2 / 3
第2話
しおりを挟む
エリザベートの言葉にアリスはキョトンとする。
「あんたこそ何言ってるのよ? ここは乙女ゲームの世界。私の為の世界なの! 全部私の思いのままになるんだから!」
「現実的に考えてみなさい。あなたの身分は男爵令嬢ですのよ? この国では国王と王太子のみ重婚を許されていてその他の者は如何なる理由があろうと一夫一妻。あなたがここにいる四人全員と結婚するということはあり得ないのです」
国王と王太子は世継ぎの問題や政治情勢の問題で重婚は認められている。
重婚はあくまで世継ぎの問題や政治情勢の問題への対策ということで、国王と王太子の個人的な事情ーー好きな女性が二人いてどちらか選べないから両方妻にするいうような事情ーーでの重婚は却下される。
「それはアレックスがどうにかしてくれるわ! そうよね、アレックス?」
「そんなことする訳がないだろう? もし仮に、私とクリスとルディとマルクでお前を共有したとして、子が生まれた場合、一体誰の子なのかわからないという問題がある。髪や瞳の色、顔立ちで判断出来ないこともないが、それだけで判断出来ない場合、確実に自分の子だと言える要素がない。特に私は王太子だから、不確定要素で後継者を据える訳にはいかない。要するに周りに複数の男を侍らせる尻軽女はお断りということだ」
「私もお断りです。四人の男と結婚しようなんて、よくそんな気持ちの悪い発想が出てきましたね。貴族の義務の一つは自分の家の血を次代に繋ぐこと。血統をとても大事にします。だから、貴族社会では身持ちの悪い女性は白い目で見られる。……ああ、失礼。そういう点では既にあなたは身持ちの悪い女性として烙印を押されていますね。これから先、色々と大変でしょうが、頑張って下さいね」
(……あれ? 彼女が好きで逆ハーレムに参加していた訳ではないの……? もしかして、これ、私が彼女に注意しに行く必要はなかった……?)
「クリスってば辛辣~。でも、同感。僕達は目的があって君に近づいただけで、別に君に惚れたとかそんな理由があってのことじゃない。欲しい情報があって僕達は君に近づいた訳だけど、僕達全員が君に気があると勘違いしている様はとても滑稽だったよ。面白いものをありがとうね~」
クリストフに続きルディもいつもの緩い口調で毒を吐く。
「俺達はあくまで調査の為に近づいた。そうでなければ君みたいな人に近づこうとも思わない。一瞬だけでも君に気のある素振りをしなければならないなんて物凄い苦行だった」
アレックスからだけでなく、クリスとルディとマルクからも厳しい言葉を言われたアリスは混乱した。
「え……? 皆、私のことが好きだったんじゃないの!?」
「違う。お前の父親が違法植物を領地で育て、隣の国に流通させているという情報を得て。調査の一環でお前に近づいただけだ。適当にチヤホヤしていれば、此方が知りたかったことは全部話してくれたから助かった」
違法植物とは、一見普通の植物だが、乾燥させて粉末状にし、食べ物に混ぜ込み、体内に入ると脳に作用して幻覚症状を引き起こすものだ。
あまりに危険なので、栽培したり、ましてや売ることは固く禁じられている。
違法植物には中毒性があり、裏ルートで高値で取引されている。
「あなたはもうここでのんびり学園生活を送ることも出来ないでしょう。今、メルダ男爵家ではそれどころではないでしょうからね」
「だね~。今頃騎士団による屋敷内の強制捜査が入ってる頃かな~」
「君のせいで破談になった婚約への賠償金という問題も起きているから、踏んだり蹴ったりな状況だろうな」
「私のせいで破談になった婚約の賠償金……?」
「あなたに骨抜きになってしまった男子生徒の中には、婚約者から見切りをつけられて婚約解消した方が数人いらっしゃいます。男爵令嬢であるあなたが、あなたより上の身分の令嬢の婚約話を壊してしまったのです。それは賠償を請求されても文句は言えませんわ」
「そんなの私には関係ないじゃない!」
「一番悪いのは骨抜きになった男子生徒ですが、あなたが声をかけなければこんな事態にはならなかった。責任の一端はあなたにもあります。知らぬ存ぜぬは通用しませんわ」
「エリーの言う通りだ。知らぬ存ぜぬは通用しない。そして、私達はもうお前に構うことは二度とない。さっさと去れ」
アレックスは冷たい声色で一方的に告げる。
アリスはふらふらとした足取りでその場を去って行った。
「あんたこそ何言ってるのよ? ここは乙女ゲームの世界。私の為の世界なの! 全部私の思いのままになるんだから!」
「現実的に考えてみなさい。あなたの身分は男爵令嬢ですのよ? この国では国王と王太子のみ重婚を許されていてその他の者は如何なる理由があろうと一夫一妻。あなたがここにいる四人全員と結婚するということはあり得ないのです」
国王と王太子は世継ぎの問題や政治情勢の問題で重婚は認められている。
重婚はあくまで世継ぎの問題や政治情勢の問題への対策ということで、国王と王太子の個人的な事情ーー好きな女性が二人いてどちらか選べないから両方妻にするいうような事情ーーでの重婚は却下される。
「それはアレックスがどうにかしてくれるわ! そうよね、アレックス?」
「そんなことする訳がないだろう? もし仮に、私とクリスとルディとマルクでお前を共有したとして、子が生まれた場合、一体誰の子なのかわからないという問題がある。髪や瞳の色、顔立ちで判断出来ないこともないが、それだけで判断出来ない場合、確実に自分の子だと言える要素がない。特に私は王太子だから、不確定要素で後継者を据える訳にはいかない。要するに周りに複数の男を侍らせる尻軽女はお断りということだ」
「私もお断りです。四人の男と結婚しようなんて、よくそんな気持ちの悪い発想が出てきましたね。貴族の義務の一つは自分の家の血を次代に繋ぐこと。血統をとても大事にします。だから、貴族社会では身持ちの悪い女性は白い目で見られる。……ああ、失礼。そういう点では既にあなたは身持ちの悪い女性として烙印を押されていますね。これから先、色々と大変でしょうが、頑張って下さいね」
(……あれ? 彼女が好きで逆ハーレムに参加していた訳ではないの……? もしかして、これ、私が彼女に注意しに行く必要はなかった……?)
「クリスってば辛辣~。でも、同感。僕達は目的があって君に近づいただけで、別に君に惚れたとかそんな理由があってのことじゃない。欲しい情報があって僕達は君に近づいた訳だけど、僕達全員が君に気があると勘違いしている様はとても滑稽だったよ。面白いものをありがとうね~」
クリストフに続きルディもいつもの緩い口調で毒を吐く。
「俺達はあくまで調査の為に近づいた。そうでなければ君みたいな人に近づこうとも思わない。一瞬だけでも君に気のある素振りをしなければならないなんて物凄い苦行だった」
アレックスからだけでなく、クリスとルディとマルクからも厳しい言葉を言われたアリスは混乱した。
「え……? 皆、私のことが好きだったんじゃないの!?」
「違う。お前の父親が違法植物を領地で育て、隣の国に流通させているという情報を得て。調査の一環でお前に近づいただけだ。適当にチヤホヤしていれば、此方が知りたかったことは全部話してくれたから助かった」
違法植物とは、一見普通の植物だが、乾燥させて粉末状にし、食べ物に混ぜ込み、体内に入ると脳に作用して幻覚症状を引き起こすものだ。
あまりに危険なので、栽培したり、ましてや売ることは固く禁じられている。
違法植物には中毒性があり、裏ルートで高値で取引されている。
「あなたはもうここでのんびり学園生活を送ることも出来ないでしょう。今、メルダ男爵家ではそれどころではないでしょうからね」
「だね~。今頃騎士団による屋敷内の強制捜査が入ってる頃かな~」
「君のせいで破談になった婚約への賠償金という問題も起きているから、踏んだり蹴ったりな状況だろうな」
「私のせいで破談になった婚約の賠償金……?」
「あなたに骨抜きになってしまった男子生徒の中には、婚約者から見切りをつけられて婚約解消した方が数人いらっしゃいます。男爵令嬢であるあなたが、あなたより上の身分の令嬢の婚約話を壊してしまったのです。それは賠償を請求されても文句は言えませんわ」
「そんなの私には関係ないじゃない!」
「一番悪いのは骨抜きになった男子生徒ですが、あなたが声をかけなければこんな事態にはならなかった。責任の一端はあなたにもあります。知らぬ存ぜぬは通用しませんわ」
「エリーの言う通りだ。知らぬ存ぜぬは通用しない。そして、私達はもうお前に構うことは二度とない。さっさと去れ」
アレックスは冷たい声色で一方的に告げる。
アリスはふらふらとした足取りでその場を去って行った。
105
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
私の婚約者を狙ってる令嬢から男をとっかえひっかえしてる売女と罵られました
ゆの
恋愛
「ユーリ様!!そこの女は色んな男をとっかえひっかえしてる売女ですのよ!!騙されないでくださいましっ!!」
国王の誕生日を祝う盛大なパーティの最中に、私の婚約者を狙ってる令嬢に思いっきり罵られました。
なにやら証拠があるようで…?
※投稿前に何度か読み直し、確認してはいるのですが誤字脱字がある場合がございます。その時は優しく教えて頂けると助かります(´˘`*)
※勢いで書き始めましたが。完結まで書き終えてあります。
未来の記憶を手に入れて~婚約破棄された瞬間に未来を知った私は、受け入れて逃げ出したのだが~
キョウキョウ
恋愛
リムピンゼル公爵家の令嬢であるコルネリアはある日突然、ヘルベルト王子から婚約を破棄すると告げられた。
その瞬間にコルネリアは、処刑されてしまった数々の未来を見る。
絶対に死にたくないと思った彼女は、婚約破棄を快く受け入れた。
今後は彼らに目をつけられないよう、田舎に引きこもって地味に暮らすことを決意する。
それなのに、王子の周りに居た人達が次々と私に求婚してきた!?
※カクヨムにも掲載中の作品です。
妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます
新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。
ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。
「私はレイナが好きなんだ!」
それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。
こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!
【完結】死がふたりを分かつとも
杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」
私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。
ああ、やった。
とうとうやり遂げた。
これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。
私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。
自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。
彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。
それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。
やれるかどうか何とも言えない。
だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。
だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺!
◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。
詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。
◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。
1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。
◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます!
◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。
婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定
何でもするって言うと思いました?
糸雨つむぎ
恋愛
ここ(牢屋)を出たければ、何でもするって言うと思いました?
王立学園の卒業式で、第1王子クリストフに婚約破棄を告げられた、'完璧な淑女’と謳われる公爵令嬢レティシア。王子の愛する男爵令嬢ミシェルを虐げたという身に覚えのない罪を突き付けられ、当然否定するも平民用の牢屋に押し込められる。突然起きた断罪の夜から3日後、随分ぼろぼろになった様子の殿下がやってきて…?
※他サイトにも掲載しています。
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる