上 下
99 / 113
第3章 ルインズ

第6話 オラストロ再び

しおりを挟む
 ポートミルトを出て雪原を走っていく。
 街道には街灯が点々としていて雪の多い土地ならではの整備がされていた。
 雪が積もっているから普通の馬車は進みづらいだろうな。
 うちの馬車はトラが引いているから雪が蒸発して難なく進めてるぞ。
 
 他の馬車を見ると複数の馬に普通の馬車を引かせているな。パワーでもトラの方が上だから圧倒的だな。

「お~い。そこの従魔の馬車~。助けてくれ~」

 悠々と雪道を進んでいると前方で止まっていた馬車に引き止められた。
 雪に足を取られてしまったみたいだ。旅は道連れ世は情けっていうからな、助けてやろう。

「いや~助かったよ。ありがとう。これから王都にいくのかい?」

「はい」

「そうか、それならオラストロの兵士達に注意したほうがいい」

 ん? オラストロ? こんなところにいるのか?

「エスラル様が死去して、世継ぎが欲しいオールデア様が姫様のアルフレイティア様を引き戻して、オラストロの王子と結婚させるらしいんだ。それでオラストロの奴らが来ているんだ」

「アルフレイティア?」

 世継ぎってことはエスラルって人が男の子だったんだろうな。
 それで娘であるアルフレイティアをどこかからか戻して
きた……。アルフレドは男だよな、ってことは関係ないよな。それにしても名前が似すぎているような気がするが。

「注意したほうがいいっていうのは?」

「知らないのか? オラストロの素行を。やつら通る馬車全部、中身を検査っていって強奪していくんだよ。これから仲間になるはずの国の民なのにだ。噂通りの蛮族だよ」

 あらあら、オラストロはダメだって色々と言われていたけど、ここまで酷いのか。

「じゃあ気をつけていきます。忠告ありがとうございました」

「おう、気をつけてな~」

 馬車を助けて王都へと馬車を走らせた。おじさんはポートミルトへ行くみたいだ。
 いろいろと情報は得られた。オラストロならぴったりな装備を持ってる。役に立ってくれるだろう。
 しかし、こんな遠くに来たのにオラストロと会うとはな~、もう会わないと思っていたけど、世界は狭いというからこちらの世界も狭いのかもな。

「お父さん。オラストロって?」

「あ~、迫害とか普通にする国なんだ。まあ、ルキアは知らなくて大丈夫」

「そうなの?」

 純粋なルキアには悪影響を与えそうなのでごまかしておこう。
 アスベルは結構知っているみたいで頷いてるよ。
 まったく、オラストロはろくでもないな。数日しか一緒にいなかったがしょっぱな罪のない人を殺そうとしてたからな。一生会わないと思っていたけど、こんなところで再会することになるとはな。

 しばらく馬車を走らせていると助けた馬車の忠告通り、関所のように馬車が左右に泊まっていた。案の定止められる。

「止まれ! 積み荷を検査する……。隊長!?」

 そう、俺はお前たちの隊長だ。
 すでにオラストロの服は手に入れている。そうそうに【オラストロ騎士隊長の服】に着替えておいた。
 あの時ははっきりと効果はわからなかったが推測で理解はしていた。
 今回ではっきりとした効果がわかったな。
 やはり、服チートで得た組織の制服の類は認識をおかしくしてくれるようだ。隠密し放題決定だ。

「俺の歩みを止めるのか?」

「し、失礼しました。お通りください」

「何を言っている。先導しろ。民を煩わせるな」

「は、しかし、王子の命で……」

「王子の?」

 なんてこった。流石に隊長じゃ王子の命には勝てないか? しかし、この場では一番位が大きい。力押しするか。

「では一度王子と話そう。ルインズへ戻るぞ。先導しろ」

「はっ!」

 とりあえず、一般の人達への被害をなくそう。
 
「民から奪ったものはちゃんと返すように!」

「えっ! ですがどれが誰のか……」

「反論するのか?」

 パワハラ上司のように圧をかけると兵士達の顔が青ざめていく。この世の終わりかのようだ。
 そんなに知らない人からものを奪ったのか……まったく、本当に救いようのない……。

「出来ないのであればこれ以上するのは禁ずる。先導しろ」

「は、はい!」

 流石に可哀そうになってきたのでこれ以上しないように言うことにした。
 命令されてやっていたのなら致し方ない。社畜というか国畜のこの人達は命令に従うしかない立場の人だからな。
 中には楽しんでやってるやつもいるだろうけど、いいやつもいるはずだ。マイサさんと料理した時も気さくに話すやつもいたしな。
 
 オラストロ騎士隊長の服の効果で先導させた兵士達に追従して王都へと無事たどり着いた。
 雪原に白い城壁の城。日差しが眩しく跳ね返りそうな城だな。

「こちらの従魔たちは隊長の?」

「そうだが? 悪いか?」

「いえ! 決してそんなことは」

 馬車から降りてルキアを下ろしていると一人の兵士が聞いてきた。
 少し目が輝いているように思えるがとりあえず、威圧しておいた。

「タツミ兄さん。父さんを探さないと」

「ああ、そうだったな。おまえ、ウルフマンを見なかったか?」

 アスベルに言われて思い出す。アルフレドの伝手はまだわからないからな。とりあえず、アスベルの父が先だ。

「ウルフマンですか? 王城へ入って行くのを見ましたけど」

「王城?」

 アスベルの父かは分からないが、王城にウルフマンがいるようだ。
 このまま、入って行って大丈夫だろうか?

「隊長こちらです」

「あ、ああ」

 心配していてもこの状況で町の中へと行くことはできなさそうだ。案内されるまま、城の中へと連れていかれた。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

エルティモエルフォ ―最後のエルフ―

ポリ 外丸
ファンタジー
 普通の高校生、松田啓18歳が、夏休みに海で溺れていた少年を救って命を落としてしまう。  海の底に沈んで死んだはずの啓が、次に意識を取り戻した時には小さな少年に転生していた。  その少年の記憶を呼び起こすと、どうやらここは異世界のようだ。  もう一度もらった命。  啓は生き抜くことを第一に考え、今いる地で1人生活を始めた。  前世の知識を持った生き残りエルフの気まぐれ人生物語り。 ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバ、ツギクルにも載せています

処理中です...