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第六章 学園都市ブラウディア

第三十四話 大司祭

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「ひっひっひ、これで西地区は儂の物じゃ」

 ダインズ教会の大司祭は恥ずかしくもなく下品な笑顔で窓の外を見やる。

 教会の外には有象無象の民の列が出来ていた。

「しかし大司祭ダラク様、これはどういう事でしょうか?。何故こんなにも患者が?」

 司祭は首を傾げる。普通に見てもおかしな光景である、この光景に疑問をもたない大司祭ダラクは笑みをうかべて司祭に語った。

「この者達は皆、神の悪口を言ったのですよ。だからあんなに苦しんでいるのです。何とも可哀そうに、すぐに加護を持っている物を救うのです。一時の気の迷いで口走ってしまったのでしょう。さあ、すぐに」
「そうだったのですか。では今すぐに加護持ちを救うため行ってまいります」

 司祭は輝かんばかりの笑顔で教会の入口を開け放ちに向かった。しかし大司祭ダラクは豪華な椅子に腰かけて葉巻に火をつけて一服した。

「何とも教会という組織は単純な物よ。神が救いたもうた、神のお導き。神の神のといっていればすべてが通用する。実に簡単な物だな」

 大司祭ダラクは笑いが止まらなかった。

「ん、悪党はどこも一緒。みんなあの笑い方してる」
「我らの雇い主もそんなものです」

 ララとナナは情報収集に励んで教会に潜りこんでいた。ハチは外から教会の動きをうかがっている、男は大司祭と司祭しかいないので中には入れなかった。

 シスターの服を着たララとナナは教会内を把握しつつある。

「後は大司祭の部屋か」
「あいつあんまり外にでない。・・・ナナ、は色仕掛けできる?」
「ええ、やですよ。あんなのに声かけるの」

 大司祭はお世辞にもイケメンではない、司祭ならともかく大司祭はブルドックのような顔であり何とも言い難い面である。ナナは苦虫をかみつぶしたような顔で否定する。

「大司祭は幼女が好きとか聞きましたからララさんならばお眼鏡にかなうのでは?」
「ナナ、あとでジーニ様にお仕置きとローズに報告する」
「そんなご無体な。でも大司祭が幼女を愛でるのは知ってるでしょ」
「・・・」

 教会を調べている過程でそう言う情報があった。加護なしを蔑む一方で加護なしの可愛い幼女を安値で引き取り囲んでいるのだ。そして無用になったら・・・。

「ただじゃおかない、しょうがない。私が行く」
「ご武運を!」
「あとで本当にお仕置き」
「ご無体な~」

 ナナは泣きそうな顔で訴えたがララの目は本気だった。この後ララは大司祭ダラクにあんなことやこんなことをと薄い本展開に・・・・なるわけないが有志の方々によって薄い本は作られたとか何とか。

 うまく取り入って言質を取ったララは大司祭を眠り薬で眠らせてナナと合流。

「確かに大司祭が絡んでた」
「良い報告ができそうですね。それで大司祭の体はどうでしたか?」
「ナナは本当にお仕置き」
「ご無体な~心配しているだけなのに~」

 この後、ナナはローズとララの訓練を受けて庭に屍を晒すのだった。






「爆弾が爆発しなかった?」
「ええ」

 タスクとエリンは学園に行く前にエリンの屋敷の中庭で話し合っていた。

「何でだ?あれは時限爆弾なんだろ」
「そうよ。爆発しないわけないの」

 エリンは自分の魔法に絶対の自信を持っていた。しかしその爆弾は爆発しなかった、エリンは不安に顔を歪める。

「まさか、バレたのかな?」
「バレたか、魔法が失敗したかだ」
「失敗なはずない!私の魔法よ!」
「じゃあ、バレたんだろ。いずれにしろ俺達がやった事がばれなければいいんだよ」
「・・・ええ」

 タスクに頭をポンポンされるとエリンは少し頬を赤く染めて俯いた。

 しかし彼らは知らない。ジーニの最愛の人に危害を加えようとしてしまった事を、そして自分達がやったという事が知られている事も。

 彼らは何も知らずに学園へと登校していく。







「全く、ジーニのクラスメイトは過激ね」

 グロリアはため息と共に言葉をもらす。

 グロリアの固有スキル、[学園は私]の効果により学園の中の事はすべて把握できていた。学園内限定のスキルのはずなのに二人の会話は、グロリアに筒抜けだった。

 エリア限定のこのスキルはジーニとルクスを瞬時に移動させたスキルであった。右手から左手へと移動させるように瞬時にできる。
 
 学園すべてが彼女の手であり目であり耳なのだ。彼女に学園で嘘は通じない。

「だけど、必ず通らなくてはいけない道。ジーニには必要な道よね」

 頬杖をついてグロリアは微笑む。

「だってこの学園に呼んだのもこういう事を片付けてほしかったからだもの。大きくなりながら同時に平和へと導いてほしいのよね」

 グロリアは水晶に映るジーニを指で突っつく、まるで子供を見るようなその眼差しには優しさが溢れていた。

「だけど破壊神まで味方につけているとはね。ジーニなら、私の成しえなかった事が出来る。私はそう信じてるわ」

 期待を胸にグロリアはジーニを見据える。

 心配の種が増えれば増えるほどジーニを大きくするだろうとグロリアは笑みをうかべていった。 
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