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第三章 王都リナージュ

第三十六話 被害者ダイヤ

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「いらっしゃいルーク。思ったよりも早かったわね」
「ノーブルローズ・・」

 ノーブルローズは緑のツタを這わせたまま豪華な服を着こんでいる。料理の乗っている机の前にある椅子に座ってくつろいでいた。

「さあ、座りなさい。一緒にお食事をするのよ」
「今、あなたの命令を聞く必要はないよ。それよりも諦めてくれないかな」

 僕の言葉を聞いて金の装飾のされている綺麗なティーセットのカップを手に取って口に一口含んだ。

「そうね。私にはもう人質がいないものね。だけど、カテジナ自身が人質だと思うのだけど?」
「そうだね。だから、返してもらうよ」
「あらあら、ダメよルーク。女性に無理やりいうことを聞かせるなんて」
「その姿でそういうこと言うな。カテジナ叔母さんを返せ」

 部屋中を逃げ回るノーブルローズ。楽し気に動き回るノーブルローズは日頃みれないカテジナさんを見せてくる。無邪気に舌を出しておどけるカテジナさん、いたずらを成功させたような無邪気な笑顔のカテジナさん。
 僕は不謹慎だけど、何だか嬉しかった。今までカテジナさんは無気力な顔や怒った顔しか見たことがなかった。宮殿で一緒に寝た時も何処かでこのカテジナさんが本物だって思いたかったのかもしれない。僕はとても弱い人間だな。

「もういいよ。ノーブルローズ。お休み」
「あら、もういいの。だけど、私はこれで終わりじゃないわよ・・・」

 前回、種化できなかったのはなんでかと思っていたらクレイラット様達の鎧になっていたツタを調べて分かったことがあったんだ。それで僕は土属性の魔法スキルを7にしておいた。あの植物のツタでできていると思っていた鎧はアダマンタイトを含んでいたんだ。内壁の壁にアダマンタイトが入っていたように地下で育てられた冥樹やノーブルローズはアダマンタイトを体に含んでいたってこと。たぶん、自分に取り込んだんだと思う。そのせいで木属性魔法スキルだけでは言うことを利かせられなかったんだ。鉱石なども操れるようになるには土属性魔法、僕は泣く泣く会得しました。

「これで終わりじゃないってどういうことだろう?冥樹を倒せないと思っているのかな?」

 ノーブルローズの最後の言葉がきになって考えていると地震が起こった。宙に浮いているので地震があるわけがない。冥樹がウネウネと城を揺らしているんだ。
 揺れているのでその場で踏ん張っていると天井が崩れて青白い鎧をきた男が落ちてきた。男についてくるようにモナーナが降りてくる。

「全く頑丈な人・・・あっルーク、カテジナさんを捕まえたんだね。じゃあダイヤさんも治してあげて」
「・・・モナーナ無事だったんだね」

 団長であるダイヤさんを圧倒して叩きのめしたモナーナ。ダイヤさんは白目向いて気絶している。
    僕はすぐにカテジナさんと同じように植物を種に戻して元に戻す。するとびっくりしたかのように立ち上がり僕らに身構えた。

「正気に戻りましたか?」
「あ、ああ、私は夢を見ていたのか?少女にギッタギタにされていたような気がするんだが?」

 ダイヤさんはうろたえて頭を抑えている。思い出したくない記憶を植え付けちゃったようです。流石モナーナ、英雄の誕生だ。

「カテジナさんはもう正気に戻るの?」
「種に戻したから大丈夫だよ」
「じゃあ、安全なところにダイヤさんと一緒に連れていくね」
「ありがとうモナーナ。任せたよ」

 モナーナが二人を風魔法で持ち上げるとそのまま横穴を開けて冥樹の根元へと降りて行った。モナーナって大胆だよね。

「ルーク!」
「カテジナさん?気が付いたの?」
「私はあんたの帰りも待っているよ。ユアンだけじゃなくてあんたも私の子供なんだからね」

 モナーナに運ばれていたカテジナさんが僕に叫んでくれた。僕は自然と涙が出てきてカテジナさんに手を振った。カテジナさんもそれに答えてくれた。やっぱり、カテジナさんはあの頃と違う、お金を得るために僕を利用していたような人じゃなくなったんだ。僕には帰る場所がいっぱいできた。これからも旅をしていっぱいカテジナさんにお土産を送るんだ。

「あとは冥樹を消し去るだけだね」
「そうはさせませんわ」
「えっ」

 かわいらしい声と共に僕の横腹に黒い剣が衝撃を与えた。

「・・どうして」

 僕はモナーナの開けた横穴に落ちて冥樹を横目に落ちていった。
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