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第一章 ジーニアスベル

第16話 特産品

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 雪山から帰ってきて一週間程が経った。あの後は大変だった。お母さんが号泣してシリカちゃんも一緒に泣いちゃった。お父さんとララちゃんには叱られちゃうし……。二度とペナルティーを受けるわけには行かなくなっちゃったよ。
 でも、収穫はあった。マジックバッグだ。赤ん坊用のリュックバッグの形に変わってくれて、何でも入る。魔石もたんまり入ってる。
 あれからの試練はどれも魔物退治のものだった。Eランクの魔物を倒して知力があがってきちゃったよ。そのおかげでこんなにステータスがあがっちゃった。

 ジーニアス 0歳

 LV45

【体力】300
【魔力】235


【筋力】229

【生命力】159

【命中性】161

【敏捷性】396

【知力】350

【精神力】203

スキル

【試練受注】【試練変更】【試練製作】


 45レベルにもなってスキルが増えた。試練製作、最初は試練を製作すると思って嬉しかったんだけど違うんだよね。
 製作物を納める試練だった。例えば、パンを納める試練だったら、パンを作って天に掲げると達成になるんだ。もちろん、作らなくても買って納めれば達成できる。
 最初はかなり簡単なものだった。

 ーーーーーーー

  試練

 魔物の魔石を納めろ 0/10 

 報酬 経験値 剣

 ーーーーーーー

 魔物の魔石ならなんでもよかったから今まで貯めてた魔石をそのまま納めるだけで済んだ。そのおかげでいくつか武器や防具が僕のリュックの中に入ってる。見た目はかなり強そうな剣や防具だけど、今の僕には関係ないからな。大きすぎて装備できないし。
 それでも武器は助かるけれど、いつまでも頭突きや体当たりしかできないんじゃ、様にならないもんな。

「とりあえず、みんなの住める家は建て終えたな」

「ジークさん。助かりました」

「いやいや、俺だけじゃないですよ。みんなで作ったんだから」

「はい! 改めてジークさん、エリアスさん、ジーニアスちゃん。本当にありがとうございました」

 村の中央に広場を作って村の完成祝い。お父さんがホッと胸を撫でおろして呟くとみんなを代表してシリカちゃんが声をあげる。
 騎士団の人達は僕の名前も挙がったことに驚いてるけど、難民だったみんなは大いに喜んでくれた。

「さて、これから難民のみんな……じゃなかった。村のみんなを養わないといけないわけだ。何か村の特産品みたいなものを町や王都に売り込まないとな」

「おっと、その前にだ。オーベンって言う村の名前も変えないとな」

「ん? 名前はいいだろ?」

「いや、一度終わった村の名前は縁起が悪いだろ」

 お父さんがそういってみんなの顔を見まわすとグッツさんが声をあげる。
 一度滅んだ村か、それが今は少し大きくなった。ゲン担ぎにも名前は大事かもね。

「名前か……エリアス」

「どうしたのジーク?」

 お父さんが顎に手を当てて呟くとお母さんの顔を見る。二人でひそひそと話すと机の上で傍観していた僕を二人で見つめてくる。

「「【ジーニアスベル】!」」

 僕を抱き上げてみんなに告げる二人。

「ジーニアスベル……」

「どういった意味なんだ?」

 みんな疑問に首を傾げるけど、二人はニッコリと微笑んで、

「「この子がこの世に生まれた年に出来た村って意味」」

 ニヒーっと微笑えむ二人、久しぶりの親バカを発揮かな。でも、なんか嬉しいな。

「素晴らしいと思います! ジーニアスベル。ベルと付くんですから町の入口にベルを飾りますか?」

「そうね……。紋章も作るべきだと思います」

「紋章?」

 シリカちゃんが喜んで声をあげると冷静にローズさんが呟く。紋章って貴族が持っているようなものだよな。

「ローズさん。俺達は別に貴族になるわけじゃ」

「いいえ、村の長なのですから必要になるでしょう。それに、偉大な英雄様なのですから」

「英雄か……」

 お父さんが戸惑っているとローズさんが話した。
 お父さんが戸惑うのも無理はないよな。王様に声を荒らげたのは悪いかもしれないけど、切りかかってくる貴族がいるんだからね。

「まあ、とにかくだ。村の紋章ってことで作っておけばいいんじゃねえか? 俺は賛成だぜ」

「グッツ……、まあそうだな。そうすれば、ローズさんも反対しないだろ」

「はい。それでいいと思います。命令するような形になってしまい申し訳ありません」

「あっ、いや……」

 グッツさんが賛成の声をあげるとお父さんも納得した。ローズさんが深々とお辞儀をして謝ってくる。そこまで畏まらなくていいと思うけどな。

「よっし、話はまとまった。あとは特産品だが」

「それに関しても少しいいものを森で見つけました」

「森で?」

 グッツさんが声をあげるとローズさんが答える。

「森の中に洞窟がありまして、魔物を退治したんですが。その洞窟に鉱脈を見つけられたんです」

「鉱脈?」

 ローズさんの報告でお父さんが首をかしげるとミルファさんがうんうんと頷いてる。彼女は鉱石の鑑定なんかも得意なのかな。

「はい、団長。その鉱脈を調べて鉄と銅、硝石をみつけたよ。魔物が住みついてたから効率よく資源になってたのかもね」

 鉄、銅、硝石……どれもこれも多すぎると危ない資源だな~。戦争の匂いがしてくる。

「もっと深くまで探せればもしかしたらミスリルなんかもあるかも。金なんか見つかれば大金持ちだね」

「そ、そんなに深いの?」

「うん。今は冒険者と一緒に探索しているけど、三つ又の道がいくつもあって、アリの巣みたいになってるよ」

「……ダンジョン?」

 ミルファさんの報告にローズさんが顔を曇らせて呟かれる。ダンジョンってまさか、あのダンジョン? ゲームなんかでも出てくる無限資源のダンジョンですか!

「団長。まだわからないよ。取ったものが復活するのは一か月はかかるからね」

「そ、そうか……そうだな」

 ミルファさんがローズさんの背中をポンポン叩くと彼女は落ち着いていく。ダンジョンの中の資源は復活するのか、異世界ファンタジーって感じだな。

「あの、ダンジョンって?」

 シリカちゃんが声をあげるとオホンと咳ばらいをしてミルファさんが地面に絵をかいていく。

「ダンジョンとは簡単に言うと魔物と資源が無限に湧く洞窟です。ただ、姿がそれぞれ違うので洞窟だけとは言えないのでダンジョンと呼ばれます」

「洞窟以外もあるんですか?」

「はい。一番有名なダンジョンで言うと魔法学園エルゼルアの中央にある魔導士の塔ですね」

「え!? あれってダンジョンだったんですか!?」

 ミルファさんが説明していくとシリカちゃんが驚いて声をあげる。
 学園の中央にダンジョンがあるのか。それだけ大事ってことかな?

「危険はないんですか?」

「冒険者に定期的に間引きしてもらっていれば大丈夫です」

「そ、そうですか。よかった」

 お母さんが心配して声をあげるとミルファさんが答えてくれた。

「でも、最高な名物が出来たじゃないですか。ダンジョンと鉱石の町ですよ。ゴールドラッシュの町です」

「……ダンジョンについてはまだ早い。宣伝はやめよう」

「え!? なぜです? お客さんがひっきりなしに」

 ミルファさんが喜んでいるとお父さんが水を差す。彼女は少し怪訝な表情になった。

「治安が悪くなる。ローズさん達が大変なことになるかもしれない」

「そ、それは……確かにこの人数じゃ検査もままならないけれど」

 冷静なお父さんの言葉にミルファさんが申し訳なさそうに俯いていく。

「流石ですねジークさん。では当分は鉱石を外に排出するのみでダンジョンのことは伏せておきましょう。ダンジョンの間引きは私達ローズ騎士団とララさん率いる冒険者でしていきましょう」 

「ん」

 ローズさんが声をあげるとララちゃんが親指を立てて同意する。え? ララさんが率いてたの? リーダーってほんと?
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