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第一章 神様からの贈り物

第三十六話 悪しきクード

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 ウサギノ宿屋は北側にある。ベラさんとソルトさんの店も北側。なのでそれほど時間がかからずに北門にたどり着いた。

「ん? 俺達に何か用か?」

 門を通ろうとしない僕らに門を守る衛兵が声をかけてきた。

「ベラさんから銅像を届けるように依頼を受けた物です」

「あ~、オービス様の銅像か、話は聞いているよ。あそこの天幕の中へ行ってくれ」

 衛兵のおじさんにそう言われたので僕らは天幕の中へ。とても大きな天幕、軽く二階建ての家が入るほどの天幕で明らかに秘密を保持するための物なのが伺える。外から見えないようにして人の入りも制限してる。

「君たちは?」

「ベラさんから配達を頼まれた者です」

「お~、ベラ氏から、ではオービス様の銅像が出来たのだな?」

 とても高価そうな服を着たお髭のおじさんが僕らに話しかけてきた。銅像を持ってきたと言うと凄く喜んでる。

「では、ここへお願いできるかな?」

「あの、この事は・・」

「ああ、大丈夫だ。アイテムバッグ持ちは希少な者、他言はしないよ」

 お髭のおじさんはにっこりと笑ってそう言ってくれた。この天幕の中にはおじさんしかいないから大丈夫だよね。

「じゃあ出すね」

「お嬢さんの方だったか。ではこちらに」

 シーナのアイテムバッグに入っていたのでシーナがおじさんの指示した所に銅像をポコンと設置した。

「お~、見事な銅像だ。流石は、ベラ氏。伊達に遠方で美術を学んでいないな。この腹筋はまるで本物だ」

 おじさんは頬をオービス様の銅像の腹筋に這わせて頬を赤く染めている。うん、変態だね。

「じゃあ、僕らは・・」

「ちょっと待ちたまえ。これはチップだよ」

「えっ? こんなに?」

「私はトレド、トレド商会は知っているかい?」

 トレド商会、この町の半分はトレド商会が仕切っているってソルトさんが言ってたな~。まさか、この人が代表なのかな?

「知っているようだね。名前の通り、私が代表取締役会長を務めているんだ。アイテムバッグ持ちの冒険者とは仲良くしておきたいからね。どうぞよろしくね」

「あっ、はい」

 トレドさんは気軽に僕らへと握手を求めた。僕らは恐縮しながら握手に答えるとにっこりと笑った。

「お~!! 素晴らしい!」

「ん・・・」

 握手をしていると、天幕の入り口から大きな声が聞こえた。トレドさんが顔をしかめてその声のした方に視線を向けた。

「おっと~これはこれはトレドではないか~」

「ああ、久しぶりだな。クード」

「ははは、相変わらずこの町で腐っているのか? 王都へ進出しないのか?」

「・・ああ、私はこの町が好きだからね」

 細身でちょび髭のクードさんが話すたんびにトレドさんの顔から笑顔が無くなっていく。苦手なのかな?

「ん? 何故この神聖なオービス様の銅像の前に小汚い冒険者が! 早く出ていきなさい」

 クードが僕らに気付いて叫んだ。今にも目が飛び出しそうな程凄んでいます。

「変わっていないようだなクード」

「トレド貴様が入れたのか! オービス様の銅像には我々のような上級商人や貴族様、それに王族様が相応しい。この天幕にはそう言った者しか入れないはずだぞ」

「そんなルール誰が決めたのだ。クード、お前は何故そう偏った思考を持ってしまったんだ」

 トレドさんとクードが言い争いを始めてしまった。

『うるさい人間達だにゃ』

「僕らはお暇させてもらおう」

「そうだね」

 ガミガミガミガミと言い争いをする二人から少しずつ離れる。

「まて! 誰が出ていっていいといった!」

「見つかっちゃった・・」

 静かに後退りしていたんだけど、クードに見つかってしまった。クードは凄い形相で僕らへと迫ってくる。

「やめないかクード」

「うるさい!」

「う!」

「ちぃ、デブが、しゃしゃり出るからだ」

 トレドさんがクードを止めようとクードの腕を取る。クードが腕を払うとトレドさんは簡単に転んでしまった。打ちどころが悪かったのか、身もだえている。クードは唾をトレドさんに吐きかけて、僕らを睨みつけてきた。

「オービス様の銅像を穢した汚らしい冒険者め。腕一本で許してやろう」

 クードはそう言って腰に帯剣していた白銀の剣を抜いて僕らへと振り上げた。
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