9 / 15
第9話
しおりを挟む
赤の宿屋での最後の夜を終えて、朝食をいただく。
前の日のようにフリンちゃんに朝食が出来たことを告げられて食堂でいただいた。
食べ終わるとエルザさんがやってきて、一緒に屋敷に帰ることになった。
屋敷に帰ってきてミラさんに迎えられる。そこで僕はルミナさんを迎える準備が出来たので一度ルミナさんの所に帰ることを伝えると二人は困惑してた。
「アクアス様に婚約者が……」
『私はお傍にいられれば構いませんがさすがはアクアス様です』
エルザさんは残念そう、ミラさんは少し頬を高揚させてる。
流石といわれると照れてしまう。
はぁ~早くルミナさんに会いたいな~。
「では家までお供いたします」
「え? 大丈夫ですよ。一日の距離ですし」
「そういうわけにはいきません。アクアス様は私の恩人。命に代えてもあなたを守ります」
エルザさんは頑なについてくるみたい。刻印が血で作られたものだったから助けられたけど火で作られていたら助けられなかった。運がよかっただけなんだけどね。
『私も行きたいのですが……』
「その気持ちだけで嬉しいよ」
『残念ですがエルザに任せます……』
ミラさんは残念そうにしてる。
ゴーストであるミラさんは日の光に弱い。
死にはしないけど、まともに動くことは出来ないんだ。
建物とか、影の中にいれば普通にしていられるけど、外は厳しいんだよな~。
彼女も僕に恩を感じてしまってるから守ってくれる。僕の強さを知っているミラさんだけど、何か出来ることがないかと頑張ってくれるんだよね。
ミラさんも運よく屋敷に来たから助けられたんだけどな。
「ふふふ、こういう時は私の方が有利だな」
『ふんっ。無様な姿をさらすダークエルフが見えるわ』
「な、何を!」
ぐぬぬとにらみ合う二人。なんでこんなに仲が悪くなっちゃったんだろうか?
エルザさんがミラさんのことを魔物だと思ったせいかな? そのくらいの勘違いなら優しいミラさんならすぐに許してくれそうだけどな。
「ふふ、じゃあルミナさんを迎えに行ってくるねミラさん」
『行ってらっしゃいませアクアス様。お帰りをお待ちしております』
深くお辞儀をして見送ってくれるミラさん。屋敷から出てレッドオットの門へと向かった。
「おお坊主。旅立つのか?」
「あ、あの時の。えっと?」
レッドオットにやってきたときに迎えてくれた緑髪のおじさんが声をかけてくれた。名前を聞いてなかったから口ごもると、
「ああ、そういえば名前を言ってなかったな。俺はこのレッドオットの警備隊長をしてるザックだ」
「警備隊長さんだったんですね。通りで」
強そうな槍を持っていたから気にはなっていたけど、やっぱり強い人みたいだね。
「ははは、ただの飲んだくれだよ。それよりもこの間の忠告は守るようにな。死体で帰ってきてもあいさつしてやらねえからな」
「はい。日が落ちてくる前に野営の準備をするでしたよね」
「ああ、そうだ。夜を舐めちゃいかん。むやみに危険に飛び込むのと同じで無謀なことだ。まあ、今回は一人ではないようだがな。それも冒険者ギルドのダークエルフの姉ちゃんとはな。こんなに心強い相棒はいないってもんだ」
ザックさんはエルザさんを見て微笑む。
エルザさんはその視線に気づいて照れ臭そうに頬を赤く染めてる。
「呪いが解けたんだってな。それもアクアス君に治してもらったんだろ。聞いてるぜ」
「はい! アクアス様にその恩を返すために従者となりました」
ザックさんに嬉しそうに話すエルザさん。
従者って言うのは聞いてなかったけど、やっぱりそういうつもり出来てくれてたんだね。嬉しいけど、エルザさん自身のことを考えてほしいな。
呪いのせいで魔法が使えなかったんだから、それなりにやりたいことも出来たでしょうに、もったいないよ。
「そうか、でも、気をつけろよアクアス君」
「気をつけろとは?」
「希少な能力って言うのは誰でも欲しい、わかるな?」
「狙われるってことですか?」
「ああ、街の中なら守ってやれるが外ではそんなこともできない。だから忠告させてもらってるわけだ。まあ、噂ではかなり強いみたいだからそんな心配もいらないと思うが」
照れ臭そうに頬を掻くザックさん。心配してくれるなんて本当に優しいな。
「ありがとうございます。野営のことと合わせて気をつけますね」
「おう」
ニッコリと笑うザックさん。
「じゃあ、行ってきます」
「気をつけていって来いよ。姉ちゃんも気をつけてな」
「はい」
ザックさんに見送られてレッドオットを旅立つ。
短い間だったけど、優しい人がいっぱいの街だった。まあ、中には変な人もいたけどね。
しばらく街道を歩いていると魔物と遭遇した。
エルザさんが前に出て魔法で作った盾で身を守りながら弓を射ってる。剣も持っているけど、主体は弓矢みたいだね。
盾も風魔法の【ウィンドシールド】ってやつだ。初級魔法だからそんなに難しい魔法じゃないはず。
「アクアス様。すべて倒しました!」
「うん。ありがとうエルザさん。でも、無理はしないでね」
「はい!」
複数の敵と接敵した時に僕を見て助けを求めようか悩んだ時があったんだ。そんな時は素直に共闘を選んでほしい。恩を返すために無理をするのは馬鹿らしいよ。けがは出来るだけしてほしくないしね。
「あっ。エルザさん。怪我してますよ」
「あっ本当だ」
無傷だと思っていたエルザさんだったけど、やっぱり少しだけ傷を負ってた。手の甲に切り傷が見える。
「このくらいの傷このままで」
「ダメですよエルザさん。化膿するかもしれないんですから。すぐに治します」
「えっ! 水で回復!?」
エルザさんの手に聖なる水をかける。傷はすぐにふさがっていってエルザさんはびっくりしてるよ。
オットーさんにあげた水はただの水って言ってあったからわからなかったんだろうな。
聖なる水は少しだけ回復効果をもってるんだよな。もっと大きな怪我だったらもっと強いものを作り出したんだけど、そんなことにならないのが一番なので出番はないかな。
前の日のようにフリンちゃんに朝食が出来たことを告げられて食堂でいただいた。
食べ終わるとエルザさんがやってきて、一緒に屋敷に帰ることになった。
屋敷に帰ってきてミラさんに迎えられる。そこで僕はルミナさんを迎える準備が出来たので一度ルミナさんの所に帰ることを伝えると二人は困惑してた。
「アクアス様に婚約者が……」
『私はお傍にいられれば構いませんがさすがはアクアス様です』
エルザさんは残念そう、ミラさんは少し頬を高揚させてる。
流石といわれると照れてしまう。
はぁ~早くルミナさんに会いたいな~。
「では家までお供いたします」
「え? 大丈夫ですよ。一日の距離ですし」
「そういうわけにはいきません。アクアス様は私の恩人。命に代えてもあなたを守ります」
エルザさんは頑なについてくるみたい。刻印が血で作られたものだったから助けられたけど火で作られていたら助けられなかった。運がよかっただけなんだけどね。
『私も行きたいのですが……』
「その気持ちだけで嬉しいよ」
『残念ですがエルザに任せます……』
ミラさんは残念そうにしてる。
ゴーストであるミラさんは日の光に弱い。
死にはしないけど、まともに動くことは出来ないんだ。
建物とか、影の中にいれば普通にしていられるけど、外は厳しいんだよな~。
彼女も僕に恩を感じてしまってるから守ってくれる。僕の強さを知っているミラさんだけど、何か出来ることがないかと頑張ってくれるんだよね。
ミラさんも運よく屋敷に来たから助けられたんだけどな。
「ふふふ、こういう時は私の方が有利だな」
『ふんっ。無様な姿をさらすダークエルフが見えるわ』
「な、何を!」
ぐぬぬとにらみ合う二人。なんでこんなに仲が悪くなっちゃったんだろうか?
エルザさんがミラさんのことを魔物だと思ったせいかな? そのくらいの勘違いなら優しいミラさんならすぐに許してくれそうだけどな。
「ふふ、じゃあルミナさんを迎えに行ってくるねミラさん」
『行ってらっしゃいませアクアス様。お帰りをお待ちしております』
深くお辞儀をして見送ってくれるミラさん。屋敷から出てレッドオットの門へと向かった。
「おお坊主。旅立つのか?」
「あ、あの時の。えっと?」
レッドオットにやってきたときに迎えてくれた緑髪のおじさんが声をかけてくれた。名前を聞いてなかったから口ごもると、
「ああ、そういえば名前を言ってなかったな。俺はこのレッドオットの警備隊長をしてるザックだ」
「警備隊長さんだったんですね。通りで」
強そうな槍を持っていたから気にはなっていたけど、やっぱり強い人みたいだね。
「ははは、ただの飲んだくれだよ。それよりもこの間の忠告は守るようにな。死体で帰ってきてもあいさつしてやらねえからな」
「はい。日が落ちてくる前に野営の準備をするでしたよね」
「ああ、そうだ。夜を舐めちゃいかん。むやみに危険に飛び込むのと同じで無謀なことだ。まあ、今回は一人ではないようだがな。それも冒険者ギルドのダークエルフの姉ちゃんとはな。こんなに心強い相棒はいないってもんだ」
ザックさんはエルザさんを見て微笑む。
エルザさんはその視線に気づいて照れ臭そうに頬を赤く染めてる。
「呪いが解けたんだってな。それもアクアス君に治してもらったんだろ。聞いてるぜ」
「はい! アクアス様にその恩を返すために従者となりました」
ザックさんに嬉しそうに話すエルザさん。
従者って言うのは聞いてなかったけど、やっぱりそういうつもり出来てくれてたんだね。嬉しいけど、エルザさん自身のことを考えてほしいな。
呪いのせいで魔法が使えなかったんだから、それなりにやりたいことも出来たでしょうに、もったいないよ。
「そうか、でも、気をつけろよアクアス君」
「気をつけろとは?」
「希少な能力って言うのは誰でも欲しい、わかるな?」
「狙われるってことですか?」
「ああ、街の中なら守ってやれるが外ではそんなこともできない。だから忠告させてもらってるわけだ。まあ、噂ではかなり強いみたいだからそんな心配もいらないと思うが」
照れ臭そうに頬を掻くザックさん。心配してくれるなんて本当に優しいな。
「ありがとうございます。野営のことと合わせて気をつけますね」
「おう」
ニッコリと笑うザックさん。
「じゃあ、行ってきます」
「気をつけていって来いよ。姉ちゃんも気をつけてな」
「はい」
ザックさんに見送られてレッドオットを旅立つ。
短い間だったけど、優しい人がいっぱいの街だった。まあ、中には変な人もいたけどね。
しばらく街道を歩いていると魔物と遭遇した。
エルザさんが前に出て魔法で作った盾で身を守りながら弓を射ってる。剣も持っているけど、主体は弓矢みたいだね。
盾も風魔法の【ウィンドシールド】ってやつだ。初級魔法だからそんなに難しい魔法じゃないはず。
「アクアス様。すべて倒しました!」
「うん。ありがとうエルザさん。でも、無理はしないでね」
「はい!」
複数の敵と接敵した時に僕を見て助けを求めようか悩んだ時があったんだ。そんな時は素直に共闘を選んでほしい。恩を返すために無理をするのは馬鹿らしいよ。けがは出来るだけしてほしくないしね。
「あっ。エルザさん。怪我してますよ」
「あっ本当だ」
無傷だと思っていたエルザさんだったけど、やっぱり少しだけ傷を負ってた。手の甲に切り傷が見える。
「このくらいの傷このままで」
「ダメですよエルザさん。化膿するかもしれないんですから。すぐに治します」
「えっ! 水で回復!?」
エルザさんの手に聖なる水をかける。傷はすぐにふさがっていってエルザさんはびっくりしてるよ。
オットーさんにあげた水はただの水って言ってあったからわからなかったんだろうな。
聖なる水は少しだけ回復効果をもってるんだよな。もっと大きな怪我だったらもっと強いものを作り出したんだけど、そんなことにならないのが一番なので出番はないかな。
0
お気に入りに追加
215
あなたにおすすめの小説
【マジックバッグ】は重さがない? そんなの迷信だよ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
スキル【マジックバッグ】を持っている少年アズ
本来のマジックバッグとは違うスキルだったようです
重さを感じるマジックバッグを知った彼の師匠の指導により訓練を施された彼
常人では考えられないほどの強さを手に入れました
残念なことに動きが遅いと首にされてしまいましたがその力を使ってより良い生活へと動き出します
ーーーー
どうも、カムイイムカです
面白い題材だと思って思わず書いてしまいました
僕だけの農場発売記念といたしまして投稿することにいたしました
十五話までで未完ですがお楽しみいただければ幸いです
制作スキル持ちのリビングマスター ~異世界覇者への道~
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺は海城 一二三(カイジョウ ヒフミ)
いつも通り、登校したらテセリウスとかいう神が現れてクラス全員を変な空間に閉じ込めてきた
俺たちを全員別世界に行くとかいう話になった。
俺と親友の金田一 一(キンダイチ ハジメ) はこういった話の小説をバイブルにしているのでそれほど困惑はしなかったがハジメが最低レアをひいてしまったんだ。
ハジメは俺と違って体育的なものは苦手、生き残る能力は皆無だろう。仕方なくハジメと条件を交換した。ハジメが生きられるならそれでいいかと軽い気持ちだったんだが。
どうやら、最低レアというのは現状の話でスキルは最高のスキルがついていたようだ。
テーラーボーイ 神様からもらった裁縫ギフト
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はアレク
両親は村を守る為に死んでしまった
一人になった僕は幼馴染のシーナの家に引き取られて今に至る
シーナの両親はとてもいい人で強かったんだ。僕の両親と一緒に村を守ってくれたらしい
すくすくと育った僕とシーナは成人、15歳になり、神様からギフトをもらうこととなった。
神様、フェイブルファイア様は僕の両親のした事に感謝していて、僕にだけ特別なギフトを用意してくれたんだってさ。
そのギフトが裁縫ギフト、色々な職業の良い所を服や装飾品につけられるんだってさ。何だか楽しそう。
社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル
14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった
とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり
奥さんも少女もいなくなっていた
若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました
いや~自炊をしていてよかったです
悪役令嬢に転生したら、勇者に師匠扱いされました(;゜∇゜)
はなまる
ファンタジー
乙女ゲームに転生した私。 しかも悪役令嬢らしい。
だけど、ゲーム通りに進める必要はないよね。 ヒロインはとってもいい子で友達になったし、攻略対象も眺め放題。 最高でした。
...... 勇者候補の一人から師匠扱いされるまでは。
最初は剣と魔法のファンタジー。 少しずつ恋愛要素が入ってくる予定です。
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。
今年で33歳の社畜でございます
俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました
しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう
汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。
すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。
そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな
異世界転移! 幼女の女神が世界を救う!?
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
アイは鮎川 愛って言うの
お父さんとお母さんがアイを置いて、何処かに行ってしまったの。
真っ白なお人形さんがお父さん、お母さんがいるって言ったからついていったの。
気付いたら知らない所にいたの。
とてもこまったの。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる