔石に残して流れていくと排水される。排水された先で綺麗な泉が出来ていて、最近ではそこに精霊が集まっているんだってさ。レインが言っていたので間違いないと思う。精霊なんてあったことなかったから信じられなかったけどね。
 今度からその精霊達がマナを少しだけくれるらしい、家賃みたいなものとレインは言っていたけどいいのだろうか?精霊って神様の子供みたいな物だからな~。何だか申し訳ないような。
 そんなことを考えながら手持ちのダイヤをコネコネと重ねていく。ダイヤを今の倍の5メートル級までに大きくしていくつもり、エリントスの魔石もそのくらいにして何とか安定させないと。

「全く君は・・・」

「誰?」

 コネコネと重ねていると白髪の少年が声をかけてきた。孤児院の子供で白髪の子は見たことがないので僕は首を傾げながら尋ねた。

「カイトの子ルーク、僕はこのシュヴァールファを作った神だよ」

「神様?」

 少年は自分の事を神と名乗って部屋の椅子に座った。作業している時に食べようと思っていたカットされているメロンをムシャムシャと美味しそうに食べている。本当に神様かな?

「あ~ごめんごめん。朝ごはんを食べ損ねちゃってね」

「いいんだけど、本当に神様なの?」

「まあ、信じられないのも無理はないね。でも、本当だよ」

 少年は僕の質問に答えながらメロンを全部たいらげていった。僕も食べたかったんだけど。

「いや~想像以上に美味しかったよ。ごちそうさま」

「神だという証拠は?」

「ん~そうだね~。君のやってきた事とかお父さんが異世界人だって事を知っているって言うのじゃダメかな?」

「う~ん孤児院の子供達が知っているから知ろうとすれば子供達から聞きこめば誰でも知ってるかな」

 僕の情報ってゆるゆるだからな~。まあ、今じゃ王様も知ってしまっているからね。隣国との摩擦が生まれるから秘匿対象にはなっているんだけど、知られてしまっているから無いような物だし。

「強さって隠すの大変だからね。じゃあ何もないな」

「潔いいんだね」

「まあ、今回は話をしに来ただけだからね」

 そう言って少年は椅子から立ち上がって宙に胡坐をかいた。明らかに浮いているので本当に神様なんだろうね。

「本当に神様なんだね」

「ん?あ~最初からこれを見せればよかったね」

 少年はふざけたように笑い答えた。無邪気な少年のようだけど目を見るとこの世の生物ではないんだと分かった。目が合わせ鏡のように深くとても深く環を作っていて今にも吸い込まれてしまいそうになる。

「おっと、そんなに目を見てはいけないよ。別の世界に行ってしまう」

「・・・僕が見ていたのは」

「ああ、少しだけ行ってしまったか、すまないね。幾重にも世界を作っていると管理も大変なんだよ。だから、自分の体にいつでも行けるようにしているのさ」

 少年は目と耳とおへそを指さして話した。そのどれもが環を幾重にも重ねたような模様がついていた。それは空間を超えているように見える。

「だからあんまり長時間見つめてはダメだよっと。では本題に入ろう。ゲートを閉じてくれないか?」

 少年は優しく微笑んでそう言ってきた。お父さんが心配していた通り神様がきてしまったようだね。でも、僕の子供達とお父さん達が会うまでは。

「世界は僕ら神の体なんだ。それが近づくというのはあまり良くないんだよ。いつまでもカイト達の世界の神とつながっていると他の神に誤解されるのさ。悪い事でもしているんじゃないかってね。基本僕ら神同士は干渉しないって言う暗黙のルールがあるからね」

「お父さん達からは世界が壊れるって聞いたけど」

「それに近いことになるのさ。カイト達の世界の物がこちらにあると少しずつ近づいてしまってぶつかってしまう。神同士の衝突は凄まじいものだよ」

 世界はこの少年のような人の体の一部、それが引かれあってしまうって事かな?ただあちらの世界の物があるだけで引かれあってしまう、何だか凄く怖い話だな。

「まあ、そう言うわけでゲートは閉じてくれるかな?今すぐとは言わないからさ」

「・・あと十か月くらいもちませんか?」

「十か月ね~。そんな長い時間保てるマナがあるのかい?確かに君はとても強いけど世界同士を繋げるなんて普通出来ない事だよ。このまま続けていたら人死にが出てしまうはず。君のわがままで君は愛している人達の中から死人を出すつもりかい?」

 僕がやっていることはわがままなのかな。ただただお父さん達に会いたくてやっただけなんだけどな。

「まあ君のお母さん、アスミをこちらに無理やり転生させたのは僕だからね。少しは責任を感じているからね。別れを告げるくらいは待てるけどね。精々三日くらいだよ」

「三日・・・」

 少年からそう告げられて僕は俯いた。三日じゃ何も伝えられないよ。

「気付くのに遅れて遅くなっちゃったけどさ、そう言う事だからよろしくね。あ、そうそう、僕の名前はイースレーンティア。イースでいいよ」

「・・・」

「別れを告げられない別れだってあるんだから三日ある君は最高についていると思うよ。じゃあね」

 イースはそう言って消えていった。

「ルーク入るよ~。も~食べたなら片づけて・・・どうしたのルーク!」

 イースが消えてすぐにモナーナが部屋に入ってきてメロンの入っていた皿を片づけ始めた。俯いて泣いている僕に気づいてモナーナは驚いてお皿を落として抱きしめてきた。僕はモナーナの温かさに声を抑えることができずに叫んで泣いた。
 どんなに強くなってもそれを褒めてくれるお父さん達に会えなくなっちゃう、それって意味があるのかな、僕はなんて弱いんだろう。どんなにこの世界で一番強くなっても、お父さん達に会えなくなっちゃうんだ。
 僕はどうしたらいいのかな。

「僕はなんて弱いんだ。お父さん達に子供を見せることもできない」

「・・・ルークは強いよ。世界の誰よりも・・ううん。全世界の誰よりもね」

 モナーナは抱きしめる力を強めて慰めてくれる。僕は弱いからその強さに甘えてしまう。

「私たちも含めルークの強さなんだよ。いつでも私たちを頼って。慰めることしかできないかもしれないけど・・・」

 モナーナの言う通り、今回はみんなの力を借り事になるのかな。でも世界を繋げるなんてずっと続けることができるわけないよね。短い期間だけど、お父さん達との時間を大事にしていこう。
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