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第二章 悪しき影

第六十六話 奴隷?

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「地下が倉庫なんだよね」

「一応行っておこう」

 全ての部屋を言っておいた方がいいと思って地下へと下る。お店の入り口から奥の通路に入ると地下と二階への階段が左右にあるんだ。二階に上がる時に疑問に思っていたけど、倉庫への階段だったんだね。下っていくと扉が見えた。でも、階段は更に下へと続いてる。倉庫は二部屋存在するみたい。

「先にこの部屋を見ていこうか」

 僕の言葉を聞いてシーナは「うん」と言って頷いてる。
 奥から見てもいいんだけど、先にこっちを見ようと思ったんだ。さて、どんな商品があるんだろう?

「ん? 変な匂いが・・・」

「アレク!?」

「どうしたのシーナ? え!?」

 部屋に入って色んな商品が並んでいる棚を見ていると変な匂いがして来たんだ。その匂いの元を探しているとシーナが驚愕して、声をあげた。彼女の元へ駆けていくと指さす方向に思っても見なかったモノが・・・。

「子供?」

 布の切れ端の様な服を着た子供達が5人。普通の人族の子供もいるんだけど、四人は獣の耳をつけた子供。みんな、膝を抱えて座って僕らを見つめている。

「ご~あん~?」

「ごあん? ってご飯?」

 うさぎ耳の女の子が言葉にならない程の声をあげた。僕は辛うじて言葉を拾い上げる。

「とにかく、上にあげてあげよう」

「うん!」

 鎖につながられている子供達を解放してキッチンへと連れていく。みんな抵抗なくついてくるけど、階段を上るのもきつそうだ。

「ご~あ~ん?」

「うん、すぐに食べれるからね。唇切れちゃってるよ」

「あ~う~」

 うさぎ耳の女の子は唇が渇き過ぎて声をあげると唇が切れて血が出てしまった。シーナはすぐにハンカチで拭ってあげている。

「すぐに食べられるのは肉だけど、この様子だとあんまり食べていないはずだから、スープの方がいいよね」

 手持ちの物だと肉とか消化に時間のかかるものばかりだ。

「これは私達の腕の見せ所かな?」

「そうだね」

 僕のギフトで作った料理人を付与した指当て、それを十個はめる。僕とシーナは共に見合って口角をあげる。

「みんな~席に座って少し待っていてね」

「お腹に優しいミルクでも飲んで待っててね」

 キッチンの椅子に子供達を座らせる。ミルクを子供達の前に並べる。

『ゴクリッ!』

 生唾を飲み込む音が重なる。子供達は飲んでいいと言ったのに一切手を伸ばさないで待っている。

「飲んでいいんだよ?」

「・・・い~の?」

「うん、飲んでいいんだよ」

 シーナが優しく飲んでいいと言うとウサギ耳の女の子はやっとコップに手を伸ばした。

「だめ!」

 熊耳の女の子がウサギ耳の女の子の手を叩いて声を荒らげた。コップからミルクが零れてしまってシーナが布巾で拭ってる。

「あう・・」

「こいつは悪くない。殴るならビャナを殴って」

 ミルクを零してしまったことに怯えるウサギ耳の子とそれを庇おうとしている熊耳の子。僕とシーナは顔を見合って言葉を無くしちゃった。

「ビャナは悪くない。代わりに殴って」

「俺とギナは男だから殴りやすい・・」

 無言で見合っていると熊耳の男の子と犬耳の男の子がそれぞれ、僕とシーナの前に立った。ソソルソ村では奴隷を見たことなかったけど、奴隷ってこんなことになっていたんだな。

「大丈夫。僕らは誰も傷つけないよ」

 僕はそう言って前にいた、犬耳の子の頭を撫でた。モフモフで気持ちよくて思わず思いっきりワシャワシャしちゃったよ。でも、頭が所々傷ついているのが分かった。今まで結構痛めつけられてたんだな~。

「ゴクゴク、プハ~、美味しい」

 獣人の子供達とそんなやり取りをしていると人族の子は机に座って机にあったすべてのミルクを飲み漁っていた。彼はこの子達と違って仲間意識が乏しいのかな?

「私のミルク~・・」

「大丈夫、まだまだあるから」

 全部なくなった事で残念そうにしていたウサギ耳の子に優しく声をかけてミルクをさらに取り出した。野営用に色々買いこんでおいてよかったな~。

「安心して飲めってよ」

 ミルクを飲みほしてゲップをする人族の少年。獣人の子達はみんな少年を睨みつけてる。

「はいはい、ミルクはあるから睨まないでいいよ」

 零れたミルクを拭き終わったシーナが間に入った。それでやっと椅子に座った子供達はミルクに手を伸ばした。人族の子供が飲んだことで子供達を止めるものはなくなったみたい。
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