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第3章 ルインズ

第5話 アルフレイティア・ルインズ

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「ふんっふっふ~ん。あんたら! ごはんの時間だよ~。おきな~」

 マイサさんと話した後。すぐに俺達は眠りについた。
 朝になると鼻歌交じりにクレイさんが俺達を起こしに来た。
 ダイロさんとは会えたみたいだな。よかったよかった。

「ダイロから伝言を受けたよ。『口の軽い奴は嫌われるぞ』って言っていたわよ」

「ははは、そうですか……」

 起きて食堂に行くとクレイさんがご機嫌に話してきた。
 口が軽いってダイロさん。オーガのようなまなざしで睨まれたら誰でも口を開いてしまいますよ。
 帰る時にちゃんと弁明しないと何を言われるかわからないな。

「お父さん。怒られるの?」

「ははは、そうだな~。怒るし、怒られるかな」

 ルキアの疑問に正直に答えるダイロさんにも言うことはあるし、言われても仕方ないこともある。
 確かに居場所をしゃべってしまったのは悪いことをしてしまったかなって思ってるさ。
 そこは甘んじて受けようじゃないか。

「それでちゃんとダイロさんとは話したんですか?」

「ああ、そこはぬかりないよ。久しぶりに会って熱いベッドを共にしたよ。約束はちゃんと守らないとね~。男ってやつはいざとなるとてんでダメだからね」

 ぐぬぬ、なぜかクレイさんの言葉が胸に刺さる。
 しかし、あのダイロさんと……女性の趣味はよくわからないな。

「タツミさんおはようございます」

 話し込んでいるとマイサさんとジュダインさん達が降りてきた。
 挨拶に答えると一緒の机に集まって椅子に座った。
 一緒に朝食を食べながらこの後の予定を話し込む。
 その間、隣に座ったマイサさんが俺の足をつねってきている。心当たりはあるけど、痛いのでやめてもらいたい。

「じゃあ、用が済んだらシーラインの教会に戻るんですね」

「そうですね。急用で居なくなっちゃったので心配なんですよ」

 マイサさんはこの後のことを聞いてきたので正直に答える。
 アルフレドのことは色々ときな臭いので話すのはやめておいた。平和に暮らしている彼らを危険な目に合わせるのは違うと思うからね。

「じゃ、私たちは行きますね。(今度は逃げないでくださいね)」

「ははは、また……」

 朝食を終えるとすぐにマイサさんは旅立っていった。
 マイサさんの小声に苦笑い。別に俺は逃げたわけではないけども。

「じゃあ俺達も行きますか」

「は~い」

「はい!」

「ガウ」

「キャンキャン!」

 俺達も出発だというとルキアを筆頭に答えた。
 アスベルとトラは気合が入っていていい返事だ。

『あんたらは馬がいなくても熊とシカがいるからいいんだよな』

 これは今朝のクレイさんの言葉、クレイさんは俺達用の馬車を用意してくれてたんだ。彼女の部下もダイロさんの部下と同じように優秀だから仕事が早い早い。大変助かる。

「馬用だけどしっかりとつけられるな」

 馬用の鞍だけどトラにぴったりくっついた。鞍を馬車とくっつけると準備万端だ。

「帰り、余裕があったらまた泊まりにおいで。今度はゆっくりとポートミルトを観光するといいよ」

「はい、ありがとうございましたクレイさん」

 準備も終わったので本当に出発だ。
 クレイさんにお礼を言って旅立つ。みんなで手を振って門へと向かった。
 入ってきたときと同じ門番さんに応対してもらうと無事に門を越えることが出来た。持ち物も全部服チートにはいっているからな。何も持たないのかと怪しまれた程度だ。





「アルフレド様。そろそろ到着いたします」

「……」

 とうとう来ちゃった。僕の故郷、ルインズ王国。
 僕の名前はルインズ・アルフレド。ルインズの第一王子……。

 町について城に直接向かう馬車。一度も止まらずに城について僕は城へと案内された。

「お~、アルフレイティア。よくぞ戻ってまいった」

「お父様、やめてください! 僕は女を捨てたのです。僕の名前はアルフレド」

 長子として生まれてしまった僕だったけど、女というだけで城ではなくて離れに住むことになった。とても寒い思いをしたのを覚えてる。

「まだそのようなことを言っておるのか。何とも嘆かわしい」

 白髪の王様。僕のお父様の名はオールデア。
 オールデアは頭を抑えてため息をついている。
 今更父親面されても困る。お父様は女というだけで僕を遠ざけて弟のエスラルを可愛がっていた。
 そういえば、エスラルはどうしたんだろう? 玉座の間にはいないみたいだ。

「お父様、そんな話はいいんです。それよりも僕を呼びつけた理由を」

 苛立つ僕はお父様に疑問を投げかける。
 今まで何もしてこなかったお父様が今頃になって何を。

「弟であるエスラルを覚えておるか?」

「はい」

 お父様の言葉に僕は頷いてこたえる。
 するとより一層大きなため息をついて、

「殺されたのじゃ」

「え!」

 エスラルが殺された?

「そうじゃ。王妃のリステア。お前の母が殺したのじゃ!」

「お母様が!?」

 リステアお母様。このお城で唯一僕に優しくしてくれたお母様。
 離れにもよく来てくれて、エスラルと一緒に育ててくれた。
 そんな優しかったお母様がエスラルを殺した? なんだかおかしいな。

「リステアは幽閉しているがあの女はもうどうでもいい。問題は世継ぎじゃ。儂ももう長くはないからの」

 嫌な予感がする。

「そこでじゃ! オラストロからいい話が来ての~」

 やっぱり碌でもない話だった。
 世継ぎがいないから僕を王族と結婚させて継がせる。
 ああ、タツミさんは今頃孤児院で楽しく暮らしているかな? 最後に会いたかったな。
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