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第二章 海へ

第三十九話+ 医者

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「ルキア!」

「お父さん・・」

 床で横たわるルキア。ルキアを抱き上げてすぐに礼拝堂に出しておいたベッドに寝かせる。

「お父さん熱い・・」

「凄い熱だ・・すぐに魔法を唱えるからな」

 俺はみんなに見られているのもお構いなしに僧侶の服に着替える。みんな驚いていたけどルキアが心配でそれどころじゃない様子だ。

「ヒール!キュア!」

 回復魔法を続けて唱える。ルキアは光に包まれたが一向に良くなる様子はない。

「なんでだ!」

 なんで治らないんだ、ルナさんはこれで治ったのに。

「タツミさん落ち着いてください」

「これが落ち着いてられますか?ルキアが苦しんでるんですよ」

「タツミさん痛い・・」

「あっすいません」

 焦りが怒りに変わってルナさんに当たってしまった。俺は申し訳ない気持ちでうつむいているとルキアが苦しそうな顔で俺のズボンを掴んだ。

「お父さん大丈夫だよ。すぐに良くなるから・・・」

「ルキア!」

 ルキアはそう言って目を瞑った。息が荒くて俺は見ていられない。

「お兄ちゃんルキアちゃん大丈夫?」

「・・・わからない」

 急に病状が悪化することはないと思うがなんでなったかがわからない。回復魔法で治らないのを見ると特殊な病気なのかとか色々考えてしまう。

「とりあえず街のお医者さんに」

「医者!それだ!」

 ルナさんの言葉にハッとしてルナさんの手を握り締めた。俺が医者の服を手に入れて診察すれば何でもわかるかもしれない。まだ憶測の段階だが、料理チートとかを鑑みるとあながち間違いでもないはずだ。

「医者はどこにいるんですか?」

「あっ、街の入り口の門にいるはずです」

「わかりました。すぐに行ってみます」

 俺は駆け足で門へと向かった。

「あっタツミさん、牛と豚を連れてきましたよ」

「アルフレドすまない。急ぎで医者を呼んでくるから頼む。教会にいるダングルフとシャリフって言うのがいるからそいつらに渡してくれ」

「えっ?あっはい・・・」

 アルフレドに早口で説明して、門に向かう。アルフレドは呆気にとられたという感じだが、ルナさん達と会えば色々わかるだろう。今はとにかく医者の服だ!

「キャン!」

「トラ、みんなの所で待っててくれ」

「キャンキャン」

「サンを置いてきたから大丈夫か・・わかった。正直、一人じゃ少し不安だった」

 トラの言葉はわからなかったがサンがついてきていないのを見て俺はそう思った。家族であるルキアがこんな事になってトラも居ても立っても居られなかったんだろう。

 トラの背に乗って自分の足よりも早く門に着いた。トラがいてくれてよかった。

「すいません。急患なんです!」

「あんたは確か、借金取りを捕まえた」

 衛兵さんに頭を下げてそう言うと衛兵さん達は俺を知っていた。カシムの件で有名になっていたようだ。

「急患ってどこにいるんだ?」

 大きな声で叫んだことで兵士詰め所の奥にいた無精ひげのおっさんが起きてきて声を上げた。

「急患はどこだと言っている」

「ああ、トラに乗ってくれ案内する」

 詰め寄ってきたおっさんに俺はトラの背を譲った。おっさんは戸惑いながらもトラの背に乗り込んでいく。その時に腕を取って乗せてあげたので服はゲットだ。正直、おっさんをトラの背に乗せたくなかったが仕方ない。というかこのおっさん、無精ひげから察するように何日も風呂に入っていないみたいだ。この世界でも医者はブラックなのかもしれん。

「おお、乗り心地はなかなか」

 トラの背に揺られておっさんは呑気に呟いた。トラは顔をゆがめながらも我慢して走っている。俺が臭いと感じるんだからトラはもっと感じるだろうな。鹿だからそういった能力も強いだろうし、暴れないトラを尊敬するぞ。

「孤児院か、しかし、いつの間にこんな大きな建物が?」

「そんなこといいから早く中へ」

「ああ、すまん」

 おっさんは孤児院の教会にびっくりしながらトラの背から降りた。唖然と声をもらすが俺の声に過敏に反応して、トラの背に乗せていたカバンを手に取って教会へと走っていった。

「ルキアは?」

「いま寝付きました。でも、熱が治まりません」

 ルキアの額には濡らした布がかけられている、ルナさんが看病してくれたみたいだ。しかし、ルキアは息が荒く、苦しそうにしている。

「おいおい、キャットマンか。従魔は専門外なんだが」

「それでも医者だろ?何かわからないか?」

「こんな可愛い子を見捨てる気はないよ」

 おっさんはカバンから眼鏡と聴診器を取り出した。この世界にも聴診器があるんだな、元の世界でいつ頃から聴診器があったか知らないが医療も発達しているんだな。

「回復魔法は?」

「やった。だけど、ダメだったんだ」

「ヒールとキュアか?」

「はい」

「そうか」

 おっさんはルキアの胸に聴診器を当てながら質問してくる。おっさんは魔法を使ったことをはじめから知っていたような返答だった。このおっさん凄腕か?

「次は背中を向けてくれ」

「はい」
 
 ルナさんがルキアの背をおっさんに向けた。ルキアが起きる様子はない。

「・・・・」

「どうなんだ?」

「音を聞いているんだから静かに」

「ああ、すまん」

 俺は取り乱しておっさんに質問してしまった。おっさんに怒られてシュンとしてしまう、ルキアを思うがあまりという事で許してくれ。




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申し訳ありません
投稿ミスで一話抜けていました
プラスとして投稿いたします;;
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