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第12話
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「船を運んだ帰りでもいいですし、一度こちらに来てからでもいいですよ」
ベラトンは僕の能力を高く評価してるみたい。船を運べるのは想定の範囲内だったってことだもんね。
「アズが船を入れられたってことはあの船を持てるってこと。だから、ドラゴンくらいは倒せると思ってるんだな」
クレハさんが呟く。
そうか、マジックバッグに入れられたってことは持てないと入れられない。
入れてしまった僕はあの船を持てるだけの力を持っているってことになっちゃうんだ。マジ・苦バッグのおかげでレベルとステータスが上がってしまった結果なんだけど、見せてしまったのなら仕方ないな。
双子を助けないわけにもいかないしね。
「わかったよ」
「そうですか!」
「ただし」
ドラゴンを倒せるかはわからない。だけど今の条件だけじゃ不十分なので一つ条件を示す。
「これから奴隷を大切に扱うこと。この子達のような子を見かけたらただじゃおかない」
ベラトンを睨んでから双子を微笑んで見つめる。こんな可愛らしい子供を放置して汚すなんて、決して許されることじゃない。
「ふふふ、お優しい。私はてっきり、奴隷になれと言ってくるのかと思いましたよ」
「は?」
なんでベラトンを奴隷にしないといけないんだ? 何も得がないと思うけどな。
「わかりました。私も男です。その約束は違えません」
ベラトンが握手を求めてきた。僕が答えると腕を引っ張られて耳元で口を開いた。
「その優しさですべてを救ってください」
「え?」
「ふふ、何でもありませんよ。アズ君。では皆さん、また会いましょう」
小声だったけど、確かにベラトンの言葉は聞こえた。
なんでやつがそんなことを言うのかわからずに聞き返したけど、笑われただけ。言葉が本当ならあいつは悪い奴ではない?
「師匠~?」
「何を言われたの?」
唖然としていると二人が心配そうに近づいて聞いてきた。
首を横に振ってこたえると首を傾げてる。
双子は僕に近づいてきて、手を握ってきた。
柔らかな手が僕の手を包んでくれる。不安になっている僕の気持ちを汲んでくれたのかな。優しい子達だな。
「この子達の名前はどうするの?」
「あ、そういえばベラトンに聞いておきたかったんだ。この子達の出生とかを」
どこの何ちゃんなのかわからないと親御さんに届けることもできない。名前ももちろんわからないから勝手につけるのも……。
「呼び名がこの子達じゃ、これから面倒よね。だから私達でつけないと」
「ん~。仕方ないね」
僕らの話を聞いて双子は首を傾げるばかり。まだまだ話が通じる兆しはない。
とりあえず町を出て、街道を歩きながらの名前を考えることにした。
「女の子と男の子の名前だよね~」
「ポピンは考えなくて大丈夫!」
「え~。なんでよ~クレハ~」
「私だってそうだよ。ここはアズに任せるのが正解だと思うの」
街道を歩きながらクレハさんと言い合いになるポピンちゃん。その様子を指を咥えながら見ている双子は何を言いあっているのか二人で考えてるみたいだな。
子供は真似をして成長するって聞いたことがあるけど、ポピンちゃんの真似はあまりよくないな。
「ん~。名前がないと不便だもんな~。仕方ない」
二人に促されて考える。
青い毛並みの狼さん。狼の獣人は月夜に力が強くなるっていう迷信があるんだよな。
お月様に関係する名前の方が良いかな。いやいや、僕はそんなに器用なことはできない。無難なところでつけよう。
「男の子がルルで女の子がナナ。どうかな?」
「る、ル?」
「な、ナ?」
「そうだよ。今日からそれが二人の名前さ」
同じ言葉で可愛らしい名前。二人にぴったりだと思うんだよね。双子は僕の意図を察して呟いてる。
どうやら、言葉の意味が少しずつわかってきているみたいだな。
聡い子達だよ。
「ルルちゃん。可愛いよ~」
「ナナちゃんも!」
クレハさんとポピンちゃんが二人を抱きしめる。
双子もにっこりと微笑んで尻尾をブンブン振って喜んでくれた。
名前を付けて目的地に向かって街道を進む。
双子は奴隷生活が長かったにしては人に怯える様子はない。もしかしたら放置されたのは今回が初めてなのかもしれないな。
僕らにもすぐに懐いていたし、野営をする時も進んで僕らの横で寝てくれているしね。
虐待されていたら普通、僕らを避けてくるはずなんだけど。
いくらか魔物との戦闘になったけど、街道のため数は少なかった。
戦えるのは僕だけなので心配していたけど、何とかなりました。船の重さがなくなったわけじゃないのに結構それらしい動きが出来たな~。
ポピンちゃんも冒険者だから剣と盾を持ってるみたいだけど、サイズが合わないものを持っているだけ。使えるというよりも持てると言ったほうがいいかもしれない。
クレハさんが代わりに持ってゴブリンの攻撃を防いでいたので彼女の方が筋がいいね。少し時間を稼いでくれればすぐに加勢に行けるので余裕はあったかな。
そんなこんなで一週間かけて故郷に帰ってこれた。穏やかな湖ウンディーネ湖のふもとの村、ディーネ村だ。
ベラトンは僕の能力を高く評価してるみたい。船を運べるのは想定の範囲内だったってことだもんね。
「アズが船を入れられたってことはあの船を持てるってこと。だから、ドラゴンくらいは倒せると思ってるんだな」
クレハさんが呟く。
そうか、マジックバッグに入れられたってことは持てないと入れられない。
入れてしまった僕はあの船を持てるだけの力を持っているってことになっちゃうんだ。マジ・苦バッグのおかげでレベルとステータスが上がってしまった結果なんだけど、見せてしまったのなら仕方ないな。
双子を助けないわけにもいかないしね。
「わかったよ」
「そうですか!」
「ただし」
ドラゴンを倒せるかはわからない。だけど今の条件だけじゃ不十分なので一つ条件を示す。
「これから奴隷を大切に扱うこと。この子達のような子を見かけたらただじゃおかない」
ベラトンを睨んでから双子を微笑んで見つめる。こんな可愛らしい子供を放置して汚すなんて、決して許されることじゃない。
「ふふふ、お優しい。私はてっきり、奴隷になれと言ってくるのかと思いましたよ」
「は?」
なんでベラトンを奴隷にしないといけないんだ? 何も得がないと思うけどな。
「わかりました。私も男です。その約束は違えません」
ベラトンが握手を求めてきた。僕が答えると腕を引っ張られて耳元で口を開いた。
「その優しさですべてを救ってください」
「え?」
「ふふ、何でもありませんよ。アズ君。では皆さん、また会いましょう」
小声だったけど、確かにベラトンの言葉は聞こえた。
なんでやつがそんなことを言うのかわからずに聞き返したけど、笑われただけ。言葉が本当ならあいつは悪い奴ではない?
「師匠~?」
「何を言われたの?」
唖然としていると二人が心配そうに近づいて聞いてきた。
首を横に振ってこたえると首を傾げてる。
双子は僕に近づいてきて、手を握ってきた。
柔らかな手が僕の手を包んでくれる。不安になっている僕の気持ちを汲んでくれたのかな。優しい子達だな。
「この子達の名前はどうするの?」
「あ、そういえばベラトンに聞いておきたかったんだ。この子達の出生とかを」
どこの何ちゃんなのかわからないと親御さんに届けることもできない。名前ももちろんわからないから勝手につけるのも……。
「呼び名がこの子達じゃ、これから面倒よね。だから私達でつけないと」
「ん~。仕方ないね」
僕らの話を聞いて双子は首を傾げるばかり。まだまだ話が通じる兆しはない。
とりあえず町を出て、街道を歩きながらの名前を考えることにした。
「女の子と男の子の名前だよね~」
「ポピンは考えなくて大丈夫!」
「え~。なんでよ~クレハ~」
「私だってそうだよ。ここはアズに任せるのが正解だと思うの」
街道を歩きながらクレハさんと言い合いになるポピンちゃん。その様子を指を咥えながら見ている双子は何を言いあっているのか二人で考えてるみたいだな。
子供は真似をして成長するって聞いたことがあるけど、ポピンちゃんの真似はあまりよくないな。
「ん~。名前がないと不便だもんな~。仕方ない」
二人に促されて考える。
青い毛並みの狼さん。狼の獣人は月夜に力が強くなるっていう迷信があるんだよな。
お月様に関係する名前の方が良いかな。いやいや、僕はそんなに器用なことはできない。無難なところでつけよう。
「男の子がルルで女の子がナナ。どうかな?」
「る、ル?」
「な、ナ?」
「そうだよ。今日からそれが二人の名前さ」
同じ言葉で可愛らしい名前。二人にぴったりだと思うんだよね。双子は僕の意図を察して呟いてる。
どうやら、言葉の意味が少しずつわかってきているみたいだな。
聡い子達だよ。
「ルルちゃん。可愛いよ~」
「ナナちゃんも!」
クレハさんとポピンちゃんが二人を抱きしめる。
双子もにっこりと微笑んで尻尾をブンブン振って喜んでくれた。
名前を付けて目的地に向かって街道を進む。
双子は奴隷生活が長かったにしては人に怯える様子はない。もしかしたら放置されたのは今回が初めてなのかもしれないな。
僕らにもすぐに懐いていたし、野営をする時も進んで僕らの横で寝てくれているしね。
虐待されていたら普通、僕らを避けてくるはずなんだけど。
いくらか魔物との戦闘になったけど、街道のため数は少なかった。
戦えるのは僕だけなので心配していたけど、何とかなりました。船の重さがなくなったわけじゃないのに結構それらしい動きが出来たな~。
ポピンちゃんも冒険者だから剣と盾を持ってるみたいだけど、サイズが合わないものを持っているだけ。使えるというよりも持てると言ったほうがいいかもしれない。
クレハさんが代わりに持ってゴブリンの攻撃を防いでいたので彼女の方が筋がいいね。少し時間を稼いでくれればすぐに加勢に行けるので余裕はあったかな。
そんなこんなで一週間かけて故郷に帰ってこれた。穏やかな湖ウンディーネ湖のふもとの村、ディーネ村だ。
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