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第二章 海へ

第二十四話 間抜けな刺客

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 俺とルキアは海の刃の店を出て孤児院へと向かった。この街は無駄に広いので結構時間がかかるな。ああ、そう言えば依頼の鉱石を置いてくるの忘れた。まあ、ヴィナスさんにはもう必要ないかもしれないからいらないか。ギルドにキャンセルすれば依頼料が返ってくるだろうし、その方がヴィナスさんの為だな。

「死ね~」

「ん?」

 考え事をしながらルキアと一緒に歩いていると背後から声が聞こえて身構えた。

「ほいっ」

「ぐはっ」

 ショートソードを突き付けてきた男を背負い投げで地面に投げつける。投げっぱなしではないのでそのまま制圧して、尋問にはいる。周りには少し距離をおいて野次馬が集まってきているが気にせずに男を組み伏せる。
 俺も驚くほど簡単に投げ飛ばせたのはステータスと剣士チートのおかげだろう。蜘蛛との戦闘以来、体が軽くてしょうがないんだよな。たぶん、レベルアップしすぎたんだろう。良い事だが、人を壊してしまうかもしれないから気をつけなくてはいけない。

「クソ!離せ!」

「はいはい、まずは君が剣を離そうか」

「いて~」

 剣を持った手を捻ると男が剣を手放した。投げられたのに剣を手放さなかったのはお見事と言えるな。

「それで、君はどこの誰さん?」

「誰が言うかよ」

「まあ、別に言わなくてもいいけど、とりあえず、衛兵さんかギルドに行きますか」

「ギルドは辞めてくれ、衛兵に」

「ん?なんでそんな事言うんだ?」

「しまった・・」

 ふむふむ、ギルドの関係者か冒険者って事かな?ではギルドに。
 間抜けな刺客をギルドに持っていくことにする。早く孤児院に行きたいんだけどしょうがないよな。ごちゃごちゃうるさい男を引きずりながらギルドの方へと歩いて行く。

 ギルドについてフェレナさんの受付に男を引きずって椅子に座った。男は縄ですまきにしているので逃げられないだろう。

「どうしたんですか?」

 フェレナさんは耳をピンとはって驚きながら聞いてきた。

「急に背後から剣を突き付けてきたんだよ。組み伏せたらギルドは辞めてくれって言ったからギルドに持ってきた」

「そうなんですね・・。あっ、この人、冒険者で登録されている人ですよ」

 フェレナさんがそう言って本をペラペラとめくっていく、「ほらっ」と開いたページに免許写真のような絵とプロフィールが書いてあった。

「サーズさんね。シルバーランクで最近は依頼をこなしていませんね。あなたギルドの評判悪いですよ。この間も酒場で暴力事件を起こしていますね。ブロンズランクに喧嘩売って返り討ちにあっているって書いてあります」

「ぐっ」

 フェレナさんは本を読んで最近の出来事を話していく、サーズは顔を赤くして声を漏らした。
 喧嘩売っておいて負けるなんて恥ずかしすぎるよな。

「じゃあ、この人の処分をお願いします」

「あ、待ってください。この人が本当にやった証拠とか」

「街中で突っかかってきたのでそこらへんの人に聞けばわかりますよ。孤児院に用事があるので何かわからなかったら来てください」

「わ、わかりました」

「あっそうだ。ヴィナスさんの依頼はキャンセルになると思いますよ」

 ギルドの出口に向かいながら後ろ手に手を振って話した。フェレナさんはぽかんとしていたけどこっちも急いでいるのでね。
 シーンとしているギルドを後にした。

「サン、トラ、戻ったぞ~」

「ガウガウ~」

「キャン!」

 孤児院に戻るとサンとトラが俺に抱き着いてきた。たかだか二時間だけど、仲間になってから離れるのは初めてだったから不安だったのかもしれないな。

「おいおい、ははは」

「あ~ずるい~ルキアも~」

 サンとトラに触発されてルキアも俺に飛び乗ってきた。後頭部に抱き着く形になって身動きが取れない。早く離して。

「お兄ちゃんずるいよ~」

「サンちゃんとトラちゃんを取らないで~」

 俺がサンとトラを独り占めしていると思ったのか、孤児院の子供たちが迫ってきた。いやいや、そう言うつもりではないんだけどな。

「みんな~、サンちゃんとトラちゃんはタツミさんの家族なのよ。タツミさんが大好きなの」

「え~僕たちだってサンちゃんとトラちゃんが好きだよ~」

「それ以上にサンちゃんとトラちゃんはタツミさんが好きなのよ。だけど、サンちゃんとトラちゃんはみんなの事も好きだから良い子にして待っていれば遊んでくれるからね~わかった~?」

「は~い」

「僕たち、よいこにしてるよ」

 何だか歯がゆいルナさんの説得に子供達がいい返事をしてそれぞれの遊びに戻っていった。

「それで何かわかりましたか?」

「これと言って特別な事はわからなかったんですけど、詐欺まがいの事が横行しているみたいですね」

「やっぱり、サゲス様が捕まったことでタガが外れてしまったのかもしれませんね」

 ルナさんは顎に手を当てて考え込んだ。サゲスの暴力で抑えていた連中が解放されてしまったのか。全く、いい迷惑だよ。

「今度カシムが来たら考えがあるので安心してください」

「考えってどんな?」

「それはなってからのお楽しみで」

 人差し指で口を抑えて話すとルナさんは頬を赤く染めてしまった。
 そんな恥ずかしくなるような寒い事言っちゃったかな。ちょっと俺はショックを感じて俯いてしまう。
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