異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
上 下
111 / 252
第五章 兄妹の絆

第二話 ライとレイ

しおりを挟む
「ダ~ダダダ」
「ブ~バブブ」
「ダダダダ~?」

 ここは深淵の森最深部。何故かこんな危ない森に赤子が3人。赤ちゃんにしかわからない言葉で話し合っているその姿はとてものほほんとするが...。

「ガウ?ガウガウガ」
「ワウ?ワウワウワ?」

 コクエンの子供達も集合して一緒にパワーレベリング中である。そしてその周りには死屍累々。

 最初の被害者は前と同じハイゴブリンであった。

「ギャ?ギャギャギャ~」
「バブ?」

 おとりとして一人放置されていたライに気付いたハイゴブリンはとても喜んで近寄っていったのだ。そしてそのままかぶりつこうとした時。

「アギョ?」

「ビエ~ン...」 
「ダダダ~」

 ライは泣いてしまった。目の前でゴブリンの顔がはじける姿を見せられているのだから泣いちゃうよね、しょうがない。

 ゴブリンを潰したのはおなじみの木の巨人である。こんな感じで囮が変えられるだけで同じことを繰り返している。この世界の経験値の分配は敵のターゲットになった物ももらえることになっている。なのでライとレイを代わる代わる囮に使っているのだ。

 ある程度繰り返した時にライとレイがジャンヌに抗議を始めた事で今に至る。

「バブ!バブバブバ~」
「ダ~ヨ!ダ~ダダ~」
「バブバブバ~」

 何とも微笑ましいが内容はこうだ。

「何で僕らばっかり囮なの!。お姉ちゃんもやってよ」
「私はもうレベルアップしているもん。ライとレイだけやればいいのよ」
「姉ちゃんの嘘つき。精霊で倒してるからお姉ちゃんにも入るじゃない」

 といった感じでライとレイは不満をもらしていた。ライとレイもジャンヌのように特殊な能力を持っているのだがジャンヌやジーニほどの物ではない。なのでレベル上げは必須である。

 そう考えたジャンヌはいち早くライとレイをパワーレベリングすることにしたのだった。今でも十分レベルは上がっているのだがジャンヌはジャンヌ自身やジーニを見ているのでまだまだ足りないと二人を説教していく。

「ダダダ~(ジーニお兄様に追いつくにはこんなもんじゃ足りないのよ。私達はジーニお兄様を支える大切な柱なんだから)」
「バブバババ(そんな事言っても僕じゃ)」
「バブブブババ(ライは弱虫だものね。しょうがないわよね)」

 ライはとても気弱である。そしてレイは気が強い。しかしライの方がお兄ちゃんなのでもっとしっかりとしないと。
 
「バブ(どうせ僕なんか)」

 ライはまた泣き出してしまう。しかし普通の子供ならばゴブリンなどを目の前でみたらとてもじゃないがまともでいられるはずもない。

「バ~ブ(もう、なんでお兄ちゃんは....ジーニお兄様を見習ってほしいな~)」

 兄妹たちはジーニの武勇伝をメリアお母様から聞いている。なのでみんなジーニを慕っているのだ。そしていつの日かジーニと肩を並べてこの世界を良い世の中に変えようと誓って、レベリングを実行していく。

「バブ(僕だってもう40レベルだよ。もう大丈夫だよ)」
「ダ!ダダダ!(何言ってるの!まだまだ普通の達人にも負けるレベルよ!少なくとも100レベルはいかないと!)」

 ライの弱音に鬼軍曹のジャンヌがまだまだと説得していく。ライは涙と鼻水で顔がグチャグチャである。

 そして強制的ともいえるパワーレベリングは実行されて行く。

 この深淵の森はとても優秀なレベル上げ場所である。しかし通常の冒険者では入るまでに一苦労である。

 アステリアからの入口にはBランクの魔物が軽く5匹は目視できる。そして中に入っていく、するとマナだまりがいくつも見られる。そのマナだまりから魔物が湧くのだがその湧く魔物はC~Aランクといったメンバーである。ジャンヌ達はそんな所でレベリングをしている。最強の精霊たちを持っているジャンヌにとっては最高の場所であった。

「ダダダ?(ライはそろそろ剣を使って一人で戦ってみなさい)」
「バ?バブバブ!(え?無理だよ無理~あんなコワイものと一人で戦うなんて)」

 ライは手を顔の前で交差して×を表現した。しかしジャンヌは風の女神から剣を受け取りライに渡す。いやいやしていたライだったがライは剣を取ると湧く魔物を一人で狩っていく。その姿はまさしく星戦争の緑のお爺ちゃんの動きだった。これはジーニを彷彿とさせるモノだ。

 ライは[剣王]のスキルを所持している。ジーニ達と比べるととても弱いものだが剣に関しては右に出るものはいなくなるほどのスキルである。今もそれを体現するようにゴブリンやトレント、またまた泥人形の魔物のドロンゴを引き裂いている。

 さっきまで怖がっていた赤子とは思えない動きで最後の一匹を屠ると力なくその場に座り込んで泣き出した。

「ビエ~ン!!」
「バブバブ~(よくできました~。流石お兄ちゃん、まるで映画見てるみたいだったよ)」

 レイは優しくライの頭を撫でている。しかしその姿は姉の様相であった。そして今度はレイの出番である。

「ダダダ~(はい!レイにはこれね)」
「バブ~(ハ~イ、私のスキルなら楽勝よね)」

 レイは余裕でジャンヌから渡された杖を振り回している。そして魔物を見据えると無詠唱で魔法を無数放っていった。

 レイは[多重キャスト]のスキルと[無詠唱]スキルを所持している。これだけではまだまだ[剣王]よりも劣るものだが更に[杖の女王]のスキルも持っているので魔法が凄い事になっている。

「バブ![ファイアボール]×5」

 魔物に向かってジーニの魔法のようなフェニックスが襲う。魔物は一瞬で炭になり消えていく。6属性の魔法を全部使って見せたレイは得意気にジャンヌを見やるとジャンヌはレイの頭を撫でてあげている。とてもお姉ちゃんしているジャンヌであった。

 こうしてジーニの兄妹たちは逞しく成長していく。そしてジーニの留守のアステリアやルインズガル大陸を守護していくのだった。








「ふふふふ、大量大量、とってもいい素材達だわ~」

 ここはヘンダークより北の墓地、アダマイオスと一緒にアステリアを攻めようとした死霊術士、オークレが不敵に笑いながら墓地に討ち捨てられたヘンダークの元幹部達を掘り起こしている。

「これだけあればキメラも思いのまま、オークキングはうどの大木になってしまったし。怨念を持ったこの子達なら生きている時よりも多くの人間を葬り去る事ができるわ~」

 オークレは歓喜の舞を踊る。その間もゾンビ達が死体を掘り起こしていく。そのゾンビの中にはあのアダマイオスだった死体もあった。

「ふふふ、アダマイオスもいい感じに怨念を帯びてきたわね。ふふふ、恨みはないけれどアステリアの子達を私の配下にしたいのよね。だからこの子達に頑張ってもらわないとね」

 オークレは着々とアステリア攻略の為の軍を作っていく。

 死霊術の怖い所は配下にした死体をいつでも地面から召喚できるところである。

 ジャンヌ達がいかに強くとも油断してはいけない。アステリアの者達には弱いものもいるのだ。

 ヘンダークの墓地に死体が一つもなくなり一人の女が去るのが確認された。しかしだれも気にはしなかった。自分達を迫害してきた者達の死体などどうでもよかったのだ。

 またここに戦の種火が
しおりを挟む
感想 179

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...