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第一章 新しき世界
第5話 仕事が多すぎです
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「マモル~。オークを取ってきたぞ~。それもジェネラルオークだ!」
「ええ!? またですか~。少しは休ませてください~」
オットーさんがごつい鎧を着たオークの死骸を受付前に落とす。ズシンという音が響いて私の頭もズシンと痛くなる。
今日はこれで30件目です。彼の解体を初めてやってから一週間程が経ったのですが、毎日こんな感じで解体の仕事が舞い込んでくる。
【剥ぎ取りの極意】のおかげで解体自体は一瞬で終わるので早いのですが、いかんせん数が数なので疲れてしまいますよ。まあ、お陰様でレベルが20まで上がってウハウハではあるんですがね。
「がははは。そう言うなよマモル~。美味しい美味しいオーク肉の為じゃねえか~」
「……私は一枚で十分です。年も年なんでね」
オットーさん達はまだまだ若いからいいですよ。私程の年齢になると脂の旨みを感じるよりも胸焼けを感じる方が早いんです。45歳を舐めないでください。
「私はマモルさんの料理ならいくらでも食べられる!」
『俺達も~』
ティシーさんの声に続いて酒場を占領している冒険者さん達が同意して声をあげた。だから、皆さんはまだまだ若いんですって~。
「まあまあお金は出しますから」
「ダルクさん……お金でもないんですよ~」
お金は金貨が10枚と溜まってきてしまいました。使う時間もないのでダルクさんの説得は私には効きません。
「なるほどなるほど~……マモル~。娼館に行きたいなら早く言えよ~。俺がとびっきりいい店を案内してやるからよ~」
「商館? なんですかそれは?」
オットーさんが肩に腕を回してきてひそひそと囁いた。商人の館とはスーパーマーケットとかそういった類のところでしょうか?
「オットーさん! もう、マモルさんはそんな卑猥なところにはいかないよ! ね~マモルさん」
「卑猥? ああ、娼館ってそういう……」
ティシーさんのおかげでどんなところか分かりました。なるほどなるほど、皆さん溜まっているんですねやっぱり。三大欲の一つである食事にこんだけ熱心なんですから、そりゃそちらも。
まあ、私も男ですからたまっていないといったら嘘になりますが。
「ティシー。マモルに変な幻想をいだくなよ。男はどんなやつも獣だ。そうだ! 求められたら素直に頷けよ。そうしねえと取られちまうぞ」
「な!? 何言ってんのよ! わ、私はそんなんじゃ!」
オットーさんがティシーさんの耳元で何か言ったようですね。彼女が顔を真っ赤にして怒ると包丁で殴っています。刃のある方で殴っているのに血が出ていないとは驚きです。
「いて~! 包丁で殴りやがった! おい! マモル! こいつだけはやめておけよ!」
何のことだか分かりませんがオットーさんには苦笑いで答えます。再度、ティシーさんの包丁が振り下ろされていますね。彼は丈夫なようなので心配しなくていいでしょう。
「ははは、マモルが来て本当に賑やかになったな~」
「そうですか、そう言ってもらえると嬉しいです」
ダルクさんがそう言って私の肩に手を置いた。
「そろそろ本格的にあんたのレベルをあげたいと思ってる。20レベルになって下地は出来ただろう?」
「え? た、確かに20レベルにはなりましたが」
ダルクさんの言葉に首を傾げる。レベルをあげる必要があるのでしょうか?
「ギルドにいる間に襲撃があることはないだろう。オットーや私がいるからな。だが、宿屋に帰る時に狙われる可能性がある。もちろん、今までのように俺達が出来る限り守りはするが」
「そんなに危険な状況だったんですか?」
「ああ。あの黒装束の男を見てくれ」
ダルクさんの話を聞いて血の気が引くのを感じた。彼の指さす方向に一人でエールを飲んでいる男が見えます。エールを飲み終わって勘定の銅貨を置くと一人ギルドを出て行きます。
「あの男は冒険者ではない」
「なぜわかるんですか?」
「足音だ。我々は足音を消すことはありません。足音は自分が生きている証拠だ。狩場では仲間に自分がいることを知らせないと魔法が襲って来る。もちろん、魔物に見つからないように歩くこともするが基本は音を立てるようにしているんだ」
流石元冒険者と言うべきでしょうか。ダルクさんはずっと私を守ってくれてたようですね。
「オットーが向かった。あの男もすぐに捕まる」
ダルクさんの視線に気がついたオットーさんがすぐにさっきの男の後を追いかけて行く。
「ではお礼にオットーさんの食べ物を作っておきましょう。それでいつからレベル上げを?」
「そうだな。明日からやりたいところだが」
「この酒場を空けることになりますから下ごしらえをしておきませんとティシーさんやカシムさんでも作れるように」
酒場の皆さんの楽しみを奪うことは出来ませんよね。さて、解体しますか。
「おい、聞いたか?」
「何をだよ」
オットーさんの持ってきたオークジェネラルの解体を始めると冒険者さん達の声が聞こえてくる。
「城で勇者を召喚したんだってよ」
「へ~、クーナリアに勇者をね~」
「それも二人も来たんだとよ」
「はぁ!? 二人かよ」
召喚? それは私と同じように異世界から来た人たちのことですよね?
「あのお二人さん。その話詳しく」
「お? マモルさんもこういう話好きな口かい?」
たまらず口を挟むと楽しそうに教えてくれる。
「たまに王族の方々が勇者を召喚することがあるんだ。名目は魔物に対する戦力っていう話なんだけど、他国への牽制の面が大きい。勇者って言うのはどうしても特別な力を持っているからな」
「そうですか……性別は分かりませんか?」
私と共に召喚されたのなら二人の女性のはず。
「えっと確か少女とその母ちゃんっていう話だな」
「そうですか……」
「大丈夫かいマモルさん。顔色が良くないぜ?」
「あ、大丈夫ですよ。私は……」
青年の話を聞いて俯くと心配されてしまいました。彼女達は勇者として城に管理されてしまっている。凄く心配です。
私は大丈夫なんですよ。私は……こんなにも幸せですから。
「話じゃ当分は城で常識なんかの勉強をさせるらしいぜ。侍女から聞いた話だから間違いねえ」
「お勉強ですか。それなら当分は大丈夫ですね」
城の中で生活する分には大丈夫ですね。
彼女達も私と同じ平和な時代から来た。いくら強い力を得たからと言ってあんな大きくて恐ろしい魔物と無理やり戦わせるなんて、許せません。私が強くなる理由がもう一つ増えてしまいました。
「ええ!? またですか~。少しは休ませてください~」
オットーさんがごつい鎧を着たオークの死骸を受付前に落とす。ズシンという音が響いて私の頭もズシンと痛くなる。
今日はこれで30件目です。彼の解体を初めてやってから一週間程が経ったのですが、毎日こんな感じで解体の仕事が舞い込んでくる。
【剥ぎ取りの極意】のおかげで解体自体は一瞬で終わるので早いのですが、いかんせん数が数なので疲れてしまいますよ。まあ、お陰様でレベルが20まで上がってウハウハではあるんですがね。
「がははは。そう言うなよマモル~。美味しい美味しいオーク肉の為じゃねえか~」
「……私は一枚で十分です。年も年なんでね」
オットーさん達はまだまだ若いからいいですよ。私程の年齢になると脂の旨みを感じるよりも胸焼けを感じる方が早いんです。45歳を舐めないでください。
「私はマモルさんの料理ならいくらでも食べられる!」
『俺達も~』
ティシーさんの声に続いて酒場を占領している冒険者さん達が同意して声をあげた。だから、皆さんはまだまだ若いんですって~。
「まあまあお金は出しますから」
「ダルクさん……お金でもないんですよ~」
お金は金貨が10枚と溜まってきてしまいました。使う時間もないのでダルクさんの説得は私には効きません。
「なるほどなるほど~……マモル~。娼館に行きたいなら早く言えよ~。俺がとびっきりいい店を案内してやるからよ~」
「商館? なんですかそれは?」
オットーさんが肩に腕を回してきてひそひそと囁いた。商人の館とはスーパーマーケットとかそういった類のところでしょうか?
「オットーさん! もう、マモルさんはそんな卑猥なところにはいかないよ! ね~マモルさん」
「卑猥? ああ、娼館ってそういう……」
ティシーさんのおかげでどんなところか分かりました。なるほどなるほど、皆さん溜まっているんですねやっぱり。三大欲の一つである食事にこんだけ熱心なんですから、そりゃそちらも。
まあ、私も男ですからたまっていないといったら嘘になりますが。
「ティシー。マモルに変な幻想をいだくなよ。男はどんなやつも獣だ。そうだ! 求められたら素直に頷けよ。そうしねえと取られちまうぞ」
「な!? 何言ってんのよ! わ、私はそんなんじゃ!」
オットーさんがティシーさんの耳元で何か言ったようですね。彼女が顔を真っ赤にして怒ると包丁で殴っています。刃のある方で殴っているのに血が出ていないとは驚きです。
「いて~! 包丁で殴りやがった! おい! マモル! こいつだけはやめておけよ!」
何のことだか分かりませんがオットーさんには苦笑いで答えます。再度、ティシーさんの包丁が振り下ろされていますね。彼は丈夫なようなので心配しなくていいでしょう。
「ははは、マモルが来て本当に賑やかになったな~」
「そうですか、そう言ってもらえると嬉しいです」
ダルクさんがそう言って私の肩に手を置いた。
「そろそろ本格的にあんたのレベルをあげたいと思ってる。20レベルになって下地は出来ただろう?」
「え? た、確かに20レベルにはなりましたが」
ダルクさんの言葉に首を傾げる。レベルをあげる必要があるのでしょうか?
「ギルドにいる間に襲撃があることはないだろう。オットーや私がいるからな。だが、宿屋に帰る時に狙われる可能性がある。もちろん、今までのように俺達が出来る限り守りはするが」
「そんなに危険な状況だったんですか?」
「ああ。あの黒装束の男を見てくれ」
ダルクさんの話を聞いて血の気が引くのを感じた。彼の指さす方向に一人でエールを飲んでいる男が見えます。エールを飲み終わって勘定の銅貨を置くと一人ギルドを出て行きます。
「あの男は冒険者ではない」
「なぜわかるんですか?」
「足音だ。我々は足音を消すことはありません。足音は自分が生きている証拠だ。狩場では仲間に自分がいることを知らせないと魔法が襲って来る。もちろん、魔物に見つからないように歩くこともするが基本は音を立てるようにしているんだ」
流石元冒険者と言うべきでしょうか。ダルクさんはずっと私を守ってくれてたようですね。
「オットーが向かった。あの男もすぐに捕まる」
ダルクさんの視線に気がついたオットーさんがすぐにさっきの男の後を追いかけて行く。
「ではお礼にオットーさんの食べ物を作っておきましょう。それでいつからレベル上げを?」
「そうだな。明日からやりたいところだが」
「この酒場を空けることになりますから下ごしらえをしておきませんとティシーさんやカシムさんでも作れるように」
酒場の皆さんの楽しみを奪うことは出来ませんよね。さて、解体しますか。
「おい、聞いたか?」
「何をだよ」
オットーさんの持ってきたオークジェネラルの解体を始めると冒険者さん達の声が聞こえてくる。
「城で勇者を召喚したんだってよ」
「へ~、クーナリアに勇者をね~」
「それも二人も来たんだとよ」
「はぁ!? 二人かよ」
召喚? それは私と同じように異世界から来た人たちのことですよね?
「あのお二人さん。その話詳しく」
「お? マモルさんもこういう話好きな口かい?」
たまらず口を挟むと楽しそうに教えてくれる。
「たまに王族の方々が勇者を召喚することがあるんだ。名目は魔物に対する戦力っていう話なんだけど、他国への牽制の面が大きい。勇者って言うのはどうしても特別な力を持っているからな」
「そうですか……性別は分かりませんか?」
私と共に召喚されたのなら二人の女性のはず。
「えっと確か少女とその母ちゃんっていう話だな」
「そうですか……」
「大丈夫かいマモルさん。顔色が良くないぜ?」
「あ、大丈夫ですよ。私は……」
青年の話を聞いて俯くと心配されてしまいました。彼女達は勇者として城に管理されてしまっている。凄く心配です。
私は大丈夫なんですよ。私は……こんなにも幸せですから。
「話じゃ当分は城で常識なんかの勉強をさせるらしいぜ。侍女から聞いた話だから間違いねえ」
「お勉強ですか。それなら当分は大丈夫ですね」
城の中で生活する分には大丈夫ですね。
彼女達も私と同じ平和な時代から来た。いくら強い力を得たからと言ってあんな大きくて恐ろしい魔物と無理やり戦わせるなんて、許せません。私が強くなる理由がもう一つ増えてしまいました。
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