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第一章

第13話 収穫

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 キィ~とサルのような鳴き声をあげながら山を登っていくクイーン。俺から見えないところへと逃げようとしているみたいだ。
 オウルに先回りさせて足を止めさせて長銃を撃ちこむ。四発撃ちこむとクイーンの動きが止まる。

「ゴーレム!」
「ゴッ!」

 最後の一撃をゴーレムに任せてクイーンの頭が陥没した。
 クイーンは強いと思っていたがチャンピオンよりも弱く感じたな。

「よし。帰ろう。今度はちゃんとみんなと一緒に帰ろう。あんな騒ぎになるのも目立っちゃうからな」

 さあ、帰ろうと無限収納を召喚してクイーンの死骸をしまおうとすると、異変に気付く。

「あれ? 膨らんでいたと思ったんだけどな……」

 クイーンの死骸はお腹が小さくなっていた。
 今にも子供を産みそうだったんだけどな。

「ピィー!」
「オウル?」

 クイーンをしまうと空で旋回するオウルが警戒するような声をあげる。その瞬間、俺は木に叩きつけられた。

「グルルル!」
「こいつ!?」

 大きな手で木へと押し付けてくる魔物。緑色の体躯で体がチャンピオンよりも大きい。こいつはなんなんだ。

「離せ! 【セイントバレット】」

 顔を押し付けてきている手を無理やり剥がして聖属性の魔弾を手から放つ。合わせて長銃も撃ちつけると血を流して後退していく。

「グルルル」
「不意な攻撃だったからびっくりしたが勝てるな」

 ダメージを負った体を抑える巨体のゴブリン。これは何度か見たバーサーカーになるための行動だな。

「グルァァァ!」

 思った通りバーサーカー化をして息が荒くなって正面から襲い掛かってくる。速度はチャンピオンよりも早かったが、ステータスをあげた今では簡単に躱せる速度だ。

「長銃じゃいくら当てても死なないか。それなら!」

 長銃を帰還させて、それよりも威力のある物を召喚。

「【アンチマテリアルライフル召喚】」

 がっちりとした恐竜も撃ち殺せるほどの巨銃。俺の腕よりも大きな砲身、これなら一発で仕留められるだろう。

「グル!? キィキィ!」
「な! 逃げるつもりか! させるかよ!」

 俺以外があんなものに会ったら瞬殺される。今ここで始末しないと大変なことになる。

「敵を追尾せよ、【オートマーカー】」

 ドンッ!
 追尾する魔法をかけてアンチマテリアルライフルを放つ。
 銃とは思えないほどの重厚な音を放った。そして、森を疾走する巨体のゴブリンへと追尾していく。
 木々をなぎ倒して追尾する弾がゴブリンの頭を撃ちぬいた。

「……威力が強すぎだ」

 撃ちぬいたゴブリンを見ると首と頭がなくなっていた。
 なぎ倒した木々もボーリング玉が通ったかのように撃ちぬかれてる。
 これは市街地では使えなさそうだな。

「クイーンから生まれてたってことだよな……一日で戦えるようになるって間違った情報だったのか?」

 色々と考えながら死骸をしまう。結局名前はわからなかったな。
 まあ、ワダさんに頼んで調べてもらおう。

「しかし、結構マナの結晶と魔力を使っちゃったな。残り20ってところか」

 残りのマナの結晶を取り出してみてみる。戦果は上々だけど、こんなにマナの結晶を使っていたら一日一回しかクエストが出来ない。これじゃ思ったよりも稼ぎは良くないかもな。

「って、こんなレアな魔物と会ってばかりいるからなんだよな。これって俺の幸運のステータスがそうしているのかな……。デスグローブの時も亜種ってことで炎の吐けない個体だったし。前回の時に今回のクイーン達に会っていたら死んでいただろうしな」

 死骸をしまい込んで呟く。
 たぶん、言っていることは会っているだろうな。これも巫女様のお祈りのおかげかな。本当に感謝いたしますアユナ様。

「ああ!? タチカワッチ~」
「うわっ! ウルハさん」

 トラックに戻るとみんなオロオロしながら山の方向を見ていてこっちに気づくとみんな走ってきてウルハさんが抱き着いてきた。
 戸惑っていると交代でアダチさんにもハグをされて結局みんなにハグされた。

「大丈夫だったんですか?」
「あ、はい。死骸はあそこに」

 無限収納を持っているなんてバレたらフジノちゃんに悪いので見えないところまで持ってきて出して置いた。あのイレギュラーの大きなゴブリンは収納に入れておいた。
 流石にあれを倒したとなったら騒ぎになるからね。デスグローブを倒したことも黙っていてくれているワダさんに頼むしかない。

「キリサキのチームメンバーは?」

 キリサキは俺達の目の前で死んだ。チームメンバーはバインドを解いたから逃げているはずだ。

「安心してくれ。あいつらも救出した」
「まあ、戻っても刑務所送りだけどね」

 クエスト区画というのは一般人が避難してる。その中で起きたことは口外しない限りは表に出ない。
 そのため、こういった行為も横行しているのが現状だ。
 現代では考えられなかった盗賊のような連中もいるくらいだからな。まったく、魔物の相手だけでも大変だっていうのに……。

「ん、とりあえず無事でよかった」
「本当にありがとうございましたタチカワさん……」

 右手と左手をワサキさんとフジノちゃんに握られた。なんだか恥ずかしいがみんな無事でよかった。

「ワサキッチがしゃべりすぎなんだけど……」
「これはひょっとして?」

 その様子を見ていたウルハさんとツルヤさんがニヤニヤして呟いている。何がひょっとしてなんだ?
 気になりつつもフジノちゃんにクイーンの死骸をしまってもらって帰還する。
 あの大乱戦でフジノちゃんにもいくらか敵をたおさせたので3レベルも上がった。
 ステータスはそれほど上がらなかったみたいだな。
 普通はステータスをあげるのがこんなにも難しいんだな。本当に厳しい世界だ。
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