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第二章 黒煙

第三十五話 ブラックルーク

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「お母さん!」

 嗜む子牛亭につくと、外に孤児院にいた子供達がラザラさんを待っていた。ラザラさんに気付くとみんな駆け出してラザラさんの胸に飛び込んだ。みんな喜びの涙を流して泣いてる。みんなあの状況を我慢していたんだ。こんな小さな子にまであんな状況を強要していたなんて教会ってそんなに偉いのかな?

「みんな、ありがとうね。ルークさんとお話があるからみんなは家の中に入っていてね」
「は~い」

 ラザラさんの言葉を聞いて子供達は嗜む子牛亭の中へ入っていった。これだけの人数だと、部屋がたりなくなりそうだよね。

「ルークさん、これ以上私達を助けるのはやめてください」
「え?」

 思わぬ言葉に僕は驚きの声を上げてしまった。これ以上助けないでってどういう事だろう?

「それはどういう?」
「これ以上私達に関わると教会が黙っていません。ですから」
「今も十分、その線を越えていると思うんですけど」

 ラザラさんの言葉にいつの間にかいたモナーナが答えた。確かにすでにあの司祭には目を付けられてしまってるしこれ以上も以下も一緒だよね。

「モナーナの言う通りですよ。もうすでに目をつけられてます。アザラーノフに喧嘩も売っているし」
「ええ、面と向かって話したんですか?」
「いきなり子供を選定し始めて、出ていかなかったら犠牲者が出ていましたから。それとも出ない方が良かったですか?」

 ラザラさんは僕の言葉にびっくりしている。それでも僕の話に納得したのか頷いてくれました。問題はここからだね。

「という事で、ダリルさんいるんでしょ?」
「・・いつから気付いてたんだい?」
「モナーナが来た時くらいに」

 いつもダリルさんは重要な話をしている時にひょっこりと現れる。今もひょっとしたらと思ってかまをかけてみました。

「嗜む子牛亭を大きくしたいんですけどいいですか?二階を作るとかではなくて地下に作るので目立ちませんから安心してください」
「何を安心するんだか、わからないけどルーク君がそう言うんだったら大丈夫だろう。でも、何故大きくするんだい?」
「ダリルさんには迷惑をかけますけど、ここを孤児院にしようと思います」
「・・・ふむ」

 僕の思いつきにダリルさんは顎に手を当てて考えこんでいる。孤児院兼宿屋兼酒場でみんなで経営すれば色々お得でいいと思うんだけどダメかな?

「いい考えだね」
「流石ダリルさん」
「しかし、そんな事をして大丈夫なのですか?ルークさんはこういう目立つことはしたくないんじゃ?」

 僕の考えにダリルさんは賛同してくれた。そして、またまたいつの間にかいた、メイさんが僕が目立ってしまうんじゃないかと呆れながら話してきた。今回は地下に作るのでそんなに目立たないと思うんだよね。
 それに孤児院は絶対に必要だし、あんな教会に任せてられないからね。
    ワインプールの街は回復魔法も教会に頼っていると聞いているのでそこも解決しちゃいます。
    エリントスに作ったポーション自販機を作っちゃうのだ。教会の回復など粗悪だと言わしめてやる。

「ふっふっふ」
「兄さんが黒い兄さんになってる」
「ブラックニャムとか言ってたのにルークの方が黒いにゃ」
「ルークは吹っ切れると怖いんだね」
「ブラックルークさんですね」


 僕は黒い笑いをこぼしているといつの間にか見ていたユアンとニャムさんそれにモナーナとメイさんが僕の悪口を言っている。ブラックだかホワイトだか知らないけどあんな教会つぶしてやるのだ。

 ダリルさんに承諾を得たので早速、地下の部屋を作っていきます。
 ここで初めて使う採掘スキル7、どんな効果があるのかと思って、作ったスコップで掘ってみましたら何と土が水をすくうかの如く掘れていきます。何の抵抗もなく掘れて更に重さを感じません。
    ただたんに僕のステータスが上がったせいもあるかもしれないけどたぶんスキルのおかげです。
    採取と同じようにアイテムバッグにアイテムが入っていく。ただの土を入れていっているだけなのに粘土やガラスなどの素材が入ってくる。ガラス何て教会にあるような高級品です。土掘って手に入るような代物ではないんだけど、流石スキルレベル7だね。
    そして、当たり前のようにダイヤがこんにちは!って出てきてしまう。何なんだろうこの子達は・・。
 そんな初めて使う採掘スキルに感動しながらあっという間に地下三階までの間取りを掘り終わりました。地盤沈下しないようにちゃんとミスリルの柱を建てたので大丈夫、見た目も鉄にしておいたのでこれまた大丈夫。
    メイさんに呆れられてニャムさんに抱きつかれて大変だったけどやり切りました。

「兄さんって何者なの?」
「ユアンさんのお兄さんでエリントスの英雄だよ」

 ユアンが呆れた顔で呟くとモナーナが微笑んで答えた。その顔を見てユアンが微妙な顔をしていた。まさか、ユアンはモナーナを狙っているのか。ってそんなわけないか。
 そうこうしているうちに僕は家具なども製作していきます。木材も正に腐るほどあるので色々作っちゃうぞ~。ベッド×15、食事用の長机×3、普通の机×10、食器いっぱい、そして、その他もろもろ。いくら作っても作りたいものが出てきてしまう。あとは要望で作ろうきりがない。

「兄さん・・・お風呂がほしい」
「ユアン・・贅沢者になってしまったんだね。兄さん悲しいよ」
「違うよ兄さん。また、昔みたいに一緒に湯あみがしたかったんだよ」

 ユアンが顔を赤くして要望を言ってきた。可愛い弟の頼みだ。聞いてあげよう。しかし、ユアンは艶っぽくなったな~、一瞬ドキッとしちゃった。
    だけど、お風呂を作るという事は男女で作った方がいいよね。モナーナやニャムさんもお風呂上がりで艶っぽくなるのかな~。などと考えていると顔に出ていたのかモナーナとニャムさんが体を隠すように抱きしめていた。良いじゃないかたまにはこういった事を考えたってさ。

 ルークの孤児院製作は豪華別荘へと変貌を遂げた。誰もが住みたい宿屋ナンバーワンの嗜む子牛亭の誕生である。

「子供達がすくすく育ってくれればいいな~」

 ルークは呑気にそんな事を言っているがすくすくどころか、ここから名のある冒険者が排出されて行く。だがその話はまだまだ先の話であった。
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