82 / 113
第二章 海へ
第三十九話+ 医者
しおりを挟む
「ルキア!」
「お父さん・・」
床で横たわるルキア。ルキアを抱き上げてすぐに礼拝堂に出しておいたベッドに寝かせる。
「お父さん熱い・・」
「凄い熱だ・・すぐに魔法を唱えるからな」
俺はみんなに見られているのもお構いなしに僧侶の服に着替える。みんな驚いていたけどルキアが心配でそれどころじゃない様子だ。
「ヒール!キュア!」
回復魔法を続けて唱える。ルキアは光に包まれたが一向に良くなる様子はない。
「なんでだ!」
なんで治らないんだ、ルナさんはこれで治ったのに。
「タツミさん落ち着いてください」
「これが落ち着いてられますか?ルキアが苦しんでるんですよ」
「タツミさん痛い・・」
「あっすいません」
焦りが怒りに変わってルナさんに当たってしまった。俺は申し訳ない気持ちでうつむいているとルキアが苦しそうな顔で俺のズボンを掴んだ。
「お父さん大丈夫だよ。すぐに良くなるから・・・」
「ルキア!」
ルキアはそう言って目を瞑った。息が荒くて俺は見ていられない。
「お兄ちゃんルキアちゃん大丈夫?」
「・・・わからない」
急に病状が悪化することはないと思うがなんでなったかがわからない。回復魔法で治らないのを見ると特殊な病気なのかとか色々考えてしまう。
「とりあえず街のお医者さんに」
「医者!それだ!」
ルナさんの言葉にハッとしてルナさんの手を握り締めた。俺が医者の服を手に入れて診察すれば何でもわかるかもしれない。まだ憶測の段階だが、料理チートとかを鑑みるとあながち間違いでもないはずだ。
「医者はどこにいるんですか?」
「あっ、街の入り口の門にいるはずです」
「わかりました。すぐに行ってみます」
俺は駆け足で門へと向かった。
「あっタツミさん、牛と豚を連れてきましたよ」
「アルフレドすまない。急ぎで医者を呼んでくるから頼む。教会にいるダングルフとシャリフって言うのがいるからそいつらに渡してくれ」
「えっ?あっはい・・・」
アルフレドに早口で説明して、門に向かう。アルフレドは呆気にとられたという感じだが、ルナさん達と会えば色々わかるだろう。今はとにかく医者の服だ!
「キャン!」
「トラ、みんなの所で待っててくれ」
「キャンキャン」
「サンを置いてきたから大丈夫か・・わかった。正直、一人じゃ少し不安だった」
トラの言葉はわからなかったがサンがついてきていないのを見て俺はそう思った。家族であるルキアがこんな事になってトラも居ても立っても居られなかったんだろう。
トラの背に乗って自分の足よりも早く門に着いた。トラがいてくれてよかった。
「すいません。急患なんです!」
「あんたは確か、借金取りを捕まえた」
衛兵さんに頭を下げてそう言うと衛兵さん達は俺を知っていた。カシムの件で有名になっていたようだ。
「急患ってどこにいるんだ?」
大きな声で叫んだことで兵士詰め所の奥にいた無精ひげのおっさんが起きてきて声を上げた。
「急患はどこだと言っている」
「ああ、トラに乗ってくれ案内する」
詰め寄ってきたおっさんに俺はトラの背を譲った。おっさんは戸惑いながらもトラの背に乗り込んでいく。その時に腕を取って乗せてあげたので服はゲットだ。正直、おっさんをトラの背に乗せたくなかったが仕方ない。というかこのおっさん、無精ひげから察するように何日も風呂に入っていないみたいだ。この世界でも医者はブラックなのかもしれん。
「おお、乗り心地はなかなか」
トラの背に揺られておっさんは呑気に呟いた。トラは顔をゆがめながらも我慢して走っている。俺が臭いと感じるんだからトラはもっと感じるだろうな。鹿だからそういった能力も強いだろうし、暴れないトラを尊敬するぞ。
「孤児院か、しかし、いつの間にこんな大きな建物が?」
「そんなこといいから早く中へ」
「ああ、すまん」
おっさんは孤児院の教会にびっくりしながらトラの背から降りた。唖然と声をもらすが俺の声に過敏に反応して、トラの背に乗せていたカバンを手に取って教会へと走っていった。
「ルキアは?」
「いま寝付きました。でも、熱が治まりません」
ルキアの額には濡らした布がかけられている、ルナさんが看病してくれたみたいだ。しかし、ルキアは息が荒く、苦しそうにしている。
「おいおい、キャットマンか。従魔は専門外なんだが」
「それでも医者だろ?何かわからないか?」
「こんな可愛い子を見捨てる気はないよ」
おっさんはカバンから眼鏡と聴診器を取り出した。この世界にも聴診器があるんだな、元の世界でいつ頃から聴診器があったか知らないが医療も発達しているんだな。
「回復魔法は?」
「やった。だけど、ダメだったんだ」
「ヒールとキュアか?」
「はい」
「そうか」
おっさんはルキアの胸に聴診器を当てながら質問してくる。おっさんは魔法を使ったことをはじめから知っていたような返答だった。このおっさん凄腕か?
「次は背中を向けてくれ」
「はい」
ルナさんがルキアの背をおっさんに向けた。ルキアが起きる様子はない。
「・・・・」
「どうなんだ?」
「音を聞いているんだから静かに」
「ああ、すまん」
俺は取り乱しておっさんに質問してしまった。おっさんに怒られてシュンとしてしまう、ルキアを思うがあまりという事で許してくれ。
ーーーーーー
申し訳ありません
投稿ミスで一話抜けていました
プラスとして投稿いたします;;
「お父さん・・」
床で横たわるルキア。ルキアを抱き上げてすぐに礼拝堂に出しておいたベッドに寝かせる。
「お父さん熱い・・」
「凄い熱だ・・すぐに魔法を唱えるからな」
俺はみんなに見られているのもお構いなしに僧侶の服に着替える。みんな驚いていたけどルキアが心配でそれどころじゃない様子だ。
「ヒール!キュア!」
回復魔法を続けて唱える。ルキアは光に包まれたが一向に良くなる様子はない。
「なんでだ!」
なんで治らないんだ、ルナさんはこれで治ったのに。
「タツミさん落ち着いてください」
「これが落ち着いてられますか?ルキアが苦しんでるんですよ」
「タツミさん痛い・・」
「あっすいません」
焦りが怒りに変わってルナさんに当たってしまった。俺は申し訳ない気持ちでうつむいているとルキアが苦しそうな顔で俺のズボンを掴んだ。
「お父さん大丈夫だよ。すぐに良くなるから・・・」
「ルキア!」
ルキアはそう言って目を瞑った。息が荒くて俺は見ていられない。
「お兄ちゃんルキアちゃん大丈夫?」
「・・・わからない」
急に病状が悪化することはないと思うがなんでなったかがわからない。回復魔法で治らないのを見ると特殊な病気なのかとか色々考えてしまう。
「とりあえず街のお医者さんに」
「医者!それだ!」
ルナさんの言葉にハッとしてルナさんの手を握り締めた。俺が医者の服を手に入れて診察すれば何でもわかるかもしれない。まだ憶測の段階だが、料理チートとかを鑑みるとあながち間違いでもないはずだ。
「医者はどこにいるんですか?」
「あっ、街の入り口の門にいるはずです」
「わかりました。すぐに行ってみます」
俺は駆け足で門へと向かった。
「あっタツミさん、牛と豚を連れてきましたよ」
「アルフレドすまない。急ぎで医者を呼んでくるから頼む。教会にいるダングルフとシャリフって言うのがいるからそいつらに渡してくれ」
「えっ?あっはい・・・」
アルフレドに早口で説明して、門に向かう。アルフレドは呆気にとられたという感じだが、ルナさん達と会えば色々わかるだろう。今はとにかく医者の服だ!
「キャン!」
「トラ、みんなの所で待っててくれ」
「キャンキャン」
「サンを置いてきたから大丈夫か・・わかった。正直、一人じゃ少し不安だった」
トラの言葉はわからなかったがサンがついてきていないのを見て俺はそう思った。家族であるルキアがこんな事になってトラも居ても立っても居られなかったんだろう。
トラの背に乗って自分の足よりも早く門に着いた。トラがいてくれてよかった。
「すいません。急患なんです!」
「あんたは確か、借金取りを捕まえた」
衛兵さんに頭を下げてそう言うと衛兵さん達は俺を知っていた。カシムの件で有名になっていたようだ。
「急患ってどこにいるんだ?」
大きな声で叫んだことで兵士詰め所の奥にいた無精ひげのおっさんが起きてきて声を上げた。
「急患はどこだと言っている」
「ああ、トラに乗ってくれ案内する」
詰め寄ってきたおっさんに俺はトラの背を譲った。おっさんは戸惑いながらもトラの背に乗り込んでいく。その時に腕を取って乗せてあげたので服はゲットだ。正直、おっさんをトラの背に乗せたくなかったが仕方ない。というかこのおっさん、無精ひげから察するように何日も風呂に入っていないみたいだ。この世界でも医者はブラックなのかもしれん。
「おお、乗り心地はなかなか」
トラの背に揺られておっさんは呑気に呟いた。トラは顔をゆがめながらも我慢して走っている。俺が臭いと感じるんだからトラはもっと感じるだろうな。鹿だからそういった能力も強いだろうし、暴れないトラを尊敬するぞ。
「孤児院か、しかし、いつの間にこんな大きな建物が?」
「そんなこといいから早く中へ」
「ああ、すまん」
おっさんは孤児院の教会にびっくりしながらトラの背から降りた。唖然と声をもらすが俺の声に過敏に反応して、トラの背に乗せていたカバンを手に取って教会へと走っていった。
「ルキアは?」
「いま寝付きました。でも、熱が治まりません」
ルキアの額には濡らした布がかけられている、ルナさんが看病してくれたみたいだ。しかし、ルキアは息が荒く、苦しそうにしている。
「おいおい、キャットマンか。従魔は専門外なんだが」
「それでも医者だろ?何かわからないか?」
「こんな可愛い子を見捨てる気はないよ」
おっさんはカバンから眼鏡と聴診器を取り出した。この世界にも聴診器があるんだな、元の世界でいつ頃から聴診器があったか知らないが医療も発達しているんだな。
「回復魔法は?」
「やった。だけど、ダメだったんだ」
「ヒールとキュアか?」
「はい」
「そうか」
おっさんはルキアの胸に聴診器を当てながら質問してくる。おっさんは魔法を使ったことをはじめから知っていたような返答だった。このおっさん凄腕か?
「次は背中を向けてくれ」
「はい」
ルナさんがルキアの背をおっさんに向けた。ルキアが起きる様子はない。
「・・・・」
「どうなんだ?」
「音を聞いているんだから静かに」
「ああ、すまん」
俺は取り乱しておっさんに質問してしまった。おっさんに怒られてシュンとしてしまう、ルキアを思うがあまりという事で許してくれ。
ーーーーーー
申し訳ありません
投稿ミスで一話抜けていました
プラスとして投稿いたします;;
14
お気に入りに追加
850
あなたにおすすめの小説
墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ
ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた
いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう
その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った
だけど仲間に裏切られてしまった
生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい
そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜
ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました
誠に申し訳ございません。
—————————————————
前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。
名前は山梨 花。
他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。
動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、
転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、
休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。
それは物心ついた時から生涯を終えるまで。
このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。
—————————————————
最後まで読んでくださりありがとうございました!!
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。
網野ホウ
ファンタジー
【小説家になろう】さまにて作品を先行投稿しています。
俺、畑中幸司。
過疎化が進む雪国の田舎町の雑貨屋をしてる。
来客が少ないこの店なんだが、その屋根裏では人間じゃない人達でいつも賑わってる。
賑わってるって言うか……祖母ちゃんの頼みで引き継いだ、握り飯の差し入れの仕事が半端ない。
食費もかかるんだが、そんなある日、エルフの女の子が手伝いを申し出て……。
まぁ退屈しない日常、おくってるよ。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる