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第二章 フェイク

第47話 楽しいダンジョン

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「バブバブ」

 洞窟に入るとローズさんの騎士達とララちゃんの冒険者達が雑談している。

「そろそろ俺達は別の町に行くか」

「そうだな。ララには悪いがここでは冒険者として名をあげられない。依頼が受けられないからな~」

 冒険者達の声に騎士団の人達は残念そうに俯く。冒険者達は依頼を達成することでランクを上げることが出来る。ララちゃんはあんなに幼いのにAランクの冒険者、この人達を束ねられるほどの名声を得ている。
 彼女についてきているってことは憧れのようなものがあったから、その憧れはランクも兼ねてる。彼女のランクになりたいって思っている人も多くいるはずだよな。

「Cランクまで上がってあと少しでBランクになれる。いつまでもここにいられない」

「俺も、ジークさんには悪いけど。俺達が居なくてもローズさん達がいるしな」

 青年冒険者二人が残念そうに告げる。

「朝になったらララに告げよう。彼女はあの子に執着してしまっている。町から離れることはないだろう」

 中年の冒険者の言葉にみんな頷いて答えてる。悲しそうなみんな、本当はララちゃんと離れたくないんだろうな。

「冒険者に期待はしていないよ」

「この町は戦力過多だと思うから大丈夫」

 ラミルダさんとミルファさんが慰めるように話す。

「今日は早めに帰ったら? 明日出るなら準備が必要でしょ?」

「ああ、すまない」

 ミルファさんの声に冒険者達はすぐに洞窟を出ていく。

「はぁ~。やっぱり冒険者はダメよね~」

 冒険者達を見送るとミルファさんが大きなため息をついた。それを聞いてラミルダさんも小さくため息をつく。

「ああ、奴らには夢があるからな」

「夢ね~。私の夢はローズ隊長を幸せにすること。自分なんて後回しよ」

 ラミルダさんの言葉にミルファさんが目をハートにして話す。ローズさんは愛されてるな~。

「ローズ隊長の幸せね~。確か、お嫁さんだっけか?」

「うふふ、そうそう。それも自分よりも強い人と結婚するんだって~。あ~ローズ隊長の子供を早く見たいわ~」

 ラミルダさんとミルファさんの会話に周りの騎士達も頬を赤く染めて遠い目をしてる。みんなローズさんの幸せを願ってるのか。

「しかしよ~。ローズ隊長よりも強い奴なんて限られてるだろ? ジーク様はエリアス様がいるわけだ。ブランド様もいいところまで言っているが王妃様がいるだろ?」

「あとはジーニ様がいるでしょ。ローズ隊長が19歳なんだから19歳差の歳の差結婚。ジーニ様が12歳で結婚できるお歳になってローズ隊長が31歳……。少しハードルが高いかしら?」

 ラミルダさんとミルファさんが妄想を膨らませていく。この世界は12歳で結婚できるのか。ローズさんって19歳だったのか。もっと言ってると思った。

「あら? ジーニ様、そこで何を?」

「バブ!?」

 ローズさんの若さに驚いていると背後から抱き上げられる。顔を見ると抱き上げたのはローズさんだった。

「ダンジョンに入るのですか? ならば一緒に行きましょう」

「あ、アイ……」

 ローズさんは満面の笑みで僕を抱き上げたまま、ラミルダさん達の方向へ歩いていく。僕らに気づいたラミルダさん達、ローズさんと僕の顔を何度か往復すると頬を赤く染めた。

「ん? どうしたのみんな?」

「あ、いえ、何でもないです」

「そ、それよりもジーニ様とどうしたんですかローズ隊長」

 ローズさんの疑問の声にラミルダさんが答えるとすぐに話を切り替えるミルファさん。みんな頭の中では僕とローズさんを想像しているんだろうな。

「ジーニ様がダンジョンに行くみたいだから一緒に行こうと思って。ジーニ様の闘い方を見て、色々と参考になるかなって」

 ローズさんはそういって僕に微笑みかける。

「そうだったんですね。私はてっきり……」

「てっきり?」

「略奪……」

 ミルファさんが変なことを口走るとローズさんはキョトンとしてしまった。

「略奪? は?」

「ミルファ! ははは、ローズ隊長。そんなことよりもダンジョンに行こうぜ」

 少しするとローズさんが口を開くと今度はラミルダさんが話しを切り替える。いいコンビだな。

「そうね。略奪って何のことかしら?」

 ダンジョンへと進みながらローズさんが呟く。ラミルダさんとミルファさんもついてくるみたいで四人でのダンジョン攻略となるみたい。

「タッタッタ~! ダブダブ!」

「ギャギャ!? ……」

 両手に短剣をもって高速ハイハイ。そしてゴブリンの横を通り過ぎて短剣をゴブリンにあてがう。何の抵抗もなく短剣がゴブリンを絶命させる。

「角度をつけた高速攻撃。御見それいたしました」

「バブ!」

 ローズさん達が感心して拍手を送ってくれる。稲妻のような僕の動きが見えるのは流石だ。
 普通の人だと瞬きしたら絶命しているくらいの速度だからね。

「ひゃ~、ジーク様も強いと思ったけど、ジーニ様は人の域じゃねえな」

「うん……この気配はあの時の気配。ジーニ様ってだいぶ前から夜に行動していたのね」

 ラミルダさんの声にミルファさんが頷く。あの時って矢を射かけられた時のやつかな。頭の上を通っていったのを覚えてる。

「一階の魔物は常時狩りをしているので少ないですね。生まれていてもゴブリンレベル。私達でも苦にならない」

 ミルファさんがそういって矢を一本放つ。ゴブリンに額に当たって魔石に変わっていく。片手間に始末できるレベルだな。

「二階はどのくらいの魔物だっけか」

「確か、ゴブリンソルジャーとかランクで言うとEランクくらいの魔物ね。ゴブリンがFランクだから大差ないわ」

 ラミルダさんの言葉にローズさんが答える。1ランク上がるくらいか。でも、そこでボス部屋が現れたらエンシェントゴーレムよりも強いのが出るんじゃ?

「では行きますか」

 僕の心配も他所にローズさん達は坂を下っていく。地下二階のボスか~、楽しみだな~。
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