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第一章
第13話 商人ギルド
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「お兄ちゃん買い物って商人ギルドに行くの?」
「違うぞニカ。買い物じゃなくて商品を卸すから実質売る側だ。買ってもらうんだよ」
次の日、ニカに案内してもらって商人ギルドにやってきた。アイラさんは朝一で冒険者ギルドに行った。ベロニカさんに宿代を渡すと言っていたな。
「売るって何を売るの?」
「ん~、とりあえずこれかな」
「白い粉?」
「ニカは見たことないかな。これは砂糖だよ」
「砂糖?」
首を傾げて聞いてくるニカに砂糖の入った皮袋を見せる。普通の人は砂糖を見たことないみたいだな。この世界で砂糖は作られているから異世界商店で買えるわけだけど、一般には流通してないんだろう。
「売れるの?」
もっともな疑問を投げかけてくるニカ。売れるは売れるはず、ただ……変に目立つと面倒くさいことになる。少しずつ目立たないように売るしかない。それでも目をつけられそうだけどな。
「売れるよ。間違いなくね」
「ふ~ん。じゃあ安心だね」
売れるというとニカは嬉しそうに僕の手を取って商人ギルドへと入る。引っ張られて入ると真っ白な内装が目に刺さる。眩しい。
「いらっしゃいませ。本日はどういったご用件で?」
眩しくて目を瞑っていると声が聞こえてくる。やっと目を開くと金と白を基調にした制服を着た青年が声をかけてきていた。
「えっと、これを売りたいんですけど」
「え!? これって……」
青年に砂糖を見せると目を真ん丸にして驚いてる。
「少々お待ちください!」
青年は驚きながらも砂糖のことを理解して受付の奥の扉に入って行った。
「あのお兄ちゃん驚いてたね」
「ははは、やっぱりやめておけばよかったかな?」
ニカの言葉に苦笑い。まさか、そこまで驚かれるとは思わなかった。少し緊張してきた。
「お待たせしました。こちらへどうぞ」
「あ、はい」
青年が帰ってきて奥の扉へと案内される。扉をくぐると金の装飾が施された扉を更にくぐる。応接室のような部屋が広がっていて、向かい合わせに設置されているソファーにはすでに女性が座って微笑みかけてくる。
座るように促してくる女性、僕とニカは素直に向かいのソファーに座る。
「あなたが砂糖を持ってきた、えっと?」
「僕の名はハヤトです。こっちはニカ」
「私はこの商人ギルドを仕切っているエラです。よろしくね」
ニッコリと微笑んで握手を求めてくるエラさん。握手に答えると僕だけじゃなくてニカとも握手をしてる彼女にいい印象をうけるな。
「では品物を見させてもらっていいですか?」
「あっ、はい」
真剣な表情に戻ったエラさん。砂糖を懐から取り出すと少しびっくりした表情で受け取って手袋をはめて砂糖を触る。
「これは素晴らしい品ですね。これは本当に売っていただけるのですか?」
「買っていただければ、どのくらいの価値になるでしょうか?」
「そうですね~……」
エラさんは僕の質問に考え込む。砂糖を木のスプーンで掬って口に運ぶ。満面の笑みで砂糖を味わうと頬を赤く染めて、堪能を含んだ息を天井にもらす。視線を僕に戻すと人差し指を立てて、
「金貨一枚」
「え?」
金貨? 百グラム百Gの砂糖が金貨?
「ダメですか……では金貨二枚で」
「あっ! いやいや、そうじゃなくて」
「それでもだめですか。では金貨二枚と銀貨を~」
「違くて!」
エラさんがどんどん値を上げていく。流石の状況に立ち上がって声をあげてしまった。ニカも凄い驚いてるよ。
「お兄ちゃん、この砂糖ってそんなに高価なものなの?」
「ぼ、僕も驚きだよ」
ひそひそとニカが声をかけてきた。別に内緒話をしなくてもいいんだけどと思っているとエラさんが物欲しそうに砂糖を見つめだす。
商人ギルドを牛耳ってる人があんなに求める物……やばいものだしちゃったな~。
金貨一枚以上を求めたら罰が当たりそうだ。一枚で留めておこう、なんて言っても百グラム百Gの品だからね。
「き、金貨一枚でいいです」
「本当ですか! ありがとうございます」
僕の言葉にパ~っと満面の笑顔になるエラさん。僕の両手をとってぴょんぴょん跳ねて、まるで子供みたいに喜んでくれる。
「砂糖はとても貴重な物、それもこんなに白い物はエルフの里でしか得られないんですよ。本当に助かりました」
「砂糖とエルフ?」
「知りませんでしたか? 砂糖を作る際にどうしても黒くなってしまうのです。黒くなるのを防ぐには魔法で保護しないといけないのです。その精密な魔法を行えるのはエルフか一部の魔法使いだけなのです」
「へ~」
エラさんの説明に思わず声をもらす。彼女はそんな僕に首を傾げる。
「知らないのですか? ではどうやってこれを……」
しまった……知らないと出来ないことなのに思わず感心しちゃったよ。
「お、お兄ちゃんは魔物からのドロップアイテムで手に入れたから。ね、ハヤトお兄ちゃん」
「あっ、そうだったそうだった。はははは」
ニカに話しを合わせると乾いた笑いをあげる。エラさんは一瞬真顔になってすぐに笑顔に変わっていく。
「そうでしたか~、ではハヤトさんは金貨級の冒険者なのですね」
「金貨級?」
「そうです。冒険者にはランクが設定されますよね。鉄から始まって白銀までが主なランクです。知りませんでしたか?」
エラさんの説明を聞いてブンブンと首を縦に振って答えた。さっきの教訓は得てるから知っている体で話を聞く。
金貨の上の位は白銀なのか。ルガさんが知らなくていいって言っていたけど、かなり高価なものなんだろうな。
「商人の間ではそれを鉄貨や銅貨と呼んでいるんです。お金を運んでくるという意味も込めてですので冒険者達からは嫌われていますけどね」
エラさんはそういって僕を見つめる。そ、そうか、金貨と呼んだのに怪訝な表情にならなかった僕は何も知らない、そもそもそこが彼女からしたらおかしかったのか。
「商品がどこから来たのか? そんなものに興味はありませんから何をお隠しになっているのか存じませんが、お知り合いには相談の為にも話をされた方がよろしいんじゃないでしょうか?」
エラさんは優しく微笑んでくれた。ニカにも視線を送る彼女は机に金貨を一枚置いて、砂糖を手に取ると部屋を後にした。
「お兄ちゃん?」
「ははは、怒られちゃったのかな」
ニカが心配そうに腕にしがみついてきた。エラさんは諭してくれたんだろう。
常識を知らないのなら知っている知人を頼りなさいってね。
「さて、商品も売れたし帰ろうか」
「うん! 今日はどこに行こうか」
「う~んそうだな。ヴェインに相談するか」
「そうだね。ヴェインお兄ちゃんは常識あるもんね」
「ははは、確かに」
金貨をしまってこの後の予定を話し合う。
商人ギルドを出て冒険者ギルドに歩き出すとアイラの姿が見えた。なぜか肩を落としてるな。何かあったのか?
「違うぞニカ。買い物じゃなくて商品を卸すから実質売る側だ。買ってもらうんだよ」
次の日、ニカに案内してもらって商人ギルドにやってきた。アイラさんは朝一で冒険者ギルドに行った。ベロニカさんに宿代を渡すと言っていたな。
「売るって何を売るの?」
「ん~、とりあえずこれかな」
「白い粉?」
「ニカは見たことないかな。これは砂糖だよ」
「砂糖?」
首を傾げて聞いてくるニカに砂糖の入った皮袋を見せる。普通の人は砂糖を見たことないみたいだな。この世界で砂糖は作られているから異世界商店で買えるわけだけど、一般には流通してないんだろう。
「売れるの?」
もっともな疑問を投げかけてくるニカ。売れるは売れるはず、ただ……変に目立つと面倒くさいことになる。少しずつ目立たないように売るしかない。それでも目をつけられそうだけどな。
「売れるよ。間違いなくね」
「ふ~ん。じゃあ安心だね」
売れるというとニカは嬉しそうに僕の手を取って商人ギルドへと入る。引っ張られて入ると真っ白な内装が目に刺さる。眩しい。
「いらっしゃいませ。本日はどういったご用件で?」
眩しくて目を瞑っていると声が聞こえてくる。やっと目を開くと金と白を基調にした制服を着た青年が声をかけてきていた。
「えっと、これを売りたいんですけど」
「え!? これって……」
青年に砂糖を見せると目を真ん丸にして驚いてる。
「少々お待ちください!」
青年は驚きながらも砂糖のことを理解して受付の奥の扉に入って行った。
「あのお兄ちゃん驚いてたね」
「ははは、やっぱりやめておけばよかったかな?」
ニカの言葉に苦笑い。まさか、そこまで驚かれるとは思わなかった。少し緊張してきた。
「お待たせしました。こちらへどうぞ」
「あ、はい」
青年が帰ってきて奥の扉へと案内される。扉をくぐると金の装飾が施された扉を更にくぐる。応接室のような部屋が広がっていて、向かい合わせに設置されているソファーにはすでに女性が座って微笑みかけてくる。
座るように促してくる女性、僕とニカは素直に向かいのソファーに座る。
「あなたが砂糖を持ってきた、えっと?」
「僕の名はハヤトです。こっちはニカ」
「私はこの商人ギルドを仕切っているエラです。よろしくね」
ニッコリと微笑んで握手を求めてくるエラさん。握手に答えると僕だけじゃなくてニカとも握手をしてる彼女にいい印象をうけるな。
「では品物を見させてもらっていいですか?」
「あっ、はい」
真剣な表情に戻ったエラさん。砂糖を懐から取り出すと少しびっくりした表情で受け取って手袋をはめて砂糖を触る。
「これは素晴らしい品ですね。これは本当に売っていただけるのですか?」
「買っていただければ、どのくらいの価値になるでしょうか?」
「そうですね~……」
エラさんは僕の質問に考え込む。砂糖を木のスプーンで掬って口に運ぶ。満面の笑みで砂糖を味わうと頬を赤く染めて、堪能を含んだ息を天井にもらす。視線を僕に戻すと人差し指を立てて、
「金貨一枚」
「え?」
金貨? 百グラム百Gの砂糖が金貨?
「ダメですか……では金貨二枚で」
「あっ! いやいや、そうじゃなくて」
「それでもだめですか。では金貨二枚と銀貨を~」
「違くて!」
エラさんがどんどん値を上げていく。流石の状況に立ち上がって声をあげてしまった。ニカも凄い驚いてるよ。
「お兄ちゃん、この砂糖ってそんなに高価なものなの?」
「ぼ、僕も驚きだよ」
ひそひそとニカが声をかけてきた。別に内緒話をしなくてもいいんだけどと思っているとエラさんが物欲しそうに砂糖を見つめだす。
商人ギルドを牛耳ってる人があんなに求める物……やばいものだしちゃったな~。
金貨一枚以上を求めたら罰が当たりそうだ。一枚で留めておこう、なんて言っても百グラム百Gの品だからね。
「き、金貨一枚でいいです」
「本当ですか! ありがとうございます」
僕の言葉にパ~っと満面の笑顔になるエラさん。僕の両手をとってぴょんぴょん跳ねて、まるで子供みたいに喜んでくれる。
「砂糖はとても貴重な物、それもこんなに白い物はエルフの里でしか得られないんですよ。本当に助かりました」
「砂糖とエルフ?」
「知りませんでしたか? 砂糖を作る際にどうしても黒くなってしまうのです。黒くなるのを防ぐには魔法で保護しないといけないのです。その精密な魔法を行えるのはエルフか一部の魔法使いだけなのです」
「へ~」
エラさんの説明に思わず声をもらす。彼女はそんな僕に首を傾げる。
「知らないのですか? ではどうやってこれを……」
しまった……知らないと出来ないことなのに思わず感心しちゃったよ。
「お、お兄ちゃんは魔物からのドロップアイテムで手に入れたから。ね、ハヤトお兄ちゃん」
「あっ、そうだったそうだった。はははは」
ニカに話しを合わせると乾いた笑いをあげる。エラさんは一瞬真顔になってすぐに笑顔に変わっていく。
「そうでしたか~、ではハヤトさんは金貨級の冒険者なのですね」
「金貨級?」
「そうです。冒険者にはランクが設定されますよね。鉄から始まって白銀までが主なランクです。知りませんでしたか?」
エラさんの説明を聞いてブンブンと首を縦に振って答えた。さっきの教訓は得てるから知っている体で話を聞く。
金貨の上の位は白銀なのか。ルガさんが知らなくていいって言っていたけど、かなり高価なものなんだろうな。
「商人の間ではそれを鉄貨や銅貨と呼んでいるんです。お金を運んでくるという意味も込めてですので冒険者達からは嫌われていますけどね」
エラさんはそういって僕を見つめる。そ、そうか、金貨と呼んだのに怪訝な表情にならなかった僕は何も知らない、そもそもそこが彼女からしたらおかしかったのか。
「商品がどこから来たのか? そんなものに興味はありませんから何をお隠しになっているのか存じませんが、お知り合いには相談の為にも話をされた方がよろしいんじゃないでしょうか?」
エラさんは優しく微笑んでくれた。ニカにも視線を送る彼女は机に金貨を一枚置いて、砂糖を手に取ると部屋を後にした。
「お兄ちゃん?」
「ははは、怒られちゃったのかな」
ニカが心配そうに腕にしがみついてきた。エラさんは諭してくれたんだろう。
常識を知らないのなら知っている知人を頼りなさいってね。
「さて、商品も売れたし帰ろうか」
「うん! 今日はどこに行こうか」
「う~んそうだな。ヴェインに相談するか」
「そうだね。ヴェインお兄ちゃんは常識あるもんね」
「ははは、確かに」
金貨をしまってこの後の予定を話し合う。
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