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第二章 悪しき影
第六十八話 ビナン
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「アレク様ありがとうございました」
ビナンがトイレから出てきて深くお辞儀をした。今はしおらしくてみんなの前では強がっているのが分かったよ。
「ビナンはみんなと仲良くしたくないの?」
「えっ?」
「いや、みんなの前にいた時と様子が違うからさ」
「・・・」
ビナンに質問すると彼は俯いた。意図があってあんな態度なのは分かっているんだけど、本人から聞いておきたいんだよね。
「ファーナ、いつも殴られたり蹴られたりしていて、それをみんなでカバーしていたんだけど、僕はそれも嫌だったんです」
「なるほどね。それでみんなには言わずに目立つことをしていたんだね」
ビナンは僕の返答を聞いて「はい」と答えて頷いた。
「じゃあ、戻ろうか」
「・・はい」
は~、この子達をどうしようかな。トレドさんはどういった経緯でこの子達を手に入れたんだろうか? 管理状況をこの子達の話から推測すると暴力的なのが分かるけど、トレドさんがそれを許すのかな? あんまり想像できないな~。
「アレク、みんな残さず食べてくれたよ」
「みんないい子だね」
キッチンに戻るとみんなの前のお皿が空になっていた。人族のビナンとは違って、お腹を壊している様子もないみたい。やっぱり、人族よりも体が丈夫なのかな?
「ファーナちゃんはおかわりもしてくれたんだよ」
「へ~、偉いな~」
「あう~、偉いの?」
ファーナを褒めながら頭を撫でてあげると首を傾げているよ。
「偉いよ~。食べ物はみんなが苦労して作る事が出来るんだよ。それを残らず食べたって事はとっても偉い事なんだよ」
シーナがファーナにそう言って頭を撫でてる。
「じゃあ、次は体を綺麗にしようね」
「女の子は私が洗ってあげるね」
シーナがビャナとファーナを連れて、キッチンの横の部屋に入っていく。
「アレク凄いよ~。お湯が出るの~」
「へ~、やっぱり高級店舗なのかな?」
中に入って少しするとシーナの声が聞こえてきた。水の出る魔石付きの蛇口って言うのは聞いたことがあるけどお湯が出るのは聞いたことなかったな~。
「女の子たちが入っている間にみんなの部屋を綺麗にしよう」
みんなを連れて地下のみんながいた部屋へと戻る。そんなに部屋数はないからここをみんなの部屋にしないとダメなんだよね。本当はみんなの事を考えると地下は嫌なんだけど、これだけはしょうがない。綺麗な絨毯とかを作って出来るだけみんなの負担にならないようにしていこう。
「棚の商品を全部このカバンにいれてね」
「アレクさま? そのかばんじゃ入らない・・・」
地下に来て、ギタンにカバンを渡すと首を傾げた。確かにカバンがアイテムバッグになっているなんて、普通は分からないよね。
「大丈夫、ギタンは入れられるよ」
「ん?」
半信半疑でギタンがカバンよりも大きな椅子をカバンの淵に触れさせる。すると吸い込まれるように椅子がカバンに入っていった。
「凄い!」
「アイテムバッグですね。クード様が持っていたのを一度だけ見ました。アレク様は大商人なんですね!」
ギタンが驚いて声をあげるとギナがキラキラした目で僕を見つめてきた。ん? クード? トレドさんじゃなくて?
「君たちの主人はトレドさんじゃ?」
「えっ、違います。クード様が僕たちの主人ですよ」
子供達が嘘を言っている感じもないし、本当なんだろうな。って事はこの子達はクードの商品だったって事か。でも、なんでトレドさんとスローリアさんはこの子達をそのままにしていたんだろう?
「ん? この紋章は?」
地下の部屋を見回すと変な紋章が所々に設置してあった。僕は紋章を触って調べるんだけど、分からない。何かの道具なのかもしれないので全部回収しておこう。ベラさんにでも聞けばわかるでしょう。
「クード様はここから出るなと言ってきた事があります。もしかしたら知らない人が来ても見えないようになっていたのかも」
「そう言う魔法もあるんだね・・? 僕らは普通に見えたけど?」
ビナンがそう言って考え込んだ。紋章の配置を見ると子供達がいた範囲を覆うものだった。彼の推測通りかもしれない。でも、それだと可笑しい事があるんだよね。僕とシーナは普通に見えたんだ、って事はトレドさんもスローリアさんも見えていたはず。衰弱していたこの子達をそのままにしておくなんて優しい二人ならあり得ないよね。
「・・アレク様達は凄い魔法使いなんですね」
「どういう事?」
「僕も魔法使いの素質があるって言われていたんですけど、その人にこういわれたんです。「どんな魔法も自分よりも強い者には効かない。お前はその素質がある」って、この目隠しの魔法を使った魔法使いよりもアレクさんは凄い魔法使いって事ですよ」
あ~、なるほどね。僕らが強すぎて目隠しの魔法が利かなかったって事か、それなら納得だね。トレドさん達ではこの目隠しの魔法を破ることは出来ずに放置されていたって事だ。この子達はクードの物だから今は誰のものでもなくなる。僕らが貰ってしまっても構わないって事だね。
「みんなにいい知らせができたよ」
「「「えっ?」」」
「みんなが綺麗になったら教えてあげるね」
僕は天井を見上げて呟いた。みんな僕を見つめてきてる。あとで驚く顔が楽しみです。
ビナンがトイレから出てきて深くお辞儀をした。今はしおらしくてみんなの前では強がっているのが分かったよ。
「ビナンはみんなと仲良くしたくないの?」
「えっ?」
「いや、みんなの前にいた時と様子が違うからさ」
「・・・」
ビナンに質問すると彼は俯いた。意図があってあんな態度なのは分かっているんだけど、本人から聞いておきたいんだよね。
「ファーナ、いつも殴られたり蹴られたりしていて、それをみんなでカバーしていたんだけど、僕はそれも嫌だったんです」
「なるほどね。それでみんなには言わずに目立つことをしていたんだね」
ビナンは僕の返答を聞いて「はい」と答えて頷いた。
「じゃあ、戻ろうか」
「・・はい」
は~、この子達をどうしようかな。トレドさんはどういった経緯でこの子達を手に入れたんだろうか? 管理状況をこの子達の話から推測すると暴力的なのが分かるけど、トレドさんがそれを許すのかな? あんまり想像できないな~。
「アレク、みんな残さず食べてくれたよ」
「みんないい子だね」
キッチンに戻るとみんなの前のお皿が空になっていた。人族のビナンとは違って、お腹を壊している様子もないみたい。やっぱり、人族よりも体が丈夫なのかな?
「ファーナちゃんはおかわりもしてくれたんだよ」
「へ~、偉いな~」
「あう~、偉いの?」
ファーナを褒めながら頭を撫でてあげると首を傾げているよ。
「偉いよ~。食べ物はみんなが苦労して作る事が出来るんだよ。それを残らず食べたって事はとっても偉い事なんだよ」
シーナがファーナにそう言って頭を撫でてる。
「じゃあ、次は体を綺麗にしようね」
「女の子は私が洗ってあげるね」
シーナがビャナとファーナを連れて、キッチンの横の部屋に入っていく。
「アレク凄いよ~。お湯が出るの~」
「へ~、やっぱり高級店舗なのかな?」
中に入って少しするとシーナの声が聞こえてきた。水の出る魔石付きの蛇口って言うのは聞いたことがあるけどお湯が出るのは聞いたことなかったな~。
「女の子たちが入っている間にみんなの部屋を綺麗にしよう」
みんなを連れて地下のみんながいた部屋へと戻る。そんなに部屋数はないからここをみんなの部屋にしないとダメなんだよね。本当はみんなの事を考えると地下は嫌なんだけど、これだけはしょうがない。綺麗な絨毯とかを作って出来るだけみんなの負担にならないようにしていこう。
「棚の商品を全部このカバンにいれてね」
「アレクさま? そのかばんじゃ入らない・・・」
地下に来て、ギタンにカバンを渡すと首を傾げた。確かにカバンがアイテムバッグになっているなんて、普通は分からないよね。
「大丈夫、ギタンは入れられるよ」
「ん?」
半信半疑でギタンがカバンよりも大きな椅子をカバンの淵に触れさせる。すると吸い込まれるように椅子がカバンに入っていった。
「凄い!」
「アイテムバッグですね。クード様が持っていたのを一度だけ見ました。アレク様は大商人なんですね!」
ギタンが驚いて声をあげるとギナがキラキラした目で僕を見つめてきた。ん? クード? トレドさんじゃなくて?
「君たちの主人はトレドさんじゃ?」
「えっ、違います。クード様が僕たちの主人ですよ」
子供達が嘘を言っている感じもないし、本当なんだろうな。って事はこの子達はクードの商品だったって事か。でも、なんでトレドさんとスローリアさんはこの子達をそのままにしていたんだろう?
「ん? この紋章は?」
地下の部屋を見回すと変な紋章が所々に設置してあった。僕は紋章を触って調べるんだけど、分からない。何かの道具なのかもしれないので全部回収しておこう。ベラさんにでも聞けばわかるでしょう。
「クード様はここから出るなと言ってきた事があります。もしかしたら知らない人が来ても見えないようになっていたのかも」
「そう言う魔法もあるんだね・・? 僕らは普通に見えたけど?」
ビナンがそう言って考え込んだ。紋章の配置を見ると子供達がいた範囲を覆うものだった。彼の推測通りかもしれない。でも、それだと可笑しい事があるんだよね。僕とシーナは普通に見えたんだ、って事はトレドさんもスローリアさんも見えていたはず。衰弱していたこの子達をそのままにしておくなんて優しい二人ならあり得ないよね。
「・・アレク様達は凄い魔法使いなんですね」
「どういう事?」
「僕も魔法使いの素質があるって言われていたんですけど、その人にこういわれたんです。「どんな魔法も自分よりも強い者には効かない。お前はその素質がある」って、この目隠しの魔法を使った魔法使いよりもアレクさんは凄い魔法使いって事ですよ」
あ~、なるほどね。僕らが強すぎて目隠しの魔法が利かなかったって事か、それなら納得だね。トレドさん達ではこの目隠しの魔法を破ることは出来ずに放置されていたって事だ。この子達はクードの物だから今は誰のものでもなくなる。僕らが貰ってしまっても構わないって事だね。
「みんなにいい知らせができたよ」
「「「えっ?」」」
「みんなが綺麗になったら教えてあげるね」
僕は天井を見上げて呟いた。みんな僕を見つめてきてる。あとで驚く顔が楽しみです。
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