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第一章 落とされたもの
第31話 油断
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「はっ!」
「昨日よりも鋭い突きですね。流石アート様です」
今日も孤児院の大きな庭で訓練中。
昨日の図書館でアクリアさんの話を見たシエルさん。少し気落ちしていた彼女だったけど、今は元の元気な姿……に見える。
「やっ!」
「あわせて魔法を使ってみてください。アート様の無詠唱はかなり強みになりますからね……」
僕の素振りを見てシエルさんが指導してくれる。だけど、どこか上の空。空を見つめて悲しい表情になっているように思える。
「おいおい、才能なしが訓練してるぞシロト」
「うん。でも、ゼパード。才能なしに見えないよ」
なぜかルドガーの友達のゼパードとシロトがやってきて声をあげてる。ゼパードが柵を越えて僕に近づいてくる。
「明日決闘だろ? 今俺と試しにやってみないか?」
ゼパードがそう言って木剣を手に取った。僕は戸惑いながらシエルさんを見る。頷いてくれてるってことはやってみてもいいみたいだ。
僕もどのくらい戦えるか知りたかったから丁度いい。
「能無し! 先手を譲ってやるよ。いつでもこい」
「じゃあ……」
ゼパードの声に僕はすぐに行動に出た。
「【ファイアボルト】」
「うおっ!? 無詠唱魔法!」
鋭く火の矢がゼパードに迫ると彼は木剣で切り払う。あの速度に反応できるのは流石だ。
僕はすぐに次の行動を開始する。
「【ストーンボルト】! はっ!」
「ぐっ! 土魔法も使えるのか。何が才能なしだ! うぐぐ!」
土の矢を放ち、ゼパードに迫る。土の矢も切り払ったゼパードに切りつけると見事にガードしてきた。今のも躱すなんてほんとに凄いな。
「ゼパード。【アークナイト】呼べば?」
「黙れシロト! こ、こんなやつ【アークナイト】を呼ばなくたって!」
シロトの言葉にいら立ちを見せるゼパード。【アークナイト】って何のことだろう。呼ぶってことは従魔か何かなのかな?
「この! 調子に乗りやがって! マナよ! 聖なる矢をもって我が敵を穿て【ホーリーボルト】!」
「よっと!」
ゼパードは怒りながらも詠唱を唱えて光の矢を放ってきた。
詠唱がある分、魔法の放つタイミングが分かりやすくて簡単に躱せた。躱してすぐに切りかかる。
「ぐあっ! なんて力だ。同じ子供の力じゃないだろ!」
少し力を込めて切りかかると鍔迫り合いの形になった。ゼパードは片膝をついて声をもらしてる。
戦士と聖騎士の才能を持っている僕は結構力持ちになったんだよね。聖騎士の才能は聖属性魔法も使えるようになるんだけど、筋力も上がるからね。彼は聖騎士の才能だけだろうから、単純に戦士の才能分の筋力の差がついてる。
「もうやめだ! 終わり終わり!」
「え? 終わり?」
片膝をついて声をあげるゼパード。僕は思わず力を抜いてしまう。するとすかさずゼパードが僕の脇腹に木剣を叩きつけてきた。
「ううっ」
痛みが走って脇腹を抑えてしまう。
「ははは! 誰が止めるかよ!」
「うわ!?」
ゼパードは嬉しそうににやけると木剣を振り上げてくる。僕は思わず目を瞑って両手で頭を守ってしまう。来るはずの衝撃が一向に来ないから目を開けて見ると、シエルさんが牙を剥き出しにしてゼパードの持っていた木剣を握りつぶしていた。
「それが聖騎士のやることですか! 恥を知りなさい!」
握りつぶした木剣を地面に叩きつけながら告げるシエルさん。
「ひぃ!? じゅ、獣人風情が説教か!」
「ではその獣人と試合をしましょうか……」
あまりの気迫にゼパードが涙目になって声をあげる。その声を聞いてシエルさんが冷静になって新しい木剣を手渡した。彼女が素手だな。
「シエル?」
「アート様。少々お待ちくださいね。この聖騎士にはしつけが必要なようなので」
怒りを内に秘めたシエルさんに声をかけるとゴゴゴゴという音が薄っすらと聞こえてくる。
その音に気が付かないゼパードはよそ見をしているシエルさんに木剣を振り下ろしていく。
「隙ありだ! ええぇぇ!?」
ゼパードの声が裏返るのと同時に彼の体が宙に舞う。そのまま頭から地面に落ちるとのびてしまった。すごい速さでシエルさんが彼を投げ飛ばしたみたいだ。僕もみえなかった。
「ゼパード?」
気絶してしまったゼパードにシロトが指で突っつく。ピクピクと動くものだから楽しそうにシロトが続ける。
「私もやる~」
「ルーも~」
そうこうしていると子供達が孤児院から出てきてシロトと共に突っつきだす。ゼパードはめでたく孤児院の子供達のおもちゃとなるのでした。
「し、シロト。ここはどこだ? 俺は誰だ?」
「孤児院。ゼパードはおもちゃ」
しばらくしてゼパードが起き上がるとおかしなことを言い始める。シロトが答えると無言で頷いて帰っていった。衝撃が強すぎて記憶が一部飛んでしまったみたいだな。少し心配だが、卑怯な手を使った罰だ、致し方なし。
それにしてもシエルさんを怒らせると怖いな。
「ではアート様。卑怯な手を使われても勝てる訓練をいたしましょう」
「……はい」
ゼパードとシロトの背中を見送っているとシエルさんがニッコリと微笑んで木剣を手渡して来た。僕も投げられてしまうのかな。怖いな。
「大丈夫ですよ。あそこまで派手に投げません。ちゃんとキャッチいたします」
ははは、やっぱり投げられるようだ。才能じゃどうしようもないことってあるんだな~。
「昨日よりも鋭い突きですね。流石アート様です」
今日も孤児院の大きな庭で訓練中。
昨日の図書館でアクリアさんの話を見たシエルさん。少し気落ちしていた彼女だったけど、今は元の元気な姿……に見える。
「やっ!」
「あわせて魔法を使ってみてください。アート様の無詠唱はかなり強みになりますからね……」
僕の素振りを見てシエルさんが指導してくれる。だけど、どこか上の空。空を見つめて悲しい表情になっているように思える。
「おいおい、才能なしが訓練してるぞシロト」
「うん。でも、ゼパード。才能なしに見えないよ」
なぜかルドガーの友達のゼパードとシロトがやってきて声をあげてる。ゼパードが柵を越えて僕に近づいてくる。
「明日決闘だろ? 今俺と試しにやってみないか?」
ゼパードがそう言って木剣を手に取った。僕は戸惑いながらシエルさんを見る。頷いてくれてるってことはやってみてもいいみたいだ。
僕もどのくらい戦えるか知りたかったから丁度いい。
「能無し! 先手を譲ってやるよ。いつでもこい」
「じゃあ……」
ゼパードの声に僕はすぐに行動に出た。
「【ファイアボルト】」
「うおっ!? 無詠唱魔法!」
鋭く火の矢がゼパードに迫ると彼は木剣で切り払う。あの速度に反応できるのは流石だ。
僕はすぐに次の行動を開始する。
「【ストーンボルト】! はっ!」
「ぐっ! 土魔法も使えるのか。何が才能なしだ! うぐぐ!」
土の矢を放ち、ゼパードに迫る。土の矢も切り払ったゼパードに切りつけると見事にガードしてきた。今のも躱すなんてほんとに凄いな。
「ゼパード。【アークナイト】呼べば?」
「黙れシロト! こ、こんなやつ【アークナイト】を呼ばなくたって!」
シロトの言葉にいら立ちを見せるゼパード。【アークナイト】って何のことだろう。呼ぶってことは従魔か何かなのかな?
「この! 調子に乗りやがって! マナよ! 聖なる矢をもって我が敵を穿て【ホーリーボルト】!」
「よっと!」
ゼパードは怒りながらも詠唱を唱えて光の矢を放ってきた。
詠唱がある分、魔法の放つタイミングが分かりやすくて簡単に躱せた。躱してすぐに切りかかる。
「ぐあっ! なんて力だ。同じ子供の力じゃないだろ!」
少し力を込めて切りかかると鍔迫り合いの形になった。ゼパードは片膝をついて声をもらしてる。
戦士と聖騎士の才能を持っている僕は結構力持ちになったんだよね。聖騎士の才能は聖属性魔法も使えるようになるんだけど、筋力も上がるからね。彼は聖騎士の才能だけだろうから、単純に戦士の才能分の筋力の差がついてる。
「もうやめだ! 終わり終わり!」
「え? 終わり?」
片膝をついて声をあげるゼパード。僕は思わず力を抜いてしまう。するとすかさずゼパードが僕の脇腹に木剣を叩きつけてきた。
「ううっ」
痛みが走って脇腹を抑えてしまう。
「ははは! 誰が止めるかよ!」
「うわ!?」
ゼパードは嬉しそうににやけると木剣を振り上げてくる。僕は思わず目を瞑って両手で頭を守ってしまう。来るはずの衝撃が一向に来ないから目を開けて見ると、シエルさんが牙を剥き出しにしてゼパードの持っていた木剣を握りつぶしていた。
「それが聖騎士のやることですか! 恥を知りなさい!」
握りつぶした木剣を地面に叩きつけながら告げるシエルさん。
「ひぃ!? じゅ、獣人風情が説教か!」
「ではその獣人と試合をしましょうか……」
あまりの気迫にゼパードが涙目になって声をあげる。その声を聞いてシエルさんが冷静になって新しい木剣を手渡した。彼女が素手だな。
「シエル?」
「アート様。少々お待ちくださいね。この聖騎士にはしつけが必要なようなので」
怒りを内に秘めたシエルさんに声をかけるとゴゴゴゴという音が薄っすらと聞こえてくる。
その音に気が付かないゼパードはよそ見をしているシエルさんに木剣を振り下ろしていく。
「隙ありだ! ええぇぇ!?」
ゼパードの声が裏返るのと同時に彼の体が宙に舞う。そのまま頭から地面に落ちるとのびてしまった。すごい速さでシエルさんが彼を投げ飛ばしたみたいだ。僕もみえなかった。
「ゼパード?」
気絶してしまったゼパードにシロトが指で突っつく。ピクピクと動くものだから楽しそうにシロトが続ける。
「私もやる~」
「ルーも~」
そうこうしていると子供達が孤児院から出てきてシロトと共に突っつきだす。ゼパードはめでたく孤児院の子供達のおもちゃとなるのでした。
「し、シロト。ここはどこだ? 俺は誰だ?」
「孤児院。ゼパードはおもちゃ」
しばらくしてゼパードが起き上がるとおかしなことを言い始める。シロトが答えると無言で頷いて帰っていった。衝撃が強すぎて記憶が一部飛んでしまったみたいだな。少し心配だが、卑怯な手を使った罰だ、致し方なし。
それにしてもシエルさんを怒らせると怖いな。
「ではアート様。卑怯な手を使われても勝てる訓練をいたしましょう」
「……はい」
ゼパードとシロトの背中を見送っているとシエルさんがニッコリと微笑んで木剣を手渡して来た。僕も投げられてしまうのかな。怖いな。
「大丈夫ですよ。あそこまで派手に投げません。ちゃんとキャッチいたします」
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