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第二章 海へ

第十二話 派手な魔法...

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「グルルル!」

「ガルルル!」

 壁に張り付きながら真っ黒なアラクネになったアカメが俺達を威嚇してきた。真っ赤な目が俺達に殺意を向けてくる。サンは俺とルキアを守ろうと間に入って威嚇をしあっている。
 バリバリバリ、そんな音を聞いてトラの方を見るとトラもアラクネを威嚇するように雷を角に纏っている。この前の戦闘で見せた角での攻撃を想定しているのかもしれない。俺はこの場から逃げる手段を考えていたがトラの行動で戦闘を視野に入れないといけないんだと悟った。下手に逃げようとするとこっちがやられるって事だもんな。

「グアァァ!」

「ガアァ~!」

 アカメが威嚇をやめて突進してきた。サンがその攻撃をうけてズルズルと押し込まれる。先ほどよりもステータスが上がっているのが伺える。
 サンはアカメを抑えながら、ファイアボールを放って命中させるが堪えていない。

「この!」

「キャン!」

 俺とトラもアカメを攻撃する。オラストロ騎士団長の服に着替えているのだが、アラクネの複数の指で簡単に抑えられた。トラの攻撃は数本の指を貫いた。頼みの綱はトラの必殺技か、しかし、MP消費が激しいだろう。トラは息が荒くなってきている。

「ルキアも![ブラックウェーブ]!」

 前回のアカメに大ダメージを負わせたルキアの魔法がアカメへと放たれる。警戒していたのだろうアカメはそれを大きくジャンプして躱し、天井に張り付いた。ルキアの魔法は一番アカメにダメージを負わせられそうだな。

「今のうちに通路に入るぞ」

 ルキアの魔法の範囲は結構広い、横幅3メートル程だ。通路はそのくらい狭いので避けようがない。ガードもしやすくなるし攻めやすくもなる通路に入れば勝機が見えそうだ。

「キシャァァ~!」

「そう、甘くないな・・」

 通路に入ろうとすると勢いよく紫色の液が吐きかけられた。通路に入れまいとするアカメの妨害だ。

「キシャ!」

「おっと、毒液攻撃に切り替えたか」

 アカメは天井から毒液攻撃を続けてきた。数発の液が吐きかけられて液から紫の煙が立ち込めてくる。

「やばいな。下がるぞ」

 アカメは強い、この状態で毒にされたらたまったもんじゃない。仕方なく後方に下がることにした。ワッツと食事をしたところまで下がる。その間、アカメは毒液攻撃をしてこない、無限ではないのかもしれないな。

「このままじゃまずいな。精霊に来てもらうか?」

 精霊魔法使いの服に着替えて、試しに土の精霊に来てもらうことにした。土の精霊というばノームだよな。それ以外はわからないから出なかったらウィンディーネに来てもらおう。

「ノーム」

精霊魔法使いの杖を掲げて名前を叫んだ。地面がボコボコと音を立てたと思ったらそこから茶色帽子をかぶった少年が出てきて、笑顔で俺達を見る。

《おお~マスター、流石だぜ。精霊の名前を言い当てるなんて、そうそうできないぞ》

 茶目っ気の強そうな少年はそういって両手を頭で組んだ。片足立ちで話しているし、なんだか甥っ子を思い出す。

「グルルルル!」

《おお~、ダークネスアラクネか。ってことはドワーフたちを襲ったダークスパイダーが目覚めたのか?》

 エコーのかかった声でアカメを見据えて話した。ノームはアカメの事を知っているようだな。

「どうにかなるか?」

《それをおいらに言うのかい?精霊様だぞ。朝飯前だよ》

 俺の疑問にノームはワキワキと手を動かして話す。

《あ~そう言えば派手な魔法がいいんだっけ?ウィンディーネに聞いたよ。マスターは消費MPがないみたいだから遠慮なくぶっ放せるって喜んでいたよ》

「ええ!ウィンディーネそんな事言ってるのか?」

 あの無表情の顔で喜んでいたのか?そう言えばノームは表情豊かだな。精霊はみんな無表情なのかと思ったけどウィンディーネだけなのかな?

《まず、マスターたちの安全を考えて[アースシェルター]っと》

 ノームは俺達を包むように透明な結界を放った、少し茶色の結界が俺達を包む。

「グルァ!」

《おお、やる気だね~。でも、上には上がいるってことを教えてあげるよ~》

 アカメが背中を向けていたノームの背にのしかかった。ノームはそれを気にも留めずにアカメを窘める。

「キシャ!」

《毒液か、精霊のおいらにはきかないよ。そろそろ離れてくれるかい》

 毒液を背中にかけられながらノームはドカッとアカメへと回し蹴りを当てる。勢いよくアカメは壁へと叩きつけられる。

「ギ、ギギ」

《本当にマスターはMP消費がないんだな~。こんな長い時間体現していられるなんて最高だよ。でも、そろそろ、終わらしちゃおうかな》

 ノームは両手を頭で組んで満面の笑顔で話した。アカメはさっきの一撃で動けないほどになっている。

《ありゃりゃ、今ので動けないのか・・・だけど、マスターは派手な魔法が好きらしいからな。ごめんね》

 ノームはごめんというジェスチャーでアカメに謝りながら大きな魔法陣を描いていく。

「ギギギ・・・ギシャ~!」

 アカメが何とか逃げようと体を引きずりながら奥への通路に向かっている。何だかいじめている気分になるが致し方ない。

《準備ok~、いっくよ~。[アースクエイクボム]!》

「ギシャ?」

 結界と同じの透明な筒がアカメを包み込んだ。周囲の壁から球状の物がフワフワと飛んできて、アカメの周りに集まってきている。

「何だか、メルヘンチックだな」

 土色の球体が舞う姿がとてもメルヘンでついつい呟いてしまった。

《メルヘン?よくわからないけど舐めてる感じだね。この後が凄いんだからね》

 ノームはそう言って腕を組んだ。ちょっと怒ってしまったかな?
 そう言っている間も着々と球体がアカメの結界に張り付いていく。

《完成!じゃあ覚悟してね~》

 ノームがそう言うとアカメを包んでいた球体の物が順番に破裂していく、その勢いで洞窟を縦横無尽に破壊していく、まるでピンボールのようだ。
 もともとこのエリアは広かったが更に広くなった。

《ここからもっとすごいんだからね》

 ノームがそう言うと目で追えない程早くなっていった。爆発の規模が大きくなっているようだ。そして、次の瞬間、俺達は真っ白な閃光に包まれた、そして。

「・・・・もう、夜だったんだな」

《いい月だな~。アテナはもう寝たかな~》

 空が見えて俺とノームは呟いた。この光景が凄すぎて俺はノームの言う別の精霊の名前に反応できなかったが精霊達の名前は大体俺達の知っている名前で行けそうな気がして内心ガッツポーズが止まらなかった。てか派手過ぎだよ。
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