上 下
136 / 252
第五章 兄妹の絆

第二十七話 アドスバーンの心配

しおりを挟む
「妹君も素晴らしいな」

 上空よりアドスバーンはジャンヌ達を見ていた。ジャンヌの力を見て賞賛している。

「僕の妹だからね。ライとレイもすっごいでしょ?」
「ああ、しかし君なら一瞬で終わらせられたんじゃないのか?」

 アドスバーンは僕がいる事に驚かなかった。僕はアドスバーンの疑問に答える。

「僕が終わらせるのは簡単だよ。だけど僕は一人なんだ、僕がいない時に何かあっても何もできなかったらダメでしょ?」
「言いたいことはわかるが妹達に人を殺させて大丈夫なのか?」

 アドスバーンは妹達を心配してくれている。だけど大丈夫ジャンヌはもう乗り越えているしライとレイも乗り越えられるはずだよ。僕は妹達を信じてる。

「大丈夫だよ。だけど何かあったらその時は助けてほしいな」
「ああ、それは安心してくれ。彼女らが危ない時は私が盾になろう。君と敵対したくないからな。それで一つ気になる事があってね」

 アドスバーンは約束を誓ってくれた。それから僕に何かを伝えたかった事を話していく。

「このゾンビ騒動の時に一人の貴族がアステリアに来たんだがそいつがエグバンの宰相の息子のグラーテなんだ」
「え!?エグバンの宰相の息子!?....。ってエグバンってどこですか?」

 アドスバーンは空中なのにドテッとコントのように足を踏み外した。僕はこの世界に疎いのでしょうがないでしょ。

「まったく...エグバンはな人族の王が住む街だ。最強の魔導士と七聖剣を保有している。私ほどではないが強い将軍達も多くいるぞ」
「そんな国の宰相の息子が僕の街に来て何をしていったの?」

 とっても凄い街みたいだね。だけどそんな凄い街の貴族が何で僕の街に来たんだろう?。

「落ち着いて聞いてくれ。流石にエグバンと戦争をする事になると私も困るのでな。....アステリアの全員を奴隷にしようとしたのだ」

 僕はそれを聞いてあきれた。そんなに凄い街なのに奴隷に頼ってるんだね。

「それでだな。次期エグバンの王、現在の王子が学園に入学するのだ」
「え?今年って事は6歳なんですか?」

 アドスバーンは僕の疑問に頷く。考えがわかった、その子を懐柔してエグバンを世直しするんだね。

「噂では相当な悪ガキのようだ。用心しろよ」
「大丈夫、僕にはみんなもいるしね」
「ああ、そうだったな。お?ライが動きだしたな。あの天雷の剣とか言うのが助言したようだ。あれはジーニの剣じゃないのか?」
「ふふ、あの子はライにあげちゃった。だって僕は守らなくても大丈夫だろ。って言われたんだもん。失礼しちゃうよね。こんなにか弱そうで可愛いのにさ~」

 アドスバーンはとても呆れているけど頭を撫でてくれた。ふっふっふ、アドスバーンも僕の可愛さにイチコロさ。

「あの剣には魂のような物を感じていたのだがやはり?」
「そうだよ。あれにはオークキングの魂が入ってるんだ~。僕に恩を返す為に頑張ったんだってさ。律儀だよね」

「では、あのゾンビになっている体の方には?」
「ん~、何も入ってないんじゃないかな?だけどオークレはうまく操れてないよね」

 アドスバーンは僕の疑問に答える。死霊術って言うのは死んでいる脳を操るらしい。ある程度、魂の欠片が無いと操りにくいみたい。だから魂全部が剣に移っちゃってるオークキングは操りにくいって事。

「しかし、惜しいな。あのオークの群れはとてもいい武人達だった。今もな....」

 アドスバーンは遠い目をしてる。今アステリアを襲っているゾンビ達にオークたちはいない。

 オークレの命令を聞かなくなったオーク達はライの向かっている先に放置されているのだ。オーク達は自爆で門を壊した後から言う事を聞かなくなりオークレは放棄した形にならざる負えなかった。

 ゾンビになってもなおオーク達は仲間を思っていたのだ。それを自爆と言う形で踏みにじられた。彼らは憤っているのだろう。

「僕の友達だからね。でも彼らはもうこの世界の住人じゃなくなっちゃった」
「ライが天へと送ってくれるだろう...」

 俯いて涙目になってる僕をアドスバーンは抱きしめてくれた。

 おじさん趣味はないけど惚れちゃいそうだよ~。見られてないから薄い本にはなりません。残念でした。

「ではライを見に行くかな」
「じゃあ後で、僕はレイを見てるからね」

 アドスバーンはライの走っていった方向へ飛んでいく。僕はジャンヌとレイを見ていたんだけどジャンヌが別空間に飛ばされてひやひやしてたんだけど少しして戻ってきたので安心しました。流石僕の妹、美少女戦士にはなっちゃうし綺麗で可愛いなんて最強だよね。僕もかっちょいい変身を考えなくちゃ~。もうすでに一つ考えているんだけどね~、ふふふ~。

 





 その頃アステリアの城壁前では[薔薇]とアドスバーンの軍がゾンビ達を一方的に攻撃していた。

「除草剤ならぬゾンビ除去剤~~」

 アイーラが城壁から水鉄砲のように液をばら撒いている。それを受けたゾンビ達はドロドロと溶けて死んでいった。

「凄いわね、それ」
「ふっふっふ、こんなこともあろうかと。作っておいたんですよ。これを作るのにどれだけの時間をかけたか。何と12時間ですよ。ローズ様の事を考えられずに12時間もかかったんです!偉いでしょ?」

 アイーラが自慢げに製作時間を話すがそれを聞いていた周りの兵士達はたったそれだけでと唖然とした。天才と名高い者は皆、変人と言われるがアイーラもそうだった。

 アイーラは神童と言われ小さな時から研究を続けていた。そして研究する過程でローズの研究もしていたのだ。最初は片手間でやっていたローズの研究も今では本腰を入れて研究している。

 ローズの髪の毛を研究したときに感動を覚え、ローズの築いてきた軌跡を知り恋に落ちたのだ。そしてその髪の毛から今のゾンビ除去剤を作り出した。

「流石ローズ様~大好きですよ~~」
「何で今ローズに?」

 まさか材料にローズの髪の毛を使っているとは思っていなかったジェイラは疑問を浮かべるがそれを知る事はないだろう。

 そしてこの頃ローズは鳥肌を立たせて身震いする。

「何だこの悪寒は....まさかジーニに何か?」
「ん、たぶんローズのは違う人だよ」
「そうですよ。私は感じませんもん」
「それよりもあやつはいつ帰ってくるのだ?」
「ジーニちゃんはアステリアで見守ってるからまだ帰ってこないよ~」
「ジーニ様~~、んん~お匂いが少なく」

 まだ船の上の面々はジーニのいない間、とても寂しい心情である。しかしジーニに待っていてと言われていたので何とか堪えている。

 船は中継地を出た所で船もシーレイクから出た船ではない。なので、

「おいおい、可愛い姉ちゃんばっかじゃねえか」
「一緒に飯でも食わねえか?」

 こういう命知らずな船員がいるのだった。シリカたちはそれを無視していると船員は良い気がしなかったようでローズの腕を取り引っ張ったが逆に引っ張られて尻もちをつく。

「な!何だこいつミノタウロスみて~におもてえ!」
「ミノタウロス....」
「ローズミノタウロス、おもしろ~い」
「ぷふっ、フローラちゃん笑っちゃ、ローズに悪いわよ」
「ん、ミノタウロス.....プフ~」

 ローズが俯き落ち込んでいると各々がミノタウロスという単語に笑う。ローズは顔を真っ赤にして怒り、船員の急所を蹴りあげた。

「ミノタウロスのように重くて悪かったな!!」
「アブラッ!!....」
「ダビデッ!!...」

 一瞬で二人の急所を蹴りあげた、ローズは腕組してその様子を見る。

 船員の二人はその場に急所を押さえて前のめりに倒れる。男ならばこの苦しみを知っているだろう。ご愁傷様である。

 その間も船は次の目的地、港町ポストガへと航行していく。
しおりを挟む
感想 179

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。 今年で33歳の社畜でございます 俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう 汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。 すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。 そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

処理中です...