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第3話 

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「えっと? あなたは?」

 なれなれしい男に名前を聞く。男は首飾りを見せてきて、

「俺はランクA冒険者のラリーってもんだ」

 名乗って見せるラリー。あんまり強そうじゃないけどAランクってことはかなり強いのかな?
 冒険者ってランクがE、D、C、B、A、Sってあるから二番目に強いランクの人ってことだよな。
 あまり良い人じゃなさそうだけど、強いってことは良い人なのかな?

「エルザはな。呪われたエルフなんだよ。魔法が使えないエルフなんて笑えるだろ」

「……」

 ラリーはそういって笑い出す。エルザさんは俯いて悲しそうにしてるよ。
 周りを見渡すと同じように笑っている人が見える。怪訝な表情もいるけど、止められる人はいないみたいだ。
 とりあえず、ラリーはあまり良い人じゃないみたいだね。

「生きた宝石は大人しく宝石として可愛がられてりゃいいんだよ。そうだろエルザ」

「……」

 エルザさんの手を取って撫でまわしてる。いやらしい目つきで見つめられるエルザさんは死んだような目になってるよ。これは見ていられないな。

「離してもらえますか?」

「あ? 何をだ」

「その汚い手ですよ」

「あぁ! この野郎。新人だからって容赦しねえぞ」

 凄んで来るラリー。ちょっと懲らしめてあげようか。
 ラリーは完全に僕のテリトリーに入ってる。マナの塊に入ってきてるんだ。そのままマナを水に変えれば。

「ごぼぼぼ」

「今日は雨が降るって言っていましたよ。傘は持ってきましたか?」

 水の檻が完成。球体の水がぷかぷかとラリーを中に納めて浮く。
 周りの冒険者達はぽか~んとしてる。どうしたんだろう? このくらい普通でしょ。

「魔法も唱えないで水気のないここでこんなに水を……」

 ダークエルフのエルザさんが呟いてる。
 ああ、そうか、人は魔法を唱えないと使えないんだっけか。失敗したな、目立ってしまった。
 まあ、やってしまったものは致し方ない。ラリーが死なないうちに吐き出しておこう。

「ゴホッゴホッ! て、てめ~。どうやって……」

「どうでもいいでしょ。それよりも登録をしに来たのに邪魔をしないでください。ああ、そうだエルザさん」

 悪態をついてきそうだったラリーさんに告げてエルザさんに向き直す。
 目立ってしまったついでにエルザさんの呪いも解いてあげよう。

「のろいってことは刻印がされていますよね」

 呪術の多くは血による刻印がされるはず、それを無くしてしまえば解けるはずなんだよな。これも前世の記憶だけどどうだろうか?

「は、はい。首の裏に……」

 長い髪を持ち上げて首筋を見せてくれるエルザさん。綺麗すぎて色気が凄いな。流石は宝石と言われたエルフさんだ。

「じゃあ……。はい! これで解けました」

「は? そんな簡単なものじゃ……。マナが見える!?」

 どよどよ! エルザさんが驚いて声をあげるとギルドないがどよめきだした。
 血の刻印だから水気を帯びてるんだよね。水気があれば回収できるからすぐに治せるんだ。
 呪術って言っても血に頼っているところが多いから出来る荒業だ、火の印だったら僕でも治せなかったからよかったな。

「アクアス様。なんとお礼を言ったらいいか」

「別にいいんですよ。目立ってしまったからついでです。更についでで街道で倒した魔物の換金もしてくれますか?」

 街道で倒した多くの魔物も卸してしまおうとほぼほぼ投げやりにエルザさんに告げる。
 エルザさんは嬉しすぎて泣きそうな顔で頷いてくれた。

「じゃあ、ロードとキングをとりあえず」

「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」

 受付の前に出すとギルド内の声が重なる。苦しそうにしてたラリーが無理して声を出すものだからせき込んでるよ。

「こ、これをアクアス様が?」

「はい。街道を通ったんですけど群れに襲われて。仕方なく始末したんですよ。これ以外にも三千以上のコボルトが入ってます」

「マジックバッグにも驚きましたが……」

 エルザさんの声のあと、さっきとは打って変わって静寂がギルドを支配した。

「ん? 騒がしいと思ったら葬式でもしてるのか?」

 しばらく、みんなの様子を見ていると奥の部屋からめんどくさそうに頭を掻いた無精ひげの男の人が現れた。この人はなんだか強そうだな。

「ま、マスター。異常事態です」

「ほう? コボルトキングとロードか。これはなかなか……。まあ、あのマナを自由に使えるなら納得か」

 隣の受付にいた男性がマスターに声をかけるとマスターと目が合った。
 マナが見えてるみたいだからやっぱり強いのかもしれない。

「エルザ君の呪いを解いてラリーさんを寄せ付けなかったんです」

「ほう、それはそれは。で? ランクはいくつだ坊主」

「えっと、マスター。アクアス様は今日が初めてで」

「なに!?」

 受付係の男性とエルザさんの報告に驚きを隠せないマスター。
 顎に手を当てたマスターはニヤッと笑って、

「街道に現れた魔物の群れが一夜にしていなくなったと報告があったがそれを倒したのはお前ってわけか。俺はレッドオットのギルドマスター、グラーフだ。よろしくな」

「こちらこそお願いします」

 握手を求めてきたので応えると強く手を握ってきた。ギリギリと強くなっていく握力。僕はすぐに力をこめる。

「ほう、マナで筋力をあげることも出来るのか」

 周りに控えてるマナを手に集める。マナを集めるのは精霊の専売特許だ。

「俺の負けだな。とりあえずは」

 その様子を見たグラーフさんはすぐに負けを認めて手を離してくれた。
 様子を見ているギルドの人達はみんな口が開きっぱなしだ。

「おいおい、あいつマスターにも勝っちまったぞ」

「Sランクの【剛腕のグラーフ】に握力で勝っちまうとはな」

 しきりに周りからそんな内容のつぶやきが聞こえてくる。
 Aランクのラリーを従えてるんだからマスターはSに決まってるか。

「よし。地下の解体場に卸してくれ。ここじゃ、この二体でもいっぱいになっちまう」

 グラーフさんはそういって地下へと案内してくれる。
 エルザさんもついてきてくれてるんだけど、なんかすごい視線を感じるな~。
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