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第二章 信仰と差別

第四話 初めての言葉

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「ジーニ様、朝ですよ」
「・・・」

 信仰強国シュミットの現巫女ソフィアの話を聞いてからすぐに屋敷に帰った。

 僕は屋敷に入りすぐ、その前の日に独自に調べた情報を元にある貴族の元へ。

「ちっ!ネマ-の奴しくじりおって」

 高貴なお屋敷から声がもれる。声の主は侯爵であるニクライであった。位ではお父様よりも上の位の男が今回の黒幕であった。

 ネマーの貴族の服は本物だった。貴族の服は平民では手の届かない高価な物だ。それをネマーのような平民が平気で着こなし使用していたのはおかしいと思っていたんだよね。

「それで?誰にやられたんだ?」
「どうやら、ツヴァイ殿の奥方のようです」
「何!あの加護なしを生んだ女か・・・おのれ役立たずのくせに」

 ニクライは執事のような男からの報告を聞き。お母様の事を悪く言い始めた。

 そしてニクライは決定的な言葉を口からもらす。

「あの女を始末しろ。これ以上幅を利かされては面倒になる。おっと殺さずに奴隷に落とせよ。私の物にするのだ」
「はっ!今すぐ」

 執事の男はニクライの気迫に押され焦って扉から出ていった。

「ははは、これであのツヴァイの女を手に入れる事ができるのか。まあツヴァイも手を出してはいけないものがあるという事がわかるだろう」

 ニクライはワイングラスを揺らし一口口に含み笑みをうかべた。

 そしてしばらくすると扉を叩く音が。

 トントン!

「何だ?いい知らせか?」

 ニクライは執事が部下に指示をして戻ってきたんだと思い声をかける。すると確かにニクライの執事が扉の向こうに立っていた。

「何だ?どうしたんだ?」

 ニクライが質問をすると執事は無防備のまま前のめりに倒れた。

「どわ!、なんだ!どうした!」

 ニクライはびっくりして椅子にもたれかかり過ぎて後ろに倒れる。そして椅子に隠れたまま執事に声をかけるのだがその答えは返ってこない。

「な、なんなんだ?何が起こってるんだ」

 ニクライは自分の命が狙われる立場だと分かっている。だからこそここまで怖がるのだ。だがニクライも自衛の手段をもっている。それはあの執事なのだ、彼はいつも気が弱くニクライにもペコペコしているが実はAクラスの冒険者だった程の実力者だった。それが音も無くやられている現状自分に何が出来るのかと不安で身を震わしているのだった。

「ア~イ!」
「ひい!!」 

 ニクライは恐怖のあまり僕の声に怯えて声を上げた。そして身を震わせながら俯いて僕の方を見てくれない。失礼しちゃうね全く~こんな可愛い天使が来たっていうのに・・。

「バブ!」
「ひ!・・・ば、ばぶ?」

 ニクライはやっと今の状況が分かり顔を上げる。そして宙に浮いている僕を見て後ずさった。

「ひい!。おば!おばけ!?」

 ニクライは壁にへばりつく。

「お前は誰だ!何が目的だ!カンザスを殺ったのか?」

 いっぱい質問してきた。どうしようかなって話せないから無視でいいや。ちなみにカンザスは僕のお腹によって意識を手放したのさ。

「アイ!!」
「アブ!、ホガホガ!・・・・ぐうっ」

 ふははは、私のお腹で黙らせてやったぞ。しかしこのままではまたやりそうだな。アルサレムの悪行は大体この男が関わっているのは調べがついている。なのでこの男の地位を落さないと終わりそうにないよね~。お母様の悪口も言っていたし。

 僕は二人の男が気絶している中、顎に手を当てて考えこむ。どうすればいいのかを考えているとふとある映画が思い浮かんだ。

 ポン!と手を叩き不敵に笑う赤ん坊はせっせと行動に移した。

 その男達は昨日王子がパレードをしていた道に吊るされていた。

「「グ~、グ~」」

 二人の男はニクライとカンザスである。そしてこの二人はふんどし一丁で木に吊るされていた。ふんどしはカーテンなのでかなり薄いよ。

 更に彼らの体には今までの悪行を書いておいた。これでニクライの信頼は地に落ちるだろう。

 そして今に至る。

「もう朝?」
「デシウス!?」

 シリカさんは驚愕している。僕もとなりで寝ているデシウスを見やり唖然とした。いつの間に入ってきていたんだ・・と。

「ちょっとこっち来なさい」
「あう~ジーニ様~助けて」
「・・・」

 シリカさんに引きずられて僕の部屋を後にしたデシウスであった。

 デシウスはあと二日しか一緒に居られないと言って大胆になっているのだろう。まあ仕方ないのかな・・・。好きと言われて僕も悪い気はしない、でもエルフならもっと毅然としていてほしいな~。折角の綺麗な顔が台無しだよ。

「お待たせしました。ジーニ様」
「アイ!、シリカしゃん、だいしゅき」
「!?」

 シリカさんは扉まで後ずさる。僕の言葉にびっくりしたのだろう。頬は赤くまるでリンゴのように芳醇である。

「ジーニ様・・今何と?」
「シリカしゃんだいしゅき・・・」
「ハウ!?」

 シリカさんは僕の言葉に胸を撃たれたように横たわった。僕はカタコトだけど喋れるようになってきました。

 最初に喋る言葉を言えるまで僕は喋れることを黙っていたんだ。やっぱり初めての言葉はシリカさんだよね。

「これは・・・メリア様には黙っていましょうね」
「アイ!シリカしゃんだいしゅき」
「ハウウ!!??」

 シリカさんは再度胸を抑えた。流石に破壊力が高かったのかよろめいている。ここまで我慢したかいありました。

 シリカさんはよろめきながらも僕を抱いてみんなの待つリビングへ。

「どうしたの?シリカ」
「いえ、何でもないです」

 よろめいているシリカを気遣いメリアお母様が声をかけた。シリカさんはまだ僕が喋れることを黙ってくれている。

 お母様もびっくりさせないとね。

「ジーニの好きな物はあるかしらね」

 お母様はテーブルに並べられている食べ物を見て話している。僕はチャンスと思い言葉を発した。

「おかあしゃま。しゅき」
「へ!?」

 カチャン!

 お母様が持っていたフォークが床に落ちる。すかさずセバスが拾いあげる。

「今、なんて?」
「おかあしゃま、しゅき」
「ハウ!!」

 まったくシリカさんと一緒のリアクションに僕は楽しくなってしまう。今まで我慢したかいがあったものだ。

「もう!もう一度言って!!」
「おかあしゃま!しゅき」
「ハウ~ン・・・」

 お母様は妖艶な声でソファーへと倒れこんだ。そして身悶えるように鼻血をだしていた。お母様が壊れた。

「ジーニ様私も呼んでください!!」

 デシウスが僕に肉迫する。

「デシウシュ!」
「ハウ!」

 まだ名前を言っただけなのにすでにデシウスは満身創痍であるが僕は言葉を続ける。

「キレイ!」
「ハフン~~」

 デシウスもお母様と同じようにソファーへと身を投げた。

「ん、みんなバカみたい。ただ名前言ってるだけ」
「ララしゃんもしゅき」
「う・・・ダメ」
「しゅきしゅき」
「ううう・・・」
「ララしゃんはしゅき?」

 ララさんの壁は強固だったがジーニの怒涛の攻撃により陥落した。ララはジーニを抱き上げ膝の上に乗せて食事をサポートしていく。

 ララは言葉にせずに行動でしめした。ララもジーニの事を好きなのだ。これはlikeかloveかはわからない。

 リタイアした二人は食事が終わるまでソファーで寝込みセバスに介抱されていた。

 シリカはララとジーニのサポートをしつつジーニの初めてを胸にしまい優越感に浸るのだった。





 食事が終わると僕たちはアルサレムを見回る事にした。

 ニャンナちゃんのお父さんのお店以外にも被害があったのは知ってもらっているだろう。その被害にあったお店を調べているうちに本物の貴族の名が挙がったのだ。まあそれはニクライだったのだけど。

 ニクライの悪事は僕に暴かれ王の処罰を受けるらしい。僕たちはそれを聞いて安心してニャンナちゃんのお店でお昼を取っているということです。
 
「は~ジーニ様~」
「デシウシュ、うるしゃい」
「ハウーン」

 デシウスが僕の頬を弄り回している。とてもうざいので僕が叱るんだけど全然効果がない。

「ジーニ様は本当に可愛いですね」
「・・あれ?。シリカいい事でもあったの?」
「え?何もないわよ。ふふふ」

 デシウスはシリカに叱られると思ったのだがそうならなかった事でシリカに違和感を感じた。デシウスはシリカに何かいい事があったのだと思い疑問符を投げかけた。シリカは驚いたが誤魔化すように笑う。

「何かあったんでしょ!」
「ん、二人共黙って」
「「はい」」

 うるさくなってきた二人をララさんが叱ると二人はシュンとして俯いた。

 ニャンナちゃんが料理を両手に持ってきてくれた。前回食べられなかったダブルヘッドベアの煮込みである。僕たちはこれを食べてう~ま~い~ぞ~をやるのだがそこは割愛いたしましょう。

 僕たちは平和な日々を暮らす。

 黒幕を地に落とした事で得られた平穏を楽しむのだった。 



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