上 下
44 / 55
第二章

第44話 ガイアンとフェリアン

しおりを挟む
 綺麗な声が聞こえてきてステータスを見ると驚きの結果が見えた。

名前 フィル 【超越者】
 
 レベル ☆40

 HP 24900
 MP 24800
 
 STR 2800
 DEF 2800
 DEX 2587
 AGI 2600
 INT 2505
 MND 2505

 実績

【ゴブリンヒーロー討伐】ステータスが十倍になります

 まさかのステータス十倍……。ただでさえ超越者って言ってるのにそれ以上強くなってしまった。完全に世界一強い男になってしまったな~。

「フィル? どうしたの?」

 ステータスを見ているとルリに心配されてしまった。顔を覗いてくる彼女に『何でもない』というと首を傾げてた。
 彼女に言ってもいいんだけど、今はまだ言わないでおこう。というか実績ってゲームみたいだな。それでステータスが上がるのは面白いけど、ヒーローとかその種族の特別な存在を倒すと手に入るのはかなり厳しい設定だ。普通の人じゃ達成できなさそう。

「よっしゃ~。今日は宴だ~。野郎ども帰るぞ!」

『おう!』

 グレイドルさんが声をあげるとみんな引き上げる準備を始めた。

 しばらくして町に帰り着く。はぁ~流石に疲れたな~。




 場所は変わって王城ではフェリアンが宰相と円卓を囲んで激しい舌戦を繰り広げていた。

「近頃、町を牛耳っているそうだねガイアン」

「私がですか? ご冗談をフェリアン様」

 フェリアンの指摘を躱す宰相ガイアン。フェリアンはそんなガイアンに数枚の紙を見せる。

「これは?」

「カンダンとアライア男爵だったものの取引内容だよ。あとこっちはガスト大司祭の研究内容だ」

「!?」

 円卓の机に突きつけられる証拠を見てガイアンは顔を引きつらせる。

「お前が父上を操って何を企んでいるか知らないが思い通りにはさせないぞ!」

「……」

 証拠をまじまじと見つめるガイアンにフェリアンは宣戦布告を告げる。
 しばらく証拠を見ていたガイアンは笑みを浮かべる。

「この二人は何と愚かな」

「な!? 切り捨てるつもりか?」

「はい? 私はこの三人のことは知りませんよ」

 カンダンとアライアの証拠には確かにガイアンの名前は出ていない。しかし、ガストの研究にはガイアンの名前が記されている。ガイアンの名で進められていた研究を本人が知らないはずはない。フェリアンは拳に力を込める。

「大司祭が勝手に私の名を使ったのでしょう。こんな黒龍の研究など夢のような不確かなものですよ。孤児の血でそんなことが出来るはずもない」

「ではカンダンという盗賊のリーダーについては?」

「こちらこそ私には関係のないことだ。フェリアン様はなぜ私がこのような輩と関係があると思ったのですか? 疑われるのは心外ですな」

 思っていた通り、名前の書かれていないカンダンとアライアについては知らぬ存ぜぬを通すようだ。
 しかし、フェリアンはそんなに甘くない。

「そうですか。では……クリスタ」

「はい」

 円卓の間に冒険者のクリスタが一人の男を伴って入ってくる。

「ガイアン様……」

「!?」

 ガストが縛られてクリスタと一緒に入ってくる。彼はガイアンに這いずって近づき顔を足へとこすり付ける。

「カンダンとアライアの方は追及いたしませんよ。しかし、こちらは証人もいますよ」

 フェリアンは勝ちを確信して話す。
 フィルによって眠りについたガストはすぐにクリスタが捕縛に向かっていた。
 エターナルスリープはかなり強力な魔法でウンディーネが消えても長い時間司祭たちを眠らせていた。
 簡単に捕縛できたガストはフェリアンの屋敷に監禁されて今に至るのだった。

「女神が! 女神がいなくなってしまったのです!」

「……」

 ガストは黒い女神であるヴィーナスがいなくなったことを嘆いて涙した。
 ガイアンはそんな彼を見て顔を歪める。

「こんな男知らん!」

「そ、そんなガイアン様!」

 ガストはガイアンに泣きじゃくる顔をこすり付ける。服が汚れたガイアンは少し考えるように天を仰ぐと剣を引き抜く。

「ギャ~!」

「な、なに!?」

 引き抜いた剣をガストに突き刺すガイアン。フェリアンもクリスタも共に抜剣して警戒を強める。

「宰相である私の服を汚した男を切り伏せただけだよ。不敬であろう?」

「き、貴様……」

 いけしゃあしゃあと言ってのけるガイアン。剣の血を円卓にひかれたテーブルクロスでぬぐい剣を納めるとパンパンと手を叩く。

「王子が狂った! 大司祭が殺されたぞ!」

「な!?」

 ガイアンの言葉で兵士達が円卓に入ってくる。まるで準備していたかのような状況、元々ガイアンはこうなることも想定していたようだ。

「王子! これはどういうことですか」

「すべてガイアンの嘘だ。皆! 騙されるな!」

 兵士達が声をあげるとフェリアンが応えた。
 その様子にガイアンは笑みを浮かべる。

「王子は病に倒れた王を殺そうとしているのだ。そして、自分がこの国を治めようとしている」

「!? そ、それはお前が」

「おお、恐ろしい! なんという目つきか! あれは人殺しの目だ!」

 細い目を開いてガイアンを睨みつけるフェリアン。その目を見てガイアンは叫び散らす。

「私の言葉は王命だ。この印が見えぬか! フェリアンをとらえよ!」

 ガイアンは病に倒れる前の王に王印を明け渡させていた。その印がある限り兵士たちはガイアンには逆らえない。

「……」

「命令が聞けないと言うのか?」

 ガイアンの言葉を聞いて動けない兵士達。そんな兵士達に圧を強めるガイアン。兵士達は狼狽えながらフェリアンに近づいていく。

「ど、どうかフェリアン様、お許しください」

「くっ! ガイアン。覚えていろよ。私は必ず帰ってくる」

 怯えながらも兵士達はフェリアンを捕まえようと動いた。

「逃がすなと言っている! 貴様ら全員打ち首だぞ!」

 ガイアンの言葉に兵士達は顔を強張らせる。
 捕まるわけにもいかないフェリアンはクリスタと共に円卓の間を出る。王子は近衛兵を集めて王城を後にする。
 この事件は真実を隠されて町へと知らされる。冒険者達がゴブリンと戦っている時、指名手配の紙が町に溢れた。もちろん、指名手配犯はフェリアンとなっている。

 フェリアンはゲルグガルドを離れて森にテントを築いた。テントの中でうなだれながらクリスタと近衛隊長アスラへと声をかける。

「すまないな二人とも。まさかこんなことになるとは。フィルにも悪いことをした……まさか、あの場でガストを切り伏せるとは思わなかったよ」

「フェリアン様は悪くありません。王様が病に伏せてしまったからで……」

 アスラが俯いて答える。フェリアンはクリスタに視線を移す。

「クリスタ」

「はい……」

「君は冒険者だ。顔は見られているが今ならまだ戻れるはず」

「フェリアン様! 見くびってもらっては困ります。私はフェリアン様の兵士です。冒険者ではありません!」

「……ありがとう」

 クリスタは泣きながら答える。フェリアンはそんな彼女の肩に手を置いてお礼を言うと立ち上がってテントを出る。
 王子の近衛兵たちを見てフェリアンは決意を口にする。

「敵はガイアン! 我が父上と国を取り返す! 皆! 私に力を貸してくれ!」

『はっ!』

 フェリアンの言葉に近衛兵達は全員声をあげて答えた。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

僕は弟を救うため、無自覚最強の幼馴染み達と旅に出た。奇跡の実を求めて。そして……

久遠 れんり
ファンタジー
五歳を過ぎたあたりから、体調を壊し始めた弟。 お医者さんに診断を受けると、自家性魔力中毒症と診断される。 「大体、二十までは生きられないでしょう」 「ふざけるな。何か治療をする方法はないのか?」 その日は、なにも言わず。 ただ首を振って帰った医者だが、数日後にやって来る。 『精霊種の住まう森にフォビドゥンフルーツなるものが存在する。これすなわち万病を癒やす霊薬なり』 こんな事を書いた書物があったようだ。 だが、親を含めて、大人達はそれを信じない。 「あての無い旅など無謀だ」 そう言って。 「でも僕は、フィラデルを救ってみせる」 そして僕は、それを求めて旅に出る。 村を出るときに付いてきた幼馴染み達。 アシュアスと、友人達。 今五人の冒険が始まった。 全くシリアスではありません。 五人は全員、村の外に出るとチートです。ご注意ください。 この物語は、演出として、飲酒や喫煙、禁止薬物の使用、暴力行為等書かれていますが、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。またこの物語はフィクションです。実在の人物や団体、事件などとは関係ありません。

いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!

町島航太
ファンタジー
 ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。  ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

ドラゴンなのに飛べません!〜しかし他のドラゴンの500倍の強さ♪規格外ですが、愛されてます♪〜

藤*鳳
ファンタジー
 人間としての寿命を終えて、生まれ変わった先が...。 なんと異世界で、しかもドラゴンの子供だった。 しかしドラゴンの中でも小柄で、翼も小さいため空を飛ぶことができない。 しかも断片的にだが、前世の記憶もあったのだ。 人としての人生を終えて、次はドラゴンの子供として生まれた主人公。 色んなハンデを持ちつつも、今度はどんな人生を送る事ができるのでしょうか?

集団転送で異世界へ。 ~神の気まぐれによって?異世界生活~

武雅
ファンタジー
永遠の時に存在する神ネレースの気まぐれによって? その創造神ネレースが管理する異世界に日本から30000人が転送されてしまう。 異世界に転送される前になぜか神ネレースとの面談があり、提示された職業に自分の思い通りの職業が無かったので神にダメ元で希望を言ってみたら希望の職業と望みを叶えられその代償として他の転送者よりも過酷な辺境にある秘境の山奥に送られ元の世界に戻りたい以前に速攻で生命の危機にさらされてしまう! 神が面白半分で決めた事象を達成するとその順位により様々な恩恵を授けるとのこと。 「とりあえず町を目指せ!村ではなく町だ!!」とそれ以外特に神ネレースより目的も与えられず転送された人々は・・ 主人公は希望の職業を要求した代償としていきなり森を彷徨いゴブリンに追われることに。 神に与えられた職業の能力を使い、チートを目指し、無事に異世界を生き抜くことを目指しつつ自分と同じ転送された人々を探し現実世界への帰還を模索をはじめる。 習慣も風俗も法律も違う異世界はトラブルだらけで息つく暇もなく、転送されたほかの人たちも暴走し・迷走し、異世界からの人々をめぐって国家単位で争奪戦勃発!? その時、日本では謎の集団集団失踪や、令和のミステリーとして国家もマスコミも世間も大騒ぎ? 転送された人々は無事に元の世界にかえれるのか、それとも異世界の住人になって一生をおえるのか。 それを眺め娯楽とする神の本当の目的は・・・。 ※本作は完結まで完成している小説になりますので毎日投降致します。 初作品の為、右も左も分からず作った作品の為、ですます調、口調のブレが激しいですが温かい目でお読み頂ければ幸いでございます。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...