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第一章

第11話 ゴブリンチャンピオン

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 ゴブリンチャンピオンを見据えているとアダチさん達が群がるゴブリンを蹴散らしているのが見えた。
 チャンピオンがそちらに行く前にゴーレムをチャンピオンにぶつける。

「グルァ!」

 大きな斧を振り回すチャンピオン。怖気つかずに近づくアダチさんにエガワさん達が続く。俺達も臆せずに後ろにつく。

「グルァ!」

 斧の一振りでゴーレムが粉砕される。ゴーレムはCランクの魔物に分類されている。ということは単純にCランク以上の魔物というのがわかる。

「流石はAランクといったところか……、みんな続けよ」
「カオルちゃんはテントにいてね」
「は、はい。皆さん頑張ってください」
「おうよ。フジノちゃんの応援で元気りんりんだ!」

 ゴブリンのテントの中にフジノちゃんを置いていく。非戦闘員のフジノちゃんにチャンピオンとの戦闘は危ないからな。

「【ゴーレム召喚】」

 再度、ゴーレムを召喚して、うっすらとみんなが驚くのを楽しんでチャンピオンへと歩みを進ませる。

「グルァ!」
 
 ゴーレムが接敵するとチャンピオンが再度ゴーレムへと斧を振り下ろした。がっちりとガードさせるとそのまま抱き着かせる。

「今です!」
「了解!」

 脇の下に抱き着かれているチャンピオンは何もできない。これで好きなように攻撃できる。

「切れる切れる!」
「行けるぞ」

 足や体を刻んでいくとチャンピオンが見悶えていく。
 そのまま倒せると思った矢先、ゴーレムの腕が限界で崩れていく。
 動けるようになったチャンピオンはデスグローブのように血を体中に塗りだして咆哮をあげた。

「バーサーカーだ! 筋力が上がるぞ」

 アダチさんがそういうとみんな彼の背後に陣形をとる。

「【ゴーレム召喚】【オウル召喚】」
「「「「「!?」」」」」

 そんな中、再度ゴーレムを召喚して、新たにフクロウの魔物を召喚した。みんな驚いて振り返った。

「タチカワッチ半端ないし」
「俺達の常識じゃ測れないな……」
「うんうん」
「ワサキが声を出した!」
「それだけ同意ってことだな」
「うん」

 驚きすぎて日ごろしゃべらないワサキさんが頷きながら声をあげてる。魔法を使うたんびにこれじゃみんなもつかれちゃうな。

「空から攻撃させますのでその隙をつきましょう」
「了解だ!」

 再度、ゴーレムで攻撃させて、オウルも一緒に攻撃させる。
 空へ注意を向けさせるだけでだいぶ戦いにくくなるはずだ。

「くらえ!」
「はっ!」

 斧を振り回してくる中、無防備な個所を攻撃する。攻撃も出来ると思われるともっと驚かれるので俺は待機だ。
 
「グルァァァ!」
「ぐわっ」
「アダチさん!」
「あ、足を……」

 アダチさんがフルスイングの斧をガードしたら吹き飛ばされて岩に激突した。体は大丈夫そうだけど、足が明後日の方向を向いてる。
 鎧は前方の防御力は高いんだが、どうしても背後の部分が薄いんだよな。

「すぐに回復させます。マナよ。癒せ」
「!?」
「タチカワッチ半端なさすぎ」
「いったいいくつの魔法を使えるんです……」

 折れた足を治して戦闘再開。驚かれながらもすぐに気持ちを入れ替えられるアダチさん達は流石プロと言った感じだな。

「グルァァァァァァ……」

 ドスンッと倒れたチャンピオン。血を流しすぎていたから時間の問題だと思っていたがやっとこと切れたようだ。
 みんな、ふぅとため息をついて座り込む。
 ゴブリンが襲ってこないように俺はオウルとゴーレムに周りを警戒させる。

「は~。まさか、ゴブリン退治でチャンピオンにあうとはね~」
「強い個体がいるという情報はなかったんだがな」

 ウルハさんとアダチさんが声をもらす。

「でも、これで一億くらいになるよ。ゴブリンもこれだけ狩ったら相当な額いくかも」
「……ダメだと思う」
「え? 何か言ったワサキッチ?」

 いつもしゃべらないワサキさんがウルハさんの言葉を否定した。何が駄目なんだ?

「チャンピオンはタチカワさんのもの……」
「あ、そうか……ワサキッチの言う通りだね」

 ダメってそういうことか、ワサキさんは俺への報酬を考えていたんだな。だけど、これはみんなで戦って得たものだから。

「全員で分けましょ。それがチームでしょ」
「でも……」
「ワサキッチって結構そういうの気にするんだね」
「ん……」
「こんなに意見を言ってくるなんて珍しいな」

 全員でわけあったほうがわだかまりもないだろうし、俺は構わないんだけどな。
 だってデスグローブの報酬がいっぱいあるからね。
 まあ、ワサキさんの言いたいことも分かる。彼女はとっても優しいってこともね。

「じゃあ、こうしましょう。俺を正式にチームに入れてください。あと妹もね」
「妹?」
「ああ、【エラー】の治った妹がもしも、選定者になっていたらね」
「チームになるのにお金はいらない……」
「はは、じゃあ、ワサキさんもみんなも僕らと友達になってくださいよ」
「え?」

 ワサキさんに握手を求めて告げる。

「俺って今までポーターでハンターの友達はいなかったんですよね」

 普通の友達もいないけどね。

「とも、だち……」
「そうそう」
「でも、友達になるのもお金はいらないよ……」

 まあ、そうだよな。そうなんだけど……

「アダチさん達が良くしてくれて、救われたんだよね。俺もハンターになれるんだってさ。そのお礼だよ」
「……」

 言葉を聞いて俯いて考え込む。
 ワサキさんは結構しっかり者だな。無口だからわからなかったけどね。

「わかった。みんなで分ける」
「よかった」
「……いつか返せるようにする」
「はは、返すって……」

 握手するとワサキさんは顔を赤くして俯いた。
 返すって別に借りではないと思うけどな。

「よかったよかった。ワサキッチもよくおれてくれました~。よしよし」
「子供じゃない……」

 ウルハさんが彼女の頭を撫でてる。彼女は少しムスッとしてしまっているよ。

「ははは。ん? そういえば、フジノ君は?」

 ん、そういえば、テントに隠れていたフジノちゃんの姿が見えない。

「くっくっく。ご苦労さん」
「皆さん……」

 あたりを見回しているとフジノちゃんにナイフを突きつけたキリサキとそのチームメイトが現れた。
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