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第一章 異世界
第八話 尾根に小屋が
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「もう少しで着きますよ」
「あそこです」
アルプス山脈の尾根のようなところにポツンと小屋が一軒建っていた。ここが冒険者達用の休憩スペースのようだ。
「他には誰もいませんね。日も落ちてきましたし飯の準備をしましょう」
「今日は私が作るね」
「ちょっと待て、俺が作るよ。お前だと食料が無駄になるからな」
「オッズひどい。タツミさん、何とか言ってよ」
はいはい、お若いお二人がイチャイチャし始めましたよ、って俺も十分若いけどね。
やはりこの二人はそう言う関係なのか?オッズの奴、こんなかわいい子と幼馴染ってやつか、羨ましい。
オッズはアイサの料理下手を知っているようなので弁護はできないな。だがしかし、ここは料理人の服を持っている俺がやる。
「お二人さん、俺がやるよ」
「ええ、そんな悪いですよ」
「二人には食料をもらうわけだしね。調理は俺に任せて」
オッズが悪いと言ってきたがそうはいかん。俺が料理すれば間違いなくうまい。それに料理人のエプロンを手に入れてから森の食べられそうな草を見極めることができるようになっていたのだ。流石チート先輩、マジ助かる。
二人にばれないようにするのは大変だったけどな。
「凄い気合の入りようですね」
「料理するのにわざわざ着替えるなんて」
ちょこんと少し大きめの岩を椅子代わりにすわってそう呟くお二人。確かに普通に考えると気合が入っているように見えるが俺の力は着替えないと効果がないと思われるので致し方なし。
「では始めます。包丁」
まるで手術をするかのように料理を開始していく。山道を登っていた時に捕まえたイノシシも調理素材に加わっているので騎士達と食べた時よりもおいしいものが作れそうだ。
内臓はさっき出して穴に埋めておいたので省略、血抜きもバッチリなのでそれなりに臭みはないはず。臭みがあっても大丈夫なように香草も取ってあるので大丈夫だ。
料理の知識はゼロに近いが能力のおかげでどういったことが有効かがわかる。パッパとイノシシを解体して食べやすい大きさへとカット。鉄串があったらそれに突き刺して焼いた方がおいしそうだがないので熱した鉄の盾で代用。この鉄の盾はこの小屋に置いてあったものだ。使わなくなった鉄の盾はこういった調理器具に早変わり、なんともエコ力の高い世界だろうか。
「よ~し、できたぞ。イノシシの香草焼きと野菜炒めだ」
「わ~、おいしそう」
「食べていい?」
「ちょっとまった、お二人さん。食べる前にお忘れの言葉がありますよ」
「「言葉?」」
「いただきますでしょうが」
「「いただきます?」」
まじか、この世界は食材に感謝をとか料理人に感謝をしないのか。なんとも嘆かわしい。これは教育していく必要があるな。
「料理をしてくれた人や食材になった生き物達に感謝する言葉だ。これからは食事の前に言うんだぞ」
「タツミさんは変わってるな~」
「オラストロの人とは思えない」
ただ単に挨拶を教えているようなものなのにオラストロの国が馬鹿にされている感じになった。どんだけオラストロって駄目なんだ?
「まあ、いいや。いただきます!」
「いただきます!」
二人は交互にいただきますを言って肉や野菜を一口口に放り込んだ。みるみる頬は緩み満面の笑みを浮かべた二人は俺を見て目を輝かせていた。
「こんなうまいもの初めて食べたよ」
「これなら街に店を持てるんじゃないかな?」
すごい褒めちぎるな。店か・・・金もないし考えてみるか。やるにしても元手がいるが。
「さて、俺も食べるかな。モグモグ・・・まじでうまいな」
「でしょ~」
「こんなに旨い物、本当に初めて食べました。うまいうまい」
オッズ君は言語能力をやられたのか同じことを二度言っています。しかし、そうなってもおかしくないほどうまい。
何というかイノシシのくせに牛の脂のうま味のような物があるし、香草もイノシシの嫌なところだけをうち消しているように思われる。
味付けは塩しかなかったのでシンプルなのだが、その脂のうま味がいい仕事をしていてなんとも言えない旨さになっている。
「このあと、交代で見張りに立ちましょう。最初は僕とアイサがやりますので次はタツミさんが」
「わかった」
オッズが肉を頬ばりながら話す。俺は頷きながら答えるとにっこりとほほ笑んで香草をつまんでいる。どんだけ気に入ったんだよって思ったがやっぱり、喜んで食べてくれると俺も嬉しい。
食事が終わると俺は二人を小屋の外において、小屋の中で就寝。
邪魔者は早めに寝るのが得策だ。
眠りが浅くて変な声が聞こえてきたら眠れるものも眠れないからな。変な声が聞こえてきたら起きちゃうからな・・・大事なことなので二度言ったぞ。
「あそこです」
アルプス山脈の尾根のようなところにポツンと小屋が一軒建っていた。ここが冒険者達用の休憩スペースのようだ。
「他には誰もいませんね。日も落ちてきましたし飯の準備をしましょう」
「今日は私が作るね」
「ちょっと待て、俺が作るよ。お前だと食料が無駄になるからな」
「オッズひどい。タツミさん、何とか言ってよ」
はいはい、お若いお二人がイチャイチャし始めましたよ、って俺も十分若いけどね。
やはりこの二人はそう言う関係なのか?オッズの奴、こんなかわいい子と幼馴染ってやつか、羨ましい。
オッズはアイサの料理下手を知っているようなので弁護はできないな。だがしかし、ここは料理人の服を持っている俺がやる。
「お二人さん、俺がやるよ」
「ええ、そんな悪いですよ」
「二人には食料をもらうわけだしね。調理は俺に任せて」
オッズが悪いと言ってきたがそうはいかん。俺が料理すれば間違いなくうまい。それに料理人のエプロンを手に入れてから森の食べられそうな草を見極めることができるようになっていたのだ。流石チート先輩、マジ助かる。
二人にばれないようにするのは大変だったけどな。
「凄い気合の入りようですね」
「料理するのにわざわざ着替えるなんて」
ちょこんと少し大きめの岩を椅子代わりにすわってそう呟くお二人。確かに普通に考えると気合が入っているように見えるが俺の力は着替えないと効果がないと思われるので致し方なし。
「では始めます。包丁」
まるで手術をするかのように料理を開始していく。山道を登っていた時に捕まえたイノシシも調理素材に加わっているので騎士達と食べた時よりもおいしいものが作れそうだ。
内臓はさっき出して穴に埋めておいたので省略、血抜きもバッチリなのでそれなりに臭みはないはず。臭みがあっても大丈夫なように香草も取ってあるので大丈夫だ。
料理の知識はゼロに近いが能力のおかげでどういったことが有効かがわかる。パッパとイノシシを解体して食べやすい大きさへとカット。鉄串があったらそれに突き刺して焼いた方がおいしそうだがないので熱した鉄の盾で代用。この鉄の盾はこの小屋に置いてあったものだ。使わなくなった鉄の盾はこういった調理器具に早変わり、なんともエコ力の高い世界だろうか。
「よ~し、できたぞ。イノシシの香草焼きと野菜炒めだ」
「わ~、おいしそう」
「食べていい?」
「ちょっとまった、お二人さん。食べる前にお忘れの言葉がありますよ」
「「言葉?」」
「いただきますでしょうが」
「「いただきます?」」
まじか、この世界は食材に感謝をとか料理人に感謝をしないのか。なんとも嘆かわしい。これは教育していく必要があるな。
「料理をしてくれた人や食材になった生き物達に感謝する言葉だ。これからは食事の前に言うんだぞ」
「タツミさんは変わってるな~」
「オラストロの人とは思えない」
ただ単に挨拶を教えているようなものなのにオラストロの国が馬鹿にされている感じになった。どんだけオラストロって駄目なんだ?
「まあ、いいや。いただきます!」
「いただきます!」
二人は交互にいただきますを言って肉や野菜を一口口に放り込んだ。みるみる頬は緩み満面の笑みを浮かべた二人は俺を見て目を輝かせていた。
「こんなうまいもの初めて食べたよ」
「これなら街に店を持てるんじゃないかな?」
すごい褒めちぎるな。店か・・・金もないし考えてみるか。やるにしても元手がいるが。
「さて、俺も食べるかな。モグモグ・・・まじでうまいな」
「でしょ~」
「こんなに旨い物、本当に初めて食べました。うまいうまい」
オッズ君は言語能力をやられたのか同じことを二度言っています。しかし、そうなってもおかしくないほどうまい。
何というかイノシシのくせに牛の脂のうま味のような物があるし、香草もイノシシの嫌なところだけをうち消しているように思われる。
味付けは塩しかなかったのでシンプルなのだが、その脂のうま味がいい仕事をしていてなんとも言えない旨さになっている。
「このあと、交代で見張りに立ちましょう。最初は僕とアイサがやりますので次はタツミさんが」
「わかった」
オッズが肉を頬ばりながら話す。俺は頷きながら答えるとにっこりとほほ笑んで香草をつまんでいる。どんだけ気に入ったんだよって思ったがやっぱり、喜んで食べてくれると俺も嬉しい。
食事が終わると俺は二人を小屋の外において、小屋の中で就寝。
邪魔者は早めに寝るのが得策だ。
眠りが浅くて変な声が聞こえてきたら眠れるものも眠れないからな。変な声が聞こえてきたら起きちゃうからな・・・大事なことなので二度言ったぞ。
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