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第四章 ルインズガル大陸

第十四話 アステリアの守り神

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「ジャンヌ、またあなたは...いつの間に外に出たの?」

 メリアは屋敷の庭にいたジャンヌを見て、呆れた声をあげる。さっきまで屋敷のベビーベッドの上で寝ていたのにいつの間にかいなかったので心配していたのだ。メリアはとても困っている。

 前回もそんな感じでジャンヌは空に散歩に行っていたのだ。こんなことがしょっちゅうなのでメリアは困惑していくのだった。

「も~あなたは女の子なのよ。ジーニも0歳の頃はこうだったの?」
「いえ、ジーニ様はとても静かに....いえ、確かに屋敷中をハイハイして回っていました。目を離すとすぐにいなくなって。私も毎日探していました...」

 メリアの問いにシリカはそう話す。この頃のジーニはとても急いでいた。メリアが衰弱していっている事もあり急いでいたのだ。赤ん坊の体で見る世界が新鮮だったこともあっただろうがジーニは強さを早く手に入れたかった。

「そう、なのね....。私はそんな元気に動いていたジーニを見そびれたのね」

 メリアはジャンヌを抱き上げて残念そうに話す。その残念な気持ちを払拭するようにジャンヌの頬に自分の頬をこすりつけて体温を感じるのだった。

「大丈夫ですよ。ジーニ様はメリア様の心を理解しています」
「ふふ、シリカが言うならそうなのでしょうね。何て言ってもジーニの一番なんだから」

「そ、そんな私なんか」

 メリアの言葉にシリカは頬を赤く染めて照れる。メリアは少し悔しさを滲ませたがシリカだからと納得をしてジャンヌを連れて屋敷に戻ろうとする。しかし、

「きゃ!」
「ゴーレム!?」

 メリアとシリカの前に石の巨人が現れた。もちろんこれはジャンヌのゴーレムなのだがこの事を知らないアステリアではひと騒動となっていく。

「どうした!!、な!何でこんな所にゴーレムが」
「ちょっとまて!あのゴーレムは見たことないぞ」

 ツヴァイとフッティアがシリカとメリアの叫びに反応して駆けつけたが想像もしていない魔物がいた事で一瞬動きを止めた。

「ロックゴーレム...」
「最低でもBランクの魔物だね」

 ガルドとマリーもやってきた。それからも多くのアステリアの住人が集まってきたがゴーレムは動かなかった。

 静まり返るアステリアの人達に反してジャンヌはドッキリを成功させた人のようにキャッキャと笑っているのだった。

「ん、たぶんジャンヌ様、楽しんでる」

 屋敷の中から見ていたララは勘づきそう呟く。ララはそれどころではなかったのでみんなにネタバラシをするつもりはなかった。

 ララは屋敷内でぶつぶつと告白の言葉を練習するのだった。

 ジャンヌの出したゴーレムはずっと屋敷前に鎮座し、アステリアを見守る守り神になっていくのだった。

 もちろん堀には水の女神が目撃され。空には風の女神が目撃されていく。彼ら彼女らはこれからアステリアを守る最強の存在になっていくのだがそれはまた今度のお話。

 そんなこととはつゆ知らず。夜遅くにアダマイオスの斥候が堀の深さを調べていると水の女神が現れ斥候を帰らぬものにしていくのだった。

 これによりアダマイオスの兵達の士気は下がりアダマイオスは攻めてをあぐねるのだった。

「何なんだあの街は....何故斥候がかえってこない」
「....」

 アダマイオスの疑問に兵士達は黙り込む。誰も斥候の行方を知らないので黙ってしまうのは仕方ない。そして更におかしなことが。

「この森もおかしい、木が動いているように思える」
「それが....兵士が行方不明になっているという報告もあがっています」

「やはりか...山へと陣を移せ」
「ハッ!」

 アダマイオスは今の位置よりアステリアから離れる事を決めた。

 その提案は正解であった。ジャンヌの能力の範囲内であるこの森には木の巨人も現れているのだ。ちなみに木の巨人は石の巨人のような普通のゴーレムタイプである。

 ジャンヌやその関係者に悪意を向ける者を始末していく巨人達はジャンヌを守る為、静かに任務を遂行していくのだった。

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