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第一章
第25話 涙目のダン
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「リーサは俺の奴隷じゃねえ! わかったか? ダン」
「わ、分かりました」
ルキナちゃんを助けてギルドに帰ってくるとバルバトスさんに説教されているダンが見えた。顔に傷まで作ってるから殴り合いまでいったのかもしれないな。
「バルバトス様。その辺で許してあげてください」
「でもなリーサ。お前は俺の娘なんだからよ」
「……娘ではありません。奴隷です」
受付に向かいながらも声が聞こえてくる。バルバトスさんとリーサさんが言い合いになってる。『奴隷です』『娘だ』という言い合いがずっと続いてる。
「なんでお前は奴隷になりたがる! そんなんじゃダンみたいなやつが一生つきまとうぞ」
「みたいなやつ……」
バルバトスさんの辛辣な言葉がダンに刺さる。心もないくせに胸を抑えてる。いい気味だけど夫婦喧嘩は犬も食わぬ、それもその夫婦は夫婦だという自覚がないと来た。ご愁傷さまとしかいいようがない。
「娘ではありません。私はあなたに助けられただけの女です」
「リーサ。そんなふうに思ってたのか」
「!? 違っ!? ……」
「分かったよ。俺は思い違いをしてたんだな」
「あっ!?」
バルバトスさんは悲しい顔でギルドを出ていってしまった。取り残されたリーサさんはなぜかダンを見つめてる。
「私は奴隷です」
「は、はい?」
「娘じゃダメなんです」
ダンを睨みつけて口を開くリーサさん。冷や汗をかいてるダンは更に可哀そうな状況になったな。
「ヴェイン。あれはどうにかできないの?」
「そういわれても。二人の問題ですし……」
ヴェインに話しかける。彼も悩んでるみたいで顔を背けてきた。どうしたものかな。
「バルバトスさんのことも心配なんだけど、今はこの子」
「え? 獣人の子ですか?」
ルキナちゃんを前面に出してヴェインに話す。ルキナちゃんは怖がってるけど頭を撫でてあげると落ち着いてくれた。
「オークに奴隷商が襲われたみたいで、生き残りがこの子だけだったんだ」
「ええ!? 奴隷商が? それは大変だ。すぐに商人ギルドに知らせておきます」
別の人に知らせを走らせるヴェイン。そうか、商人ギルドは奴隷商も管轄してるのか。
「ではその子は皆さんが拾ったということになるんですね。それも知らせておきますね」
当たり前のように話を進めるヴェイン。アイラが言っていたようにやっぱり拾った人の物になるのか。ほんとに厳しい世界だな。
「獣人ってことは言葉は?」
ヴェインはそういってルキナちゃんを見据える。分かっていない様子の彼女に代わって僕が首を横に振って答えた。
「そうですか。では名前はどうしますか?」
「あ、ルキナで」
「ん? 名前は分かるんですか?」
「あ」
ヴェインに名前を聞かれて思わず答えてしまった。聞き返してくる彼と僕の間に気まずい空気が流れる。
「はぁ~。皆さん、僕は口が堅いんです。出来れば隠し事はあまりして欲しくないんですが」
ヴェインは呆れて話してくる。そういってくれるなら話してみてもいいかな。
ということでルキナちゃんの言葉が分かることを伝えると彼は驚愕してアイラとニカと顔を見合った。
「獣人語のわかる方は珍しいですよ、ほんと」
「そうなの?」
「はい。それもこちらの言葉を理解させているような感じも見て取れますし、スキルということとなると本当に稀なことです」
ヴェインはこの短時間でスキルだと気づいたみたいだ。普通に獣人の人は暮らしてるのにわかる人は少ないのか。部族みたいなものがあるのかもな。
ルキナちゃんは僕の顔を見て何回か頷いてるからな、察してしまうよな。
「ハヤトお兄ちゃんは規格外だよヴェインお兄ちゃん」
「そうそう」
ニカとアイラが考え込んでるヴェインに告げる。その言葉に納得したみたいで何度も頷いてる。
「ではルキナちゃんはハヤトさんの物ということでいいですね」
「え? ニカとアイラは?」
ヴェインの言葉に二人を見ると二人は首を横に振って答えた。
「ん~、妹は欲しいけど」
「ハヤトに譲るよ」
ニカとアイラがそういってくる。いや~奴隷なんて否定派何だけどな。といっても奴隷としてもらわないと知らない奴隷商に売られてしまうらしい。お金に換えて還元ってやつだな。流石に見知ってしまったから助けてあげたいしな。
「わかったよ。とりあえずはね」
奴隷としてではなくて姪っ子としてもらおう。娘なんてまだまだ僕には早いからな。
「ルキナちゃん、ハヤトお兄ちゃんって呼ぶんだよ」
「ハヤトにゃ?」
アイラの言葉に少しずつ言葉を理解して様子のルキナ。名前だって言うのは理解し始めてるな。
「そう、ハヤトだよ」
「じゃあ、ハヤト様?」
「様は何かヤダな~」
「じゃあ~……マスターにゃ?」
首を傾げながらマスターと言ってくるルキナちゃん。様よりは幾分かましかな。これ以上話すと様呼びになりそうなので頷いておこう。
「よし。じゃあ、ルキナちゃんの服を……ってリーサさん!?」
「ちょっとお話を!」
ルキナちゃんの服を買おうと異世界商店を開こうとしたらリーサさんに腕を引っ張られる。ギルドの外に着くと路地まで引っ張られていく。
「リーサさん? どうしたんですか?」
「おにいちゃん大丈夫?」
「どうしたんだ?」
ニカとアイラもルキナちゃんと共についてきてくれた。
「昨日はどうもありがとうございました」
「え? あ~っといえいえ」
急に深くお辞儀をしてお礼を言ってくるリーサさん。そんな畏まってどうしたんだろう?
「見ていたからわかると思いますがバルバトス様と喧嘩しました」
リーサさんの報告にみんな頷いて答える。あんなに騒いでれば耳を塞いでいても聞こえるよな。
「……友ならば助けてくれますよね?」
「え?」
「昨日バルバトス様の奴隷なら友達と言ってくれましたよね!」
リーサさんが僕の手を取って懇願してくる。懇願というよりも脅迫に近いような気がするけど、泣きそうな瞳で迫られると男としてどうにかしてあげたくなってしまう。
「分かりました。どうにかしましょう!」
「ほんとですか!」
「はい!」
胸を大きく叩いて了承すると嬉しそうに声をあげるリーサさん。
ニカとアイラはヤレヤレといった様子。ルキナちゃんはそんな二人の真似をしてる。
バルバトスさんにもリッチと戦ってくれた恩があるからね。幸せになってほしい、決して綺麗なリーサさんの色香に惑わされたわけではないのだ。
「わ、分かりました」
ルキナちゃんを助けてギルドに帰ってくるとバルバトスさんに説教されているダンが見えた。顔に傷まで作ってるから殴り合いまでいったのかもしれないな。
「バルバトス様。その辺で許してあげてください」
「でもなリーサ。お前は俺の娘なんだからよ」
「……娘ではありません。奴隷です」
受付に向かいながらも声が聞こえてくる。バルバトスさんとリーサさんが言い合いになってる。『奴隷です』『娘だ』という言い合いがずっと続いてる。
「なんでお前は奴隷になりたがる! そんなんじゃダンみたいなやつが一生つきまとうぞ」
「みたいなやつ……」
バルバトスさんの辛辣な言葉がダンに刺さる。心もないくせに胸を抑えてる。いい気味だけど夫婦喧嘩は犬も食わぬ、それもその夫婦は夫婦だという自覚がないと来た。ご愁傷さまとしかいいようがない。
「娘ではありません。私はあなたに助けられただけの女です」
「リーサ。そんなふうに思ってたのか」
「!? 違っ!? ……」
「分かったよ。俺は思い違いをしてたんだな」
「あっ!?」
バルバトスさんは悲しい顔でギルドを出ていってしまった。取り残されたリーサさんはなぜかダンを見つめてる。
「私は奴隷です」
「は、はい?」
「娘じゃダメなんです」
ダンを睨みつけて口を開くリーサさん。冷や汗をかいてるダンは更に可哀そうな状況になったな。
「ヴェイン。あれはどうにかできないの?」
「そういわれても。二人の問題ですし……」
ヴェインに話しかける。彼も悩んでるみたいで顔を背けてきた。どうしたものかな。
「バルバトスさんのことも心配なんだけど、今はこの子」
「え? 獣人の子ですか?」
ルキナちゃんを前面に出してヴェインに話す。ルキナちゃんは怖がってるけど頭を撫でてあげると落ち着いてくれた。
「オークに奴隷商が襲われたみたいで、生き残りがこの子だけだったんだ」
「ええ!? 奴隷商が? それは大変だ。すぐに商人ギルドに知らせておきます」
別の人に知らせを走らせるヴェイン。そうか、商人ギルドは奴隷商も管轄してるのか。
「ではその子は皆さんが拾ったということになるんですね。それも知らせておきますね」
当たり前のように話を進めるヴェイン。アイラが言っていたようにやっぱり拾った人の物になるのか。ほんとに厳しい世界だな。
「獣人ってことは言葉は?」
ヴェインはそういってルキナちゃんを見据える。分かっていない様子の彼女に代わって僕が首を横に振って答えた。
「そうですか。では名前はどうしますか?」
「あ、ルキナで」
「ん? 名前は分かるんですか?」
「あ」
ヴェインに名前を聞かれて思わず答えてしまった。聞き返してくる彼と僕の間に気まずい空気が流れる。
「はぁ~。皆さん、僕は口が堅いんです。出来れば隠し事はあまりして欲しくないんですが」
ヴェインは呆れて話してくる。そういってくれるなら話してみてもいいかな。
ということでルキナちゃんの言葉が分かることを伝えると彼は驚愕してアイラとニカと顔を見合った。
「獣人語のわかる方は珍しいですよ、ほんと」
「そうなの?」
「はい。それもこちらの言葉を理解させているような感じも見て取れますし、スキルということとなると本当に稀なことです」
ヴェインはこの短時間でスキルだと気づいたみたいだ。普通に獣人の人は暮らしてるのにわかる人は少ないのか。部族みたいなものがあるのかもな。
ルキナちゃんは僕の顔を見て何回か頷いてるからな、察してしまうよな。
「ハヤトお兄ちゃんは規格外だよヴェインお兄ちゃん」
「そうそう」
ニカとアイラが考え込んでるヴェインに告げる。その言葉に納得したみたいで何度も頷いてる。
「ではルキナちゃんはハヤトさんの物ということでいいですね」
「え? ニカとアイラは?」
ヴェインの言葉に二人を見ると二人は首を横に振って答えた。
「ん~、妹は欲しいけど」
「ハヤトに譲るよ」
ニカとアイラがそういってくる。いや~奴隷なんて否定派何だけどな。といっても奴隷としてもらわないと知らない奴隷商に売られてしまうらしい。お金に換えて還元ってやつだな。流石に見知ってしまったから助けてあげたいしな。
「わかったよ。とりあえずはね」
奴隷としてではなくて姪っ子としてもらおう。娘なんてまだまだ僕には早いからな。
「ルキナちゃん、ハヤトお兄ちゃんって呼ぶんだよ」
「ハヤトにゃ?」
アイラの言葉に少しずつ言葉を理解して様子のルキナ。名前だって言うのは理解し始めてるな。
「そう、ハヤトだよ」
「じゃあ、ハヤト様?」
「様は何かヤダな~」
「じゃあ~……マスターにゃ?」
首を傾げながらマスターと言ってくるルキナちゃん。様よりは幾分かましかな。これ以上話すと様呼びになりそうなので頷いておこう。
「よし。じゃあ、ルキナちゃんの服を……ってリーサさん!?」
「ちょっとお話を!」
ルキナちゃんの服を買おうと異世界商店を開こうとしたらリーサさんに腕を引っ張られる。ギルドの外に着くと路地まで引っ張られていく。
「リーサさん? どうしたんですか?」
「おにいちゃん大丈夫?」
「どうしたんだ?」
ニカとアイラもルキナちゃんと共についてきてくれた。
「昨日はどうもありがとうございました」
「え? あ~っといえいえ」
急に深くお辞儀をしてお礼を言ってくるリーサさん。そんな畏まってどうしたんだろう?
「見ていたからわかると思いますがバルバトス様と喧嘩しました」
リーサさんの報告にみんな頷いて答える。あんなに騒いでれば耳を塞いでいても聞こえるよな。
「……友ならば助けてくれますよね?」
「え?」
「昨日バルバトス様の奴隷なら友達と言ってくれましたよね!」
リーサさんが僕の手を取って懇願してくる。懇願というよりも脅迫に近いような気がするけど、泣きそうな瞳で迫られると男としてどうにかしてあげたくなってしまう。
「分かりました。どうにかしましょう!」
「ほんとですか!」
「はい!」
胸を大きく叩いて了承すると嬉しそうに声をあげるリーサさん。
ニカとアイラはヤレヤレといった様子。ルキナちゃんはそんな二人の真似をしてる。
バルバトスさんにもリッチと戦ってくれた恩があるからね。幸せになってほしい、決して綺麗なリーサさんの色香に惑わされたわけではないのだ。
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