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第二章 フェイク

第39話 昔々

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 ブランド様とトルトさんを見送って僕らは平和に過ごしている。朝起きて畑を耕してシリカちゃん達の仕事を見たり、グッツさんとグレースさんのイチャイチャを見たり。最高であり、平凡である毎日。

 そんな毎日の夜。
 僕は洞窟に行って魔物退治をしたり、リュウさんとヴァンパイア兄弟とゴーレム君を連れて遠出したりして試練を達成してた。魔法書が優秀とわかっていくつか貯めておいてるんだよね~。
 なので試練を達成したからステータスが上がってきた。


 ジーニアス 0歳

 LV62

【体力】520
【魔力】450


【筋力】920

【生命力】350

【命中性】360

【敏捷性】1000

【知力】730

【精神力】530

スキル

【試練受注1】【試練受注2】【試練変更】【試練製作】【詠唱省略】


 レベルはほぼほぼ据え置きなのにステータスだけが上がっていく。秘薬のおかげで僕は体が赤くなったかのように早くなってしまってる。僕を目で追うことは出来ないだろうな。
 
「洞窟はダンジョンだ」

 いつも通りの朝。お父さんが報告してくれる。僕はすでに知っていたけど、正式に洞窟がダンジョンとしてみんなに認知された。
 鉱脈が元に戻って再度取れるようになったらしい。ダンジョンは無限資源だから、国にとってみたら最高だよな~。

「どうするの? ブランド様は知ってるの?」

「いや、確認は取ってなかったから知らないだろう。まだ町としての機能には程遠いからな。宣伝するまでに冒険者ギルドを誘致しないとな」

 お母さんの問いにお父さんが答える。ダンジョンが出来たとなると冒険者が集まってくる。ララちゃん達のような優しい人ばかりではない冒険者。ちゃんとギルドに管理してもらわないとね。

「商人ギルドも誘致しないといけない。冒険者達が魔石を卸す相手が行商人だけとなると売れない状況になる可能性がある。過多ってやつだな」

「バブ~」

 お父さんの説明になるほどと声をあげる。声に反応してお父さんは僕の頭を撫でてくれる。

「ジーニアスも大きくなったら冒険者になるか?」

「バブ!」

「ははは、そうだよな。俺の子だもんな。なるに決まってるな」

 お父さんの問いに元気よく答えると嬉しそうに抱きしめてくれる。お父さんは僕に冒険者になって欲しいのか。

「ジーニは魔法使いの素質があるから後衛かしら?」

「ジーニアスの場合はどちらも行けるからな。一人で戦うことになりそうだな」

「ふふ、確かにそうね」

 お母さんとお父さんが笑いながら僕の未来の話をしてる。ステータス的には一人でも大丈夫かもな~。今も夜の行動はリュウさん達と行動してるけど、戦いは基本一人で戦ってるしね。

「さて、そろそろダンクさんのところに行くかな」

「住居の建設?」

「ああ、宿屋はリュウさんが作ってくれたからいいんだけど、住居はあるにこしたことはないからな。多めに作る予定なんだ」

 お父さんは椅子から立ち上がると外へと出ていく。いっぱい人が来ることになるから家は必要になるんだろうな。
 お父さんが外に行くと、お母さんは僕を抱いて畑へと歩き出す。畑を耕して種は撒き終わった。水を撒いて芽吹くのを待つばかり。因みに小麦を作ってる。魔物の群れに壊される前には風車の製粉機があったんだけど、壊されちゃったから芽吹く前に作る予定。どちらにせよ時間がかかるな~。

 水をまき終わるとリュウさんの宿屋で一休み。お客さんはまだまだ少ないから休憩にピッタリだ。 

「いらっしゃいエリアス。ジーニアス」

「バブ!」

「お邪魔してます」

 宿屋の中には軽く食事のできる食堂がある。席に着くと水の入った木のコップをリュウさんが出してくれて、お母さんがコップを口に運ぶ。

「そろそろフェイクの話をしようか。奴が変わった理由」

「バブ?」

 リュウさんはそういって向かいの席に座る。僕の頬をツンツンすると話しだした。

「トゥルースと言われる不死者がいた。やつはフェイクと仲が良くていつもつるんでいた。人々を育てることをし始めたのは彼女の案ではないかとも言われていた」

 彼女ってことは女性だったのか。トゥルースさんは良い人っぽいな。

「あの日も彼女とフェイクは仲良くドワーフのレベル上げをしていた。いつも通り、フェイクが倒されてレベルが上がっていく。でも、その日は様子がおかしかった」

「……それって」

「うむ、フェイクの再生が遅れていた」

 リュウさんの話にお父さんが声をもらす。彼女の答えを聞くと僕らは顔を見合う。

「不死者も倒せる?」

「うむ。やつのせいで不死者は不死ではないということが分かってしまったというわけじゃ」

 お父さんの問いにリュウさんは答えてくれる。不死者じゃなくて多くの命を持っている人だったってことか。

「その日のドワーフ達からそのことが多くの者達に知られることとなった。トゥルースは責任を感じてフェイクの代わりにレベル上げをするようになり、やつと同じ状態になった」

「まさか……」

「そのまさかじゃよ。その日は人、獣人、エルフ、ドワーフが集まっていた。あのフェイクがおかしかった日から毎日人は増えていったんじゃ。元々狙われていたというわけじゃな」

 リュウさんは淡々と話していく。お母さんの戸惑いの声、思っていた通り悲しい答えが返ってきた。

「フェイクはトゥルースに好意を持っていたのだろう。それなのにあんなことになった。それからやつはしばらく大人しくなっていたな。その後に魔物を従えるようになったんだろう」

 なるほどね。人が嫌いになってしまったってことか。でも、この世界のご先祖様は碌でもない人達だったっぽいな~。
 そういえば、ジュスペンスの先代の王様は貴族至上主義だったみたいだしな。

「……目的は人への復讐?」

「それは儂も分からないがその可能性が高いじゃろう」

 お父さんの疑問にリュウさんが答えて首を横に振った。魔物を強くする理由はそれしかなさそうだけどな。

「それにしては悠長にしている。もしかすると……」

「もしかすると?」

「まあ、今日のところはこのくらいでいいだろう。可能性の話じゃ」

「バブ?」

 リュウさんが首を傾げて声をもらしたけど、お父さんの声には答えてくれなかった。思わず僕も声をあげちゃった。
 それからリュウさんは僕らを外に案内した。何か思うところがあるけど、まだ話してくれないみたい。

「どうしたのかな?」

「何か思うところがありそうだったな」

 お母さんの疑問にお父さんが答える。確かにそんな感じがしたな~。リュウさんはフェイクの目的が分かったみたいだった。

「私達には言えないことかしら?」

「……信用はしてないってことかもな」

「バブ……」

 二人は悲しそうに俯いて話す。僕も思わず下を向いちゃった。ご先祖様達がお馬鹿さんだったせいだな~。ハァ~嫌になっちゃうよ。
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