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第3章 ルインズ

第1話 すれ違い

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 道のない道を進んでいく。
 山を登ったほうが早そうだったので登っているんだ。
 アスベルは病み上がりなのでトラの背に乗せて、ルキアはサンの背に乗せた。
 俺はチートがあるので疲れないから普通に歩いている。まあ、トラが乗れって肩を顎で叩いてくるんだが、トラも進化したばかりだからな。甘えてもいられんよ。

「もう少しで頂上です」

 トラの背に乗って余裕の見えるアスベルが声をあげる。
 その声に反応してルキアを乗せたサンが駆け上っていった。
 頂上に先についたサンとルキアが手を振って迎える。

「あれがルインズ国の港町ポートミルトか」

 ダイロさんの知り合いがいて、助けてくれるはずだ。

「お父さん! 空から小さな雲が落ちてきた~」

「雲? ああ、雪か」

 寒くなってきたと思ったら雪が降ってきた。
 ルキアが嬉しそうに雪を見つめて取ろうとしている。
 雪を手で捕まえると手のひらを開いて確認しているがなくなっているのでまた捕まえようとしてる。ルキアはまだまだ子供だな。

「吹雪くことはないと思うけど急ぐか」

「は~い」

 更に寒くなっても困るので急ぐことにする。後は下るだけだから大丈夫だと思うんだけどな。

 山を下っていくと街道が見えた。街道には人の姿はなくて町ではない方向に馬車が見える。
 雪も強くなってきたのに街を出発する人がいるんだな。
 ポートミルトへと歩くと町への門が見えてきて入る人の列が見えた。
 みんなそれなりの防寒具を着ている。

「お父さん、アスベルお兄ちゃんこっち~」

「ガウガウ」

 列へと並ぶと少し寒くなってきて腕を擦る。アスベルも擦っているとルキアが声をあげた。
 ルキアを見るとサンとトラに挟まれて暖かそうにしてる。トラは角を隠しているがかなり立派になったから目立つ。まあ、元々サンとトラはかなり目立つからな。仕方ない。

「従魔使いか。今日は珍しい日だな」

 俺達の番になって門番が手招きをしてきた。ため息をついているけど俺達のほかにも何かあったのか?

「この子たちは全員従魔です」

「ああ、わかった」

「あの、珍しい日って?」

「ああ、すまないな。ウルフマンの従魔は二回目なんでな。高貴な御方だと思ったんだが。違うよな?」

 ん? ウルフマンを従魔にしているのは高貴なものなのか? 
 門番は俺が身分の高い人だと思ってため息をついたってことか。
 話してみて違うことに気づいてホッとしたのかもしれないな。

「タツミさん! ウルフマンって!」

 アスベルが何かに気づいたみたいで声をあげた。その声を聞いて俺はポンと手を叩いた。

「……ウルフマンっていつ見たんですか?」

「ん? 今さっきさ。馬車に乗った集団が街から出ていったんだがそいつらがな連れていたのさ。あんたと違って鎖につないでかなり酷使していたように見えたけどな」

 今さっき? ということは山を下ってきたときに見た馬車か!

「タツミさん! 父さんが! 俺行きます!」

「キャン!」

 アスベルが今にも飛び出しそうに声をあげるとトラが行かせまいと前に出た。
 雪もだんだんと強くなってる。今旅に出るのは危険だ。

「どいて!」

「アスベル。気持ちはわかるがダメだ。雪も強くなってる。今日はこの町で過ごそう」

「でも! 父さんが!」

「アスベルお兄ちゃん……」

 トラに止められてもアスベルは走りだそうとしてしまう。説得しようと声をかけるとルキアがアスベルの裾を掴んで引き止めてくれた。
 アスベルは涙で目を潤ませると頷いた。

 少なくともあの馬車にウルフマンが乗っていたってことはわかった。それがアスベルのお父さんかどうかわからないけど、アスベルは居ても立っても居られなかったんだろうな。

「大丈夫か?」

「あ、はい。ありがとうございます」

「はは、あんた従魔使いなのに従魔に優しいな。ようこそ、ポートミルトへ」

 心配してくれた兵士さんに肩を叩かれた。なんだか褒められたようで気恥ずかしい。

 街へと入れるようになった。
 別の街に行かないといけないっていうことはわかったから。
 馬車みたいな移動手段を手に入れないと、と考えていると。

「タツミさん! やっぱりタツミさんだ!」

 門をくぐると獣人のパーティーに声をかけられた。
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