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第二章 フェイク

第27話 ヴァンパイア討伐へ

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「じゃあ行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 フェイクさんに少し不信感を持ちながらもお父さんと共にヴァンパイア狩りに向かう。ジーニアスベルから結構近いので一日もかからないらしい。そんなところにAランクの魔物がいるのは確かに危険だよな。見た目が人の魔物だしね。

「微力ながら私も力になります」

「ありがとうデシウスさん」

「いえいえ、私もジーニアスベルの一員ですからね。それに(ジーニ様に言い所を見せて)ヌフフフ」

「それに?」

「いえ! 何でもないですよ~。さあ、早く済ませましょ~」

 デシウスさんもついてきてくれて欲望のまま顔を緩ませてお父さんと話す。話し終わるとボルグと言われている呪いの鎧の兜を被る。呪いの鎧だけど、目的を果たした人は呪いを受けなくなるらしい。普通の強い鎧になっちゃうんだな。

「ん、ジーニちゃんは私が守る」

「バブ?」

「デシウスは欲望の塊、エルフじゃない」

 ララちゃんもついてきてくれて僕を抱いて歩いてくれる。ゴーレムも連れてきてるから持たなくてもいいんだけど、僕の魅力ボディが罪をおかしてるみたいだ。致し方ない。

「シリカにも頼まれた。デシウスから目を離すなって。ジーニちゃん愛されてる」

「バブバブ!」

 シリカちゃんもそんなことを言ってるのか。デシウスさんは普通に恩を返したいと思ってると思うんだけどな。こんな乳飲み子を本気で好きになるなんてあり得ないでしょ。

「ん? ジーニちゃん自覚ない? エルフは長命の種族。相手が赤ん坊でも気に入ったら仲良くなって大人になったら里に連れて行く。そんな絵本にもなってる話がある。気をつけるに越したことない」

「バブ!?」

 な、なるほど。エルフは長生きするから若いうちに目をつけておくのか。凄い話だ。

「魔物だ。ゴブリンか? あの時の残党か」

 しばらく街道を歩いていると一匹のゴブリンを見つけた。軽くお父さんが狩ると周りの異変に気付く。

「魔石が落ちてるな」

 倒したゴブリンも運よく魔石を残したけど、よく見ると別の魔石が地面に落ちてる。誰かがゴブリンを倒したのに魔石を回収してないのかな?

「ん、おかしい」

「ですね」

 ララちゃんの呟きにデシウスさんやお父さんが警戒する。ゴーレムも警戒させると地面が盛り上がって来て、何かが飛び出してきた。

「モールラッド?」

「!? 大人しい魔物のはず!」

 モグラの魔物? 急に飛び出してきてララちゃんが首を傾げてる。すぐにデシウスさんが切りつけていく。
 すべて蹴散らすとみんなで顔を見合う。

「10匹ほどのモールラッドか」

「群れない魔物。操られてた?」

「ええ、目が赤くなっていた。依頼のヴァンパイアの仕業かもね。弱い魔物なら血で操れるから」

 お父さんの呟きにララちゃんが疑問を口にするとデシウスさんが答えた。
 なるほど、ヴァンパイアだから眷属みたいなことにして操れるのか。怖い魔物だな。

「とりあえず、依頼の場所に向かってみよう」

「バブ!」

 この後も何度か魔物に遭遇して全部蹴散らしていく。僕の出番はなかったけど、試練が討伐のものじゃないので丁度いい。ヴァンパイアが現れたら試練を替えればいい。ふふふ、今度はどんなアイテムがもらえるんだろう。楽しみだ。

「ここだ」

「ヴァンパイアと言った感じの屋敷ですね」

「……王都にいく前はなかったと思うがな」

 お父さんが見上げる屋敷が依頼の場所みたいだ。デシウスさんが呟くとお父さんが不安を口に出す。魔物の群れが作り出した可能性があるってことか。ってことはゴブリンキングを操っていたやつが作った可能性がある。王都の方向とは逆に歩いてきたから可能性はあるな。

「とりあえず屋敷の周りを見て回るか」

「そうだね」

 お父さんの提案にララちゃんが答える。まずは安全の確認だ。
 屋敷を一周、裏口にも入口があるのを確認すると屋敷の正面の入口に戻る。

「ではでは~、ジーニ様は私と一緒に裏口から~」

「ん? 何を言ってるの、一緒に行くに決まってる」

「いえいえ、私といたほうがジーニ様のためですので~。それにお父様はララを守ってくれるでしょ。ゴーレムは入れないですし」

 なぜかバラバラになる提案をするデシウス。ララちゃんに反対されて口論になる。言ってることがよくわからないし、僕も反対しておこう。

「バブバブバブ!」

「……ほら~、ジーニ様も私と来たいって~」

「ん! 違う! 嫌だって言ってる」
 
 赤ん坊言葉では反対してもいいように解釈されてしまうな。仕方ない行動で示そう。

「バブ!」

「ジーニアス!?」

 僕はララちゃんの手を離れて正面の扉へと突撃。豪快に扉を破って入場。デシウスさんもララちゃんも驚いて急いで駆け寄ってくる。ゴーレムは入れないから外で待機だな。お父さんはヤレヤレって感じでついてきてるな。

「危ないですよジーニ様」

「めっ! ジーニちゃん」

 二人して僕を抱き上げる。デシウスさんはすぐに頬を擦り付けてきて、ララちゃんはその間に手を挟む。うむ、どちらも柔らかい。

「おやおや、お客様ですか」

「情報通りだな」

 二人の柔らかさに顔を緩ませていると双子の貴族の服を着た少年が現れた。ニヤニヤと笑いながら話してきて、僕らを値踏みしてくる。

「小さな少女に赤ん坊、エルフに父親か」

「全員若いな。まあ、エルフは50歳と言ったところか?」

「!?」

 デシウスさんは50歳だったのか! 双子の話を聞いてみんなデシウスさんの顔を凝視。デシウスさんは頭を掻いて照れて見せた。
 流石エルフだ。全然見えない。

「エルフは100歳を超えると血が濁る。ワインに例えるとランセルの30年物」

「そうだね。ランセルは10年物の方が美味しい」

「……変態」

 双子は血の味の感想を言ってくる。ランセルっていう国があるのかな? ワインの場合は地方かもしれないけど。思わず双子の話を聞いてララちゃんが呟いちゃってる。確かに変態だ。

「変態とは聞き捨てならないね。まあいい。人に血の味が分かるはずがない」

「ワインもな」

「そうそう」

 双子は尚を話し続ける。ワインは普通に人も分かると思うけれど、血の味を語るってことはやっぱりヴァンパイアってことだよな。

「ではでは、お客様を歓迎しようか」

「ああ、そうだったね」

 双子が抱き合って体を絡ませ始める。すると急な浮遊感を覚えた。

「きゃ!?」

 床が開いて僕らは地下に落ちていく。岩肌の奈落、お父さんとデシウスさんは剣を横に突き立てて僕とララちゃんを支えてくれた。

「真っ暗で何も見えん」

 地面も見えない縦穴。お父さんの呟きが木霊してくる。

「ん、松明持ってる。ちょっと待って」

 ゴソゴソとララちゃんが自前のポシェットから松明の棒を取り出す。火打石をカチカチすると火が松明に移る。火が辺りを照らすと無数の視線を感じた。

「バブ!? バブ!」

「きゃ!」

「じ、ジーニアス!」

 僕はすぐにみんなを掴んで縦穴を下る。壁を何度も蹴って速度を落として地面へとみんなを下ろす。そして、上を見上げた。
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