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第二章 海へ

第二十五話 お米を食べよう

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『美味し~』

 牛小屋のような孤児院からそんな大きな声が聞こえてくる。

「まだまだいっぱいあるから満足するまで食べていいぞ~」

『やった~』

 俺は孤児院で寝泊まりすることにした。シーラインの米どころのダイロにはちゃんと知らせているのであの部屋は空いている。また来るまで取っておいてくれるらしい、急なお願いだったが了承してくれてよかった。厨房長はがっかりしていたが理由を教えると納得してくれた、うつ向いたまま頷いていたよ。そんなに酒が飲みたいのか、全くアル中で死んじゃうぞ。
 
 孤児院で調理した米料理を子供たちは美味しそうに頬張っている。牛丼のイノシシ肉バージョンを作ったのだが、最高に美味しい。流石に蜘蛛肉を食べさせるのは良くなかったのでやめておいた。美味しいからいいと思うんだけど、何だかね。
 元の世界での知識が蜘蛛の肉を子供に食べさせてはいけないと勝手に思ってしまうんだ。それって仕方ないよな。元の世界の肉って全部飼育されている肉なわけで、野生の魔物の肉を食べさせるのは何だか抵抗がある。

「このお肉ってなんの肉なの~?」

「ん?それはな~イノシシだぞ」

「イノシシ~?なんでこんなに柔らかいの?オークのお肉みた~い」
 
 俺の心とは裏腹にこの子達は魔物の肉を口に入れていたようだ。それなら蜘蛛の肉でも大丈夫か?明日にでも食べさせてみるかな?

「おかわり~」

「私も~」

 子供達は次々と「おかわり」といって木でできた丼を掲げてきた。

「みんな順番にね。タツミさんが困っているわよ」

『は~い』

 ルナさんは子供達を注意した。そういうルナさんも丼が空になっている。

「お姉ちゃんもおかわりだって~」

「お姉ちゃんおかわり~」

「あ、ちょっと、あなたたち・・・すいません。タツミさん・・」

「はは、大丈夫ですよ」

 子供達にも丼が空なのがバレて揶揄われているルナさん。恥ずかしそうに謝ってきて、何だか可愛らしい。

「ルキアのとサンとトラのも~」

「ああ、分ってるよ」

 ルキアはお行事よく子供達が終わるのを待っていた。いつの間にかとてもいい子に育ったルキアだ。それにサンとトラの分も持ってきている。マジ天使だな、ルキアは。

「ほんとに美味しいです。イノシシの肉ってもっと硬いもんだと思っていました」

 ルナさんはおかわりした丼を一口口に含むと口を抑えながら話した。食べているのを見せない仕草って何だか気品を感じるよな。

「お肉は下準備をしっかりしていると硬い肉も柔らかくなるんですよ。叩いておくとか筋を切っておくとかね」

「そうなんですね」

 ルナさんは俺の話を聞きながらも丼の食べていく。子供達とは違い、頬張らないのは女の子として意地だろうか?

「よし、じゃあ、俺も食べるかな」

「あ、すいません。気が利かなくて」

「いいんですよ。毎日、子供達を大事にしてくれていたんですから、今日くらいは俺がルナさんを労わります」

「・・ありがとうございます」

 俺の話が終わる前にルナさんは俺に背を向けて顔を手で覆った。ルナさんは一人でこの子達を養っていたんだ。サゲスの命令とは言え、普通じゃできない事だよな。子供達もルナさんには心を許しているし、彼女がやってきた事が子供達に届いた証拠。本当に彼女は凄いと思う。

「じゃあ、ルキアが入れる~」

「はは、そうだな」

 ルナさんとの話を聞いていたルキアがフライパンに入っていたイノシシの肉を白米の上にいれてくれた。この子は本当に気の利く子だな。






「そろそろ来る頃かな?」

 孤児院で食事を終えて、みんなが寝床で寝静まった時、トラが耳をピクピクと動かして孤児院の外の門を顔だけを起こして見ていた。それを見て俺は呟くとサンも体を起こした。

「ルキアは・・・」

「クルル」

「ああ、そうだな。ルキアは寝ていたほうがいいか」

 ルキアはぐっすりと寝ていて起こそうと思ったけどトラに止められた。トラは家族思いでみんなを見ている。ルキアにはまだ夜更かしは早いよな。

「ガウ」

「ああ、大勢来たな」

 サンが門を見て小さく吠えた。見ると最初に見た人影が三倍以上の数になっていた。こんな夜更けに訪問してくるなんて礼儀のなってない連中だな。

 俺は立ち上がり、サンとトラを引き連れて、門の前へと向かった。
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