上 下
23 / 252
第二章 信仰と差別

第九話 お酒にはご注意を

しおりを挟む
「ふひひ、奴も女よ。これさえ飲ませれば・・・あのうるさい小娘も手はず通りアルサレムへと帰したしな」

 僕がいるとも知らずにロクーデは結構な声で呟いている。まったくこりていないようで僕は悲しいな。マリーはどうやらロクーデの手によってアルサレムへ返されてしまったようだ。失敗したな~。

「しかし、かなりの出費をしてしまったな・・・商人ギルドでの儲けも底をつきそうだ。ニクライも捕まってしまうとはな。奴には国外通報にしてくれた恩もあるが金の切れ目が縁の切れ目私はしらん。」

 ロクーデはかなりのお金をばら撒いてしまい焦っている。思いのほかローズに対する出費がでかかったようでロクーデの思惑通りにはいかなかったようだ。

 国家転覆レベルの事件を起して処刑されなかったのはニクライのせいだったのか・・・、悪い人って繋がってるんだね。

「まさかアステリアの事が表立ってしまうとはな。それもこれもあのフェイクという男の話に乗ってしまったのが原因か」

 おっと、不意に自分の知る名前がでて僕はハッとしてしまう。まさかフェイクの名が出るとは思わなかった。ただのうるさいおじさんと言う印象しかなかったフェイク。まさかロクーデと繋がっていたとは。僕はてっきり双子とだけ繋がっていたと思っていたよ。

「すべてはあの双子がツヴァイを逃がしてしまったから・・・・チッあのメリアを手に入れられると思ったのに!このうっぷんをローズで晴らさせてもらうぞ」

 ロクーデは嫌な笑いで部屋を包むと手に持った酒に粉状の何かを入れた。

 あれがさっき言っていた飲ませたらどうとかっていってた物かな?。僕は興味津々にその物を見ていた。

「アブブ!」

 ロクーデがお酒を持ってすぐに扉を開けてきた。僕は驚き、開く扉の裏に隠れた。とても焦りました。まあ見つかっても僕のお腹が活躍するだけなんだけどね。

「ローズ、ローズ!!」
「何度も呼ぶな。・・まったく私はお前のお母さんではないんだぞ」
「いやいや、すまなかった。あの子にも謝っておいてくれ」

 ロクーデの豹変にローズは首を傾げる。ロクーデの嫌な笑みは更に続く。

「先程の非礼にいい酒を持ってきたのでな・・飲まないか?」
「それはいいのだが・・酒か。だが護衛の任務が」
「シュミットで何かが起きる事はないさ。本当に私と来たら・・ちょっと機嫌が悪くなるとあんな言葉を・・・本当にすまなかった」

 ロクーデは優しく今までの事を謝り続けた。そして最後、謝る時には机へ自分のおでこを強くぶつけて謝る。ロクーデのおでこは赤くなっている。ロクーデの執念を感じる。

「ロクーデ、そんなに謝らないでくれ。仮にも私の雇い主なのだから」

 良心の強いローズはロクーデの術中にはまっていく。そしてロクーデの持ち出した酒を受け取ると一口また一口と口に運んでいった。

「うまい、なんて美味しい酒なんだ・・・」
「そうでしょうそうでしょう・・・ふひひ」

 下品な笑いをこぼすロクーデ。そしてしばらくするとローズの頬は赤くそまり目がトロ~ンと力をなくしていく。

「なんあか、あらだがあつ~くなって・・・」
「おお~そうでしょう、脱いだ方がいいですよ」

 ロクーデはローズの言葉を聞いて待ってましたとばかりにローズの服に手を掛けた。ちょ~っと待った~飲めば大丈夫ってそういう奴だったのか!!よいこには見せられないよ!的な展開はだめよん。僕はすかさずロクーデの顔へダイブすると気絶させる。

「なんだ!うう、おお、こんしょくあ・・・(この感触は)ガクッ」
「ふ~あぶないあぶない・・・」

 ロクーデを気絶させると僕はローズを介抱しようと近づくと倒れこんでいたはずのローズさんが消えて背後から抱き着かれた。

「ハァハァ、強い者を感じる!。君が私の想い人なのか!!胸が高鳴る!!!」

 いやいや、それは薬のせいですよ。なんだかデシウスみたいになっちゃってる~。ローズさんの胸が当たって僕はドギマギしているとローズさんに抱き上げられベッドへと運ばれた。凄い力だ!デシウスよりやっぱりお強いのね、素敵~って言ってる場合か・・。

「何という凛々しいお顔。まるで幼児のようなみずみずしい肌!。ハァハァ」
 
 ローズさん!、目が怖い。ってか幼児のようなじゃなくて幼児何ですってばこれ以上はラメ~。

「キュ!ううう」
「チュ~」

 あう~僕の初チュウがローズさんに奪われた。シリカさんごめんなさい。[キュア]で状態異常を解除しようとしたんだけど間に合わなかったんです。わざとじゃないんですごめんなさい。

 僕はローズさんの唇が離れるとすぐに[キュア]を放ちそれから[スリープ]をローズにかけて布団もかけてあげるとロクーデの元へ歩いて行く。

「こうなったのもロクーデの・・・」

 僕はロクーデを縛り上げて教会の鐘に括り付けた。最高の目覚めが彼に訪れるだろう。ついでに聴覚強化の魔法をかけておいてあげたのでそれはもう最高なことになるだろう・・・ふふふ。

 僕はロクーデからローズさんを守るという任務を達成したわけだけど僕は大切な物を失ってしまった。でもローズさんの唇はとても柔らかかった。

「はっ、・・・確か私はロクーデと酒を・・・何だこの唇に残る感触は・・それにこの胸のときめきは」

 ローズが起きると状態異常が回復しているのにも関わらず胸を締め付けるものを感じてローズは首をかしげる。ローズもまた初めてのチュウをジーニに捧げてしまったのだ、それも自分から襲う形で。

 それもこれもロクーデなどの演技に負けたローズのせいなので自業自得なのだが。

 その後シュミットの鐘の音と共にロクーデの悲鳴がシュミットに響くのは言うまでもない。
しおりを挟む
感想 179

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。 今年で33歳の社畜でございます 俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう 汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。 すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。 そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

処理中です...